離婚「知っトク」ブログ

離婚後子どもに会いたい!拒否されたら?面会交流を実現する方法②(間接強制)

2017.07.05
  • 子供のこと
  • 面会交流
面会交流を実現するには,間接強制による強制執行が有益であること,どんな場合でも間接強制が認められるわけではないこと,を前回お話しました。
親同士である程度信頼関係ができており,子も面会を望んでいるようなケースでは,かえって厳密な取り決めをせず柔軟に実施したほうが好ましいですが,
そういったケースは今回いったん脇においてお話します。
どういった場合に間接強制が認められるのでしょうか。
一言で言えば,給付内容が特定されているかどうかがポイントになります。
具体的に説明すると・・

①面会交流の日時または頻度
②各回の面会交流時間の長さ
③子の引き渡しの方法
この3つの要素が,監護親の義務の内容として特定できていると言えれば間接強制は可能です(最高裁H25・3・28)。
実際の判例では,
① 面会交流の日程等
 月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし
② 場所
  長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること,
② 面会交流の方法
  長女の受渡場所は,抗告人自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,
  協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とすること,
  抗告人は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと,
  抗告人は,長女を引き渡す場面のほかは,相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと,
③ 代替日
  長女の病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は,相手方と抗告人は,長女の福祉を考慮して代替日を決めること,
④ その他
  抗告人は,相手方が長女の入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならないこと
など定めたケースで
「面会交流の日時,各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法の定めにより抗告人がすべき給付の特定に欠けるところはないといえるから,本件審判に基づき間接強制決定をすることができる。」,
つまり間接強制を裁判所が認めました。
他方,間接強制ができないと判断したケースもあります。
そのケースでは,
ア 相手方は,抗告人に対し,長男と,2箇月に1回程度,原則として第3土曜日の翌日に,半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)面接をすることを認める。
  ただし,最初は1時間程度から始めることと し,長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする
イ 相手方は,前項に定める面接の開始時にa県b市のc通りの喫茶店の前で長男を抗告人に会わせ,抗告人は終了時間に同場所において長男を相手方に引き渡すことを当面の原則とする。
  ただし,面接交渉の具体的な 日時,場所,方法等は,子の福祉に慎重に配慮して,抗告人と相手方間で協議して定める。
ウ 抗告人と相手方は,上記アに基づく1回目の面接交渉を,平成22年1月末日までに行うこととする。
エ 抗告人と相手方は,二男については,将来的に長男と同様の面接交渉ができるようになることを目標にして,面接交渉の是非,方法等について協議する。
  なお,この協議は,本調停成立日の1年後を目安として始 め,その後は二男の成長に配慮しながら適宜行い,双方は,二男の面接交渉の開始に向けて真摯に協力することとする。
といった取決めをしていたところ,
「本件調停条項アは,面会交流の頻度について「2箇月に1回程度」とし,
 各回の面会交流時間の長さも,「半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)」としつつも,
「最初は1時間程度から始めることとし,長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。」とするなど,それらを必ずしも特定していないのであって,
本件調停条項イにおいて,「面接交渉の具体的な日時,場所,方法等は,子の福祉に慎重に配慮して,抗告人と相手方間で協議して定める。」としていることにも照らすと,
本件調停調書は,抗告人と長男との面会交流の大枠を定め,その具体的な内容は,抗告人と相手方との協議で定めることを予定しているものといえる。
そうすると,本件調停調書においては,相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえないから,本件調停調書に基づき間接強制決定をすることはできない。」
とし,間接強制が認められませんでした(東京高決H26・3・13)
これらを比較すると,
・面会の日時または頻度は,「月〇回程度」ではなく「月〇回」とはっきり決める事
・協議して別途定めるという条項を入れる場合は,「協議が整わない場合は~~とする」といった定めを入れる事
がポイントと言えるでしょう。
このように,間接強制によって面会を実現するには,
①面会交流の取り決めを調停ないし審判でして,
かつ
②相手方(監護親)がすべき給付が特定されていると言えるほど具体的な取り決めをする必要があるのです。
なお,実際に間接強制が認められたケースの間接強制金は,一回あたり2万円から20万円まで幅があります
(20万円のケースは相手が開業医で高収入だった場合ですので,通常は2万~8万くらいと思ってよいでしょう)。