離婚調停が不成立になったその後の離婚方法は別居・審判移行?
- 離婚調停

夫婦の話し合いで離婚に合意できない場合、離婚調停を利用し、調停委員を介して話し合いを進めます。
しかし、離婚調停を申し立てても、必ずしも離婚が成立するわけではありません。双方が離婚に合意できない場合などは、離婚調停が不成立となります。
離婚調停が不成立になった場合、別の方法で離婚を目指すことになります。
この記事では、離婚調停の不成立や、不成立後の離婚方法、離婚裁判の費用や期間などについて解説します。
目次
離婚調停が不成立になる割合
離婚調停が不成立になる割合はどのくらいあるのでしょうか。司法統計によると、2022年に行われた離婚調停が成立・不成立となった割合は以下のとおりです。
件数 | 割合 | |
離婚調停の総数 | 56,844件 | —- |
調停成立 | 26,736件 | 47% |
調停不成立 | 10,275件 | 18.1% |
調停をしない | 403件 | 0.7% |
調停に代わる審判 | 6,017件 | 1.6% |
取り下げ | 10,192件 | 17.9% |
当然終了 | 151件 | 0.3% |
その他 | 3,070件 | 5.4% |
参考:第16表婚姻関係事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所
離婚調停を申し立てた半数程度は調停が成立しています。一方、調停が不成立となった割合は18%、その他調停の取り下げや終了により調停が成立していません。
以下では、離婚調停が不成立となる具体的なケースや理由について解説します。
離婚調停が不成立になるケース
離婚調停が不成立になる理由には、以下のケースがあります。
- 裁判官が不成立だと判断した
- 調停を行わないことによる終了
- 申立人による取り下げ
- 当然終了
それぞれについて詳しく解説します。
裁判官が不成立だと判断した
離婚調停が不成立となるケースの一つに、裁判官が離婚調停の不成立を判断する場合があります。
裁判官が離婚調停の不成立を判断する場合は、以下のケースがあります。
- 片方が離婚調停に一度も出席しない
- 片方が離婚を拒否していて譲らない
- 離婚条件について双方の主張に大きな隔たりがあり、これ以上調整のしようがない
- 相手が離婚原因を認めない
このように、片方が離婚調停に出席しない場合や、合意の見込みがない場合には、裁判官の判断で離婚調停は不成立となります。
前述の司法統計では、約18%のケースで離婚調停が不成立と判断されています。
調停を行わないことによる終了
離婚調停が申し立てられたものの、離婚調停を行うのが適当ではないと判断された場合は、調停委員や裁判官の判断により、調停を行わずに終了することがあります。
例えば、以下のようなケースが該当します。
- 申立人が調停に出席しない
- 調停不成立後にすぐ再度調停を申し立てた
- 不当に離婚調停を申し立てた など
前述の統計によると、調停を行わずに終了した割合は0.7%とわずかですが、このようなケースも存在します。
調停に代わる審判
離婚調停が成立しない場合、調停に代わる審判が行われることがあります。
審判とは、わずかな意見の食い違いで離婚調停が成立しない場合に、家庭裁判所の職権で離婚を成立させる手続きです。
以下のようなケースでは、裁判官が判断して審判手続きを行います。
- 健康上の理由などで当事者の片方が出席できずに調停が成立しないとき
- 当事者双方が離婚には合意できているものの、細かな意見の相違で離婚が成立しないとき
- 心情的な対立で離婚に合意しないとき
- 早急に離婚を判断しなければ、未成年の子どもに不利益が生じる恐れがあるとき など
裁判官が必要と判断した場合、審判として解決案が提示されます。
審判による解決案が提示されると、裁判を行う手間が省けます。ただし、どちらかが異議申し立てを行うと、審判の効力は失われます。
前述の統計では、調停に代わる審判が行われた割合は1.6%でした。
申立人による取り下げ
申立人の都合で調停を取り下げた場合も、離婚調停は終了します。申立人が離婚調停を取り下げる理由としては、以下のケースが考えられます。
- これ以上話し合っても離婚できないと判断した
- 離婚する気持ちが変わった など
また、相手が離婚調停に欠席し続ける場合、裁判官から取り下げを提案されることもあります。
なお、申立人が調停を取り下げたい場合、相手の同意は不要です。
