不貞行為とはどこからどこまで?慰謝料や証拠を簡単に解説
- 離婚の原因
不貞行為をすると、離婚や慰謝料を請求される原因になります。
不倫や浮気でよく聞く「不貞行為」ですが、どのような行為が不貞行為となるのでしょうか?
また、浮気や不倫とはどう違うのでしょうか?
この記事では、不貞行為について、以下の点をわかりやすく解説します。
目次
不貞行為(ふていこうい)とは
不貞行為の定義
不貞行為とは、夫婦の片方が、配偶者以外の人と自由な意思のもとに、性的関係を結ぶことです。
民法上の「法定離婚事由」や「不法行為」に該当するため、離婚や慰謝料請求の原因になります。
不貞行為と判断される条件は、①夫婦関係があること、②自由な意思にもとづくこと、③肉体関係があることです。
①夫婦関係があること | 法律上の婚姻関係があること、もしくは、婚姻関係を結んだ夫婦と変わりがない事実婚(内縁関係)の夫婦であること |
②自由な意思にもとづくこと | 暴行や脅迫などにより関係を結んでいないこと
当事者の自由な意思で関係を持ったこと |
③肉体関係があること | 性行為や性交に類似する行為(性器を愛撫や一緒に入浴するなど)をしたこと |
浮気や不倫との違い
似た言葉に、浮気や不倫があります。
不貞行為の定義が法律で明確に定められている一方で、浮気や不倫は、人によってどこからが浮気、不倫と判断されるのかが異なります。
一般的には、肉体関係を持つことだけでなく、配偶者や恋人以外とのデートやハグ、キスすることも、浮気や不倫と呼ぶことが多いです。
浮気は結婚しているかどうかにかかわらず、恋人同士や夫婦の間でも広く使われる言葉です。
一方不倫は、夫婦が配偶者以外と恋愛関係になった際に使われることが多いようです。
不貞行為 | 浮気 | 不倫 | |
対象者 | 夫婦 | 恋人・夫婦 | 夫婦 |
定義 | 肉体関係を持つこと | デートから肉体関係を持つことまで広い |
不貞行為とはどこからどこまで?不貞行為のライン
不貞行為になる|性行為をした
不貞行為となるのは、配偶者以外の人と性行為をした場合です。以下は不貞行為に該当します。
- 配偶者以外の人と、手淫、口腔性交、前戯などの性交類似行為をした
- ラブホテルに滞在した
- 交際相手と2人で旅行し宿泊をした
- 交際相手と同棲している
ラブホテルは性行為を目的とする場所だと認知されているため、ラブホテルの利用は不貞行為だと判断される可能性が高いです。
不貞行為にならない|キスをした
一般的には、不倫相手とキスすることは、浮気や不倫だと言えます。
しかし、キスをしただけでは、不貞行為だとは判断されません。
キスだけでなく性交類似行為がともなう場合には、不貞行為だと判断される可能性があります。
不貞行為にならない|デートをした
不倫相手とのデートは、一般的に浮気や不倫と判断されることがありますが、デートしただけでは法律上の不貞行為には該当しません。
例えば、不倫相手と水族館に行ったり、レストランで食事したり、手を繋いで散歩しただけでは、通常、不貞行為と判断されません。
ただし、肉体関係がないプラトニックな不倫でも、慰謝料が認められた事例があります。
妻が夫の不倫相手に対して慰謝料を請求した裁判では、不倫相手は夫からのアタックを拒否し続けていたため、肉体関係は認められませんでした。
しかし、夫と出かけて親密な関係を続け、積極的に拒否しなかったことから、裁判では「社会通念上、男女の関係を超えたものと言わざるを得ない」として慰謝料44万円の支払いが命じられています。
不貞行為は、原則として「肉体関係があること」ですが、一般的な常識に照らし合わせて、男女関係があると判断されるような親密な関係を続けると、慰謝料請求が認められる可能性があります。
参考:「プラトニック不倫」でも賠償命令…肉体関係「回避の努力」認めず一蹴の判決理由 – 産経ニュース
不貞行為をするとどうなる?
