離婚「知っトク」ブログ

【財産分与】財産分与の基本③ 旦那の借金も折半?

2017.08.08
  • お金のこと
  • 財産分与

1,はじめに
夫がギャンブルで多額の借金を作っていたことが発覚して離婚を決意したとか、
借金が元となって夫婦関係が壊れてしまうということは、少なくありません。
そういった場合に、妻が夫に対し離婚を切り出し、財産分与を求めたところ、
夫から
「財産分与をしろというなら、借金も折半だ」と言われてしまい、
「離婚したら私も借金を負うことになるのだろうか」と悩まれている方もよくお見かけします。
そこで、今回は、財産分与で債務(借金)がどう扱われるのか
という点について解説していきます。

2,概論
現在の実務では、実質的に夫婦が共同で負担すべき債務について財産分与の対象として考慮されることになっております。
ただし、債務が無制限に財産分与の対象となるわけではなく,
 夫婦の共同生活の維持のために生じた債務でなければ、財産分与の対象とはなりません。
夫婦の共同生活の維持のために生じた債務かどうかは、債務の内容や債務の発生原因によって、判断されます。
以下では、具体例を挙げていきます。
 
3,婚姻前からの借金
財産分与は、婚姻後に形成した財産を清算するものですから、
婚姻する以前に既に負っていた債務については、財産分与の対象とはなりません。
 
4,生活費をまかなうための借金(日常家事債務)
(1)財産分与の対象となるか
結論からいいますと、
生活必需品の購入や、電気・ガス・水道代、自宅の賃料、家族の保険医療費、子供の教育費・養育費、一定の娯楽
のための借金については、財産分与の対象となりえます。
その理由は、少し法的なお話となりますが、
民法761条が、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告したときは、この限りでない。」と規定しているためです。
この条文が定めていることは、要するに、
夫婦の一方が「日常の家事」の範囲内で負った債務については、連帯責任となるということです。
そして、日常の家事に関する法律行為とは、
個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指し、その具体的な範囲は、
個々の夫婦の社会地位、職業、資産、収入等によっても異なり、また、その夫婦が共同生活を営む地域社会の慣習によっても異なるとされ、
日常の家事の範囲内かどうかの判断にあたっては、
夫婦間の内部的事情や個別的事情は重視されず、客観的な種類、性質が重視されます(最高裁判所昭和44年12月18日)。
(2)夫婦の負担割合
日常家事債務についての夫婦間の負担割合は、特段の合意がなければ、原則として2分の1ずつです。
ただし、例外的に、夫婦それぞれの職業、収入、資産、社会的地位、債務の具体的使途等から妥当な負担割合を導く場合もあります。
たとえば、
東京家裁昭和61年6月13日審判は、
生活費の不足分を補うために妻が消費者金融や親族から借金をした事案において、
夫に無断で借りていたこと、借入先が高利貸しであったこと、借り入れに計画性がなく漫然と借金を重ねていたために借金が膨大化してしまったことなどの事情から、
妻の責任が大きいと判断し、
当該債務に関する夫婦の負担割合を、夫3割、妻7割と認定しました。
 
5,日常家事債務以外の夫婦共同生活維持のための借金
上記の日常家事債務に該当しない場合でも、
夫婦共同生活の維持のために生じたといえる債務については、財産分与の対象となります。
 
6,ギャンブルのための借金
夫婦共同生活の維持のための債務とはいえないため、財産分与の対象とはなりません。
 
7,他人の債務の連帯保証
これについても、夫婦共同生活の維持のための債務とはいえないため、財産分与の対象とはなりません。
 
8,資産形成・資産維持のための債務
住宅ローンや自動車ローンのように、
夫婦の共有財産の形成のために夫婦の一方が負った債務は、その債務の対価として得た資産(住宅や自動車)を財産分与の対象とする限りは、財産分与の対象となります。
住宅のリフォームのために負った債務など、
資産の維持に関連して生じた債務についても、同様に財産分与の対象となります。
 
9,債務がある場合の計算
(1)計算方法
財産分与において考慮すべき債務がある場合、
積極財産額(債務ではないプラスの財産)から考慮すべき債務額を控除(マイナス)し、
 余った額を分与対象財産額とする
のが通常です(東京地裁平成12年9月26日判決など)。
(2)債務超過の場合
上記の計算の結果、債務の額が積極財産の額を上回る場合もあります(債務超過)。
このような場合、財産分与請求権(正確には清算的財産分与請求権)は発生しないものとし、
一方配偶者名義の債務を他方配偶者に負担させるような財産分与はしないというのが実務での定着した取り扱いです。
もっとも、審判や判決では上記の取扱いになってしまうものの、
協議や調停で当事者双方の話し合いによって内部的な負担割合を合意することは可能です。
実情に照らしてより妥当な解決を目指すべきでしょう。
 
10,おわりに
借金の取り扱いについては、非常に揉めるケースがあります。
一人で悩まず、まずは法律専門家に相談してみることをおすすめします。