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離婚時に年金分割をしないとどうなる?請求期限・受給額シミュレーションを解説

2025.01.17
  • 年金分割
年金分割

離婚時の年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が納めた「厚生年金」の保険記録を、離婚のときに公平に分け合う制度です。

厚生年金の額は在職中の年収に応じて決まるため、収入の多かった側の記録を、少なかった側へ分けることで、離婚後に受け取れる年金の差を縮めるねらいがあります。

「年金分割を知らずに離婚してしまった」「手続きを忘れていた」という声は少なくありません。年金分割には請求期限があり、2026年4月からは原則5年に延長されました。期限を過ぎると請求できなくなるため、早めの確認が大切です。

この記事では、離婚時の年金分割の仕組みから、しないとどうなるか、請求期限、受給額のシミュレーション、手続きの流れ、相手が応じない場合の対処法までを、弁護士がわかりやすく解説します。本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいています。

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離婚の年金分割とは

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険記録を夫婦で分ける制度で、分割を受けた側は将来の年金額を増やせます。分割の対象になるのは厚生年金(報酬比例部分)だけで、国民年金(基礎年金)やiDeCo・国民年金基金・企業年金などは対象外です。

まず、公的年金の全体像を確認しておきましょう。

公的年金制度の種類引用:公的年金制度の種類と加入する制度 – 日本年金機構

①国民年金 日本に住む20~60歳全員が加入する年金
②厚生年金(旧共済年金含) 会社員や公務員が国民年金の他に加入する年金
③私的年金 ①や②の公的年金に上乗せできる年金

国民年金は対象年齢の国民全員に加入と納付の義務があります。会社員や公務員は国民年金に加えて厚生年金にも加入しているため、老後に受け取る年金は国民年金+厚生年金の二階建てになります。

会社員の配偶者を支えてきた側が、離婚後に国民年金しか受け取れず生活が苦しくなるのは公平でない、という考えから年金分割の制度ができました。分割を受けた側は、離婚後に国民年金と、分割された厚生年金を受け取れます。

年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があります。第3号被保険者とは、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入っており、年収が原則130万円未満の人を指します。扶養の期間があったかどうかで、使える分割方法が変わります。

合意分割 3号分割
内容 婚姻期間中の年金記録を夫婦で話し合って分割する制度 婚姻期間中の年金記録を夫婦の合意なしで分割できる制度
対象者 共働きの人・2008年3月以前に扶養に入っていた期間がある人 2008年4月以降に第3号被保険者だった人
分割方法 夫婦の話し合いや調停・審判で分割する 年金事務所で一人で手続き可能
分割の割合 上限50%・夫婦の合意または裁判所の決定が必要 一律50%・夫婦の合意は不要

年金分割の基本については、以下の記事でくわしく解説しています。

【関連記事】年金分割とは?対象となる年金や年金分割の種類

離婚時に年金分割をしないとどうなる

年金分割は離婚と同時に自動で行われるわけではなく、自分で請求して初めて成立します。手続きをしないまま期限が過ぎると、本来分けられたはずの年金を受け取れません。

分割をしなかった場合、老後に受け取れる年金額は少ないままです。扶養に入っていた側は自分の国民年金が中心となり、共働きでも収入の少なかった側は自分の厚生年金しか受け取れません。数十年にわたって受け取る年金の差は、老後の生活設計に大きく影響します。

年金分割は老後の生活資金を確保する手立ての一つですが、離婚時のお金の問題は財産分与とあわせて考える必要があります。当事務所では、財産分与の交渉を通じて離婚後の生活資金を確保できた事案があります。

当事務所の解決事例(財産分与で離婚後の生活資金を確保した例)

20年間にわたり夫婦の不和が続き、経営者である配偶者が財産のすべてを管理していたため、窮屈な生活を強いられていた依頼者が離婚を希望し、離婚調停・婚姻費用の調停を申し立てた事案です。争点は財産分与の金額でした。