ただし、離婚調停を経ずにすぐに離婚裁判を起こすことはできません。
これは、家庭内の争いをいきなり裁判で解決するのではなく、まず当事者同士で話し合うことが望ましいとする「調停前置主義」があるためです。
前述の統計では、申立人が取り下げて調停が終了した割合は約17%でした。
当然終了
離婚調停を申し立てても、夫婦の片方が亡くなり、婚姻関係が解消した場合などは、離婚調停が終了します。
当然終了という形で調停が終了した割合は0.3%でした。
離婚調停不成立になったその後の選択肢
離婚調停が不成立になった場合、離婚を積極的に求めるのであれば、離婚裁判を起こすことになります。
しかし、離婚調停が不成立になったからといって、必ずしも離婚裁判をしなければならないわけではありません。
離婚調停が不成立になった後も、離婚裁判を含め、さまざまな方法で離婚を求めることが可能です。
以下では、離婚調停が不成立になった場合の選択肢を紹介します。
再度協議離婚を目指す
離婚調停が不成立に終わった場合、再度話し合いで離婚を目指す方法があります。
離婚調停で、お互いに譲れない部分が明確になり、その後の協議で離婚が成立することもあります。
すぐに話し合うのが難しい場合は、少し時間を置いてから再度交渉することも検討できます。
話し合いを再開する際は、以下の点を意識して交渉するのがポイントです。
- 相手が離婚に応じない場合:離婚原因の証拠を提示する
- 相手が離婚原因を認めない場合:証拠の提示と裁判となった場合の負担などデメリットを伝える
- 親権でもめている場合:親権以外の養育費や面会交流の条件で譲歩する
- 慰謝料や財産分与でもめている場合:別の金銭的な条件で譲歩する など
また、裁判になると費用や労力の負担が増すため、話し合いの段階で弁護士に依頼するのも一つの選択肢です。
【関連記事】協議離婚とは|協議離婚の流れや弁護士費用・デメリットを解説
再度離婚調停を申し立てる
離婚調停が不成立になった後、一定期間を経て再度調停を申し立てることは可能です。
ただし、不成立直後に申し立てても、調停委員の判断で調停が行われないことや、同じ結果に終わる可能性があります。
再度の調停を申し立てる際は、例えば子どもの独立や相手の就職によって金銭的な不安が解消されたタイミングなど、状況の変化が生じた後が望ましいでしょう。
その間、別居を続けながら話し合いを進め、離婚の合意を目指す方法も考えられます。
離婚裁判を起こす
早期に離婚したい場合は、離婚裁判を起こすことになります。
離婚裁判では話し合いは不要ですが、法律上離婚が認められる事由(法定離婚事由)を立証する必要があります。
例えば、不倫、DV、モラハラなどが法定離婚事由に該当します。
離婚裁判では、法定離婚事由が認められれば、相手が拒否しても強制的に離婚が成立するメリットがあります。
一方で、手続きが複雑なため弁護士に依頼する必要があり、費用や時間がかかる点がデメリットです。
また、離婚調停不成立から2年以上経過すると、再度調停を行うよううながされることもあります。
すぐに裁判をすべきかどうかは、法定離婚事由の有無、裁判の見通し、再婚や出産といった今後の人生設計によって異なります。
弁護士に依頼するかどうかに関わらず、一度相談して、良い方法がないかアドバイスをもらうのがおすすめです。
一定期間別居する
離婚調停が不成立となり、協議が難しい場合や法定離婚事由がない場合は、一定期間別居する方法があります。
特に法定離婚事由がない場合は、3~5年ほどの別居によって離婚が認められることがあります。
これは、一定期間の別居が婚姻関係の破綻とされ、法定離婚事由の一つである「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があるためです。
また、収入が多い側には、少ない側に対して生活費として「婚姻費用」を支払う義務があります。
そのため、婚姻費用の負担が大きい側が離婚に応じるケースもあります。
ただし、別居の方法によっては「正当な理由のない別居」とみなされ、夫婦の同居義務(民法第752条)に違反した有責配偶者と判断される可能性があります。
その場合、離婚が認められなくなる恐れがあるため注意が必要です。
別居を検討する際は、離婚時に不利にならないよう、弁護士に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
【関連記事】モラハラ夫とあっさり離婚する方法|モラハラ夫は変わるのか?
