夫の浮気で離婚するかしないか|後悔しないための判断基準
- 離婚の原因
夫の浮気が発覚した場合、「離婚すべきかどうか」など、さまざまな考えが頭を巡るかもしれません。
しかし、感情的に夫に問い詰めても、言い逃れをされてしまいますし、衝動的に離婚を決めれば後で後悔するかもしれません。
なお、2023年の司法統計によると、妻側が離婚調停を申し立てた動機として「異性関係」が5番目に多い理由でした(複数回答可)。
この記事では、夫の浮気が発覚して離婚を迷う人に向けて、以下の点を解説します。
目次
夫の浮気で離婚するかしないか迷った際の判断基準
夫の浮気が発覚したからと言って、今すぐ離婚しなければならないわけではありません。
「まだ夫に気持ちがある」「迷っている」という人も多いでしょう。
ここでは、夫の浮気で離婚をするかしないか迷った際の判断基準を、いくつか紹介します。
しかし、最終的に一番大切なのは自分の気持ちです。
まずは状況を冷静に観察し、「自分と子どもにとって何が最善なのか?」の観点から、じっくり結論を出しましょう。
夫が浮気相手と別れているか
夫の浮気で離婚するべきか否か、判断基準の一つは、夫が浮気相手と別れているかどうかです。
妻に浮気の事実が明らかになった後も、別れずに関係を続けている夫は、今後も関係を続けるかもしれません。
また、妻が浮気に気づいていることを夫が知らない場合は、発覚時に夫がどのように行動するのか、冷静に観察しておきましょう。
夫が心から反省していてやり直せるか
妻に浮気が知られた際、夫が心から反省しているか、やり直せるかどうかも大切です。
- 真摯に謝罪をしているか
- 浮気をした原因や今後の改善策があるか
- 夫婦関係修復のために具体的な努力をしているか など
妻と話し合う姿勢があるのなら、やり直せるかもしれません。
反省をしていない場合、言葉が表面的で、数日もすれば反省のない態度を示すことがあります。
離婚後に自分で生活できそうか
夫の浮気発覚後に、夫の行動や反省を確認するだけでなく、もし離婚をしたらその後自分で生活できそうかどうか考えてみましょう。
現在の収入で難しい場合、まずは別居をして離婚後のシミュレーションをしたり、離婚後の生活に備えたりしてから、離婚を決断するのでも遅くはありません。
子どもへの影響はあるか
離婚をする上で、もっとも重要なのは子どもへの影響です。
浮気によって夫婦関係が悪化してしまい、子どもを傷つけてしまうようなケースであれば、離婚や別居も検討してもよいでしょう。
仮に離婚に至っても、その後面会交流の機会を設けるなど、子どもの気持ちに配慮する環境を作ることも大切です。
一方で、離婚しても生活が困窮しそうな場合は、離婚のタイミングを見合わせる必要があるかもしれません。
また、夫と子どもの関係が良く、夫も積極的に育児に参加してくれる場合は、子どもの気持ちも考えて判断することが必要です。
自分の今の気持ち
夫の浮気で離婚するかしないか、大切なのは今の自分の気持ちです。一度冷静になって考えてみましょう。
覚えておくべきなのは、「離婚するタイミングはいつでもいい」ということです。
夫の浮気が発覚した直後に感情的になり、落ち込んだり、悲しんだり、イライラしたりするのは当然です。
気持ちが揺れ動いているうちに、離婚を決めてしまうと後から後悔する可能性があります。
そのため、許すかどうか、離婚するかどうかは一旦棚に上げて、今の生活を見直してみることです。
色々考え、夫と接する中で、必ず自分の気持ちが決まる瞬間があるはずです。
気持ちが晴れない場合は、離婚の準備を進めておき、「いつでも離婚できる」と自信を持っておくのもよいでしょう。
夫の浮気が発覚した際の賢い妻の対応
もし夫の浮気を知ってしまったら、まずは浮気の証拠を集めておくことが重要です。
浮気の証拠を集めておくことで、以下のメリットがあります。
- 夫が浮気を認める
- 夫や浮気相手に慰謝料を請求できる
- 夫が離婚を拒否して裁判になった場合に離婚を認めてもらえる
証拠があれば、自分の選択肢を増やすことができます。
ここでは、夫の浮気が発覚した際に妻がすべき対応を解説します。
夫を観察して事実を突き止める
夫の浮気が発覚した場合、動揺するのは仕方がありませんが、まずは冷静になりましょう。
感情的に問い詰めても、確固たる証拠がなければ、言い逃れを許すことになります。夫の行動を観察して、浮気の事実を突き止めましょう。
最近、夫の様子や服装、帰宅時間、休日の外出、スマホを手放さないなど、行動に変化はありませんか?
