離婚「知っトク」ブログ

離婚後に慰謝料を請求できるのか?請求方法や請求された時の対処法を解説

2023.05.22
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離婚後に慰謝料を請求できる条件

離婚するときには、離婚そのものの他にも、養育費や財産分与などさまざまな事項が問題になり得ます。そのような事項のひとつに、慰謝料の請求があります。慰謝料は、離婚と同時に請求しなければならないわけではなく、以下の条件を満たせば離婚後に慰謝料を請求することも可能です。「慰謝料の請求はせずに離婚したけど、やっぱり慰謝料を請求したい」とお考えの方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

離婚原因が慰謝料請求が可能な理由に該当する場合

離婚後に慰謝料の請求をするためには、慰謝料が発生する理由が存在する必要があります。最も代表的な例としては、不倫(厳密には不貞行為)やDVなどが考えられます。逆に、離婚の理由としてよく挙げられる「性格の不一致」といった理由では、慰謝料が認められない可能性が高いです。なお、最近ではモラルハラスメント(いわゆる「モラハラ」)を理由として慰謝料を求めるケースも多いのですが、モラハラには言葉によるDVと評価できるような悪質なものもあれば、性格の不一致にすぎないと評価できるものもあり、その内容には大きな幅があります。そのため、モラハラを理由とした慰謝料請求が可能かどうかは、慎重に判断する必要があります。

金銭面の取り決めを行なわずに離婚した場合

離婚したときに、離婚の条件について合意した方は慰謝料請求ができない可能性があります。というのも、離婚の条件について合意したときは、その合意をもって離婚に関する紛争はすべて解決したとして、以後離婚に関する一切の請求をしないという合意をしているケースが多いからです。特に、離婚したときに離婚の条件について書面(離婚協議書や公正証書)を作成した方は、金銭面を含め、お互いが後に一切の請求をしないといった条項(清算条項といいます)が書面に含まれていないか確認しましょう。

離婚してから3年未満

離婚に伴う慰謝料請求には、時効があり、離婚から3年が経ってしまうと時効が成立して、慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。時効成立により権利が消滅してしまうと、証拠によって事実が証明できたとしても慰謝料を支払ってもらうことができなくなりますので、慰謝料請求を検討している場合には早めに行動しましょう。

離婚後に慰謝料を請求する方法・流れ

離婚後に慰謝料を請求する方法・流れは、次のようになるのが一般的です。

相手方の非を立証する証拠を収集

相手方が慰謝料請求に応じていない場合に慰謝料を請求するためには、慰謝料が発生する理由が存在することを証明できる証拠が必要です。例えば、不倫の場合には、探偵等が作成した調査報告書、配偶者と不倫相手とのメール、LINEなどのやり取り、配偶者と不倫相手が性交渉をしている場面の写真、不倫を認める旨の書面や録音データなどが考えられます。DVの場合、診断書や自宅の壁、家具などが損壊している写真、怪我をした箇所の写真などが考えられます。なお、不倫をしていたことを疑っていることが配偶者や不倫相手に知られてしまうと、警戒されて証拠を収集しづらくなったり、既に存在する証拠を隠滅されたりする可能性があります。充分な証拠を収集するまでの間は、配偶者や不倫相手に対し、不倫を追及したり、慰謝料請求をほのめかしたりするのは避けた方が無難であるといえます。また、証拠を相手によって消されたりすることのないように、証拠のバックアップもしておきましょう。

相手方と話し合う

証拠を収集し終えたら、まずは配偶者や不倫相手と話し合いましょう。いきなり裁判所に訴えることも可能ではありますが、その場合裁判所に手数料等を支払う必要がある上、何回も裁判所に行ってやり取りをしたり、裁判所に提出するための資料を作成したりする必要があるなど、手間がかかります。また、訴訟は通常1年ほどかかるケースが多いため、時間もかかってしまいます。さらに、訴訟を弁護士に依頼する場合、弁護士費用もかかります。もし、相手方が、慰謝料が発生する理由について認め慰謝料を支払うつもりがあるのなら、裁判所を利用せず当事者間だけで交渉した方が、手間や時間がかからない分だけ楽に慰謝料を請求できるのです。

