離婚「知っトク」ブログ

離婚調停の申し立てはどこの裁判所?申し立ての流れや必要書類は?

2025.01.24
  • 離婚調停
ポイント

パートナーと離婚の話し合いをしても離婚が成立しない場合や、そもそも直接話し合いをしたくない場合に利用するのが離婚調停です。

「離婚調停という言葉を聞いたことはあるけど…」実際にどこの裁判所にどのように申し立てるのか、裁判とどう違うのかわからず不安な人も多いでしょう。

この記事では、離婚調停の申し立てについて以下の点をわかりやすく解説します。

離婚調停とは

離婚調停(家事調停とも)とは、夫婦の問題について家庭裁判所で話し合いを行う手続きのことです。

離婚調停には、男女二人の調停委員と裁判官、書記官、家庭裁判所調査官が同席することがありますが、基本的には調停委員が夫婦の主張を聞きます。

離婚調停では、夫婦はそれぞれ別の待合室で待機し、交代で調停室に呼ばれるため、基本的に相手と会わずに調停が進みます

離婚条件など離婚全般について話し合いますが、離婚調停以外にも以下のような調停があります。

  1. 婚姻費用分担請求調停
  2. 財産分与請求調停
  3. 養育費請求(減額)調停
  4. 面会交流調停
  5. 年金分割調停

調停によって、離婚前なのか、離婚調停と同時なのか、離婚後なのか異なります。調停と裁判でどう違うのかわからないという人も多いでしょう。

離婚調停 夫婦が調停委員を通じて話し合いを行う場
離婚裁判 裁判官がそれぞれ提示した証拠を精査して、離婚の成否を判断する場で、離婚調停よりも争いの意味合いが強い

離婚できない場合、いきなり裁判で争うのだと思っている人もいるかもしれません。

しかし、離婚裁判は離婚調停が不成立となった後にしか行えません。家庭内のトラブルは、いきなり裁判で争うよりも、まずは家庭内の話し合いで解決するのが望ましいという考え方があるためです(調停前置主義)。

なお、離婚調停は相手の同意がなくても、相手と同居中でも申し立てが可能です。相手が離婚に応じない場合や、直接話し合いができない場合は、離婚調停を申し立てましょう。

【関連記事】離婚調停とは|離婚調停の流れや申立方法や期間をわかりやすく解説

離婚調停の申し立て前の確認事項

離婚調停をどこの裁判所に申し立てるのか、費用はいくらかかるのか気になる人も多いでしょう。ここでは、離婚調停の申し立て先や費用について解説します。

離婚調停の申し立て先

離婚調停は、通常、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

インターネットで「相手の住む地域 裁判所 管轄」などと検索すると該当する家庭裁判所を見つけられます。

相手と同居している場合は、自分の住所地を管轄する家庭裁判所となります。お互いが遠方に別居している場合は、以下の方法が考えられます。

  • 話し合いで調停を行う家庭裁判所を決めて申し立てを行う
  • 弁護士に依頼して電話会議やテレビ会議の利用を認めてもらう

双方が遠方に住んでいる場合、家庭裁判所の判断で電話会議やテレビ会議を利用して調停が行われることもあります(家事事件手続法第54条)。

ただし、電話会議やテレビ会議は本人確認が難しいため、弁護士をつけなければ利用が認められにくいです。

離婚調停にかかる費用

離婚調停にかかる費用は以下のとおりです。

申し立て費用 収入印紙代:1,200円

郵便切手代:1,500円程度

夫婦の全部事項証明書(戸籍謄本)の取得費用:450円

その他実費 必要書類の取得費用

調停調書の交付手数料:1,000円程度

離婚調停に出席する際の交通費

弁護士費用(依頼する場合) 弁護士費用の相場:60~80万円程度

弁護士の日当:3~5万円/1日

※これらは相場であり法律事務所によって異なる

離婚調停の申し立てに必要な費用は、交通費や弁護士費用を除けば約4,000円ほどです。

申し立てに必要な収入印紙は、切手のようなもので、コンビニや郵便局などで購入できます。購入したら申立書に貼り、提出しましょう。

郵送切手代とは、家庭裁判所からの書類をお互いに送る際に必要なもので、家庭裁判所から自宅までの距離などによっても費用は異なります。

【関連記事】
離婚にかかる弁護士費用はいくら?相場や内訳・安く抑えるポイント
離婚調停にかかる費用|弁護士費用の相場・費用は誰が支払う?