調停の初回では相手方が離婚を拒否したものの、その後翻意し、最終的に財産分与として3000万円の支払いを受ける内容で公正証書を作成し、離婚が成立しました。資産状況をふまえて主張額を維持したことが、離婚後の生活資金の確保につながりました。

年金分割そのものではありませんが、離婚時のお金の取り決めが老後の生活を左右する点は共通しています。なお、事案の内容により結論は異なります。ご自身のケースでどのような取り決めが可能かは、当事務所の相談でご確認いただけます。

年金分割の請求期限は原則5年(2026年4月の改正)

年金分割の請求期限は、2026年4月1日の改正で、原則として離婚等をした日の翌日から5年以内に延長されました。それ以前は2年以内でしたが、離婚直後は生活の立て直しで手続きが後回しになりやすいことなどから、財産分与の請求期限が2年から5年に延びたことに合わせて見直されたものです。

注意したいのは、5年が適用されるのは施行日以降に離婚した場合だという点です。離婚した時期によって期限が変わります。

2026年4月1日以降に離婚した場合 離婚等をした日の翌日から5年以内
2026年3月31日以前に離婚した場合 離婚等をした日の翌日から2年以内

「改正されたから誰でも5年ある」わけではありません。すでに離婚している方は、離婚日を基準にご自身の期限を確認しておきましょう。

期限が迫っている場合でも、あきらめる必要はありません。期限内に年金分割の調停や審判を申し立て、本来の期限の前後6か月以内に調停成立や審判確定などがあったときは、その翌日から6か月以内に限り請求できます。また、按分割合を決めた後、手続き前に相手方が亡くなった場合は、死亡日から1か月以内に限り請求が認められます。

3号分割は相手方の合意が不要なので、対象となる方はすぐに年金事務所で手続きを進められます。合意分割で相手方の協力が得られないときは、早めに調停の申立てを検討しましょう。判断に迷う場合は、期限を過ぎる前に当事務所へご相談ください

参考:離婚時の年金分割 – 日本年金機構

離婚時の年金分割額のシミュレーション

年金分割でどのくらい年金額が変わるかは、婚姻期間中の夫婦それぞれの厚生年金記録によって決まります。ここでは計算の考え方と、分割した場合・しなかった場合の受給額を試算します。実際の金額は年金事務所で確認できるため、あくまで目安としてご覧ください。

年金分割の計算方法

年金分割の計算には、婚姻期間中の記録をまとめた書類が必要です。年齢によって受け取れる書類が異なります。

50歳未満 「年金分割のための情報通知書」をもとに計算する。住所地を管轄する年金事務所に請求できる
50歳以上 年金事務所に請求すると「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」が交付され、具体的な金額がわかる

情報通知書は配偶者に知られることなく請求できます。以下では50歳未満の方が情報通知書をもとに計算する方法を紹介します。

情報通知書を入手したら、「対象期間標準報酬総額」と「按分割合の範囲」を確認します。

年金分割のための情報通知書引用:離婚時の年金分割について – 日本年金機構

おおまかな計算方法は、夫と妻の対象期間標準報酬総額を合算し、50%で按分したうえで、給付乗率「5.481÷1000」を掛けて年額を求めるものです。

給付乗率は厚生年金の額を計算するために国が定めた係数で、被保険者期間の時期によって異なります。

対象期間 給付乗率
2003年3月以前の被保険者期間 7.125
2003年4月以降の被保険者期間 5.481

2003年3月以前と4月以降の両方に納付期間がある場合は、期間ごとに給付乗率を分けて計算します。年金額は物価や賃金に連動して毎年調整されるため、算出できるのはおおよその金額です。

参考:年金制度の仕組みと考え方 – 厚生労働省

専業主婦・専業主夫の受給額

夫の対象期間標準報酬総額が5,000万円、扶養に入っていた妻が0円だった場合で計算します。

計算例:
夫の対象期間標準報酬総額5,000万円+妻の対象期間標準報酬総額0円=5,000万円
5,000万円×0.5(按分割合50%)=2,500万円
2,500万円×5.481÷1,000=約13万7,025円