服の匂いやポケットの中身にレシートが隠されていないかなど、くまなく確認しましょう。
問い詰める前に浮気の証拠を集める
夫の行動から浮気の可能性がある場合は、浮気の証拠を集めましょう。浮気の証拠となるものは以下のものです。
- 写真・動画・録音データ
- LINE・メール・SNSのやり取り
- 浮気を認めた念書や録音記録
- 探偵の調査報告書 など
離婚や慰謝料が認められる「浮気」とは、法律では「不貞行為」と言い、浮気相手と肉体関係があることを指します。
そのため、浮気相手と性交渉をしているとわかる写真や動画、録音データやLINEなどのやり取りが必要です。
不貞行為の定義や証拠については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
【関連記事】不貞行為とはどこからどこまで?慰謝料や証拠を簡単に解説
夫の対応や今後を考えて離婚を判断する
離婚をするかどうかは、前述の判断基準や、浮気の話し合いの中の夫の対応や今後を考えて慎重に判断しましょう。
夫が反省をして、やり直す気があるのであれば、修復に努めます。
一方で、夫の浮気の証拠が得られなかった場合は、夫を信じることも大切です。
浮気をしていると決めつけると、夫に対する態度も冷たくなり、不必要な争いに発展する可能性があります。
夫の行動に不安がある場合は、それとなく「最近、様子が変だけど何かあった?」「残業が多いみたいだけど、仕事で問題があった?」と聞いてみて、不安を解消しましょう。
夫の浮気で離婚する際のメリットとデメリット
夫の浮気が確定していて、離婚するかしないか迷った場合は、離婚する場合としない場合のそれぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。
整理することで、「今すぐに離婚すべきか」「離婚のタイミングを調整すべきか」「離婚をしない方が良いのか」などの判断材料になります。
メリット
夫の浮気で離婚する場合としない場合、それぞれのメリットは以下の通りです。
離婚するメリット |
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離婚しないメリット |
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夫と離婚して別れることで、ストレスを軽減し、自分の人生をやり直すことができます。
一方で、離婚をしなければ、子どもにとっても、両親そろった環境で、経済的に安定した生活がおくれます。
夫の反省の度合いや、夫婦関係の修復に協力的かどうかにもよりますが、別れずにいることで夫婦関係が修復できる可能性もあります。
デメリット
一方で、夫の浮気で離婚する場合としない場合、それぞれのデメリットは以下の通りです。
離婚するデメリット |
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離婚しないデメリット |
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離婚によって生活が大きく変わるため、デメリットも多くなります。
しかし、上記はあくまでも参考程度に考えましょう。
「この方がメリットがあるはずだ」と感情を無視して選んでも、どこかで無理が生じます。
変えられない気持ちや、子どものために決めたことがあるなら、後悔しないためにも、自分の気持ちにしたがって行動し、自分で決定することが重要です。
夫の浮気で離婚をする際に押さえておくべきポイント
もし夫の浮気で離婚をすると決めた場合は、以下の点を押さえておくことが重要です。
離婚の進め方によっては、こちらが不利になる可能性があるため、慎重に進めましょう。
離婚後の生活に向けて準備しておく
離婚を決めた場合、離婚後の生活に向けて、以下の内容を考え、備えておきましょう。
- 離婚後の仕事
- その収入で親子が生活していけるか
- 住む場所はどこか
- 引っ越しや入居に必要な費用はいくらか
- 子どもの世話はどうするのか、どこに預けるか、誰が頼れるか
- 頼れる公的支援はあるかどうか
もし可能であれば、実家を頼るのがおすすめです。
離婚時に請求できるお金を確認する
離婚をする際は、以下のお金を請求できます。
財産分与 | 結婚生活の中で、夫婦の協力によって築いた財産のこと。
夫婦の役割に関わらず、2分の1に分けることが原則。 |
婚姻費用 | 結婚生活を維持するために必要な生活費。
