離婚「知っトク」ブログ

慰謝料を払ってくれない時の対処法とは?

2023.03.10
  • 慰謝料

離婚するときには、慰謝料の請求が問題になることがあります。しかし、離婚時には慰謝料を請求しなかったものの、後に慰謝料を請求したいとお考えになる方も少なくありません。そのような方が、慰謝料を請求する際に気を付けるべきポイントについて、弁護士が解説します。

慰謝料請求を放置するリスク

離婚後に慰謝料を請求したいとお考えの方は、できるかぎり速やかに慰謝料の請求をすることをおすすめします。なぜなら、慰謝料請求を放置すれば、次のようなリスクが発生するからです。

①時効が成立してしまう

離婚慰謝料を請求する権利は、離婚のときから3年間経つと、時効が成立し消滅してしまうのが原則です(不倫を原因とする慰謝料請求で、不倫相手に請求する場合には、不倫相手の名前や住所が特定できてから3年がたつまでは慰謝料を請求する権利は消滅しません)。時効が成立し権利が消滅してしまうと、慰謝料の支払いを求められなくなってしまいますので、時効が成立しないよう早めに請求をすることが大切です。

②証拠がなくなってしまう

離婚慰謝料を請求するためには、慰謝料発生の原因となる事実(不倫やDVなど)を証明する必要があるところ、証拠は時間がたつほど発見しづらくなります。また、確保した証拠も、時間がたてばたつほど紛失してしまったり、破損してしまったりするおそれがあります。

相手が慰謝料を支払わない主な理由

証拠を集め、時効成立前に慰謝料を請求しても、相手が応じないこともよくあります。相手が慰謝料を支払わない理由としては、次のようなものが考えられます。

お金がない

相手が慰謝料を支払わない理由としては、まずお金がないというケースが考えられます。この場合、自分に慰謝料を支払う義務があることは認めていることが多いので、訴訟で慰謝料の支払いを請求するというよりは、話し合いで慰謝料を支払ってもらうように交渉することになるでしょう。

自分の非を認めていない

次に、「自分は慰謝料を支払う義務を負うようなことをしていない」などと主張して、自分は悪くないと主張するケースが考えられます。この場合、そもそも慰謝料を支払うつもりがないため、訴訟により慰謝料の支払いを求めざるを得ない可能性が高いです。

弁護士に「慰謝料を払わなくていい」とアドバイスされている

あなたが慰謝料の請求をしようとしていることに相手が気付いている場合、相手が弁護士に相談をしている可能性があります。その相談の場で、弁護士から「慰謝料は払わなくていい」と言われたため、慰謝料の支払いに応じないというケースも考えられます。ただ、相手は、自分に不利なことは弁護士に伝えなかったり、事実を矮小化して弁護士に伝えたりすることが多いため、弁護士が、慰謝料の支払義務について判断するのに必要な情報を得られないまま、相手にアドバイスしていることもあります。相手から、「弁護士に「慰謝料を払わなくていい」とアドバイスされている」と言われても、慰謝料の請求をあきらめる必要はなく、自分の非を認めないケースと同様に、最終的には訴訟を起こすことが考えられます。

慰謝料を払ってもらえない時の対処方法

慰謝料を払ってもらえない場合、次のような手段をとることが考えられます。

公正証書を作成する

相手が慰謝料の支払義務を認め、口では慰謝料を支払うと言っているが、実際には支払いがないという状況の場合、公正証書を作成することが考えられます。公正証書は、公証役場という公的な場所で、公証人という人と作成する書面であり、当事者間のみで合意書を作成するよりも強い証拠力を持ちます。また、慰謝料のようなお金の支払いの約束を公正証書に記載する場合、その公正証書に「相手が約束を守らない場合には、相手は裁判などをせずに差押えなどの強制執行をされることを受け入れる」という内容の条項(執行受諾文言といいます)が入っていれば、仮に相手が公正証書を作成した後に態度を変えて慰謝料の支払いをしなかったとしても、後述の強制執行により、強制的に慰謝料の回収ができます。

内容証明郵便を発送する(催告)

相手が慰謝料の支払義務を認めず、慰謝料を支払わないという状況の場合、弁護士から内容証明郵便を発送することが考えられます。内容証明郵便とは、どのような内容が書かれた書面を送ったのかを証明してもらえるもので、相手に対し、慰謝料の請求をしたことを明確にすることができます。また、当事者から口頭などで請求をされる場合と比べ、弁護士から整った形式の書面が送られてくることによって、相手に心理的なプレッシャーを与えることができ、慰謝料の支払いに応じさせることが期待できます。

