【財産分与】財産分与の基本④ 「生活費払ったから財産は渡さない」という主張が通るか

今回は,財産分与について,

夫婦間の生活費のこれまでの分担状況を考慮することができるか,

②離婚の原因を作った相手に対して財産分与の際に慰謝料的意味を含めることができるか,

 ③離婚後の生活費を財産分与の際に考慮できるか

についてお話します。

1 生活費を払いすぎていた場合

ア 婚姻費用分担義務(民法760条)とは、

夫婦がその負担能力(収入の大きさ等)に応じて、生活費を分担する義務です。

簡単に言うと、

夫婦のうち、収入が多い方は、少ない方に対して、自分と同等の生活ができるだけの生活費を渡す義務があります。

では、婚姻費用を相場より多く払ってしまっていた場合,「払いすぎた分,分ける財産から引いてくれ」という主張は認められるのでしょうか。

イ 夫婦関係が円満でなかった場合

最高裁昭和53年11月14日判決は、

過去の婚姻費用の支払いを考慮することができるとしました。

すなわち

「(財産分与においては当事者間の一切の事情を考慮すべきところ、)婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は右事情のひとつにほかならないから、裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる」

と判示したのです。

ただし、

この判決のいうところは、

過去の婚姻費用の分担の態様は公平の観点から「一切の事情」として考慮することができるというものであって、

常に考慮するとは判示していない点に注意が必要です。

ウ 婚姻費用分担調停・審判がなされている場合の注意点

調停や審判で具体的な婚姻費用分担額が既に決まっていた場合には、

重ねて財産分与において未払い額を加算することはできません。

調停や審判において婚姻費用について合意が形成ないし審判が下ったにもかかわらず、

財産分与において未払額を加算してしまうと二重払いになってしまうから,というのが理由です。

同様の考え方から、財産分与において未払い婚姻費用額を加算した場合は、後日審判等により婚姻費用を定めることもできないと考えられます。

エ 夫婦関係が円満であった場合

多くの生活費を渡し、自分よりも良い生活をさせていたのだから、財産分与においては自分が多くもらうべきだと主張される方の相談を受けることもあります。

最高裁ではなく高裁判例ですが、

「夫婦生活が円満に推移している間の婚姻費用については、夫婦の一方が過当に婚姻費用を負担していたとしても、財産分与において考慮することができない

と判断した裁判例があります(高松高裁平成9年3月27日)。

オ 円満でない夫婦関係の場合と判断が異なった理由

夫婦関係が円満であるときは、たとえ相場からいって高額な生活費を渡していたとしても、特段の事情のない限り、贈与の趣旨で渡していたと考えられ、財産分与において清算されることが予定されていなかったからという点にあります。

 

2,慰謝料的財産分与

財産分与にあたっては,当事者間の一切の事情が考慮されるため,

一方の行為によって離婚に至ったときは,

それによって被った他方の精神的損害に対する賠償のための給付をも含めて財産分与額を定めることができます

(最高裁昭和46年7月23日)。

また,財産分与によって十分な慰謝料的考慮がされたとしても,

請求者の精神的苦痛を慰謝するに十分でないときは,

さらに別個に不法行為を理由として慰謝料を請求することもできます。

しかし,十分な金額が財産分与において考慮されたときは,その後に重ねて慰謝料請求をすることはできなくなります。

 

3,扶養的財産分与

離婚後の生計を維持することが困難な事情があるときは,

その生計の維持を図る目的で他方配偶者から扶養的財産分与を受ける余地があります。

ただし,生計を維持するに足りる程度です。

その具体的算定基準について明確なルールは存在しませんが,

人事院の標準生計費を一応の目安にすべきであると言われております。

ただし,支払う方の事情も考慮しなければなりませんので,絶対的な基準ではありません。

また,離婚後の立ち上がり資金ということで一定期間分の生計維持費が認められるにすぎないことが多いです。

分与対象は,多くは金銭とされ,

基本的な取得分額に扶養的財産分額を加算されます。

なお,扶養的財産分与は,

 清算的財産分与や慰謝料的財産分与だけでは足りない,

 つまりこれらだけでは,

 その後の生計を維持するにあたって,十分な財産を得られないという場合に成立するものです(補充性といいます)。

nakamahayato