卒婚とは?離婚や別居との違い・生活費・ルール|失敗しないための準備
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卒婚とは、離婚せずに婚姻関係を維持したまま、夫婦それぞれが自由に生活する関係のかたちです。
離婚による生活や経済面の変化に不安があり、別の選択肢として卒婚を検討している人もいるのではないでしょうか。
もっとも、卒婚は明確な法律上のルールがあるわけではなく、取り決めを曖昧にしたまま始めてしまうと、後にトラブルにつながる可能性があります。
この記事では、卒婚と離婚や別居の違いや生活費の考え方、失敗しないための準備について解説します。
目次
卒婚とは婚姻関係を維持したまま自由に生きること
卒婚とは、法律上の婚姻関係を維持したまま、夫婦それぞれが生活を分けて自由に生きる関係を指します。
離婚のように戸籍上の関係を解消するのではなく、一定の距離を置きながら、それぞれの価値観や生活スタイルを尊重する点が特徴です。
もっとも、卒婚には明確な法律上の定義や制度が存在しないため、生活費の分担や関係性のあり方は夫婦間の合意に委ねられます。
卒婚は自由度の高い関係である一方で、ルールを明確にしておかないと、後にトラブルにつながる可能性がある点には注意が必要です。
卒婚と離婚や別居との違い
卒婚と離婚や別居は似た概念として扱われることがありますが、それぞれ法的な意味や生活への影響は異なります。
ここでは、卒婚と離婚、別居の違いについてそれぞれ解説します。
離婚は婚姻関係を解消する手続きである
離婚は、法律上の婚姻関係を解消するための手続きです。
離婚が成立すると、戸籍上も夫婦関係は終了し、法律上は他人となります。
離婚には、夫婦の合意によって成立する協議離婚(民法第763条)のほか、話し合いがまとまらない場合には家庭裁判所を利用する調停離婚や裁判離婚(民法 第770条)があります。
離婚では、財産分与や年金分割、子どもがいる場合には親権や養育費などの取り決めが必要です。
【関連記事】離婚の進め方と手続きの選び方・やってはいけないこと
別居は関係を維持したまま物理的に離れる状態である
別居とは、婚姻関係を維持したまま、夫婦が別々の場所で生活する状態を指します。
戸籍上の夫婦関係は継続しており、法律上は婚姻関係が解消されたわけではありません。
そのため、別居中であっても夫婦である以上、生活費を分担する義務(民法第760条)は原則として残ります。
家庭内別居と卒婚は前向きな合意があるかで決まる
家庭内別居とは、同じ住居で生活しながらも、会話や生活をほとんど共有せず、実質的に夫婦関係が機能していない状態を指します。
夫婦関係の悪化の結果として生じるケースが多く、必ずしも双方の合意に基づくものとは限りません。
これに対して卒婚は、夫婦が話し合いのうえで関係のあり方を見直し、それぞれの生活を尊重することを前提とした選択です。
家庭内別居と卒婚は見た目には似ている部分もありますが、前向きな合意に基づくものかどうかという点で大きく異なります。
財産分与や生活費の扱いが大きく異なる
財産分与や生活費の面でみると、離婚と卒婚や別居では、整理の仕方が大きく異なります。
離婚の場合は、夫婦の財産関係を清算する手続きが行われるため、次のような整理が必要です。
- 婚姻中に形成した財産を分ける財産分与
- 厚生年金の記録を分ける年金分割
- 住宅や預貯金などの名義整理
一方で、卒婚や別居は婚姻関係が続くため、これらの清算は行われません。
代わりに問題となるのが、生活費の分担です。
別居や卒婚の状態では、夫婦である以上、収入に応じて以下のような生活費を負担する義務が残ります。
- 日常の生活費
- 住居費や光熱費
- 医療費や保険料
- 子どもがいる場合の養育費
離婚は財産関係を清算する手続きであるのに対し、卒婚や別居は生活費の負担を調整しながら関係が続く点に違いがあります。