慰謝料請求訴訟の提起

一方、相手方があくまで慰謝料が発生する理由がないなどと言って、慰謝料の支払いに応じない場合には、最終手段として裁判所に慰謝料請求訴訟を提起するしかありません。先ほど言及したような負担が生じてしまいますが、裁判所によって慰謝料請求が認められれば、相手方が、慰謝料が発生する理由を認めていなくても、強制執行により強制的に慰謝料を回収することができます。

離婚後に不倫相手に慰謝料を請求するときの注意点

離婚後に不倫相手に対し慰謝料を請求するときには、次のような点に注意が必要です。

不倫の事実と不倫相手を知ったときから時効が進行している

配偶者に対し慰謝料を請求する場合には、離婚のときから3年で時効が成立しますが、不倫相手に対し慰謝料を請求する場合、不倫の事実と不倫相手が判明したときから時効のカウントがスタートします。つまり、不倫相手の名前や住所が判明してから時効の計算をすればよいことになります。

不倫が事実でも不倫相手に責任がないケースもある

不倫が事実であり、それが証拠によって証明できたとしても、不倫相手に責任がないため、慰謝料を請求できないケースもあります。例えば、不倫の前に長期間別居しており、不倫の前にすでに夫婦の婚姻関係が破綻しているといえるような場合、そのような夫婦関係は法的に保護するに値しないと考えられ、そのような夫婦の一方と不倫をしたとしても、慰謝料は請求できないと判断されてしまいます。また、不倫相手が、元配偶者が夫婦であり婚姻関係が円満であることを知ることができなかった場合、そのような不倫相手には落ち度がないと考えられ、慰謝料は請求できません。ただし、婚姻関係が破綻しているかどうか、夫婦の婚姻関係が円満であることを知ることができなかったかどうかは、不倫相手の主観ではなく、さまざまな客観的事情を総合考慮して判断します。不倫相手がこのような主張をしているとしても、簡単には認められません。

元配偶者から既に慰謝料を受け取ったときは請求できない

慰謝料は、元配偶者と不倫相手の両方に請求可能ですが、すでに元配偶者から慰謝料を受け取っている場合には、請求可能な慰謝料の総額から既に受け取った慰謝料が差し引かれ、残っている部分のみ不倫相手に請求できることになります。例えば、慰謝料として200万円が認められるケースで、既に元配偶者から100万円の支払いを受けた場合には、不倫相手に対し残りの100万円のみ請求できることになりますし、200万円全額の支払いを受けた場合には、不倫相手に慰謝料を請求することはできません。

離婚後に慰謝料請求された場合の対処方法

今までの事例とは反対に、離婚後に慰謝料を請求された場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

元妻(夫)からメールや電話で請求された場合

元妻(夫)からメールや電話で請求された場合、その場ですぐに回答せず、一旦持ち帰って検討するべきです。これは、慰謝料が発生する理由について認めている場合でも同様です。なぜなら、慰謝料が発生する理由があったとしても、具体的に求められている慰謝料額が妥当であるかなどは別の問題であるところ、そのような妥当性をその場でご本人が判断することは難しいからです。仮に、メールや電話で請求された内容を受け入れると回答してしまった場合、それを証拠化され、のちに争うことが難しくなってしまう可能性があります。

内容証明で請求された場合

内容証明で請求された場合、電話やメールでの請求に比べ、元妻(夫)はより真剣に慰謝料の請求をしているといえます。特に、弁護士が元妻(夫)の代わりに内容証明を送っている場合、元妻(夫)はわざわざお金を支払って弁護士に依頼してまで慰謝料を請求していることになりますので、こちらが請求に応じなければ、元妻(夫)が最終的に訴訟を提起する可能性は高いといえます。内容証明が来た場合には、その内容を確認してこちらの考えを伝えましょう。なお、少し難しい話ですが、内容証明を送ることによって時効の成立を遅らせる効果を発生させることを狙っている可能性もあります。