 

厚生年金を夫婦で半分に分けた場合、婚姻期間分の年間受給額は約13万7,025円、月あたり約1万1,418円です。これは婚姻期間中に納めた分の目安で、実際には婚姻期間外に納付した年金や国民年金が加算されます。

共働き夫婦の受給額

共働きで、夫の対象期間標準報酬総額が5,000万円、妻が2,500万円だった場合で計算します。

計算例:
夫の対象期間標準報酬総額5,000万円+妻の対象期間標準報酬総額2,500万円=7,500万円
7,500万円×0.5(按分割合50%)=3,750万円
3,750万円×5.481÷1,000=約20万5,537円

 

夫婦の記録を合算して半分に分けた場合、婚姻期間分の年間受給額は約20万5,537円、月あたり約1万7,128円です。扶養でも共働きでも、収入が相手より低い側は分割を受けると年金が増える一方、収入が多い側は分割によって受け取れる年金が減る可能性があります。

年金分割をしなかった場合の受給額

同じく夫の対象期間標準報酬総額5,000万円、妻2,500万円で、年金分割をしなかった場合の受給額は次のとおりです。

計算例:
夫の場合:5,000万円×5.481÷1,000=約27万4,050円/年間
妻の場合:2,500万円×5.481÷1,000=約13万7,025円/年間

 

分割をしないと、収入差がそのまま年金額の差として残ります。厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、離婚分割で記録の分割を受けた側の平均年金月額(国民年金を含む)は、改定前の約6万1,000円から改定後は約9万4,000円へと、月あたりおよそ3万3,000円増えています。長期間受け取ることを考えると、その差は小さくありません。

年金分割をしなくてよい・できないケース

次のようなケースでは、年金分割をしても効果がない、またはそもそもできないことがあります。ご自身が当てはまるかを確認しておきましょう。

  • 相手が厚生年金に加入していない
  • 年金の受給資格期間を満たさない
  • 請求期限が経過している

相手が厚生年金に加入していない

年金分割の対象は厚生年金だけです。自営業者やフリーランスなど、国民年金のみに加入している人には分けられる厚生年金の記録がないため、年金分割はできません。

年金の受給資格期間を満たさない

老齢年金を受け取るには、原則として保険料の納付期間などを合わせて10年以上の受給資格期間が必要です。分割を受けても、受け取る側が受給資格期間を満たさなければ、年金として受け取ることはできません。

請求期限が経過している

請求期限を過ぎると、年金分割は請求できなくなります。ただし調停や審判の最中に期限を迎えても、成立や確定の前後6か月以内など一定の要件を満たせば手続きが可能です。期限が近い場合は、経過する前に年金分割の調停の申立てを検討しましょう。

年金分割の手続きの流れと必要書類

年金分割の手続きは、扶養に入っていたか共働きだったかによって進め方が変わります。共通するのは、情報通知書で対象や割合を確認し、按分割合を決めたうえで、年金事務所に「標準報酬改定請求」を行う流れです。

大まかな手順は次のとおりです。

  • 年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せる
  • 按分割合を決める(合意または調停・審判)
  • 離婚後に年金事務所へ「標準報酬改定請求書」を提出する

手続きでは、相手方の生存を確認できる戸籍抄本や住民票が必要です。離婚後に相手方が新しい戸籍をつくっている場合、その戸籍を取得できないことがあり、書類集めに時間がかかるケースもあります。手続きは早めに動き出すほうが安心です。

扶養に入っていた場合(専業主婦・パートなど)

配偶者の扶養に入っていた期間は、3号分割を利用できます。相手方の合意は不要で、年金事務所で「標準報酬改定請求」を行うだけです。

ただし対象になるのは2008年4月以降の扶養期間で、扶養でない時期はこの方法では分割できません。扶養の時期とそうでない時期が混在している場合は合意分割を行い、その中で3号分割の対象期間も同時に処理されます。