【関連記事】別居中の生活費が気になる人へ。婚姻費用の請求について
卒婚を選ぶメリット
卒婚は離婚とは異なり、婚姻関係を維持したまま生活のあり方を見直す選択です。
ここでは、卒婚を選ぶことで得られる主なメリットについて解説します。
自分の時間と自由を取り戻せる
卒婚の大きなメリットは、これまで夫婦関係の中で制約されていた時間や行動の自由を取り戻せることです。
生活リズムや食事のタイミング、休日の過ごし方などを自分の意思で決められるようになるため、日常生活におけるストレスの軽減につながります。
加えて、趣味や交友関係にも時間を使いやすくなり、自分自身の価値観に沿った生活を送りやすくなります。
世間体を守り子供への影響を抑えられる
卒婚は戸籍上は夫婦関係が続くため、名字や戸籍の変更がなく、親族や周囲に与える影響を抑えられます。
子どもがいる場合でも、形式上は家族関係が維持されるため、心理的な負担を軽減できるケースがあります。
卒婚は社会的な関係や家族への影響を最小限に抑えながら、夫婦関係の見直しを図る選択肢といえます。
相続権を維持できる
卒婚では配偶者としての法的地位がそのまま維持されるため、相続に関する権利も引き続き認められます。
具体的には、配偶者は法定相続人として扱われ、子どもなどの他の相続人とともに遺産を取得する権利を有します。
遺言がない場合でも、配偶者には一定の取り分が法律上保障されているため、離婚した場合と比べて将来の資産面で不利になりにくいといえます。
このように、卒婚は夫婦関係を維持することで、将来的な相続に関する権利を確保できます。
遺族年金や扶養の権利を継続できる
卒婚では社会保障上の配偶者としての立場も原則として継続します。
一定の要件を満たせば、配偶者が死亡した場合に遺族年金を受け取れる可能性があります。
加えて、収入状況によっては健康保険上の扶養に入り続けることも可能です。
ただし、別居の状況や収入の変化によっては要件を満たさなくなる場合もあるため、具体的な条件については事前に確認しておくことが必要です。
卒婚に潜むデメリットとリスク
卒婚は、婚姻関係を維持したまま自由な生活を実現できる選択肢として注目されていますが、すべての人にとって最適な方法とは限りません。
ここでは、卒婚に潜む主なデメリットやリスクについて解説します。
パート収入だけでは生活費が不足する
卒婚をきっかけに別居や生活の分離を行う場合、収入面の問題が生じます。
パート収入など限られた収入しかない場合には、一人で生活を維持することが難しくなる可能性があります。
別居している場合でも、夫婦である以上、生活費の分担は求められますが、必ずしも十分な金額が確保されるとは限りません。
生活費の負担をめぐってトラブルになることもあるため、経済的な基盤が整っていない状態で始めると、生活の安定を損なうリスクがあります。
病気や怪我をした際に孤独を感じやすい
卒婚では、夫婦それぞれが独立した生活を送るため、日常的な支え合いの機会が減る傾向があります。
病気や怪我などで体調を崩した際に、すぐに頼れる人がいない状況になったり、別居している場合には、緊急時の対応が遅れるリスクも考えられます。
精神的な面でも、一人で生活する時間が増えることで、不安や孤独を感じやすくなります。
法律上の配偶者への介護義務は残る
卒婚は婚姻関係を解消するものではないため、配偶者としての扶助義務も引き続き残ります。
体調不良や高齢によって介護が必要になった場合には、別居している状況であっても、一定の支援が求められる可能性があります。
卒婚によって関係性を見直していたとしても、法律上は夫婦である以上、パートナーの介護義務が完全に責任がなくなるわけではありません。
卒婚で問題になりやすい生活費とお金の考え方
卒婚では婚姻関係が続くため、生活費や家計の扱いが重要な問題となります。
離婚のように財産関係を清算するわけではないため、夫婦間でどのように費用を分担するかを明確にしておくことが必要です。
