単身赴任の離婚率は高い?気持ちが離れる原因や会社の責任
- 離婚の原因

単身赴任は、生活のためにやむを得ず選択されることが多いですが、夫婦が別々に生活することで気持ちがすれ違い、最終的に離婚に発展することもあります。
コミュニケーション不足や生活スタイル、さらには価値観のズレ、不倫など、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
単身赴任を乗り越えるには、お互いが関係を維持しようとする努力と工夫が欠かせません。
仮に離婚が避けられない場合には、後悔しないためにも、今一度冷静に考え、しっかりと準備をしておくことが大切です。
この記事では、単身赴任による離婚率や離婚に至る原因、夫婦関係を維持するためのポイント、そして離婚が避けられない場合にすべきことについて解説します。
目次
単身赴任の離婚率は高い?
単身赴任の離婚率を示す公的なデータは存在しないため、正確な数字は分かっていません。しかし、一般的には単身赴任中の離婚率は高いといわれています。
物理的な距離により夫婦の生活がすれ違い、コミュニケーションが不足しがちになることで、お互いの生活リズムや価値観の変化に気づきにくくなるなどの要因が挙げられます。
ただし、正確な統計がないことや、夫婦の性格や関係性によっても事情は異なるため、一概に「単身赴任=離婚」とは言い切れません。
とはいえ、夫婦がお互いに結婚生活を維持する努力をしなければ、離婚に至るリスクは高まります。
単身赴任で離婚に至る原因
配偶者が単身赴任となると、以下のような理由で離婚に至ることがあります。
- 夫婦のコミュニケーションが不足するため
- 不倫しやすい環境となるため
- 家族がいない生活に慣れるため
- 金銭的な負担が大きくなるため
夫婦のコミュニケーションが不足するため
単身赴任の大きな課題として、夫婦のコミュニケーション不足がよく挙げられます。
物理的に離れて暮らすことで、顔を合わせる機会が減り、生活時間帯のズレなどから、精神的な距離まで生まれてしまうことがあります。
さらに、片方が仕事で忙しく連絡が途絶えがちになったり、一方が育児を一人で抱え込んでいたりすると、不満が溜まりやすくなります。
「自分ばかりが連絡している」と感じてしまうこともあるでしょう。
こうした不満を抱えたまま話し合う機会が持てないと、我慢が続き、夫婦関係を修復するきっかけを見失い、離婚に発展してしまうこともあります。
不倫しやすい環境となるため
単身赴任では、配偶者から行動を把握されることが少なく、独身に戻った気持ちで不倫に走るリスクがあります。
一方で、単身赴任をしていない側でも、寂しさや孤独感を紛らわすために、別の異性に心を寄せる可能性があります。
いずれにしても、お互いに気持ちを確認し合う時間が減ってしまうと、心が離れたり疑心暗鬼になったりして、離婚の引き金になることがあります。
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家族がいない生活に慣れるため
単身赴任の生活に慣れると、一人で暮らす自由さや気楽さを感じやすくなることがあります。
家族に合わせて行動する必要がないため、趣味や交友関係を存分に楽しめるようになり、家族と暮らしていた頃より快適だと感じることもあるかもしれません。
また、配偶者がいなくても生活が成り立つと、「パートナーがいなくても何とかなる」「むしろいないほうが気が楽かもしれない」と感じ始めることもあります。
こうした変化をお互いが意識できないまま放置してしまうと、夫婦の気持ちに大きな溝が生まれ、離婚につながることがあります。
金銭的な負担が大きくなるため
会社によっては、単身赴任の家賃補助が出ず、家計を圧迫することがあります。
住まいが別々であるため、二重の家賃や光熱費、交通費などを負担しなければならず、金銭的な負担が大きくなります。
住まいが賃貸であれば引っ越すことも可能ですが、持ち家の場合には、住宅ローンの支払いがのしかかり、金銭的な負担の大きさから離婚を選択するケースもあります。
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単身赴任で夫婦の気持ちが離れるのを防ぐには
単身赴任では物理的な距離や生活を共有できないからこそ、夫婦がお互いに努力して結婚生活を維持することが大切です。
電話やオンラインで連絡をマメにする