離婚調停不成立後に裁判する場合の費用と期間
離婚調停が不成立となり、裁判をする場合、費用と期間はどのくらいかかるのでしょうか。
ここでは、離婚裁判にかかる費用と期間について解説します。
離婚裁判にかかる費用
離婚裁判にかかる費用は、裁判で争う内容によって異なります。
内容 | 費用 |
①離婚成立・親権者を求める場合 | 手数料1万3,000円 |
②離婚+財産分与、年金分割を求める場合 | それぞれ追加で1,200円 |
③離婚+養育費を取り決める場合 | 子ども一人につき1,200円 |
④離婚+慰謝料を求める場合 | 1万3,000円と慰謝料請求に対する収入印紙代を比較して高い方の金額 |
⑤書類郵送の切手代 | おおよそ5,000~6,000円
※各裁判所による |
⑥戸籍謄本取得費用 | 450円 |
④の離婚と慰謝料を請求する場合は、1万3,000円に加えて慰謝料請求の手数料が必要です。
手数料は請求額によって異なり、裁判所の手数料額早見表に記載されています。
例えば、慰謝料200万円を請求する場合、手数料は1万5,000円となるため、1万3,000円よりも高額な1万5,000円を支払うことになります。
また、弁護士に依頼した場合の弁護士費用の相場は以下のとおりです。
内訳 | 費用 | |
相談料 | 30分5,000円
※初回無料も多い |
|
着手金 | 裁判から依頼する場合 | 30~60万円 |
調停から継続して依頼する場合 | 5~20万円程度
あるいは着手金を割引 |
|
報酬金 | 離婚成立に対して | 30~60万円 |
慰謝料の獲得など経済的利益があった場合 | 獲得金額に対して10~20% | |
日当 | 裁判に出席した場合 | 3~5万円/1日 |
実費 | 交通費や書面の印刷代など |
上記はあくまでも目安であり、各法律事務所の料金体系によっても異なります。
なお、協議離婚の場合の弁護士費用は40~60万円程度が相場です。離婚調停が不成立になった際、協議離婚を弁護士に依頼するのも一つの選択肢となります。
具体的な費用については、弁護士に直接確認しましょう。
【関連記事】離婚にかかる弁護士費用はいくら?相場や内訳・安く抑えるポイント
離婚裁判にかかる期間
離婚裁判は、家庭裁判所に訴状を提出してから、おおよそ1ヶ月~1ヶ月半に1回のペースで審理が行われます。
裁判所の2023年「人事訴訟事件の概況」によると、離婚裁判の平均審理期間は15.3ヶ月と1年以上に及びます。
夫婦双方が譲歩して和解すれば比較的早く終了しますが、裁判官の判決まで争った場合は平均で19.9ヶ月、つまり1年半以上かかることがあります。
離婚調停の不成立を回避する方法
離婚調停が不成立となると、離婚成立まで時間がかかります。
場合によっては離婚裁判を起こす必要が生じたり、収入が多い側にとって婚姻費用の負担が大きくなったりすることもあります。
こうした事態に発展しないよう、ここでは、離婚調停の不成立を回避する方法を解説します。
離婚条件を整理して優先順位をつける
離婚調停の不成立を回避するためには、離婚条件を整理し、優先順位をつけることが重要です。
離婚では、お互いが希望する条件を一切譲らなければ、合意に至らず、争いが長引いてしまいます。
自分の希望どおりに離婚できることは少ないため、最低限譲れない条件を決め、それ以外は譲歩することで交渉が進む可能性があります。
適切な主張をして調停委員を味方につける
離婚調停では、適切な主張を行い、調停委員を味方につけることも大切です。
調停委員は中立な立場ですが、主張に納得すれば相手を説得してくれる可能性があります。
主張する際は、証拠を提示して事実を示し、冷静に希望を伝えることが重要です。