不貞行為があると、離婚や慰謝料請求が認められる原因になります。
法的な離婚原因になる
不貞行為は、法律で離婚が認められる理由(法定離婚事由)の一つです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
離婚は、夫婦双方の話し合いで合意できれば、離婚届を提出するだけで成立します。
しかし、片方が離婚を拒否している場合、最終的には裁判で離婚の可否が判断されます。
不貞行為があった場合は、不貞行為をした側が離婚を拒否しても、裁判で離婚が認められる可能性が高いです。
一方、離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は、基本的に認められません。
不倫慰謝料を請求できる
不貞行為は、民法上の「不法行為」に該当するため、慰謝料請求の原因になります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
夫婦はお互いに対して、配偶者以外と肉体関係を持たず、性的な純潔を守る貞操義務があります。
不貞行為は、貞操義務に反する行為であり、また「夫婦生活の平和を維持する権利」を侵害する行為とされています。
不貞行為をした配偶者、そして不貞行為をした不倫相手の両者が、損害賠償する責任を負うことになります。
不倫慰謝料の請求方法は、不貞行為をした相手に直接支払いを求める方法と、裁判で訴えて支払いを求める方法があります。
なお、不倫慰謝料の請求には以下の時効があるため、早めに請求することが重要です。
- 配偶者の不貞行為や不倫相手を知った時から3年
- 不貞行為があった時から20年
不貞行為の慰謝料の相場
不貞行為の慰謝料の相場は、おおよそ50~300万円とされています。
これは、裁判所が慰謝料を決定する際の相場が元になっています。離婚をするかどうかによっても、金額は異なります。
離婚する場合 | 200~300万円 |
離婚しない場合 | 50~100万円 |
不貞行為が原因で離婚に至る場合は、精神的苦痛の度合いが大きいとされ、慰謝料が高額になる傾向があります。
他にも、以下のように、慰謝料の金額が増額される要因があります。
- 婚姻期間が長い
- 不貞行為に及んだ期間が長い・頻度が多い
- 未成年の子どもがいる、子どもが多い
- 不貞行為の悪質性
- 不貞行為発覚後に反省や謝罪をしない
- 不貞行為をした側の収入が多い・支払い能力がある・社会的地位が高い
- 不貞行為をされた側の収入が少ない など
上記はあくまでも相場です。個々の事情により異なるため、具体的な金額が知りたい場合は、弁護士に相談しましょう。
なお、慰謝料請求の相場は上記の通りですが、相手に支払い能力があるかどうかは別問題であり、留意する必要があります。
不貞行為で慰謝料請求する際のポイント
不貞行為に対して慰謝料を請求するには、いくつか重要なポイントがあります。
まずは証拠を集める
もし配偶者の不貞行為を知った場合は、問い詰める前に、まず証拠を集めることが重要です。これにはいくつか理由があります。
確固たる証拠がない状態で、不貞行為を問い詰めても、相手が言い逃れをする可能性があります。
また、相手が話し合いで慰謝料の支払いに応じれば問題ありませんが、支払いを拒否された場合は、裁判で不貞行為を認めてもらう必要があります。
裁判では、訴えた側が不貞行為の事実を立証しなければなりません。
裁判官が「配偶者、もしくは不倫相手が不貞行為をした」と判断できるだけの証拠が必要です。不貞行為の証拠については、後述します。
違法な証拠収集はしない
不貞行為の証拠にはさまざまなものがあります。
しかし、証拠収集の過程で違法行為があると、刑事責任を問われる恐れがあります。
場合によっては、証拠として認められない可能性もあります。以下の行為は違法な証拠収集となるため、やめましょう。
配偶者のIDやパスワード使用して、SNSやLINEを開く行為 | 不正アクセス禁止法違反
