妻からのDVで悩む男性は多い!DV妻の特徴と離婚の注意点
- 離婚の原因
- DV・モラハラ

警視庁によると、DVの相談件数、そして女性からDV被害を受ける男性も増加傾向にあり、妻からのDVに悩む男性は少なくありません。
しかし、男性のDV被害は、次の理由で解決が難しいと言われています。
- 男性のDV被害の相談ができる機関が少ない
- DV被害を受ける男性に対する無理解やジェンダーバイアスの問題
- 被害者自身がDV被害に気づきにくい
- 親権獲得など不利になりやすく離婚に踏み出せない
特に、「男なのだから我慢しろ」「力が強い男が女に負けるわけがない」などの先入観や風潮から、「恥ずかしくて相談しにくい」という声もあります。
被害に遭うことは決して恥ずかしいことではありません。この記事では、妻からのDVについて、次の点を解説します。
- 妻からのDV被害の統計・DV妻の特徴
- 妻からDVを受けている場合の対処法
- DV妻との離婚における注意点
目次
妻からのDVに悩む男性は多い
妻からのDVに悩む男性は多いです。統計を参考に被害を受けている夫の割合や、DVの定義について解説します。
妻からDVを受けている夫の割合
前述の警視庁の統計によると、2023年のDV相談件数は8万8,619件で、DV防止法施行後最多でした。
その中でも、被害者が男性の割合は27.9%と約3人に1人は女性からのDV被害にあっていることがわかります。
加えて、男性の被害件数も増加傾向にあります。
年 | 相談件数 |
2019年 | 1万7,815件 |
2020年 | 1万9,478件 |
2021年 | 2万895件 |
2022年 | 2万2,714件 |
2023年 | 2万4,684件 |
参考:令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について – 警視庁
妻から受けるDVの種類
DVと聞くと、「殴る」「蹴る」といった身体的暴力を連想するかもしれませんが、近年DVも細分化して定義されるようになりました。
身体的な暴行だけでなく、次の行為もDVだとされています。
身体的暴力 | 殴る、蹴るなど、身体に対する暴行 |
精神的暴力 | バカ、死ねなどの暴言、人格否定、脅迫する、些細なミスを執拗に責め立てる、行動を制限して孤立させる、物を壊すなどで支配する行為 |
経済的暴力 | 稼ぎが悪いなど収入に対する暴言、お金の使い方を極端に制限する、働かない、浪費者借金をするなど金銭的な自由を奪う行為 |
性的暴力 | 性行為の強要、避妊の拒否、嫌がっているにもかかわらず性的な動画や写真を撮影する など |
面前DV | 子どもの前で暴力をふるう、子どもの前でパートナーを非難する、子どもと仲良くさせない など |
子どもの前で行われる「面前DV」は、心理的虐待です。子どもに強いショックを与えるだけでなく、人格形成にも大きな悪影響を及ぼします。
もし面前DVが行われているのであれば、早期に子どもの安全確保や、精神的に安心できる環境にすることが急務です。
参考:DV(ドメスティック・バイオレンス)と児童虐待 ―DVは子どもの心も壊すもの―|男女共同参画局
関連:モラハラ妻に疲れた人がすべきこと|モラハラ妻の特徴と離婚の注意点
DV妻の特徴
DV妻には、いくつかの共通点があるため、特徴の一例を紹介します。
- プライドが高く自分が正しいと思っている
- DVや虐待のある家庭で育った
- 思い込みが強く頭が固い
- 被害者意識が強くストレスを抱えやすい
- 生真面目で手抜きができない
- 実は自己肯定感が低く自分に自信がない
DVや虐待のある家庭で育つと、暴力が「普通」「許容範囲」と考えるようになります。
さらに、親が真面目で、「社会規範」「ルール」「正しいこと」を重視している場合、影響を受けた子どもは、無意識に親の価値観を理想として実現しようとします。
相手が自分の理想に届かないと、暴力を手段として、自分の理想を実現させようとします。
プライドが高い点や被害者意識が強い点も、相手を非難しやすい性格です。
「自分はこんなに頑張っているのに、あなたは何もしない」というのが言い分で、罪悪感を植え付けて支配しようとします。
いずれにしても、DV妻は自分基準の理想やルール、時には被害妄想を夫に押しつけます。
繰り返し暴力や非難を浴び続けると、身体だけでなく精神も休まらず、無気力になってしまいます。
このような特徴があり、苦しいと感じているのであれば、次の対処法を検討してみてください。
妻からDVを受けている場合の対処法
妻からのDVで離婚を検討している人もいれば、問題を解決して昔のように家族で暮らしたいと考えている人もいるでしょう。
ここでは、妻との生活を継続したいと考えている男性に向けて、対処法を解説します。
離婚を検討している人は、後述する離婚の注意点などを参考にしてください。