相手に離婚原因がある場合は、その証拠を提示します。金銭的な面で譲れない場合は、その根拠となる理由や資料を示すことが効果的です。
【関連記事】離婚調停で勝つには?女性が有利?知っておくべきポイントや注意点
今すぐ弁護士に相談する
お互いが条件を譲らず、調停が難航している場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、現状を踏まえた上で、希望がどの程度認められそうか、難しい場合にどのような方向で進めるべきか、落としどころはどこかなど、スムーズに離婚を進めるためのアドバイスを受けられます。
また、弁護士に依頼すれば、調停に同席してもらい、自分の主張についてその場でフォローしてもらうことも可能です。
裁判に進むと費用が高額になるため、早い段階で弁護士に依頼した方が、結果的に費用を抑えられる可能性があります。
【関連記事】離婚調停で弁護士は必要か|弁護士なしで調停を行う人の割合
離婚調停の不成立についてよくある質問
調停の不成立後に別居すれば離婚できる?
離婚調停が不成立となった後、裁判で離婚を求めても、法定離婚事由がなければ認められません。
そのため、婚姻関係の破綻を理由に離婚を成立させる手段として、調停不成立後に別居するのも一つの選択肢です。
また、一定期間の別居を経ることで、双方が冷静になり、裁判をせずに離婚に合意する可能性もあります。
一方で、調停不成立後から裁判までの期間が空くと、再度調停からやり直すことになるケースもあります。
弁護士に相談して、今の状況を踏まえて判断するのがおすすめです。
離婚調停の不成立後に復縁することはできる?
相手が強く離婚を希望し、調停にまで発展した場合、復縁は極めて困難と考えられます。
しかし、2023年の司法統計によると、申立人が離婚調停を取り下げ、円満同居に至ったケースは0.9%でした。
復縁の可能性は低いものの、ゼロではないといえます。
離婚調停が不成立になったら裁判をしなければならない?
離婚調停が不成立になったからといって、必ずしも裁判をしなければならないわけではありません。家庭裁判所から裁判を強制されることもありません。
離婚調停の不成立後は、再度協議を行う、一定期間別居するなどの方法もあります。
裁判で離婚を求める方法もありますが、時間や費用がかかるため、弁護士に相談し、総合的に判断することをおすすめします。
調停不成立や裁判をする場合はいつ弁護士に相談すべき?
弁護士への相談は、離婚調停を開始する前、調停中、離婚が難航している場合、裁判の前、どのタイミングでも可能です。
ただし、調停不成立後に裁判を視野に入れる場合、法定離婚事由を証明する証拠を集めるなどの事前準備が重要になります。
また、弁護士が早期に介入し交渉を行うことで、法的措置を恐れた相手が離婚に応じるケースもあります。
離婚条件がどの程度通りそうなのか、その見通しによっても、今後の戦略は異なるため、スムーズに離婚を進めたい場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
【関連記事】無料で離婚相談ができる窓口3つ|離婚相談は誰にすべき?
まとめ
離婚が難航すると、「本当にこのままで離婚できるのだろうか」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
離婚は精神的な負担も大きく、今後の人生にも影響する問題ですので、法律の専門家である弁護士を頼ってください。
弁護士であれば、今の状況や見通しを踏まえて、離婚成立のための戦略を一緒に考えます。
当事務所では、開設以来一貫して、相談者・依頼者の満足度を重視し、離婚問題に取り組んできました。
無料相談にも対応しておりますので、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。