ここでは、卒婚において問題になりやすい生活費やお金の考え方について解説します。
生活費の分担は夫婦の合意で決める必要がある
卒婚では、夫婦それぞれが生活を分けることになるため、生活費の分担をどのようにするかが重要な問題となります。
婚姻関係が続いている以上、夫婦には収入に応じて生活費を分担する義務がありますが、具体的な負担割合や支払い方法は自動的に決まるものではありません。
生活費の金額や支払方法、支払時期などを事前に話し合い、双方が納得できる形で取り決めておくことが重要です。
別居する場合は婚姻費用の支払いが問題になる
卒婚に伴い別居を選択する場合、生活費の負担として婚姻費用が問題になります。
婚姻費用とは、夫婦が婚姻関係を維持するうえで必要となる生活費のことであり、収入の多い側が少ない側に対して支払うのが原則です。
具体的な金額は収入や生活状況によって異なるため、話し合いで決める必要があります。
合意がまとまらない場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担を求める手続きをとることも可能です。
【関連記事】婚姻費用とは|もらえるケースや内訳は?婚姻費用算定表や金額を解説
住宅ローンや固定資産税は支払義務者が負担し続ける
卒婚では、住宅ローンや固定資産税の負担関係も基本的には変わりません。
住宅ローンは、契約上の債務者が返済義務を負うため、卒婚によって自動的に支払義務が変わることはありません。
固定資産税についても、所有者に納税義務があるため、名義人が引き続き負担することになります。
年金や財産の扱いは離婚とは異なる
卒婚は婚姻関係を維持するため、年金や財産の扱いも離婚とは異なります。
離婚した場合には、婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける年金分割が可能になりますが、卒婚や別居の段階ではこの制度を利用することはできません。
加えて、財産についても、離婚時のように分割が行われるわけではなく、名義人がそのまま管理・保有し続けることになります。
卒婚は将来の資産や年金の整理が行われないまま関係が続くため、長期的な視点での資産管理や老後設計についても考えておく必要があります。
卒婚で失敗しないための法的注意点
卒婚は、法律上の明確なルールがないため、進め方を誤るとトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、卒婚で失敗しないために押さえておきたい法的な注意点について解説します。
卒婚中の新しい恋人は不貞行為になるリスクがある
卒婚は法律上、夫婦である状態が続くため、卒婚中であっても、配偶者以外の人と肉体関係を持った場合には、不貞行為と判断される可能性があります。
加えて、不貞行為と認められた場合には、配偶者から慰謝料を請求されるリスクがあります。
卒婚は関係を見直す選択肢ではありますが、法律上の制約がなくなるわけではない点に注意が必要です。
【関連記事】不貞行為とはどこからどこまで?慰謝料や証拠を簡単に解説
相談なしの別居は悪意の遺棄とみなされる恐れがある
卒婚の一環として別居を検討する場合でも、配偶者との十分な話し合いを経ずに一方的に別居を開始すると、法律上問題となる可能性があります。
正当な理由なく配偶者と同居せず、生活費の負担もしない状態が続くと、悪意の遺棄と評価されるおそれがあります。
悪意の遺棄とは、夫婦としての同居・協力・扶助の義務を正当な理由なく放棄する行為を指します(民法第770条)。
この悪意の遺棄は、離婚原因の一つとされており、認められた場合には離婚請求が認められる可能性があります。
悪意の遺棄と判断された場合には、離婚の際に不利に扱われることや、慰謝料請求の対象となる可能性もあります。
【関連記事】悪意の遺棄とは|慰謝料の相場と具体例は?証明方法はある?