妻がDVする原因を考える
妻が暴力をふるう原因があるのであれば、原因を取り除くことで解決できる可能性があります。
特に、妻が仕事だけでなく家事や育児まで抱え込んでいると、ストレスも大きなものとなります。
育児については子どもを育てる重責を負っていることも多いです。そのため、積極的に家事育児を分担し、協力していくことが大切です。
家事育児を積極的に行う男性もいますが、妻と夫で家事育児の合格ラインが違い、妻がストレスを感じているケースも少なくありません。
「何度注意しても自分の意見を聞いてくれない」と妻が感じていると、いつしか話すこともせず、暴力で解決しようとしてくることも考えられます。
家事育児については、どの程度を合格ラインとするとのか、話し合いで認識を共有しておきましょう。
専門機関に相談する
妻からのDVは夫一人で対処しようと思っても、解決できないこともあります。
その場合は、専門機関や専門家に相談してサポートを受けましょう。妻からのDVは次の機関に相談できます。
DV相談+ | 男性の相談・チャット相談に対応
男性相談の受付:毎週日曜15~21時 電話:0120-279889 |
男女共同参画センター・配偶者暴力相談支援センター | ※各地自治体による
神奈川県については後述 |
警察 | 身の危険を感じた時は、迷わず警察に通報する
警察や配偶者暴力相談支援センターに相談することで、接近禁止を含む保護命令を出してもらえることもある |
児童相談所や子ども家庭支援センター | 親への指導勧告や子どもの一時保護などのサポートが受けられる |
民間のDVシェルター | DVシェルターは非公開になっているため、配偶者暴力相談支援センターに相談して紹介してもらう |
神奈川県の場合は、かながわ男女共同参画センターにて、男性のためのDV相談を受け付けています。
相談することで、DVへの対処法や専門機関などを紹介してもらえる可能性があります。
受付:平日月曜から金曜9:00~21:00 電話:045-662-4530 ※面談相談は要予約
参考:DV相談 – 神奈川県
カウンセリングや病院に通う
妻からのDVが、妻の性格や病気によるものであれば、カウンセリングや病院に通いましょう。
特に、DVや虐待のある家庭で育った場合、ものの考え方が偏っていたり、実は精神的な疾患を抱えていたりするケースも多いです。
カウンセリングなどを受けることで、感情のコントロールや、認知の歪みの改善などが期待できます。
男性にとっても、妻に対してどのような対応が適切なのか、カウンセラーに相談できます。
準備を整えて別居や離婚をする
様々な対処法を試しても改善しないのであれば、別居や離婚も検討する必要があります。
一足飛びに離婚をしたくないという人は、別居する方法もあります。
別居で冷却期間を設けることで、妻が改善の必要性に気づいたり、自分自身が区切りをつけられたりします。
ただし、一方的に別居をすると法的リスクが生じるため、弁護士に相談しながら進めると安心です。
【関連】DVによる離婚の慰謝料相場|DVの証拠がない場合は?
DV妻が離婚してくれない場合
「DV妻と話し合っているのに離婚をしてくれない」という人もいるでしょう。
DV妻が離婚に応じない場合は、DVの証拠を集めて、裁判でDVを立証して、離婚を認めてもらうことになります。
裁判で離婚を認めてもらうには、法律上の離婚理由「法定離婚事由」が必要です。
DVやモラハラは、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しますが、妻からDV被害を受けていることをこちらが立証しなければなりません。
また、裁判前の手続きである離婚調停においても、第三者である調停委員にDV被害を理解してもらうためには、証拠の提示が欠かせません。
もし妻が離婚に応じないのであれば、DVの証拠を集めるようにしましょう。
妻からのDVで離婚する場合の注意点
DV妻と離婚をする場合、男性には数多くの注意点があります。
離婚を切り出す前に必ずDVの証拠を集めておく
DV妻と離婚をする場合は、必ずDVの証拠を集めてから離婚を切り出しましょう。
離婚を切り出して別居を開始してしまうと、妻の暴力の証拠を集めるのが難しくなってしまうからです。
離婚や慰謝料請求に必要となるのが、次のような証拠です。
- 医師の診断書や通院記録
- 警察などの公的機関への相談記録
- 暴力を振るわれている映像や音声
- ケガや壊れた物の写真
- 加害者にされたことや言われたことの記録・日記
ただし、妻の暴力が激しく、身に危険が迫る場合は、早い段階で別居するようにしてください。
また、弁護士への相談で、法的に有効な証拠や、収集すべき期間、証拠集めの方法などについてアドバイスが受けられます。
離婚を意識し始めたのであれば、証拠を集めておきましょう。