別居をした際に請求できる。 |
年金分割 | 結婚生活の間で納めた年金の記録を平等に分けられる制度。
厚生年金や共済年金で支給される金額を夫婦平等に分けられる。 |
養育費 | 子どもを育てる上で必要になる生活費や教育費のこと。
話し合いで柔軟に決められるほか、養育費算定表を参考に決めることも可能。 |
不倫慰謝料 | 相手が不貞行為をしていた場合に請求できる慰謝料。
離婚する場合は200~300万円が相場。 |
これらはすべて請求する権利があります。
話し合いで離婚をする際は、必ず上記の離婚条件について話し合いを行い、決定した内容を離婚協議書にしてまとめておきましょう。
また、「執行文を付与した公正証書」という形で離婚協議書を作成しておくと、相手が条件を守らない場合に、差し押さえが可能となるため、作成をおすすめします。
話し合った内容を文書にまとめなかったり、話し合わずに離婚したりすると、後から支払ってもらえない恐れがあります。
特に養育費については、月の支払い額、支払う期間、特別費用などをしっかりと決めておきましょう。
【関連記事】養育費とは|養育費の相場や支払い義務・取り決め方法や計算例を解説
離婚で不利になることはしない
離婚する際には、不利になるような行動は避けましょう。
例えば、一方的に別居したり、子どもを連れて別居したりすると、夫婦の同居義務違反や子どもの違法な連れ去りと判断される可能性があります。
もちろん、夫の浮気が原因で別居する場合は、正当な理由と判断されますが、離婚で争いになると、相手がこちらの落ち度を主張してくることも多いです。
また、子どもの違法な連れ去りと判断されると、子の引き渡しの審判などが行われる可能性もあります。
離婚で不利にならないためには、こちらがしっかりとルールや法律を守り、離婚を主張することが重要です。
別居する場合でも、不利にならないように、あらかじめ弁護士に相談しておくことが得策です。
夫の浮気に区切りをつける方法
夫の浮気を許して離婚をしないのであれば、浮気問題に区切りをつけましょう。
浮気相手に対する慰謝料は、離婚をしなくても請求できます。
浮気相手に慰謝料を請求し、合法的に制裁を課すことで、以下のメリットがあります。
- 夫と浮気相手の関係を終わらせられる
- 夫と浮気相手に反省をうながす
- 夫の浮気の抑止力になる
- 自分の気持ちに整理がつけられる
ここでは、慰謝料請求について解説します。
浮気相手に慰謝料を請求する
浮気の証拠を集めたら、浮気相手に以下の方法で慰謝料を請求しましょう。
- 内容証明郵便を送付して支払いを求める
- 直接話し合いで支払いを求める
- 裁判で訴えて支払いを求める
一般的には、内容証明郵便を送付して支払いを求め、相手が応じた場合、直接話し合いをします。
浮気相手が支払いに応じない場合、最終的には裁判で訴えて、支払いを命じてもらうことになります。
しかし、裁判となると時間も費用もかかります。そのため、弁護士に依頼して、代理で交渉を行ってもらい、解決する方法もあります。
浮気相手も、裁判を避けて解決したいと考えることが多いため、慰謝料の支払いに応じる可能性が高まります。
示談書には約束事項と違約金を盛り込む
浮気相手と話し合いを行い、慰謝料の支払いに合意したら、合意内容を示談書にまとめましょう。
示談書を作成することで、合意内容を明確化でき、解決後のトラブルを防止できます。
示談書には以下の内容を盛り込むのが一般的です。
- 浮気を認めて謝罪を表明する
- 慰謝料の支払い義務を認める
- 慰謝料の金額、支払い方法、支払い期限
- 求償権の放棄
- 今後の接触禁止、他言無用、違反した場合の違約金
- 合意内容以外で支払い義務はないとする清算条項
接触禁止や違約金を盛り込むことで、今後夫と浮気相手の接触を防止できます。
また、弁護士に依頼することで、上記内容を盛り込んだ法的に有効な示談書を作成してもらうことが可能です。
求償権は放棄させる
求償権(きゅうしょうけん)とは、支払いを肩代わりした人が、相手に対して肩代わり分を請求できる権利のことです。
浮気の責任は、浮気をした夫と浮気相手にあるため、本来は両者が慰謝料を支払う責任を負います。
そのため、浮気相手は求償権を行使して、夫に対して、自分が負担した慰謝料の半分を請求できます。
浮気で慰謝料を請求する場合は、話し合いの中で、慰謝料の減額の代わりに求償権を放棄させることも可能です。
夫の浮気で離婚するかしないか悩む人からのよくある質問
浮気夫にとって妻はどんな存在なの?
