離婚調停で弁護士は必要か|弁護士なしで調停を行う人の割合
- 離婚手続
話し合いで離婚が決まらない場合に利用するのが離婚調停です。
もし離婚調停をする場合は、弁護士をつけた方がよいのでしょうか。
ネット上では、弁護士をつけた方がよいという意見もありますが、それは個々の状況によるため一概には言えません。
この記事では、離婚調停に弁護士が必要かどうかについて、以下の点を解説します。
- 離婚調停に弁護士が必要なケースやメリットデメリット
- 離婚調停は弁護士がいないと不利になる?
- 離婚調停で弁護士をつけない割合
重要なのは、自分が弁護士をつけるべき状況なのか、自分の希望やメリットやデメリットを確認して考えることです。
ぜひ参考にしてみてください。
離婚調停に弁護士は必要か
離婚調停自体は、調停委員に自分の意見や相手に対する反論を伝えるだけなので、難しい手続きではありません。
離婚調停に弁護士が必要かどうかは、その人の状況によります。
以下のようなケースでは、弁護士をつけた方がよいでしょう。
- 双方で感情的な対立が深刻で、調停が不成立になりそうなとき
- 離婚の条件が複雑なときや少しでも有利な条件で離婚したいとき
- 相手とやり取りをするのが耐えられないほど苦痛なとき
- 一人で調停をするのが不安なとき
- 実際に調停をしてみて、一人では難しいと思ったとき
ただし、自分が離婚調停において不利な状況かどうか、自分で判断するのは難しいでしょう。
そのため、事前に弁護士に相談してみて、自分の希望する条件で離婚できる見込みがあるのか、不利な状況なのか相談してみるのが一番です。
依頼するかどうかに関わらず、事前に何人かの弁護士に相談をしてみて、有利に進められそうなら自分でやってみるという方法もあるでしょう。
また、離婚調停では、「弁護士がいないと不利になるのでは」と考えている人がいるかもしません。
弁護士がいないと不利になるとは断言できませんが、弁護士をつけたからといって必ずしも希望の条件で離婚できるとは限りません。
弁護士が必要かどうかは、自分が今後不利になるかどうかや、依頼をした場合のメリットとデメリットを比較して決めることが大切です。
離婚調停を弁護士なしで行う人の割合
日本弁護士連合会の統計によると、2022年に調停(離婚・夫婦円満調停含む)において弁護士が関与した割合は約60%でした。
裏を返せば、約40%の人は弁護士なしで離婚調停を行っているため、必ずしも弁護士が必要なわけではありません。
離婚調停で弁護士をつけるメリット
離婚調停で弁護士をつけるかどうかは、メリットを確認して、必要だと思うなら依頼を検討しましょう。
ここでは、離婚調停で弁護士をつけるメリットを解説します。
依頼者に有利な主張が的確にできる
離婚調停で弁護士をつけるメリットの1つは、有利かつ的確な主張ができるようになる点です。
離婚調停は、調停委員を介して話し合いを行う手続きであり、離婚について調停委員が判断を下すわけではありません。
しかし、自分の主張の伝え方によっては、調停委員に理解してもらえずに、かえって相手の言い分を認めるように諭されてしまうことがあります。
弁護士をつけることで、調停に同席してもらい、自分の主張を的確に伝えてもらうことができます。
また、相手の反論を見越した主張や、証拠の提示、相手の主張が妥当かどうかを判断してもらえるのも強みです。
特に、親権や財産分与、慰謝料など細かく複雑な条件で争っているような場合や、相手が弁護士をつけている場合は、弁護士に依頼することも検討してみてください。
早期の離婚成立を目指せる
弁護士をつけて、的確な主張ができることで、早期に調停が成立して離婚を目指すことができます。
離婚では感情的な対立が大きいため、本来譲歩すべき所で後に引けなくなってしまうこともあるでしょう。
弁護士をつけることで、的確な主張だけでなく、妥協すべき部分についてはアドバイスをもらい、落としどころを見つけて、予定より早く離婚を目指せる可能性があります。
また、今後を見据えて離婚を成立させることも重要です。
例えば、調停が不成立となり、裁判に移行すれば、その先も長く争いを繰り返すことになり、精神的な負担は大きなものとなってしまいます。
お子さんがいる場合は、養育費や面会交流など、今後も親として付き合っていかなければなりません。
今は無理でも、いつか協力が必要となる日が来ることも考えられるでしょう。
そのため、夫婦間の対立が激しい場合こそ、争いを長期化させずに、早期に離婚を実現させた方が、精神的な負担も少なく、後悔せずに済むことがあります。