単身赴任で離婚に至る原因の一つに、コミュニケーション不足が挙げられます。
離れて暮らしているときほど、こまめな連絡を心がけ、夫婦間のコミュニケーションを意識することが大切です。
忙しい場合でも、以下のような工夫ができます。
- 起きた時や寝る前、隙間時間などに少し連絡する
- オンラインのミーティングツールやビデオ通話などで生活状況を共有する
現在はオンラインツールが発達しているため、通話が難しいときでも、画面をつなげるだけで生活環境を共有できます。
また、連絡の頻度だけでなく、お互いのバランスも重要です。
「自分ばかりが連絡している」と感じると不満につながるため、配偶者が日常の中に自然と存在するような連絡の取り方を意識すると良いでしょう。
休日は負担の少ない方法で一緒に過ごす
単身赴任中でも、休日に家族で過ごす時間をつくることは大切です。
ただし、単身赴任先と自宅が遠距離の場合は、往復の交通費や移動時間が大きな負担になることもあります。
そうした場合には、以下のような負担の少ない方法を取り入れてみましょう。
- 月に一度や数ヶ月に一度、お互いの中間地点で待ち合わせて出かける
- テレビ電話で同じ映画を一緒に観て「リモートデート」する など
ビデオ通話と組み合わせることで、離れていても同じ瞬間を共有することができます。
思い切って単身赴任先で一緒に暮らす
もし仕事や子どもの事情が許せば、思い切って単身赴任先で転職し、一緒に暮らす選択も検討するとよいでしょう。
家族全体での引っ越しは大きな決断ですが、離婚のリスクを減らす手段にもなります。
夫婦で話し合い、生活環境や子育てへの影響などを踏まえたうえで柔軟に判断することが重要です。
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単身赴任による離婚で後悔しないためのポイント
たとえ夫婦が努力を重ねても、離婚が避けられない場合もあります。
そのようなときには、後悔しないよう、以下の点を今一度確認しておくことが大切です。
一時的な感情で判断しない
単身赴任で夫婦が離れて暮らす状況は、ストレスや孤独感が大きく、精神的な負担から「もう離婚しかない」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、離婚は人生に大きな影響を与える重大な決断です。相手への感情や子どものこと、離婚後の生活など、考慮すべき点は多岐にわたります。
相手に対する気持ちがまだ残っていて、十分に話し合いができていないのであれば、まずはしっかりと向き合ってから結論を出しても遅くはありません。
たとえば、相手に話し合う姿勢がある場合や、単に一時的に忙しいだけという状況であれば、離婚を思いとどまり、関係の修復を目指す選択肢もあります。
一方で、相手が関係の維持に全く協力的でなく、話し合いに応じない場合は、離婚を検討することも一つの選択肢です。
離婚後の生活を具体的にイメージする
単身赴任によってすでに別居に近い状態であれば、離婚しても生活スタイル自体は大きく変わらないと感じるかもしれません。
しかし、離婚によって配偶者控除などの税制上の優遇が受けられなくなり、世帯収入の減少や税負担の増加で生活が苦しくなる可能性があります。
特に子どもがいる場合は、養育費や教育費の負担が加わるため、離婚後の経済的な見通しを事前に立てておく必要があります。
また、たとえ夫婦関係が冷え切っていても、子どもへの影響や経済的な事情を踏まえ、あえて単身赴任のまま生活を維持するという選択もあります。
妊娠・出産の予定や仕事・キャリアの見通し、離婚によるメリット・デメリットを総合的に考慮し、自分にとって最善の選択をすることが大切です。
子どもへの影響にも配慮する
単身赴任による離婚では、子どもへの影響についてもしっかり配慮する必要があります。
特に、子どもと長期間離れて暮らしている親は、親権争いで不利になることがあります。
親権の判断では、子どもの幸せを最優先に考え、現在の監護実績や、生活環境の安定性などが重視されるためです。
そのため、親権を希望する場合は、離婚のタイミングを見直したり、あらかじめ弁護士に相談したりすることが大切です。慎重に判断しましょう。
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単身赴任で離婚したら会社の責任は追及できる?