口約束だけのルールは将来の紛争を招く
卒婚では、生活費の分担や別居の有無、異性関係の扱いなど、多くの事項を夫婦間で決める必要があります。
しかし、これらの取り決めを口約束のままにしておくと、後から認識の違いが生じ、トラブルに発展するおそれがあります。
卒婚を円滑に進めるためには、重要な取り決めについては書面で残しておくことが求められます。
卒婚を成功させる準備と手順
卒婚を現実的に進めるためには、事前の準備と具体的な取り決めが欠かせません。
ここでは、卒婚を円滑に進めるために押さえておきたい準備と手順について解説します。
自分の理想とする自由な生活を具体的に書き出す
卒婚を検討する際には、まず自分がどのような生活を送りたいのかを整理しておくことが重要です。
- どこで生活し、どの程度の収入が必要なのか
- どのような人間関係を築きたいのか
自分の希望を明確にしておくことで、夫婦間の話し合いにおいても、感情的なやり取りではなく、具体的な条件として整理しながら進めることができます。
夫婦で卒婚の期間や目的を共有する
卒婚を進める際には、夫婦間で期間や目的について共通認識を持っておく必要があります。
一定期間だけ距離を置くのか、今後も婚姻関係を維持するのかを明確にしておかないと、後に認識の違いが生じるおそれがあります。
加えて、卒婚を選択する理由を共有しておくことで、合意に基づいた関係の見直しが可能となります。
生活費の金額・支払日・振込先を明確に決める
卒婚では生活費の分担が大きな問題となるため、金額や支払方法を具体的に決めておく必要があります。
支払う金額だけでなく、支払日や振込先などの細かい条件まで整理しておかないと、後に認識の違いが生じるおそれがあります。
加えて、現金の手渡しではなく、振込など記録が残る方法を選ぶことで、支払いの有無を客観的に確認しやすくなります。
異性との交際ルールを定める
卒婚は婚姻関係を維持したまま生活を分ける関係であるため、異性との交際についても一定の整理が必要です。
たとえば、交際の可否や範囲、連絡の有無などについて事前に取り決めておくことで、不要な対立を避けられます。
異性関係に関するルールについても、夫婦間で合意のうえ整理しておきましょう。
重病や介護が必要になった際の連絡体制を整える
卒婚では日常的な関わりが減るため、緊急時の対応についてあらかじめ整理しておく必要があります。
重病や事故が発生した場合に誰が連絡を取るのか、どの範囲まで対応するのかを決めておかないと、いざというときに対応が遅れるおそれがあります。
連絡手段や緊急時の連絡先を共有しておくことで、状況に応じた適切な対応が取りやすくなります。
卒婚合意書を公正証書で作成する
卒婚に関する取り決めは、口約束ではなく書面として残しておくことが望まれます。
生活費や居住形態、異性関係のルールなど重要な事項については、合意内容を明確にしておくことで、後の紛争を防ぐことができます。
加えて、公正証書として作成しておくことで、合意内容の証明力を高めることができ、万が一のトラブルにも対応しやすくなります。
【関連記事】離婚における公正証書とは?効力・費用・作り方をわかりやすく解説
卒婚に関連するよくある質問
卒婚中に恋人を作ると不貞行為になりますか?
婚姻関係が続いている以上、肉体関係があれば不貞行為と判断される可能性があります。
卒婚の合意があっても、法的には自由恋愛が認められるわけではありません。
専業主婦でも卒婚をして一人暮らしするのは可能ですか?
可能ですが、収入がない場合には生活費の確保が課題となります。
別居する場合は婚姻費用を請求できる可能性があるため、事前に条件を整理しておくことが重要です。
卒婚した後は住民票を移すべき?
別居する場合は生活実態に合わせて住民票を移すのが一般的です。
ただし、手続きや影響は状況によって異なるため、事前に確認しておくことが望まれます。
まとめ
卒婚は、婚姻関係を維持したまま夫婦それぞれが自由な生活を送る選択肢です。
離婚とは異なり、戸籍や社会保障上の関係を維持できる一方で、生活費や異性関係、将来の支援などについては明確なルールを定めておかないとトラブルにつながる可能性があります。
曖昧なまま進めるのではなく、夫婦間で条件を整理し、書面として残しておくことが望まれます。
卒婚を検討する際には、感情だけで判断するのではなく、生活や将来設計を踏まえたうえで慎重に判断することが重要です。
状況によっては、弁護士に相談しながら進めることで、自分にとって適切な選択を検討しやすくなります。

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