簡易裁判所に支払督促の申立てをする

内容証明を送っても相手が慰謝料を支払わなかったり、内容証明を送っても相手がこれを無視する可能性が高いと考えられたりする場合、簡易裁判所に支払督促の申立てすることが考えられます。支払督促は、簡易裁判所の書記官に対し申立書を提出することで相手に発送することができ、相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、裁判所による仮執行宣言を経て強制的に慰謝料の回収をすることができます。訴訟を提起するよりも簡単、迅速かつ安価に利用することができる一方、相手から異議がされてしまうと、通常の訴訟に移行してしまうというデメリットもあります。

家庭裁判所に調停の申立てをする

家庭裁判所に対し、調停を申し立てるという方法もあります。調停は、裁判所で調停委員という人を介して、自分の主張と相手の主張をやり取りすることで、合意による事件の解決を目指す手続きです。調停は数回行うことが多く、その中で合意することができれば、調停調書という書面に合意内容を記載して、調停を成立させます。調停調書があれば、後述の強制執行により、相手が慰謝料の支払いを拒んでも強制的に慰謝料の回収ができます。ただ、あくまで合意に達しなければ調停は成立しませんので、相手が絶対に慰謝料を支払わないという態度でいる場合、調停の手続きは無駄になってしまいます。

家庭裁判所に履行勧告の申出・履行命令の申立てをする

調停で慰謝料の支払いが合意された後に、相手が慰謝料の支払いを拒否するようになった場合には、家庭裁判所に履行勧告を申し出ることができます。また、家庭裁判所に対し履行命令を申し立てることもできます。履行勧告も履行命令も、相手に対し任意の履行を促すにとどまり、強制的に慰謝料の回収をすることまではできませんが、裁判所からの連絡であるため、相手にプレッシャーを与えることができ、慰謝料の支払いに応じさせる効果が期待できます。なお、履行命令を受けても不倫相手が慰謝料を支払わない場合、家庭裁判所が相手を10万円以下の過料に処すことができるので、よりプレッシャーを与えることができます。

裁判所に訴訟を提起する

上記に挙げた手段を使っても、相手が慰謝料を支払わない場合には、裁判所に訴訟を提起するほかありません。訴訟は、まず自分が訴状を提出することから始まり、訴状提出後に裁判所と調整の上、裁判所に行き自分の主張を述べる日(口頭弁論といいます)を決め、実際に裁判所に行くことになります。その後は、裁判所を介して相手とやり取りをすることになります。慰謝料を請求する訴訟は、半年から1年ほどかかることが多く、自分だけで手続きを進める場合、法律の知識や訴訟手続のやり方を自分で調べなければならず、裁判所に行くなど手続に参加する時間をとられてしますが、判決が確定した場合には、後述の強制執行により、相手が慰謝料の支払いを拒んでも強制的に慰謝料の回収ができます。

地方裁判所に強制執行の申立てをする

相手の慰謝料支払義務が確定したにもかかわらず、相手が慰謝料の支払いをしない場合には、地方裁判所に強制執行の申立てをすることができます。預貯金や給料などを差し押さえるケースが多いです。相手の財産を差し押さえてお金に換え、そのお金を受け取ることで最終的に慰謝料を支払ってもらうことになります。

慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

慰謝料請求は自分ですることも可能ですが、弁護士に依頼することで、次のようなメリットを得ることができます。

①弁護士の専門的な知識を利用できる

慰謝料を請求するためには、根拠となる事実や証拠が必要です。また、事実や証拠にも、重要度に差があり、吟味が必要です。さらに、事実を主張したり、証拠を提出したりするタイミングや、交渉の仕方、今後の見通しなども重要になります。このような情報を自分で調べるのには手間がかかりますし、そもそも情報が手に入らないこともあり得ます。

弁護士に依頼すれば、自分に代わって弁護士が事件解決に当たりますので、自分で情報を集めたり、勉強したりする必要がなくなりますし、自分で調べることが難しい知識や経験といったものも利用することができます。

②相手や裁判所への対応を任せられる

相手との交渉や、裁判所とのやり取りは、その回数が多く、時間もかかるものです。特に、裁判所とのやり取りには一定の「お作法」のようなものがあり、これに従いながら書面を作成したり、打ち合わせをしたりすることには、相当な時間がかかる上、スムーズなやり取りも難しいといえます。

弁護士に依頼すれば、相手との交渉や裁判所への対応に慣れた弁護士が、これらの作業を引き受けるので、事件の解決がスムーズに進む上、自分の時間的負担を軽減できます。

③精神的な負担を軽減できる

離婚慰謝料請求の場合、相手に傷つけられたこと自体に相当なショックを受けると考えられます。その上、相手とやり取りをすれば、つらい記憶が蘇り続け、精神的負担は大きくなります。また、自分でやり取りをする場合、どうしても感情的になってしまい、冷静なやり取りが難しくなることが予想されます。

弁護士に依頼すれば、相手とのやり取りのほぼすべてを弁護士に任せることができるので、このようなストレスを避けることができます。第三者である弁護士が、冷静に自分の利益を追求することで、事件の解決につながります。

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