別居中の生活費,離婚後の養育費はどうやって決めたらいいか②(収入の算定)【離婚】【婚姻費用】【養育費】

1,はじめに

前回は、婚姻費用・養育費の基本的な算定方法を解説しました。

婚姻費用や養育費を決めるときは,収入がポイントになります。

2,給与所得と事業所得がある場合

(1)問題点

前回のブログでお話したとおり、給与所得と事業所得とでは、基礎収入割合が異なります。そのため、両方の所得がある場合の処理方法が問題となります。

(2)処理方法その1(簡単な方法)

簡便な処理方法として、給与所得を事業所得に、または事業所得を給与所得に換算する処理方法があります。

たとえば、給与所得600万円と自営所得が40万円あるとします。算定表の軸で、給与所得600万円は自営所得の440万円にあたります。そこで、給与所得600万円を自営所得440万円と換算し、自営所得40万円と合算して、自営所得が480万円あるものとして、算定表を用います。

(3)処理方法その2

もう1つの処理方法は、

 給与所得と自営所得のそれぞれに対応する基礎収入割合を乗じて基礎収入を算出し、それらを合算して標準算定方式に当てはめる方法です。

審判では、より正確性の高いこちらの方法が用いられることになります。

 

3,収入の変動

(1)年によって収入が変動する職業の場合

職業によっては、その年によって収入の変動が多い場合があります。

その場合、直近の年収によって婚姻費用・養育費を決めるとなると、妥当でない結論となるおそれがあります。

したがって、今後も収入の変動が予測されるのであれば、過去数年分(たとえば3年分)の年収及び今年の見込額を平均するという方法をとるべきでしょう。

また、いったん前年の年収によって養育費・婚姻費用の金額を定めて、その後1年ごとにその前年の収入状況に基づき、金額を見直す条項を設けるという方法

をとることも考えられます

(ただし、合意後も定期的に連絡をとりあうことが可能な場合に限られる手法です)。

(2)将来、年収が減る見込みである場合

まず、婚姻費用や養育費を算定する際は、原則として、前年度の源泉徴収票・課税証明書、確定申告書等を用います。

将来の支払いの際にも、前年度と同程度の収入があるものと推計するという考え方です。

減収することがほぼ確実で、いくら減収するのか明確に予測することが可能な場合は、減収が考慮されることになります(客観的な証拠が必要です)。

しかし、減収することや、いくら減収するのかの予測が困難であれば、原則どおり、前年度の収入が算定の基礎とされることになります。

(3)将来、年収が増える見込みである場合

減収の場合と考え方は同じです。たとえば、転職で給与が上がるという事案で、転職先が既に確定しており、具体的給与額についても契約書等により示されている場合、増収がほぼ確定的で

あるし、いくら増収するのかも明確に予測できるため、増収が考慮されることになります。

この場合、転職前の支払いと、転職後の支払いとで別々に算定し、転職後については転職後の見込み収入を算定の基礎とします。

 

4,収入資料の信用性が欠ける場合

(1)問題となるケース

①自営業者等で節税等の目的で経費の水増し等をしていたケース

 ②婚姻費用や養育費の請求を受けて、その支払いを減らすために収入を意図的に操作したケース

(2)収入の認定方法

相手方が提出した源泉徴収票や確定申告書といった収入資料の信用性が欠ける場合、現実の収入を認定するため、資料を多角的に収集する必要があります。

ア、①のケースの例

生活実態や従前の収入から実際の収入を推計した裁判例があります。

また、現実の収入を認定する資料がない場合には、賃金センサスを利用した裁判例があります。

生活実態から収入を推計した裁判例としては、

たとえば、

確定申告での課税所得金額がゼロとされていた事案で、事業資金の返済、食費、家賃、個人年金、医療費、嗜好品代等の支出状況から、支出と同額程度の収入があったと認定された例があります

(こうした例では、家計簿、請求書、領収書、通帳等の科刑の実情を示す資料から現実の支出状況を認定していきます)。また、同様の事案で、別居前に生活費として渡されていた金額から収入が認定されたケースもあります。

相手方の生活実態が収入資料の収入と乖離していることが明らかであるにもかかわらず、支出状況について客観的資料を集めるのが困難である場合は、賃金センサスを用いて相手方の収入を認定することがあります

(ただし、賃金センサスを用いる正当性を根拠付けるためには、収入資料が信用できないことだけでなく、できる限り現実の収入の存在を示す事実を証明していく必要があります)。

イ、②のケースの例

たとえば、役員報酬が下げられた場合、

減収の時期が婚姻費用や養育費の請求の後でないか、

当事者が役員報酬を減額できる地位にあるかの他、

役員報酬を減額した株主総会議事録や取締役会議事録で役員報酬の減額についての審議の形跡があるか、

減らされた金額が会社の経営状況からして合理的な金額か等を吟味して、本当に減額されたのか、

本当に減額されたとしても婚姻費用や養育費の支払を免れるための恣意的なものでないか

を検討すべきです。

減収が恣意的なものであるならば、従前の収入を現実の収入と認定することになります

(収入を認定する資料がなければ、賃金センサスを用いることもあります)。

 

5,収入資料が存在しない場合

収入があることが明らかであるものの、確定申告をしていない、給与が手渡しであるなどの事情により、収入資料が存在しない場合があります。

このような場合、同居時期の家計状況をできる限り証明したうえ(権利者の陳述のみならず、家計簿、領収書等から証明していきます)、義務者の年齢、職種、営業規模、就業形態から賃金センサスを用います。賃金センサスと現実の収入に乖離がある場合は、できる限り現実の収入に近い統計数値が採用されるように権利者からも説得的に主張する必要があります。

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