人に貸している賃貸アパートなど投資用不動産を有している場合、この物件を財産分与するときには,自分たちが住んでいる家を分与する場合とは,異なった問題点が生じます。

1,まず資産価値を把握しよう

資産価値の査定は、一般的には、不動産業者に無料査定をしてもらう方法が多く取られます。

査定額について合意ができればその金額を基準にします。

お互いにとった査定に開きがあり、合意が形成できない場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼することがあります。

なお、不動産評価の簡易な方法として、財産評価基本通達を参考にすることもあります

※財産評価基本通達とは、相続税および贈与税を計算する際に対象財産の価額評価基準として国税庁が定めた基準です。

詳しくはこちら→https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01.htm

 

2,単独名義にする場合

(1)代償金の支払いについて

不動産評価額が夫の取得すべき財産分与額を上回るなら、夫は、妻に対し、代償金を支払い、両者の取得する財産分与額が均等になるように調整します(夫が離婚後も不動産を所有し続ける場合を想定しています)。

この処理方法は、共有名義であった収益不動産を夫の単独名義にする場合でも、妻の単独名義だったものを夫の単独名義に変更する場合でも、もともと夫の単独名義であったものをそのまま名義変更をしないという場合でも同じです。

(2)賃貸人の地位の移転

たとえば,賃貸に出しているアパートの名義が夫で、夫が大家として貸していた場合に、離婚後アパートを妻の名義にする際、大家の立場を妻に受け継がせることもできます。これを賃貸人の地位の移転,といいます。

この賃貸人の地位は、譲渡人(名義を渡す人)と譲受人(名義を受け継ぐ者)との合意により移転させることができます。つまり、賃借人の同意は不要ということになります

なお、賃貸人の地位の移転に関する合意がない場合であっても、

収益不動産が譲渡され、譲受人が所有権移転登記もしている場合には、通常、賃貸人の地位は移転します。

この辺りは法律的に少し複雑な話になりますので、気になる方は弁護士に直接伺ってみてください。

もっとも、賃借人の同意が不要とはいっても、賃貸人の地位の移転がある場合、賃借人には連絡しておくのがよいでしょう。特に、賃料の支払先に変更があった場合は、すぐに支払先の変更の連絡をすべきです。

(3)既に発生している賃料債権について

収益不動産が財産分与の対象になる場合、その不動産の賃料債権についても、基準時に現存する限り、財産分与の対象となります。

 

3,共有名義にする場合

代償金の支払い等については、単独名義にする場合と考え方は同じです。

共有名義にする場合の注意点としては、財産分与後の不動産の管理費の負担方法や、賃料の受領方法についての協議をしておく必要がある点があげられます。

なお、共有名義にした場合、

賃貸借契約の解除や新たな賃貸借契約の締結にあたって、持分の過半数が必要であるため、相手方の対応次第では収益不動産の管理上のリスクが生じます。

 

4,売却する場合

(1)財産分与方法

売却代金から諸費用を差し引いたものを、夫婦間で分配することになります。

(2)敷金・保証金の取り扱い

旧賃貸人(旧名義人)に差し入れられていた敷金は、

旧賃貸人に対する未払賃料・損害賠償の支払義務があれば、これに当然に充当されます。そして、その残額が新賃貸人に承継されることになります。

したがって、売買契約を締結する際は、

買主が承継する敷金・保証金の金額やその処理方法について協議する必要があります(通常は、売買代金から減額するなどの処理がとられます)。

 

以上のように、収益不動産を財産分与するにあたっては、自宅の財産分与とは異なった問題点が生じます。

分与を検討する財産が複数ある場合は、複雑な手続になることが多いので、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

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