離婚「知っトク」ブログ

別居中の生活費や養育費はどうやって決める?

2017.10.05
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1,はじめに
「別居はしたいけど生活費をもらえないと・・。」
「別居したら,奥さんと子供の生活費はいくら渡せばいいんだろう」
別居したが婚姻費用や養育費の金額をどのように決めたらいいのか、別居中の妻の生活費を支払っているが今の金額は払い過ぎではないか、または自分がもらっている金額は低いのではないかというご相談は多くあります。

2,婚姻費用と養育費のちがい
簡単にいえば,
「婚姻費用」は、婚姻中家族生活費です。
「養育費」とは、離婚した後子ども生活費です。
婚姻費用と養育費の違いは、配偶者の生活費が入るか否かです。
3,算定表で目安がわかります
婚姻費用や養育費の相場を知るには、家庭裁判所が採用している「算定表」をみます。
自分の収入と相手の収入がわかる資料をお手元にご用意ください。サラリーマンでしたら,源泉徴収票や給与明細書,自営業の方は確定申告書を基に計算します。
算定表では、婚姻費用・養育費を支払う側(義務者といいます)と受け取る側(権利者といいます)の収入を、
それぞれ縦軸と横軸に当てはめて,
標準的な婚姻費用・養育費の額を算定します。
もっとも、算定表で想定されている標準的なケースとは、
同居していた夫婦が別居し、夫婦の一方が子どもを監護しており、子どもは公立の学校に通っている,というケースです。
例えば,
①夫婦の双方が子どもを監護している場合
②子どもが私立学校に通っている場合
等は修正が必要ということになります。
その他にも修正が必要になる場面は多々ありますが、ここでは省略します。
なお,算定表は、子どもの人数が3人の場合までしか存在しません。そのため、
③子どもが4人以上いる場合
も算定表をそのまま用いることができません。このような場合は、下記の標準算定方式を用いることになります。
 
4,標準算定方式
(1)標準算定方式とは?
標準算定方式とは、算定表のベースとなっている算出方法です。この算定方式を用いれば、夫婦の双方が子どもを監護している場合や、子どもの人数が4人以上であるなど、算定表を用いることができない場合の婚姻費用と養育費を計算できます。
(2)婚姻費用の標準算定方式
1年間の婚姻費用=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×(権利者世帯の生活費指数)÷(世帯全体の生活費指数)−権利者の基礎収入
※「生活費指数」と「基礎収入」については本稿の5と6で解説しております。
(3)養育費の標準算定方式
1年間の養育費=子どもの生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
子どもの生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数)
 
5,生活費指数
生活費指数とは、世帯の収入を、世帯を構成するメンバーに、どのように割り振るべきかを示す指数です。
具体的には、親100、子(0〜14歳)55、子(15〜19歳)90です。
 
6,基礎収入
(1)基礎収入とは?
基礎収入とは、総収入から①公租公課(所得税、住民税、社会保険料)、②職業費(被服費、交通・通信費、書籍費、諸雑費、交際費等)、③特別経費(住居関係費、保険医療費等)といった必ず支出する費用を控除して、純粋に生活にあてられる分の収入のことをいいます。
(2)基礎収入の算定方法
総収入×基礎収入割合という計算式によって算出されます。
(3)総収入とは?
ア、給与所得者
給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」が総収入とされます。
算定の際に用いられる源泉徴収票は、原則として、前年のものです。
イ、自営業者
自営業者の場合、二通りの計算方法があります。
1つは、
確定申告書の「課税される所得金額」に①現実に支出されていない控除費目(雑損控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生・障害者控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除青色申告特別控除額、現実の支払いがない専従者控除額の合計額)、②算定表で標準額が既に考慮されているもの(医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除)、③現実の支出があっても婚姻費用や養育費の支払いに優先しないとされるもの(小規模企業共済等掛金控除、寄附金控除)を加算して計算する方法です。
※減価償却費は、現実に支出されている費用ではないため、原則として加算する必要がありますが、事業用資産の取得に要した負債の返済については、現実に支出されていることから不動産収入から控除する必要があり、しかし負債の返済は税務上必要経費とされていないため、両者に大きな差がない場合は減価償却費を加算しないという処理をすることが考えられます。
もう1つは、
確定申告書の「所得金額」(「所得から差し引かれる金額」を控除する前の金額)から社会保険料を控除し、専従者控除額の合計額(現実の支払いのないもの)と青色申告特別控除額を加算して計算する方法です。
(4)基礎収入割合
基礎収入割合とは、総収入のうち、公租公課、職業費、特別経費を控除した割合として、統計により、算出されたものです。
給与所得者については、総収入の34〜42%、自営業者については総収入の47〜52%とされ、収入が多い方が基礎収入割合は小さくなります(下記表参照)。
なお、給与所得者と自営業者とで基礎収入割合が異なるのはなぜかという点ですが、自営業者については総収入を算定する段階で職業費に該当する費用及び社会保険料が既に控除されているためです。
 

給与所得者  
収入(万円)
〜100 42
〜125 41
〜150 40
〜250 39
〜500 38
〜700 37
〜850 36
〜1350 35
〜2000 34

 
 

自営業者  
収入
〜421 52
〜526 51
〜870 50
〜975 49
〜1144 48
〜1409 47

 

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)