転勤や単身赴任は、多くの場合、会社の都合で命じられるものです。
そのため、「もし単身赴任が原因で離婚した場合、会社に責任を問えるのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、単身赴任が原因で離婚に至ったとしても、会社の責任を追及するのは難しいのが現実です。
というのも、会社が単身赴任を命じたからといって、すべての夫婦が離婚に至るわけではありません。
離婚との因果関係を証明することが難しいため、法的に会社の責任を問うのは難しいと考えられます。
単身赴任で離婚したいと考えたときにすべきこと
単身赴任で離婚が避けられない場合や、離婚をしたいと考えた場合は、以下の準備をしておくことが重要です。
- 離婚の理由や条件を整理する
- 離婚後の生活の準備をする
- 第三者や専門家に相談する
離婚の理由や条件を整理する
単身赴任を理由に離婚を考える際は、あらかじめ離婚の理由や条件を整理しておくことが大切です。
夫婦双方が離婚に合意していれば、協議離婚として手続きを進めることができます。
しかし、相手が離婚に同意しない場合は、最終的に裁判で離婚の可否が判断されることになります。
裁判で離婚が認められるためには、不倫やDVなど、法律で定められた「法定離婚事由」が必要です。
また、これらの離婚原因がある場合には、それを立証できる証拠も求められます。
さらに、離婚前には財産分与、親権、養育費、面会交流といった離婚条件についても、できる限り具体的に取り決めておく必要があります。
法定離婚事由が認められない場合、裁判で離婚が成立しない可能性もあるため、事前に弁護士へ相談しながら進めるのが望ましいでしょう。
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離婚後の生活の準備をする
同様に、離婚する場合は、離婚後の生活の準備を整えておきましょう。実家に戻るか一人暮らしをするか、扶養制度や児童手当の確認など、生活を維持するための情報を集めましょう。
準備が整っていない状態で離婚に踏み切ると、精神的にも経済的にも大きな負担がかかる可能性があります。
第三者や弁護士に相談する
離婚を考えるときは、信頼できる第三者や弁護士に相談することが重要です。
とくに離婚経験のある友人や知人からは、手続きの流れや心構え、後悔しないための注意点など、実体験に基づいたアドバイスが得られることがあります。
また、弁護士に相談することで、法的な視点から適切なアドバイスを受けることができます。
単身赴任を理由とする離婚では、以下のような問題点が生じることもあります。
- 相手が離婚に応じない場合に裁判に発展する可能性がある
- 裁判での離婚では法定離婚事由が必要になる
- 相手が不倫していた場合に、証拠収集が必要になる
- 子どもと離れて暮らしている場合は、親権獲得の対策が必要になる
- 夫婦関係の状況によっては単身赴任なのか別居なのか判断が分かれる など
裁判に発展する可能性がある場合には、それを見越した証拠の準備や対応策も必要になります。
また、裁判を避ける方向での交渉を行うことも視野に入れるべきです。いずれにしても、離婚手続きでは次に起こり得る状況を想定し、早めに準備を進めることが大切です。
そのためにも、できる限り早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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まとめ
単身赴任による離婚率について正確な統計はありませんが、一般的に離婚率が高い傾向にあるといわれています。
物理的な距離によって夫婦間のコミュニケーションが減り、生活を共有できなくなることや、不倫、金銭的な負担などが離婚の原因になると考えられます。
しかし、相手に対する気持ちがまだ残っている状態で離婚に踏み切ると、後悔してしまう可能性もあります。
単身赴任中に大切なのは、夫婦がお互いに結婚生活を維持する努力を示し、関係を続けるための工夫を重ねることです。
また、仮に離婚が避けられない場合でも、以下のような選択肢があります。
- 離婚をする
- 生活の負担軽減のために現状維持する
- 離婚の時期を見計らう など
特に、配偶者から離婚を持ちかけられたとしても、自分に明確な離婚原因がない場合には、無理に応じる必要はありません。
何よりも大切なのは、あなた自身の幸せです。
単身赴任による離婚にはさまざまなハードルがあります。離婚したい場合はもちろん、離婚を避けたい場合でも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。