プライバシー侵害 |
相手の車や持ち物にGPSを取り付ける、相手のスマホにGPSアプリをダウンロードするなどの行為 | ストーカー規制法違反
各都道府県の迷惑防止条例違反 不正指令電磁的記録供用罪等 |
不貞行為の証拠収集で困った場合は、弁護士に相談することで、証拠集めの方法や法的に有効な証拠について、アドバイスしてもらえます。
求償権に注意する
配偶者と離婚せず、不倫相手にのみ慰謝料を請求する際は、求償権(きゅうしょうけん)に注意が必要です。
求償権とは、支払いを肩代わりした人が、相手に対して肩代わりした分を請求できる権利のことです。
不貞行為の責任は不貞行為をした配偶者と不倫相手にあるため、慰謝料は片方、もしくは両者に請求できます。
不倫相手にだけ慰謝料を支払わせても、不倫相手は不貞行為をした配偶者に対して求償権を行使し、自分が負担した慰謝料の半分を請求することが可能です。
例えば、不倫相手に200万円の慰謝料を支払わせても、不倫相手から不貞行為をした配偶者に対して、半分の100万円を請求できます。
実務上では、求償権を放棄する代わりに慰謝料を減額するなどの交渉が行われることがあります。
不貞行為の証拠となるもの
前述の通り、不貞行為を認めてもらうには、不貞行為の証拠を集めることが不可欠です。
不貞行為の証拠となるのは、「肉体関係があった」とわかるものです。
ここでは、不貞行為の証拠となるものを解説します。
- 写真・動画・録音データ
- LINE・メール・SNSのやり取り
- 領収書やクレジットカードの利用明細
- カーナビの記録
- 不倫を認めた念書や録音記録
- 探偵の調査報告書
写真・動画・録音データ
不貞行為の証拠として、裁判でも有効となるのが、性交渉が行われたとわかる写真や動画、録音データです。
- 性交渉や裸でいる状態がわかる写真や映像
- ラブホテルに出入りしている写真や動画
- 性交渉をしていることがわかる、ドラレコの映像や音声 など
上記の証拠は、配偶者や不倫相手の顔が確認でき、人物が特定できるもの、音声の場合は、配偶者と不倫相手の名前が確認できるものであることが重要です。
また、配偶者のスマホからこのような証拠を見つけたら、自分のスマホで撮影をするなどして証拠を残しましょう。
不倫相手と会う場所が自分の家である場合、自宅の中にカメラを設置するのも一つの方法です。
ただし、証拠の集め方によっては、違法となる可能性もあるため、あらかじめ弁護士に相談するのがおすすめです。
LINE・メールのやり取り
LINEやメールのやり取りでも、性交渉があったことが確認できる内容であれば、不貞行為の証拠となります。
例えば、以下のようなやり取りが考えられます。
- 二人で泊りで旅行に行ったことがわかるやり取り
- 性行為をしたことがわかるやり取り
- 不倫相手の裸の写真や、二人が裸で抱き合っている写真 など
単に「好き」だと気持ちを伝えているものだけでは、不貞行為の証拠にはなりません。
ただし、二人の親密さが、不貞行為を推測できる材料となるため、細かな証拠を押さえておくことも重要です。
撮影のポイントは以下の通りです。
- 誰のスマホであるのかがわかるように、スマホ全体を映して撮影する
- メッセージの送信日時がわかるように撮影する
- メッセージの前後がわかるように撮影する
スクリーンショットで保存すると、相手に「作り物の画像だ」と反論される可能性があります。
自分のスマホで配偶者のスマホ画面を撮影しましょう。
領収書やクレジットカードの利用明細
領収書やクレジットカードの利用明細だけでは、不貞行為の証拠となりません。
しかし、他の証拠と組み合わせることで、不貞行為が立証できることがあります。
例えば、以下の領収書やクレジットカードの利用明細が証拠となる可能性があります。
- ラブホテルを利用したとわかるクレジットカードの利用明細
- レストランやバーなど二人で利用したことがわかる領収書 など
なお、ラブホテルのクレジットカードの利用明細は、ホテルとわからないように配慮されています。
