不貞をした妻からの婚姻費用請求は認められるか

 

※婚姻費用とは、婚姻中の生活費のことです。原則として、夫婦のうち、収入が高い方が低い方に支払います

1,ご質問

妻と10年前に結婚し、子供も1人おります。私は会社員、妻は専業主婦です。

半年前に妻が浮気をしていることが発覚しました。そのときは妻も浮気を認め、謝罪し、浮気相手とも別れると誓ってくれました。そのため、私は妻とやり直すことも考えたのですが、結局妻は私と子供を残して自宅を出ていき、実家に帰ってしまいました。

そうしたところ、妻から突然生活費の支払いを求めるメールが届きました。生活費を支払わないなら、調停を申し立てるとも書かれております。

確かに、妻が自宅を出て行ってから、妻の生活費は一度も支払っていません。しかし、勝手に浮気をして、勝手に家を出て行ったのは妻です。それでも妻に収入がない以上、妻の生活費を私が負担しなければならないのでしょうか。

 

2,ご回答

(1)請求者だけに有責性がある場合

夫婦関係破綻の原因を作った者が生活費の請求をする側(収入が少ない方の配偶者)である場合、

自らが夫婦の扶助義務に違反している以上、相手方に夫婦の扶助義務の履行を求めるのは信義に反すると考えられています。

したがって、生活費の請求をする者が夫婦関係破綻の原因を作ったこと(有責性)が明白である場合は、生活費の請求を権利の濫用として認めないという運用が実務でなされております。なお、この判断にあたっては、生活費の支払いがなくとも、相手方の生活が酷なものとならないかという視点も持たれています。

有責性が明白である場合とは、不貞行為の客観的証拠がある場合等です(ただし、ラブホテルに出入りする写真のような直接的な証拠までは必ずしも必要ではなく、メールのやり取りや、不貞を認めている録音テープ等でも有責性が認められる可能性は十分あります)。

これに対し、不貞行為の疑いがあるに過ぎず、客観的証拠がない場合など、有責性が明白でない場合は、生活費の請求が認められることがあります。なぜなら、婚姻費用は日常の生活費であって、生活に直結するものですから、迅速な審理が必要であるところ、有責性は訴訟で時間をかけて審理されるべき重要な争点だからです。

(2)双方に有責性がある場合

生活費の請求をする側(本事例ですと妻)の不貞行為が明白な場合でも、たとえば夫にも暴力があったことが明白で,双方に夫婦関係破綻の原因があると認められる場合、生活費の請求が一部認められることがあります。

(3)子供の分の生活費

本事例は、妻に有責性があることが明白であって婚姻費用の請求が権利の濫用として認められない場合といえるでしょう。

ただし、本事例のような場合であっても、仮に妻が子供を養育しているときは、妻から夫に対する子供の分の生活費の請求が認められます。子供の生活費の請求は、子供の権利であるからです。

同様に、離婚後に有責配偶者が養育している子供の養育費の請求についても、両親の有責性は関係なく、認められます。

(4)小括

婚姻費用を請求するにあたって、別居の原因がご自身にあるとお考えの方や、相手から婚姻費用の支払いを拒まれているという方は、一度弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

nakamahayato