離婚「知っトク」ブログ

【内縁】内縁解消できるのか・したらどうなるのか②

2017.07.07
  • その他
  • 男女トラブル

1,「内縁に関する法律問題」の目次
第1回 内縁の成立要件「内縁ってなんですか?」
第2回 内縁の法的効果「内縁が認められるとどうなるか?」
第3回 内縁の解消(1)「内縁解消できるのか・したらどうなるのか」
第4回 内縁の解消(2)「内縁解消できるのか・したらどうなるのか②」
 
2,はじめに
今回は内縁にまつわる法律問題の第5回です。
今回で内縁問題はひとまず最終回になります。
今回は,死亡によって内縁が解消された場合についてお話していきます。
 
3,内縁配偶者に相続権はない?

(1)ご相談事例
私は,長年内縁の夫と一緒に暮らし,専業主婦として夫を支えてきました。
その夫が先日亡くなったのですが,遺産を相続することはできないのでしょうか。
(2)回答
ア 原則
現行法上,一方の内縁配偶者が死亡した場合,
原則として,他方の内縁配偶者には相続権は認められておりません(最高裁判所平成12年3月10日決定)。
ですので,内縁配偶者に確実に財産をのこしたい場合は,
①あらかじめ生前贈与をする,もしくは,②遺贈をする
必要があります。
イ 特別縁故者として財産の分与を受けることができる場合
死亡した内縁配偶者に法定相続人(妻(戸籍上の),子や孫,親,兄弟など)がいない場合は,
一緒に生活をしていた内縁配偶者が
特別縁故者(民法958条の3)として,
財産分与を受けることができる場合があります。
特別縁故者とは,死亡した者が遺言書を作成していたとすれば,自分の財産を取得させるように書くことが確実であるような関係にあった者
をいいます。
生計をともにしていた内縁配偶者は,特別縁故者にあたる典型例です。
内縁配偶者は,自分が特別縁故者であることを主張する陳述書とその証拠をもって,
特別縁故者に対する財産分与の申立てを家庭裁判所に行います。
特別縁故者であると裁判所から判断されれば,
財産の全部または一部の分与を認める審判がでます。
特別縁故者に対する財産分与の申立ては,
相続人の捜索の公告の満了日から3か月以内に行わなければならないという決まりがあります(民法958条の2)。
 
ウ 共有物分割請求
死亡した内縁配偶者の財産について,
その財産形成に他方内縁配偶者の寄与があると認められる場合,
財産の中に共有持分があるとして,
共有物分割請求(民法258条1項)をすることができます(大阪高裁昭和57年11月30日)。
しかし,
共有に属する財産であるとの証明をどのように行うのか,共有だとしてその持分の割合はどれくらいか等の問題点があります。
また,手続き上の問題ですが,
遺産分割手続の中で共有物の分割をすることはできません。
まず訴訟でその権利を確定しておく必要があります。
 
4,内縁配偶者は死亡した内縁配偶者の借りていた家に住み続けられる?
(1)ご相談事例
私は,内縁の夫とともにアパートで暮らしていました。
アパートを借りていたのは夫です。
その夫が先日急死してしまいました。
数日後,大家さんから「借主が死亡したのだから,出ていってほしい」と明渡しを迫られています。
大家さんからは,
「内縁配偶者には相続権がないため,賃借権を相続することはできない」
とも言われました。
このアパートを追い出されたら私には行き場がないのですが,
明渡しに応じるしかないのでしょうか。
(2)回答
ア 死亡した内縁配偶者に相続人がいない場合
死亡した内縁配偶者に相続人がいない場合,
同居していた内縁の配偶者や事実上の養子は,
居住している建物の賃借人としての権利義務を承継することができます(借地借家法36条1項)。
なお,権利義務を承継したくない場合は,
内縁配偶者が相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に,賃借人に反対の意思を表示しなければなりません(借地借家法36条2項)。
イ 死亡した内縁配偶者に相続人がいる場合
生存内縁配偶者は,
相続人が相続した借家権を援用して,賃貸人に対し,明渡しを拒むことができます(最高裁昭和42年2月21日)。
また,
相続人が,生存内縁配偶者に対し,借家権を相続しなかったことを根拠に明渡しを要求するのは権利の濫用として認められません(最高裁昭和39年10月13日)。
もっとも,
賃料の支払い義務は相続人にあるため,
相続人が賃料の支払いをしないと,賃料不払いを理由として賃貸人から賃貸借契約を解除されてしまうおそれがあります。
また,
相続人が借家権を放棄してしまうおそれもあります。
そこで,
そのような不安定な状態を解消するために,
貸主と内縁配偶者との間で新たに賃貸借契約を締結できれば一番よいと考えられます。
ウ 死亡した内縁配偶者の持ち家の場合
余談ですが,死亡した内縁配偶者の持ち家に住んでいた場合,
持ち家の相続人が明渡しを求めてきたとしても,
生存内縁配偶者は,使用貸借権を主張して,明渡しを拒むことができます(大阪高裁平成22年10月21日)。
内縁配偶者が死亡するまで無償で使用させるという使用貸借契約が黙示に成立していたと考えられるからです。
また,
内縁配偶者2人の共有の持ち家である場合も,
特段の事情がない限り,
一方の死亡後には他方がその家を単独で使用する旨の合意が成立していたと推認されます(最高裁平成10年2月26日)。
 
5,死亡退職金の受給権はあるのか?
(1)ご相談事例
内縁の夫が死亡し,会社から退職金が出るのですが,彼の弟が「自分が唯一の相続人だ」と言っております。
私が退職金を受け取ることはできないのでしょうか。
(2)回答
会社の死亡退職金に関する規定は,通常,就業規則や労働協約によって定められております。
受給者が相続人に限られている場合もありますが,
多くの場合は,
内縁配偶者にも受給権があります。
たとえば,労働基準法施行規則42条の規定を準用するという規定になっている場合は,受給者の第一順位は,「労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも,事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。)」となっており,内縁配偶者が受給者の第一順位であることになります。
なお,
受給権者に関する規定がない場合は,相続人が受給権を有することになり,内縁配偶者に受給権は認められません。
 
6,厚生年金の遺族年金の受給権はあるのか?
(1)ご相談事例
会社勤めをしていた内縁の夫と私は20年間一緒に暮らしてきました。
その彼が先日死亡してしまいました。
彼には,20年間以上まったく連絡をとっていない法律上の妻がいるのですが,私は彼の厚生年金の遺族年金を受給できるのでしょうか。
(2)回答
厚生年金保険法59条1項は,遺族厚生年金の受給権者として,配偶者と規定しておりますが,
同法3条2項は,同法にいう配偶者に内縁配偶者を含むと規定しております。
上記事例は重婚的内縁の場合ですが,法律上の婚姻関係はその実体を失っておりますので,法律上の妻は,厚生年金受給者である「配偶者」にはあたりません。
そのため,内縁配偶者が受給権者となります。