離婚「知っトク」ブログ

【離婚】【親権】親権を争われたときに子供を取られない(取りたい)ための主張を考えましょう。

2017.09.19
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離婚の際には、必ず子どもの親権者を定めなければなりません。
 
親権者をどちらにするか協議でまとまらない場合は、調停や審判等の家庭裁判所の手続を利用することになります。
では,そもそも親権をとる,とはどういうことか,お互いが親権を主張した場合に,裁判所がどう判断するのか,お話します。
1 親権とは

親権は、子の利益のために、子の監護及び教育をする権利と義務,です。大きく分けて二つを内容とします。身上監護権と財産管理権,です。
(1)身上監護権
ア、監護教育権(民法820条)
親権者は、子を心身ともに健全な成人に育成するのに必要な措置をとる権限を有します(義務でもあります)。
イ、居所指定権(民法821条)
子は親権者が指定した場所を居所に定めなければなりません。
ウ、懲戒権(民法822条)
親権者は、子の利益のために行使される監護及び教育に必要な範囲で子を懲戒することができます。
エ、職業許可権(民法823条)
子は、親権者の許可を得なければ職業を営むことができません。
(2)財産管理権
ア、財産管理権・財産的法律行為代表権(民法824条)
親権者は、子どもの財産の管理権、法律行為の代理権、子どもが自らする法律行為に対する同意権を有します。
イ、管理権の喪失
管理権の行使が困難または不適当であることにより、子の利益を害するとき、親権者は管理権を失います。
たとえば、高校を卒業して自立しようとしている未成年の子どもが、アパートの賃貸借契約や、携帯電話の利用契約を締結しようとした場合に、親権者が合理的な理由もなく同意しないような場合は、管理権喪失が認められる可能性があります。
(3)父母共同親権
親権は、父母が共同して行います(離婚した場合は、一方が親権者となります)。
しかし、父母の一方が、父母の共同名義で、子を代理して法律行為をしたり、子のする法律行為に同意した場合は、その行為が父母の他方の意思に反したときでも有効となります。ただし、法律行為の相手方が一方の同意がないことを法律行為の相手方が知っていたときは、無効となります(民法825条)。
 
2,離婚の際に親権者を定める判断基準
1)父母側の事情
・監護能力、監護意欲
・精神的環境・経済的環境(資産、収入、職業、住居、生活態度)
・居住地
・教育環境
・子に対する愛情
・これまでの監護状況
・親族等からの援助の可能性
(2)子ども側の事情
・子どもの年齢
・子どもの性別
・兄弟姉妹関係
・心身の発育状況
・これまでの環境への適応状況
・環境の変化への適応性
・子どもの意向(15歳以上の子の意見は尊重しましょう,というルールがありますが,実際は12~14歳くらいの子でもある程度意向が反映されているように感じます)
(3)母性優先の原則
昔は、特に乳幼児については母親の存在が不可欠であるとされ、父親が親権をとることは困難でした。
しかし、最近は、子育てに対する父母の役割分担意識に大きな変化があります。そのため、単純に母か父かというのではなく、子どもの主たる養育者はどちらかということが重視されるようになってきています。
したがって、たとえ幼児であっても、父親が主に養育してきたのならば、親権者が父親とされる可能性は十分にあります。ただ,ここでいう「主に養育」というのは,
専業主夫あるいはそれに近いレベルまで求められるように感じます。「平日は早く帰ってきてお風呂に入れている。休みの日は子供の面倒を見ている・・」くらいではなかなか裁判所を説得することが難しいのが現状です。
(4)監護の継続性の原則(現状維持)
子どもを継続して監護してきたという事情は、子どもの心理的安定を図るべきという配慮から、親権者を定める際に重視されます。
しかし、別居して一方配偶者の下にいる子どもを無理矢理にでも連れ去って、その後継続して監護したとしても、このような監護実績は評価しないというのが最近の裁判例の傾向です。
このような監護実績を評価の対象にすると、違法な奪取行為を追認することになってしまい、子の奪い合いを誘発してしまうからです。
もっとも、違法に子の監護を始めた場合でも、親子の関係が良好であれば、現状の監護者を親権者に指定する裁判例もあります(これはどこかまた別の機会に詳しくお話します)
(5)きょうだい不分離の原則
兄弟姉妹は精神面や情緒面のつながりが強く、分離すると子どもの精神面に影響が及ぶおそれがあります。そのため、裁判例では、兄弟姉妹はできる限り分離しないようにしようとする傾向があります。
(6)子の意思の尊重の原則
15歳以上の子どもの場合、必ず子どもの意見を聞かなければなりません(家事事件手続法169条2項)。また、15歳未満であっても、無理のない方法で子どもの意思が明確に表明される限り、その意思は尊重すべきものとされます(実務では、概ね10歳前後から意向を確認します)。
子の意見は、実務上は、家庭裁判所調査官による聴取や、監護親からの書面提出などにより表明されます。
(7)フレンドリー・ペアレント・ルール
子どもが非親権者と交流を持てることは、子どもの健全な成長には重要なことです。
そのため、他方の親を信頼でき、許容できること、すなわち他方の親が面会交流することに理解がある親の方が親権者の適格性があるとされます。
(8)有責配偶者について
有責配偶者(婚姻中に不貞行為をしたなど離婚の原因を作った配偶者)であることは、親権者としてふさわしくないと判断されるのではないかと考える人は多いです。
しかし、子の親権者は子の福祉の観点から判断されるべき事項であり、有責性は離婚において検討されるべき事項とされます。そのため、有責配偶者であることがただちに親権者の不適格性に結びつくことはありません。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)