共働きの場合

扶養に入っていた期間がなく共働きだった場合は、合意分割で進めます。手順は次のとおりです。

  • 年金事務所に情報通知書を請求する
  • 夫婦で按分割合を協議する
  • まとまれば離婚協議書や公正証書に按分割合を記載する
  • まとまらなければ調停・審判で按分割合を決める
  • 割合が決まったら年金事務所で標準報酬改定請求を行う

合意分割は相手方の合意や裁判手続が必要で、3号分割より時間がかかります。話し合いが長引くこともあるため、早めに動き出しましょう。

【関連記事】年金分割の手続きの流れや必要書類

相手が年金分割に応じない場合の対処法

合意分割で相手方が話し合いに応じない場合でも、あきらめる必要はありません。「年金分割のための情報通知書」を用意し、家庭裁判所に離婚調停や年金分割調停を申し立てる方法があります。

年金分割は厚生労働大臣に対して請求する制度で、相手方が一方的に拒否できるものではありません。請求期限内であれば、調停で調停委員を介して話し合い、まとまらなければ最終的に審判で按分割合が判断されます。

離婚時の協議で「年金分割はしない」と合意していても、年金分割の請求権はなくなりません。後からでも請求できるため、あきらめてしまう前に選択肢を確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

年金分割について、疑問を持ちやすい点をまとめました。ご自身の状況に近いものから確認しておきましょう。

年金分割の請求期限は何年ですか

2026年4月1日以降に離婚した場合は、離婚等をした日の翌日から原則5年以内です。2026年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり2年以内となります。調停・審判中に期限を迎えた場合の6か月特例などもあるため、期限が近いときは早めに確認してください。

年金分割をすると相手はいくらもらえて、自分の年金は減りますか

分割を受けた側の年金は増え、記録を分けた側の年金は減る可能性があります。金額は婚姻期間中の厚生年金記録によって変わり、対象は夫婦双方の記録を合算した部分です。具体的な見込額は、年金事務所で情報通知書などを取り寄せて確認できます。

協議離婚で「年金分割はしない」と決めたら、後から請求できませんか

年金分割の請求権は放棄できないため、協議で合意していても、期限内であれば後から請求できます。納付が夫婦の協力によるものと言いにくい事情がある場合などは、按分割合を50%より低くする方法や、財産分与で調整する方法も考えられます。個別の事情により結論は異なります。

共働きでも年金分割はできますか

共働きでも年金分割は可能です。夫婦それぞれの厚生年金記録を合算し、上限50%の範囲で分割します。収入が多かった側は分割で年金が減ることがありますが、請求を一方的に拒否することはできないため、按分割合について話し合うことになります。

婚姻期間が短い場合や事実婚でも年金分割はできますか

婚姻期間が短くても事実婚でも、年金分割は可能です。ただし婚姻期間が短いほど分けられる記録は少なく、金額も大きくなりにくい傾向があります。事実婚の場合は、第3号被保険者だった期間があることが要件となります。年金分割が難しいときは、財産分与で調整できる場合もあります。

離婚時の年金分割で押さえておきたい点

離婚時に年金分割をしないと、老後に受け取れる年金が少ないままになる可能性があります。分割の対象は厚生年金で、婚姻期間中の記録を上限50%まで分け合う制度です。

請求期限は、2026年4月1日以降の離婚は原則5年、それ以前の離婚は2年です。期限を過ぎると請求できなくなるため、離婚日を基準にご自身の期限を確認し、早めに手続きを進めましょう。相手方が応じない場合や、按分割合・財産分与とのバランスに迷う場合は、弁護士に相談することで見通しを立てやすくなります。

当事務所は横浜・関内で離婚問題に注力しており、年金分割を含めた離婚後の生活設計のご相談に対応しています。費用やご相談の流れは報酬とご契約の流れをご覧ください。

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この記事の監修者

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中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)