養育費、慰謝料の請求ポイントを弁護士が解説
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目次
養育費
養育費とは
離婚後の子どもの生活費を指します。少し難しく言うと、離婚後に、親が、未成熟の子に対する扶養義務の履行として支払う生活費のことです。
養育費の決定方法
離婚するにあたって、養育費をどのように決めるのでしょうか。決める方法として挙げられるのは以下の通りです。
【合意が得られる場合】
夫婦間で協議をして合意を取ります。双方が合意できるならば、裁判所の公表する基準に従う必要はありません。
【合意ができない場合】
調停を申し立てて決定していきます。離婚前であれば、離婚調停の中での争点のひとつとして取り上げることとなります。養育費を合意できずに離婚だけした場合には、養育費請求調停を申し立てて金額を決定していくこととなります。離婚するに際して養育費の金額が争点となっている場合には、離婚だけ先に成立させることはおすすめしません。離婚後に争点が残ることで、さらに労力をかける必要が出てくるからです。
養育費の算定方法
調停を申し立てる場合には、裁判所の公表する養育費算定表に基づいて、夫婦双方の年収、子の年齢及び人数をもとに算出して決定するのが一般的です。
給与所得者の場合は源泉徴収票や給与明細、自営業者の場合は確定申告書を収入資料として開示することとなります。
例えば、夫が給与所得者で年収500万円、妻も給与所得者で年収200万円、子が二人でそれぞれ9歳と4歳の場合、算定表に基づくと、養育費の金額は6~8万円のゾーンの中間地点に位置します。したがって、養育費の金額は、6万円台後半となることが見込まれます。
詳細に金額を算出したい場合には、算定表に基づく計算式を用いることもあります。
養育費の支払終期
不正確ではありますが、簡単にいうと子が20歳となるまでというのが実務的な運用です。むずかしい言い方をすると、未成熟子が未成熟子と評価される期間を脱するまでです。未成熟子とは、経済的に自立をしておらず、かつ、自立をしていないことについて一般的に認められている者を指します。未成年者は当然未成熟子と評価できますが、成人をしたからといって当然に未成熟子を脱するわけではありません。大学生の子も未成熟子に当たると一般的には考えられています。就労を開始したら自分で稼ぐことになるので、未成熟子から脱することとなるでしょう。
まとめると、養育費の支払終期は原則として20歳と定められることが実務的な運用です。20歳以降については、「20歳になったときに大学等の高等教育機関に在籍していた場合には、22歳に達した後最初に迎える3月まで」と取り決めることが多いです。専門学校生や大学生を未成熟子と評価できるかは個別具体的な事案によります。たとえば、大学生で自ら起業をして年収1000万円を稼いでいる場合には未成熟子とは評価できなくなってくるでしょう。
養育費の加算について
よく問題となるのは、子が私立学校に進学した場合や、習い事をしている場合です。算定表では、平均的学校教育費が考慮されています。平均的学校教育費は、公立学校教育費の相当額です。0~14歳までは約13万円、15歳以上は約26万円が考慮されています。
私立学校に進学した場合には、算定表で考慮されている教育費を超える学費の負担があります。そこで、子が私立に進学した(している)ことを前提に、
①養育費に加算できる場合に当たるのか、
②養育費を加算できる場合であるとして、いくらを加算すべきなのか
を決める必要があります。
【加算できる場合】
養育費を支払う側が、子が私立学校に進学することを同意していた場合には、養育費に加算をすることとなります。この同意は黙示的な同意でも構いません。例えば、夫婦の同居期間中に子が私立学校に進学していた場合や、養育費を支払う側が私立学校の受験料を支払った場合等は、私立学校への進学を黙示的に同意していたと評価することはできると考えます。
また、養育費を支払う側の学歴、収入、資産状況等からして私立学校の学費を負担することが相当であると認められる場合にも、加算することが相当でしょう。夫婦双方の最終学歴が私立学校の四年制大学卒業であるという事情がある場合には、加算分の負担をするべきであるという話になっていくことが想定されます。
【実際の負担額はいくらか】
同意があった場合や私立学校の加算分を負担すべきである場合に、実際にいくらを負担することとなるのでしょうか。これは、事案によるとしか言いようがありません。しかしながら、たとえば、私立学校の学費等から、平均的学校教育費を控除した残額を当事者双方の基礎収入に応じて按分負担する方法が考えられます。そのほかにも、学費を基礎収入で按分したのちに、学費を控除した養育費を算出する方法もあります。
先にも述べたように加算額の計算は、事案によって異なります。子が私立学校に進学をしていて、私立学校の学費の加算を求めたい場合には、適切に資料を出して加算すべき事情があると示していく必要があるでしょう。
慰謝料
慰謝料とは
離婚に伴う慰謝料には、個別の離婚原因に対する慰謝料(離婚原因慰謝料)と離婚をすることによる精神的苦痛に対する慰謝料(離婚自体慰謝料)とが存在します。一般的にはまとめて離婚慰謝料として評価されることが多いです。
慰謝料の発生原因
暴力、不貞行為、粗暴な言動等個々の事案によります。いずれの場合も、証拠が重要であることはいうまでもありません。
暴力は写真を撮る、診断書の交付を受ける、不貞についてはLINEやメールのやり取りなどを保存しておくといった対応が必要となってくることが想定されます。もっとも、証拠の取得方法によっては相手方から違法性があるとの指摘を受ける可能性があります。証拠を取得するにあたっては、一定の留意が必要です。
慰謝料の金額
一般の人が思うほど、高額の慰謝料を相手方からとれる場合は多くありません。というのも、精神的苦痛は目に見えないものだからです。裁判所は第三者として証拠をもって認定します。裁判所は証拠から認められる精神的苦痛の金額を算出することとなります。
不貞行為についていうと、証拠がしっかり揃っていたとしても、100万円~200万円の範囲で認定することが多いと思われます。
養育費・慰謝料請求のポイント
養育費を請求する際のポイント
私立学校の学費の加算や習い事の費用の加算については、金額を客観的に確定することが必要です。学費に関する資料や習い事の月謝などがわかる資料を準備しておきましょう。もっとも、将来発生するかもしれないという漠然としたものでは、負担額を定めることはむずかしいです。2歳の子どもについて「将来大学に進学するかもしれないから現在の収入比で負担割合を決めたい。」と言ったところで、このような主張は通りにくいのが実情です。しかしながら、現在幼児教室に通っているといった事情は、養育費を加算すべき事情として汲むことは可能であると思われます。
どのような費用が加算事由となるかは事案により異なります。養育費に加算して請求したいものがある場合には、具体的に金額がわかる資料を準備しておくとよいでしょう。
慰謝料を請求する際のポイント
個別の事情によるのは養育費と同様ですが、慰謝料請求をする場合には証拠が重要であることは言うまでもありません。暴力であれば、いつのことなのかを記録しておいたり、怪我の様子を写真にとることや場合によっては診断書を取得しておくことも必要です。不貞行為であれば、当事者間のLINEのやりとりや宿泊記録などを取得しておくとよいでしょう。
最後に
どういった事情であれば養育費に加算ができるのか、この証拠から慰謝料を請求できるのかといったことはご自身での判断はなかなか難しいと思います。そういった場合には、弁護士に相談をすることで、明確になってくることが多いでしょう。ご不安があるときには、弁護士に相談をしてみて、自身が望む結果に繋がっていくのかを聞いてみてもよいかもしれません。
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