「妻がいるのになぜ浮気をするのだろうか」「浮気する夫にとって自分はどんな存在なの?」と憤る人も多いでしょう。
夫の性格や夫婦の関係によっても、以下のように考え方はそれぞれです。
- 妻や家族は第一で不動の存在だが遊びたい
- 妻を軽く見ているし、浮気をしても許してくれると思っている
- 家族としては大切だが、女性として見られない、母親のような存在
- 一緒にいるのが苦痛なので他の女性に癒されたい、現実逃避している など
実際のところ、夫がどう思っているのかは、その夫にしかわかりません。
ネットの情報は参考になりますが、あくまで参考程度と考え、夫の声に耳を傾けることが大切です。
夫の一度の浮気でも離婚すべき?
法的な観点から言えば、一度の浮気でも離婚原因となり得ますし、慰謝料請求も可能です。
「一度の浮気で離婚をするのは厳しすぎるだろうか」と考える人もいるでしょう。
このようなケースでも、離婚のメリットやデメリット、夫の対応、夫婦関係が修復できるかどうかなどを総合的に判断して慎重に決めることが重要です。
一度は浮気を許したものの、後からやっぱり離婚をしたいと思った場合でも、離婚はできます。
ただし、浮気の慰謝料請求には時効があるため、注意が必要です。
最終的にどのような判断をするのでも、浮気の証拠を集めておくに越したことはないでしょう。
浮気をする夫が離婚しない理由とは?
浮気をされた妻からすると、「浮気するほど浮気相手がいいなら、なぜ離婚しないの?」と理解できない人もいるでしょう。
浮気をする夫が離婚を選択しない理由として、以下のようなものが考えられます。
- ただ遊びたいだけで本気ではない
- 離婚をするのが面倒くさい
- 子どもの親権を取られたくない、子どもと一緒にいたい
- 離婚で財産を失いたくない、子どもの養育費を払いたくない
- 妻と別れるほど妻を嫌いではない
- 世間体が気になるから など
特に日本では、親権は子どもの世話を主に担ってきた妻側になるケースが多いです。
離婚すると財産分与などで財産を失う恐れがあるため、離婚に積極的ではない男性が多いかもしれません。
浮気した夫から離婚したいと言われたけど離婚しないとダメ?
浮気をした夫から離婚を求められても、離婚に応じる必要はありません。
夫婦が話し合いで離婚に合意できない場合、最終的には裁判で離婚が判断されます。
浮気は、法律上離婚が認められる理由(法定離婚事由)の一つですが、この離婚原因を作った有責配偶者側からの離婚請求は、基本的に認められません。
そのため、浮気をした夫がいくら離婚したいと裁判を申し立てても、基本的に離婚は認められません。
離婚をするかどうかを決める権利があるのは、浮気をされた側です。
そのため、あなたが離婚したいと思えば、一番いいタイミングで離婚をすることができます。
まとめ
夫の浮気で離婚するかしないか迷った場合は、離婚のメリットやデメリット、そして浮気発覚後の夫の対応などを見て、総合的に判断することが重要です。
離婚をすべきか否か、離婚をするタイミングはいつなのか、見極めましょう。浮気の証拠を集めておくことで、自分がとれる選択は増えます。
「どのように判断することが自分にとっての幸せなのか」を基準に、じっくり考えましょう。
当事務所では、浮気や慰謝料請求についても豊富な実績があります。
弁護士に相談することで、離婚を決めたり、思いとどまったりする判断材料にもなります。迷っている人は、お気軽にご相談ください。