【財産分与】財産分与の基本⑦ 自宅が借家・借地の場合

自宅の敷地が借地であるとか、自宅が借家の場合,財産分与はどうなるのでしょうか。

(なお、ここでは,借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地借家法2条1項)を指すものとして説明しています。

2,自宅が借地上の持ち家の場合

(1)売るか残すかきめる

大きく分けて、売却して売却金を分配するか、現物を分与するかの2通りがあります。

なお、財産分与審判や訴訟で自宅の売却が命じられることはありません。

売却して売却金を分配する方法が取れるのは、夫婦相互の合意ができる場合のみに限られます。

(2)借地権と借地上の建物の査定を取る

ア 借地権の査定について

借地権は、実質的には土地の価値の6割から7割を占めると言われています。

おおまかな借地権価額を知りたい場合は、土地の更地価格に借地権割合を乗じます。

借地権割合は、国税局のウェブサイトの財産評価基準(路線価図・評価倍率表)の中に掲載されております(https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/4611.htm

借地権の厳密な時価額を求める際は、不動産鑑定をします。

イ 借地上の建物の査定について

不動産業者に査定を依頼するのが通常です。

(3)売却する場合の注意点

賃貸人(地主)の承諾を得たうえで、建物を売却しましょう。

自宅を売却した後は、

基本的に,新たに建物の所有者となった者と地主との間で、改めて賃貸借契約が締結されることになります。

地主の承諾を得ずに建物を売却した場合は、土地の賃借権の無断譲渡となり、賃貸借契約を解除されてしまうおそれがあります(民法612条)。

その場合、地主から追い出された建物の購入者から、売却した方に対し、損害賠償請求等がなされてしまうおそれも生じます。ので注意が必要です。

(4)現物分与する場合

ア 代償金の支払い

一方が自宅と借地権を取得する代わりに、

他方に代償金(原則として自宅と借地権の価格の半分)を支払うか、

または他の分与対象財産を取得させるか

等の検討をする必要があります。

イ 名義変更がある場合の賃貸人の承諾

例えば、賃借人の名義が夫であるとき、

妻に自宅を財産分与すると、上記の売却の場合と同様に土地の賃借権の譲渡ということになります。

すなわち、売却の場合と同様に、

地主から事前に譲渡についての承諾を得ていないと無断譲渡として、賃貸借契約を解除されてしまうおそれがあります。

もっとも、

賃貸借契約の解除は、賃借権の譲渡が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合は、認められません。

夫婦がこれまで自宅で暮らしてきたのであれば、

妻のみが暮らすことになったとしても、建物の仕様態様が大きく変わるわけではありませんから、

地主が夫のみならず、妻も生活することを知って、夫に土地を貸した等の事情があるときは、賃貸借契約の解除は認められないというべきでしょう。

ただし、

そうはいっても、後々トラブルにならないように、

事前に承諾を得た上で、妻と地主との間で新たに賃貸借契約を締結しておくに越したことはありません。

もし、地主が賃借人の変更を承諾してくれないという場合は、弁護士に相談してください。

賃借人が変わっても地代を払っていけることや、

土地の使用方法もこれまでと変わらないということを、

様々な証拠から、

説得的に地主に伝え、賃借人の変更を認めてもらえるようにすることが重要です。

それでも、地主が承諾しないという場合は、裁判所に対して、貸主の承諾に代わる許可を求めることができます(借地借家法19条1項)。

財産分与に伴う借地人の名義変更によって、地主に不利益が生じることは通常ありません。

裁判所の代諾許可が得られる可能性は高いです。

なお、自宅の名義を変更する場合、所有権移転登記手続を行います。

その際は、司法書士に依頼することになります。

 

3,自宅が借家の場合

(1)財産分与の方法

基本的には、いずれが借家に居住を続けるか、賃貸借契約を解約して両者とも出て行くかということになるでしょう。

(2)借家権の査定の必要性

集客力のある事業用店舗の場合はさておき、自宅の借家権自体に価値があるとして、財産分与の際に考慮することはそれほどないでしょう。そのため、自宅に居住を続ける者が、その代わりに代償金を他方に支払うとか、他の分与対象財産を取得させるということもあまり多くはありません(自宅を出て行く方に対し、引越し費用を分担するということはあります)。

(3)名義変更をする際の、賃貸人の承諾の必要性

賃貸人に無断で借主を変更した場合、賃貸借契約を解除される可能性があります。したがって、賃貸借契約の名義人が居住を継続する者でない場合は、賃貸人の承諾を得たうえ、新たな賃貸借契約を締結すべきでしょう。もし賃貸人が承諾に応じない場合は、弁護士に相談してください。賃借人が変わっても賃料を払っていけることや、建物の使用方法もこれまでと変わらないということを、様々な証拠から、説得的に賃貸人に伝え、賃借人の変更を認めてもらえるようにいたします。なお、借地権の場合と異なり、賃貸人が承諾しない場合に、裁判所に代諾許可を求めることはできません。

また、賃貸人に対する背信行為がない場合、賃貸借契約の解除は認められません。万が一、賃貸人から明渡しを求められた場合は、弁護士に相談したうえで、財産分与に伴う名義変更であって、自宅の使用態様が大きく変わることはないことから、賃貸借契約の解除は認められないという反論をしてもらいましょう。

(4)公営住宅の場合の注意点

公営住宅の入居者は、当該公営住宅を他の者に貸し、又はその入居の権利を他の者に譲渡してはならないと規定されております(公営住宅法27条2項)。

そのため、公営住宅においては、原則として、名義変更ができません(財産分与することができません)。

もっとも、条例等により、名義人の死亡や離婚等のやむを得ない理由がある場合、賃貸人(地方公共団体)の許可を条件として、同居者への譲渡が認められている場合もありますので、そのような場合は財産分与が可能です。神奈川県の場合、神奈川県県営住宅条例第16条により、家賃の滞納が3か月以上ないこと等を条件に、同居の配偶者への権利承継が認められております。

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