離婚「知っトク」ブログ

【内縁】内縁解消できるのか・したらどうなるのか

2017.06.08
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1,はじめに
前回と前々回のブログでは、内縁の成立要件と法的効果についてお話しました。
そこで、今回は、内縁の解消にともなう法律問題について、お話しします。。
 
2,内縁解消の要件
(1)ご相談事例
内縁の夫と喧嘩し、「別れよう」「家から出て行ってくれ」と言われました。あまりにも急な話しでびっくりしています。内縁関係とは一方的に解消することができるものなのでしょうか。

(2)回答
ア 内縁ではなく単なる男女の交際関係や同棲であれば、関係を解消するのに法的な要件は何もありません。
しかし、内縁が成立している場合は、
内縁関係について法的な保護が生じ、一方当事者からの一方的通告のみでは関係を解消することはできません。つまり、内縁解消の正当理由が必要です。
内縁解消に正当理由があるというためには、
法律上の離婚原因(民法770条1項各号)に準じる事情があることが必要です。
すなわち、
①内縁配偶者に不貞行為があったとき、
②内縁配偶者から悪意で遺棄されたとき、
③内縁配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、
④内縁配偶者が強度の精神病に罹患して回復の見込みがないとき、
⑤その他内縁を継続することが困難な重大な事由があるとき
に限り、内縁解消に正当理由があるといえるということになります。
イ 正当な理由なく内縁を解消した場合、
不当破棄ということで、民法709条の不法行為責任に基づく損害賠償支払義務が発生します。
最高裁判所昭和33年4月11日判決も,「内縁を不当に破棄された者は,相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに,
不法行為を理由として損害賠償を求めることができる」と判示しております。
損害賠償責任の範囲、程度、金額などについては、
内縁当事者の共同生活に至るまでの経緯や事情、共同生活の状況、当事者を取り巻く背景事情、破綻の原因となった事情などを総合的に考慮して判断されます。
内縁解消に至ったことが必ずしも一方の責任のみでない場合、慰謝料の減額事由となります。
 
3,不貞行為による内縁解消と不貞相手の責任
(1)ご相談事例
内縁の夫が会社の部下の女性であるA子と浮気をし、私に対して「A子と一緒に暮らしたいから別れよう」と言ってきました。
私は、内縁の夫に裏切られた精神的ショックで心療内科に通うことになりました。夫やA子に対して精神的苦痛の責任を追及したいです。
(2)回答
ア 内縁が成立していれば、貞操義務が生じます。
したがって、内縁の夫に対しては、貞操義務違反による内縁の不当破棄の不法行為責任を追及できます。
イ また、A子が、内縁関係を知りながら不貞行為に及んだのであれば、
法的に保護される内縁関係を不当に破綻させたものとして、不法行為責任を追及することができます。
もっとも、A子が内縁関係の存在を知らず、内縁関係を破綻させる故意も過失もなかったという場合は、不法行為責任を問うことはできません。
なお、第三者によって不当に内縁関係が破棄された場合は、不貞行為に限らず、同様に不法行為責任を問うことができます。
例えば、内縁の夫の両親の不当な干渉(姑が内縁の妻を罵り、内縁の夫に対しあの女は詐欺師だから別れろと強要する場合など)によって、内縁関係が解消させられた場合にも、
不当に内縁関係に干渉した両親に対し、不法行為責任に基づく損害賠償請求をすることができます(最高裁昭和38年2月1日判決)。
干渉が不当なものかどうかは、社会通念上の限度を超える干渉か否かで判断されます。
著しい非難や暴言、暴行、欺罔などの不法な方法が用いられている場合は不当な干渉といえるでしょう。
 
4,重婚的内縁の解消
(1)ご相談事例
私は内縁の夫と10年暮らしてきましたが、夫には妻子がおりました。
最近になって、夫は妻子の元に帰るようになり、私に別れ話をもちかけてきました。
重婚は法律で禁じられていると聞きましたが、私と夫との関係は法律で保護されないのでしょうか。
突然別れを切り出してきた夫に責任を問いたいです。
(2)回答
ア 原則として重婚的内縁は保護されない
重婚は民法732条によって禁じられているため、重婚的内縁も原則として法的に保護されないことになります。
そのため、重婚的内縁の場合は、一方的な内縁関係の解消であっても、不当破棄にあたらず、
破棄した配偶者は他方の配偶者に対して責任を負わないということになります。
イ 例外的に保護される重婚的内縁
重婚的内縁であっても、法律上の婚姻関係が形骸化して事実上離婚状態となっていたという場合には、
内縁に準じた法的保護が与えられ、
不当破棄に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求が認められます。
また、重婚的内縁であり、相手に法律上の配偶者がいることを知っている場合で、未だ法律上の婚姻関係も破綻状態とはいえなかったというときも、
相手に不法な動機や詐言など違法な行為が存在し、相手の違法性の方が明らかに大きいといえる場合は、一方的に内縁を解消した相手に対して損害賠償責任を問える場合があります。
最高裁昭和44年9月26日判決では、
内縁の夫に法律上の妻子がいたことを内縁の妻が知っていたものの、
内縁に至った動機が男性の「妻とは不仲」「いずれ妻とは別れて君と結婚する」などという詐言にあるという事例において、
女性が19歳で思慮不十分であるのに男性がつけこんだと見られるなどの事情を考慮のうえ、
女性側における動機の不法の程度に比べ、男性側の違法性が著しく大きいとして、
貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰謝料請求が許されると判示されました。
もっとも、認められる損害賠償額は低くなる傾向にあります。
 
5,おわりに
今回のブログでは内縁の解消に伴う法律問題についてお話させていただきました。
次回も、内縁の解消に伴う法律問題について、お話を続けさせていただこうと思います。