【関連】DV離婚は証拠がないと難しい?DV加害者との離婚方法や対処法
離婚時に不利にならない方法で別居する
別居時には、後々不利にならない方法で別居するようにしましょう。次のような形で別居を行うと、様々なリスクがあります。
- 妻に無断で別居すると、夫婦の同居義務違反となる可能性がある
- 別居した上で、生活費を支払わない
正当な理由のない無断別居や生活費を支払わない行為は、夫婦の同居や扶助の義務(民法第752条)に反する「悪意の遺棄」として法定離婚事由や慰謝料が認められる原因となります。
そして、離婚原因を作った「有責配偶者」側からの離婚は原則認められません。
無断別居や、別居の経緯、婚姻費用の未払いなどがあると、不利になる可能性があります。
加えて、子連れで別居を行うと、違法な連れ去りと判断され、親権獲得においても不利になる恐れがあります。
そのため、弁護士のアドバイスのもと、不利にならない形で別居を進めるようにしてください。
別居をすると婚姻費用が発生する
別居をすると婚姻費用が発生し続ける点にも注意が必要です。
婚姻費用とは、夫婦や未成年の子どもが生活をするにあたって、必要となる生活費のことです。
夫婦は結婚生活で生じる生活費を、収入に応じて分担する義務があります(民法第760条)。
別居をしても夫婦であることには変わりがないため、収入が多い側が少ない側に生活費(婚姻費用)を渡す必要があります。
あなたの年収が妻よりも高いのであれば、別居期間中あなたが婚姻費用を負担し続けなければなりません。
相手が離婚に応じたり、調停や裁判が早く決着したりすれば短期間で済みますが、妻が離婚を拒否していると、離婚までに半年や1年以上かかることも考えられます。
【関連】別居中の生活費が気になる人へ。婚姻費用の請求について
妻からのDVに暴力を振るわない
妻からのDVに対して、反射的にやり返さないことも重要です。
仮に一度でも暴力をふるってしまうと、妻がDVを受けたと主張して、自分が加害者だと判断される恐れがあります。
裁判所も証拠なくDVの証言を信用したりはしませんが、女性に有利な判断をされる可能性もあります。
妻からのDVで身の危険を感じた場合は、逃げたり、警察に通報したりするようにしましょう。
また、暴力が激化し、大きな問題に発展する前に、専門機関や弁護士に相談するようにしてください。
親権獲得の準備をしてから離婚を切り出す
親権を決める際は、下記の点を総合的に考慮して決定されます。
母性優先の原則 | 幼い方が母親と生活をした方がよいとする考え方 |
現状尊重の原則 | 子どものために養育環境が変わらないように、現状を維持すべきとする考え方 |
子どもの意思 | 子どもの年齢に応じて、子どもの意思を尊重する |
兄弟姉妹不分離の原則 | 兄弟姉妹が一緒に暮らす方がよいという考え方 |
その他 | どちらが子育てに熱心か
離婚後に十分な養育環境を準備できるか 面会交流に積極的かどうか |
親権獲得においては、女性が有利というのは、現状尊重や母性優先の原則があるからです。
親権を得るためには、積極的に子どもの面倒を見ること、そして、子どもの面倒を見てきたという実績を示すことが重要です。
男性の親権獲得は難しいケースが多いため、弁護士に相談した上で、戦略的に進めるようにしましょう。
妻からのDVでよくある質問
夫婦喧嘩で妻から暴力があったらどうするべき?
暴力の頻度や内容によって、対応は異なります。夫婦喧嘩中の暴力で、身に危険を感じた場合は、すぐに逃げるか、警察に通報してください。
また夫婦喧嘩中に暴力を振るう頻度が多い場合は、DVの証拠を残しておくことで、離婚や慰謝料請求に役立ちます。
ただし、夫から妻へやり返すのだけはやめましょう。離婚をする上で、相手からDVを主張され、不利に働く恐れがあります。
妻からのDVで警察は動いてくれる?
妻からのDVでも警察は動きます。DVは暴行罪や傷害罪が成立し得る立派な犯罪です。
また、DV防止法という法律に基づいて、被害者を守ってくれます。
警察に相談することで、妻に対して、接近禁止命令を含む保護命令を出してもらうことができます。
ただし、警察は犯罪の証拠がないような場合、積極的に動かないケースもあります。
そのため、DVの証拠を示したり、妻が暴れている際に通報したりするなど、被害がわかるような形で相談するのがおすすめです。
まとめ
DV被害を警察に相談した人の約3割は男性で、女性からの暴力に苦しむ男性は少なくありません。
しかし、男性が相談できる窓口の少なさや、男性に対する偏見などが、問題解決の障壁になっています。
DV妻との離婚には、妻が離婚を拒否するだけでなく、親権や婚姻費用など男性に不利なケースが多いです。
当事務所では、DV加害者との離婚や、男性の離婚にも豊富な実績があります。男性が不利になりやすいからこそ、弁護士のサポートを受けましょう。