離婚調停の申し立ての流れ

離婚調停の申し立てから申し立て後の流れは以下のとおりです。

  1. 離婚調停の申立書を家庭裁判所に提出する
  2. 裁判所から呼出状が届く
  3. 調停期日に調停に出席する
  4. 調停成立か不成立で終了する

離婚調停の申立書を家庭裁判所に提出する

離婚調停の申し立て先を確認したら、必要書類の作成や資料を取り寄せ、申立書を家庭裁判所に提出しましょう。離婚調停の申立書は、直接家庭裁判所の窓口へ行き提出するか、郵送で提出する方法があります。

必要書類については後述します。

裁判所から呼出状が届く|申し立てから約2週間

申し立てから約2週間後に、裁判所から申立人と相手に「呼出状」が届きます。呼出状には、調停の日時や調停が行われる家庭裁判所の情報が記載されていますので、調停期日に調停に出席します。

調停期日に調停に出席する|申し立てから約1ヶ月後

離婚調停の申し立てから約1ヶ月後に最初の離婚調停が行われます。

当日は夫婦別々の待合室で待機し、それぞれ交代で調停室に呼ばれて調停委員と話をします。夫婦それぞれ30分ずつ話し合いを行い、これを2回繰り返すため、所要時間はおおよそ2時間程度です。

申立人は最初の調停で以下の内容を聞かれます。

  • 離婚を希望する理由や調停を申し立てた理由
  • 調停で離婚できない場合の対応
  • 離婚条件の希望
  • 今の住居や仕事、健康状態など

要点を整理し、簡潔に伝えることが重要です。

調停委員は中立な立場で話を聞き、サポートしてくれますので、難しい言葉が飛び交い、何もわからないまま進むという不安はありません。

1度の調停で離婚が成立しないことの方が多いため、次回の調停期日を決めて終了となります。

【関連記事】離婚調停で勝つには?女性が有利?知っておくべきポイントや注意点

調停成立か不成立で終了する

離婚調停はおおよそ1ヶ月から1ヶ月半に1回の頻度で実施され、何度か話し合いが行われます。離婚に合意できれば、調停は成立します。

離婚が成立する際は、暴力などの特別な事情がない限り、調停委員だけでなく裁判官、書記官、申立人、相手が同席し、調停条項の確認が行われます。

合意内容は、最終的に調停調書にまとめられ、最後に離婚届と一緒に提出します。

一方、話し合いが進まない場合や相手が調停を欠席する場合は、離婚調停が不成立として終了することもあります。離婚調停にかかる平均審理期間は以下のとおりです。

審理期間 調停成立 調停不成立
1ヶ月以内 481件 76件
3ヶ月以内 5869件 1830件
6ヶ月以内 8857件 3748件
1年以内 8231件 3212件
2年以内 3017件 1269件
2年を超える 281件 140件

2023年の司法統計(第16表)によると、離婚調停の平均審理期間は半年から1年以内が最多でした。

離婚届を提出する|調停終了から10日以内

離婚調停が成立した後は、調停成立から10日以内に調停調書(謄本)と離婚届を提出することで、正式に離婚が成立します。

調停調書は郵送の場合、調停から1週間程度で自宅に届きます。裁判所で直接受け取る来庁申請を行えば、調停成立から2~3日程度で発行されます。

離婚調停に必要な書類と入手方法

離婚調停に必要な書類と入手方法は以下のとおりです。

なお、横浜家庭裁判所の場合は、裁判所のホームページから書類をダウンロード可能です。それぞれ詳しく解説します。

離婚調停の申立書3通

離婚調停の申立書は、裁判所提出用、相手に送られるもの、自分の控えとして3通用意します。

申立書はここからダウンロードできます。印刷してボールペンで手書きで作成するか、PCで入力して印刷する方法でも構いません。

記載例も以下のように裁判所で公開されていますので、参考に記載しましょう。

離婚調停申立書の記入例

離婚調停申立書の記入例

引用:記入例(夫婦関係調整(離婚)) – 裁判所

離婚調停の申立書には、以下の注意点があります。

  • 離婚調停の申立書の写しは相手に送付される
  • 離婚調停申立書は離婚裁判に発展した際に証拠となる
  • 書き間違いをした場合は、二重線で消して訂正印を押すか、修正液で修正したものを印刷して記名と捺印だけして提出する