相手とやり取りをしてくれる
離婚調停中は基本的に相手と直接やり取りをすることは避けるべきです。
調停外で直接やり取りをすると、他のトラブルに発展する恐れがあるからです。
しかし、別居をしていると荷物の受け取りや、業務連絡が必要となる場合があります。
そうした場合は、弁護士が相手とやり取りをしてくれるため、精神的な苦痛を受けずに必要な連絡ができるメリットがあります。
相手とのやり取りが耐えられないほど苦痛という人は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
精神的な負担を軽減できる
先述した通り、調停委員は中立的な立場ですが、相手に共感して時には調停委員から相手の主張を認めるように説得されることもあります。
調停期間中は、日常生活をおくりながら、期日に調停に出席して、自分の言い分を調停委員に伝えなければなりません。
なお、離婚調停の成立までにかかる期間は事案によって異なりますが、統計では半年ほどかかったケースが約30%と最多でした。
精神的にギリギリの期間が半年ほど続くことが考えられます。
こうした場合でも、弁護士がついていれば、自分の主張を一緒に考えることができ、調停に同席してその場で調停委員に対して的確な反論をしてくれます。
常に味方となってくれるため、一人で対峙しなければならない状況で精神的な負担を大きく軽減することができるでしょう。
一人で調停を進めて上手くいかないという人や、一緒に乗り越えてくれる心強い味方がほしいという人はおすすめです。
参考:司法統計|裁判所
離婚調停で弁護士をつけるデメリット
一方で、離婚調停で弁護士をつけることにはデメリットもあります。ここでは弁護士をつけるデメリットを解説します。
弁護士費用がかかる
離婚調停で弁護士をつけると、自分の主張を的確に伝えられたり、精神的な負担を軽減できたりするメリットがあります。
一方で、サポートを依頼すると費用がかかることになります。
特に、毎月安定した収入がない場合や、貯金がない場合、お子さんがいて出費があるような場合は、大きな負担となるでしょう。
ただし、弁護士費用やその支払い方法は、各法律事務所によって異なります。
そのため、予算の範囲内で依頼できる場合は検討するのも1つの方法です。
離婚調停を弁護士に依頼した場合の費用については後述します。
望んだ結果が必ず得られるわけではない
離婚調停で弁護士をつけた場合は、的確な主張をしてもらえるほか、相手の反論を見据えた主張や、相手の主張が妥当かどうか判断できるなどのメリットがあります。
ただし、弁護士に依頼したからといって、必ずしも望んだ結果が得られるとは限りません。
特に離婚調停はあくまでも話し合いの場であるため、両者どちらかが譲歩しない限りは、調停が不成立で終わる可能性があります。
また、先述した通り、離婚調停の約60%は片方もしくは両方に弁護士がついています。
しかし、2022年の司法統計によると、離婚調停が成立する割合は約43.9%です。
離婚調停が成立した人すべてが、自分の望んだ結果で離婚できたとは限りません。
参考:司法統計|裁判所
離婚調停にかかる弁護士費用の相場
離婚調停を弁護士に依頼した場合にかかる費用は以下の通りです。
- 相談料:0~5,000/30分
- 着手金:依頼時に発生する費用で相場は20~50万円
- 報酬金:調停が終了時に発生する成功報酬金で相場は30~50万円、他に財産分与などの金銭的な利益があれば、獲得した金額に対して10%
費用の相場はおおよそ50~100万円です。
また、慰謝料や婚姻費用、財産分与などを得られた場合は、それぞれの獲得できた金額に対して10%の成功報酬が発生するケースが多いです。
ただし、料金体系や支払い方法は各法律事務所によって異なります。
そのため、無料相談などを活用して、さまざまな法律事務所で見積もりを出してもらい、比較してみるのがおすすめです。
当事務所の場合は、ご契約の流れ/報酬についてを参照にしてください。
どうしても費用の負担が難しいという人は、法テラスの利用を検討しましょう。
弁護士費用は決して安価ではありませんが、争いのある内容が複雑であり、どうしてもその条件で離婚をしたいという場合は、費用だけでなく実績を見て判断することが大切です。
離婚調停を依頼する弁護士の選び方
では実際に離婚調停を依頼する弁護士はどのように選べばいいのでしょうか?