訴状や調停の呼出し状が届いた場合

訴状や調停の呼出し状が届いた場合、相手は裁判所を利用してまで慰謝料を請求しようと考えている訳ですから、相手は相当本気であり、決着がつくまであきらめないと考えられます。特に、訴状が届いている場合は、無視するのは絶対にNGです。仮に、訴状を無視して裁判所に何ら書面等の提出をしなかった場合、元妻(夫)の請求がそのまま認められてしまい、財産の差押えなどがされてしまう可能性があるからです。訴状や調停の呼出し状が届いた場合には、無視せずに裁判所に連絡し、訴訟や調停に参加しましょう。

離婚後に慰謝料を請求されたときのポイント

離婚後に慰謝料を請求されたときのポイントは、次のとおりです。

減額ができないか交渉をする

慰謝料が発生する理由については認めざるを得ない場合には、慰謝料の減額ができないか交渉しましょう。交渉の場合、訴訟になった際に一般的に認められる慰謝料額よりも高額な金額を請求しているケースが多いです。慰謝料額の相場を確認するとともに、慰謝料額が減るような事情がないか検討しましょう。慰謝料の減額要素としては、慰謝料が発生する理由について反省し謝罪していること、それまでの夫婦関係が良好でなかったこと、不倫であれば期間が短く回数が少ないこと、相手方が報復行為(第三者に事実を言いふらしたり、こちらを罵倒したりした場合など)をしてきたことなどが考えられます。

分割払いや支払い期限延⻑の交渉をする

訴訟になり判決がされた場合、一括で慰謝料を支払わなければならず、支払うことができない場合には給料などが差し押さえられる可能性があります。一方、調停や当事者間の交渉の場合、支払い方法は協議で決めることができます。相手方に対し、一括での支払いではなく分割で支払う形にできないか交渉してみましょう。また、支払期限を延長してもらい、お金を用意する猶予を設けてもらうよう交渉することも考えられます。

請求方法によっては対応に注意する

先ほどご説明したとおり、訴状が届いた場合には訴訟が提起されており、これを無視すると慰謝料請求について反論できる事情があるとしても、相手方の慰謝料の請求がすべて認められてしまいます。訴訟による請求の場合には特に注意が必要です。また、慰謝料の請求に際し、脅迫的な行為が行われる可能性があります。そのようなときには、直接会っている場合はその場から避難する、メール等の場合には警察に相談するなどしましょう。脅迫行為を記録しておくとなおよいです。脅迫に恐怖を感じるあまり、漫然と慰謝料の請求に同意するのは避けましょう。

離婚後の慰謝料請求でお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

離婚後の慰謝料請求をする場合でもされる場合でも、法的知識はもちろん、請求方法別に適切な対応方法が異なるなど、一般の方には判断が難しい事項が数多くあります。深く考えずにした対応が、知らず知らずのうちに自分に不利な結果を導く危険もあります。弁護士法人なかま法律事務所では、年間200件以上の離婚事件のご相談をお受けしており、慰謝料請求事件についても豊富な経験及び実績があります。また、弁護士にご依頼いただくことで、相手方や裁判所とのやり取りもすべて弁護士が引き受けますので、ご自身の時間を割いて、手間をかけて紛争に対処する必要もなくなります。特に、慰謝料請求事件の場合、その原因となる不倫やDVなどのためすでに精神的に強いショックを受けていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。そのような方は、慰謝料請求をご自身で行うことによって辛かった記憶が蘇り、さらに傷ついてしまう危険もあります。弁護士へ依頼することで、心理的な負担を最小限にすることが可能です。平日の初回相談は無料でお受けしておりますので、離婚後の慰謝料請求でお悩みの方は、ぜひ一度弁護士法人なかま法律事務所へご相談ください。