特に、相手から暴力を受けている場合や、相手に住所を知られたくない場合は、同居していた時の住所などを記載するのでも問題ありません。

また、家庭裁判所に非開示希望を申し出ることも可能ですので、不安な場合は家庭裁判所に確認してください。

事情説明書1通

事情説明書とは、離婚調停を申し立てる理由を裁判所に説明するための書面で、収入や財産状況、夫婦仲が悪化した経緯を記入します。

相手には送付されませんが、相手が申請すれば閲覧やコピーが許可されることがあります。

離婚調停事情説明書

この書面も各裁判所のホームページからダウンロードが可能です。

子についての事情説明書1通

夫婦に未成年の子どもがいる場合に提出する書面です。今現在子どもの面倒を見ているのは誰かや、子どもについて心配なことなどを裁判所に説明します。

事情説明書同様に、相手に送付されませんが閲覧等が可能です。

離婚調停子の事情説明書

各裁判所のホームページからダウンロードできます。

連絡先などの届出書1通

連絡先などの届出書は、裁判所から申立人宛に連絡できる連絡先を伝える書面です。書類の郵送先や電話番号などを記載します。各裁判所からダウンロードが可能です。

離婚調停連絡等の届出書

なお、弁護士に依頼している場合は、弁護士が申し立てや連絡窓口となるため不要です。

進行に関する照会回答書1通

進行に関する照会回答書は、調停を行うにあたり裁判所が把握しておくべき事情を伝える書面です。暴力に関する内容や、希望の日程、要望などを記載します。

離婚調停進行に関する照会回答書

この書面も各裁判所のホームページでダウンロード可能です。

夫婦の戸籍謄本

離婚調停の申し立てには、3ヶ月以内に発行された夫婦の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を添える必要があります。夫婦の戸籍謄本は以下の方法で取得できます。

  • 本籍地の役所に行って窓口で取得する
  • 本籍地の役所から郵送してもらう
  • マイナンバーカードを利用してコンビニで取得する

本籍地がわからない場合は、住民票を取得すれば記載されています。

年金分割のための情報通知書

離婚調停と一緒に年金分割を行う場合は、年金分割のための情報通知書を提出する必要があります。

情報通知書は、①年金分割のための情報提供通知書、②国民年金手帳または基礎年金番号通知書、③戸籍謄本を住んでいる地域を管轄とする年金事務所に提出して発行してもらいます。

年金分割のための情報提供通知書」は内容が複雑なため、年金事務所の窓口で相談しながら作成することをおすすめします。

なお、年金分割のための情報通知書は相手に知られることなく発行してもらえます。

受け取りまでの時間は申請からおおよそ1週間ですが、長い場合は3~4週間かかることもあるため、早めに手続きしておきましょう。

【関連記事】年金分割とは?対象となる年金や年金分割の種類

その他

財産分与や養育費、婚姻費用の請求では、収入や財産がわかる以下のような資料が必要です。

収入がわかる資料 源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書など
財産がわかる資料 預金通帳の写し、不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書など

こうした資料のコピーを裁判所に提出しましょう。

離婚調停の申し立てについてよくある質問

離婚調停は申し立てからどれくらいで終わる?

離婚調停は申し立てからどの程度の期間で終わるかは、各調停によって異なります。申し立てから約1ヶ月ほどで最初の調停が行われ、平均審理期間はおおよそ6ヶ月から1年以内です。

離婚調停中にやってはいけないことは?

離婚調停中にやってはいけないこととして、以下の行為があります。

  • 異性との交際
  • 調停期日に遅刻や無断欠席
  • 調停中に一方的な別居
  • 子どもの連れ去り
  • 相手に直接連絡する
  • 相手に嫌がらせなどの行為
  • 夫婦の財産を勝手に処分する

夫婦が同居している場合、家庭内でも口論となる可能性があります。その際は、弁護士に相談し、相手の合意を得て別居を検討しましょう。

離婚調停中にやってはいけないことについては、詳しく解説している記事も参考にしてみてください。

【関連記事】離婚調停中にやってはいけないことや調停中の過ごし方・聞かれること

離婚調停は別居しないとできない?

離婚調停は別居しなくても申し立てが可能ですが、同居しながら進めると、以下のようなデメリットがあります。

  • 自宅で顔を会わせる度に言い争いになり、離婚条件の話が進まなくなる
  • 相手がDVやモラハラをする場合、継続的に被害を受けることになる
  • 問題なく夫婦関係が継続していると、裁判に発展した際に「夫婦関係が破綻していない」と判断され、離婚が認められにくくなる

ただし、離婚調停前や調停中に別居をする場合でも、その経緯や別居中の過ごし方によっては不利になる可能性があります。

例えば、勝手に別居を開始したり、子どもを無理やり連れて行ったり、婚姻費用を払わなかったりすることは避けましょう。

離婚調停前や別居前に弁護士に相談して進めるのが安心です。

【関連記事】離婚調停中に別居できる?注意点や調停不成立後の別居について

まとめ

離婚調停の申し立ては、自分の力でもできますし、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。

ただし、自分で対応しても離婚調停が成立せず、そのまま裁判に至るケースがあるため、離婚まで時間がかかり、精神的に疲弊することがあります。

特に相手がDVやモラハラを行っている場合や、自分の考えを上手く主張できない場合は、弁護士を味方につけて進める方が安心かつスムーズです。

「弁護士に依頼すべきかどうか」「離婚調停で離婚できるか?」と疑問や不安を感じた方は、弁護士に相談して、今後の見通しや依頼の必要性について意見を聞いてみましょう。

当事務所でも、離婚調停に豊富な実績がありますので、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)