ここでは、離婚調停を依頼する弁護士の選び方を解説します。
通える距離に事務所がある
法律事務所によっては、どの地域の相談も可能という所もあります。
しかし、離婚においては自分が通える距離にある事務所に依頼するのがおすすめです。
遠方から調停に出席してもらうとなると、弁護士の交通費が発生することになります。
何より精神的な負担が大きい離婚の場合は、通いやすく相談しやすい法律事務所に依頼するのが安心です。
離婚問題の実績が豊富
離婚調停を弁護士に依頼するのであれば、やはり離婚問題の実績が豊富な弁護士を選びましょう。
ひとえに弁護士と言っても、医者に内科医や外科医がいるのと同じように得意分野があります。
そして離婚の実績が豊富な弁護士なら、離婚に関する知識や経験は格段に多く、これまでの経験を踏まえたサポートが期待できます。
そのため、相談する弁護士を探す際は、インターネットやホームページなどから、離婚の実績を確認しましょう。
話しやすい・相性がよい
そしてもっとも重要なのが、依頼する弁護士が話しやすいか、自分との相性がよいかどうかです。
離婚調停を依頼した場合は、半年、長ければもっと長い期間、弁護士と二人三脚でこの局面を乗り越えていかなければなりません。
また、配偶者とのやり取りで嫌な思いをされているからこそ、自分の味方となる弁護士は、話しやすいか、相性がよいかといった観点から選ぶことが重要です。
そのため、離婚調停で依頼する弁護士を選ぶ際は、必ず対面で相談をして、弁護士の対応や話しやすさを確認してみてください。
複数の弁護士に相談することで、「話しやすい」「相性がよい」「熱意を持って対応してくれる」そんな弁護士を見つけることができるでしょう。
離婚調停の弁護士依頼でよくある質問
離婚調停で弁護士なしだと不利になる?
弁護士がついていないからといって、離婚調停で必ずしも不利になるとは限りません。
自分自身が、自分の主張をしっかりとまとめ、調停委員に対して根拠を示して説得ができるのであれば、弁護士がついていなくても問題ないでしょう。
一方で、以下のような状況ですと、離婚調停で弁護士をつけた方がよいでしょう。
- 自分が不倫やDVをした側で調停を申し立てている
- 離婚をしたくないが、自分が不倫やDVをしてしまった
- 親権を得たいが、育児をした実績が少ない
- 自分の正当性を主張したいが、相手の欠点ばかり指摘してしまう
- 相手が自己主張が上手く、調停委員が相手に共感してしまっている など
上記のようなケースでは、希望通りの条件を得ることは難しい可能性があります。
そのため、弁護士に依頼をして少しでも希望に沿った解決となるようサポートを受けるのがおすすめです。
離婚調停で弁護士費用が払えないときは?
離婚調停で弁護士をつけたいが、弁護士費用が払えないという人は、法テラス経由で弁護士に依頼しましょう。
法テラスとは、国が設立した法律相談センターです。トラブル解決に役立つ情報の提供から、経済的に余裕がない人に向けてリーズナブルな価格で弁護士に依頼することができます。
ただし、収入が一定以下などの条件があるため、法テラスを利用できるかどうか問い合わせてみましょう。
参考:法テラス
離婚調停での弁護士の役割は?
離婚調停における弁護士の役割は以下の通りです。
- 依頼者の代理人になり、依頼者に代わって離婚調停の申し立てから調停の同席が可能
- 離婚調停で、依頼者の意見を代弁してくれるほか、調停委員を説得してくれる
- 相手の主張を踏まえて、今後の方針や戦略を立ててくれる
- 離婚するにあたり、自分が得られる権利を主張してくれる
まとめ
離婚調停に弁護士が必要かどうかは、今の状況によります。
離婚調停で弁護士が同席をすれば、自分の主張を的確に伝えられるだけでなく、相手の反論を見越した主張をすることができます。
何より、自分の心強い味方となり、精神的な負担も軽減できるでしょう。
一方で、費用がかかる点や、必ずしも望んだ結果が得られるとは限らない点は注意が必要です。
今の自分の状況が不利なようであれば弁護士に依頼した方がよいと言えますが、自分で判断をするのは難しいでしょう。
そのため、まずは弁護士に相談をしてみて、離婚調停で不利な立場なのか、弁護士に依頼した方がいいかどうかアドバイスをもらうのがおすすめです。
弁護士法人なかま法律事務所では、離婚調停についてもご相談をお受けしております。
「離婚調停で不利になるのでは?」「弁護士に依頼した方がいい?」そんな悩みもお気軽にご相談ください。