例えば、「○○観光」「○○レジャーサービス」「○○興行」などと表記されている場合、不審に感じたときはネットで検索すると、場所を特定できることがあります。
カーナビの記録
カーナビの記録も、頻繁に不倫相手の家やラブホテルに行った記録が残っている場合、不貞行為の証拠となる可能性があります。
また、カーナビだけでなく車の中にも、ラブホテルを利用したクレジットカードの利用明細や、避妊具などが捨てられていることもあるため、確認しましょう。
不貞を認めた念書や録音記録
不貞を認めた念書や録音記録も、不貞行為の証拠となります。
配偶者や不倫相手が不貞行為を認めた場合には、以下の内容を記した念書を作成してもらうことも有効です。
- 不倫相手の氏名と住所
- 不貞行為を開始した日・場所
- 不貞行為をした期間や回数
- 二人が出会ったきっかけ
- 不倫相手は配偶者が既婚者だと知っていたか など
念書は、作成した日時を記載し、相手の署名をもらいましょう。
また、話し合いの中で、相手が不貞行為を認めた場合は、録音する方法もあります。
録音の内容は、「いつ・どこで・誰と・何をしたのか」がわかる内容であることが必要です。
他にも自白の内容を裏付ける証拠があるとよいでしょう。
ただし、自白を強要していると受け取られる内容は、証拠として認められない可能性があります。
探偵の調査報告書
裁判でも有効な証拠となるのが、探偵の浮気調査の報告書です。
探偵による浮気調査の報告書には、以下の情報が記載されます。
- 調査対象者の情報(氏名・住所・勤務先)
- 調査期間・不貞行為があった日時や場所
- 調査対象者の行動記録(〇時に○○で待ち合わせなど)
浮気調査を依頼すると、配偶者と不倫相手がラブホテルを出入りする鮮明な写真を撮影してもらうことができます。
ただし、浮気調査には費用がかかるため、見積もりを出してもらった上で検討しましょう。
不貞行為の慰謝料請求が認められないケース
不倫相手と肉体関係があっても、不貞行為の慰謝料請求が認められないケースがあります。
- 不貞行為の前から婚姻関係が破綻していた
- 不倫相手が配偶者を既婚者だと知らなかった
- 相手の同意なく性的関係を強要した
長期間の別居や離婚の話し合いをしている場合は、①不貞行為前から婚姻関係が破綻していたと判断される可能性があります。
不貞行為によって「夫婦生活の平和を維持する権利」が侵害されたわけではないため、慰謝料請求が認められないことが考えられます。
②不倫相手が配偶者を既婚者だと知らなかった場合も、不倫相手に故意や過失がないとして、慰謝料請求が認められないことがあります。
例えば、マッチングアプリなどで出会ってお互いのことをよく知らない場合、不倫相手が既婚者だと知らなかったという主張が認められる可能性があります。
一方で、長期間関係があり、既婚者だと知り得る状況にあった場合は、不倫相手の過失が認められ、慰謝料請求が認められる可能性があるでしょう。
③相手の同意なく性的関係を強要する行為は犯罪であり、不貞行為は成立しません。
不倫相手に過失があったかどうかの判断は非常に難しいため、不貞行為の慰謝料請求については、弁護士に相談するのがおすすめです。
まとめ
不貞行為は、夫婦の一方が、配偶者以外の人と、自由な意思で性的関係を持つことです。
不貞行為は、夫婦の貞操義務に違反し、夫婦生活の平和を維持する権利を侵害する行為であり、離婚や慰謝料の原因となります。
配偶者の不貞行為に気づいたら、相手に問い詰める前に証拠を集めることが重要です。
先に問い詰めてしまうと、相手も警戒して証拠を得るのが難しくなります。
「どのような証拠を集めればいいのか」「今ある証拠で慰謝料が請求できるか」「今後どうすべきか」など困ったら、弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。
当事務所は、不倫の慰謝料請求にも豊富な実績があります。お気軽にご相談ください。