【財産分与】財産分与の基本② 分与されるのはどんな財産?

1,はじめに

前回のブログで、現金、預貯金、不動産などあらゆる種類の財産が財産分与の対象になることを述べました。

しかし、あらゆる財産が対象になるとはいっても、簡単な話しではなく、争いが生じることは多々あります。

今回のブログでは、何を財産分与の対象とするか、実際に争われることが多いものについて、解説していきます。

 

 

2,学資保険

学資保険は、子供の教育のために掛けている保険ですから、子供の固有財産ではないかという質問がよく寄せられます。

しかし、学資保険も他の保険と性質は変わらず、裁判所の審判や判決になった場合には、財産分与の対象とするのが実務の取り扱いとなっております。

もっとも、当事者間の示談や、裁判所の手続きであっても調停や和解の場合は、柔軟な解決を図る事が可能です。

実際にも、子の教育目的のためである学資保険については、子の将来のことを考え、財産分与の対象としない合意がなされることは多いです。

 

3,子供名義口座の預金

未成年者でも、アルバイト代やお小遣い、お年玉などを子供自身で管理している預金は、子供の固有財産とされ、財産分与の対象にはなりません。

一方,

たとえば、子供が生まれた際、親が子供名義の口座を開設し、将来の教育資金等にするために、夫婦の収入の一部をその預金口座でためていた場合,

子供がまだ未成年で、かつ親がまだ預金の管理を行っているのであれば、子供の固有財産であるとはいうことはできず、夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。

ただし、子供の教育資金のために夫婦の収入から貯蓄してきた預金であっても、例えば高校生になって,通帳とカードを子どもに渡して,子どもが引き出せるようになっているなど,

既に子供に管理権限が移っている場合には、子どもの固有財産になったと評価され、財産分与の対象からはずれます。

 

4,夫または妻の名義の事業用財産

夫婦共同で営む事業の場合のみならず、夫婦の一方当事者が営む事業の場合であっても、

婚姻期間中に購入したものであるならば、原則として共有財産であると推定され、財産分与の対象となります。

もちろん、購入資金が特有財産(たとえば、相続した預金)によるなどの事情があれば、財産分与の対象とはなりません。

また、夫婦の生活実態・収入や資産の管理方法などから、

その事業用財産については名義人の所有に帰属するという合意があったと認められる場合には、財産分与の対象にはなりません(東京家裁審判平成6年5月31日)。

たとえば、婚姻後も各自の収入や預貯金を管理するという合意があり、夫婦共通の財布がない場合です。

 

5,家族共同経営により形成された夫婦以外の親族名義の財産

例えば、夫婦が夫の両親が営む家業(農業など)に従事してきた場合,

夫の両親と息子夫婦が一緒に大家族的な共同生活を営んできたために、夫の親から夫婦に正当な給与が支払われることがなく、

夫の親名義の財産のみ形成され、夫婦名義の財産がほとんど形成されなかったというようなケースがあります。

このような場合、

夫の親名義の財産の形成には夫婦の寄与があるわけですから、

公平の見地から、婚姻後に夫婦が家業に従事してきた期間に形成された夫の親名義の財産の一部を夫婦の共有財産として評価し、財産分与の対象とすべきです。

ただし、第三者名義の財産を現物分与することはできませんから、

財産分与の方法としては、現物分割ではなく、金銭給付の方法によることになります。

熊本地裁八代支部昭和52年7月5日判決は、このような事例において、賃金センサスに基づく平均賃金から生活費を控除した残金を財産分与対象財産として評価して、その約半額を夫から妻に対して財産分与すべきと判断しています。

 

6,夫婦が経営に関与する法人名義の財産

夫婦の双方または一方が経営に関与する法人が存在する場合、その法人財産は、原則として、財産分与の対象となりません。

なぜなら、法人と夫婦個人とは法的に別人格であるからです。

しかし、法人名義の財産であっても、夫婦の協力によって形成された財産があると認定できる場合には、

実質的共有財産として、その部分を財産分与の対象とする余地があります(広島高裁岡山支部平成16年6月18日判決)。

たとえば、会社であっても名目上のものに過ぎず、実態は夫の個人経営であって、会社の資産が実質上夫の資産と同視できるような場合です。

なお、第三者名義の財産を現物分与することはできませんから、

財産分与の方法としては、現物分割ではなく、金銭給付の方法によることになります。

 

7,退職金

(1)既払

企業の退職金規定等に基づいて支給される退職金は、賃金の後払い的性質を有するため、原則として財産分与の対象となります。

しかし、退職金に労働の対価としての性質が含まれていない場合には、他方配偶者が貢献したとはいえないとして,財産分与の対象とはならないと評価される場合もあります。

たとえば、退職金が、会社の合併に伴う生活保障の趣旨で支給された場合などです。

ただし、このような場合でも、民法768条3項の「一切の事情」として考慮される可能性はありますし、扶養的財産分与として考慮される可能性もあります。

(2)将来もらえるもの

将来の退職金のうち、離婚時に退職金の支給が確定している場合には、既払いの退職金と同様、原則として財産分与の対象となります。

そして、支給が確定していない場合は、支給される可能性が高いことを条件に財産分与の対象となります。

支給される可能性が高いといえるかどうかは、具体的事実関係を元に判断されます。

たとえば、支給時期が10年以上先でも、公務員である場合は受領の可能性が高いと評価されることもありますし、退職時期が数年先でも、倒産や解雇の可能性から、財産分与の対象とされないこともあります。

なお、企業年金は原則として年金分割の対象となりませんが、その原資として退職金があてがわれている場合には、財産分与の対象となります。

(3)分与額

たとえば、夫が会社員で妻が主婦であり、夫が婚姻前から会社に勤めていた場合には、婚姻期間に対応する額のみが財産分与の対象となります。

将来の退職金の場合、

離婚時に退職したと仮定した額をもって退職金額と評価し、離婚時を支払時期とすることが実務では多く行われております

(中間利息控除等の方法で退職金の評価額を調整し、離婚時を支払時期とする場合もあります)。

また、将来支給された時を支払い時期とする裁判例もあります。

その場合、

定年退職時の退職金額を財産分与の対象とするものと、

離婚時に退職したと仮定した額をもって退職金額とするもの

大きく分けて2つの方法がとられております。

 

8,おわりに

財産分与にあたっては、その対象をめぐって争いが生じることが多々あります。

離婚の際には、離婚を急ぐあまり、財産分与で妥協して後々後悔することのないよう、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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