離婚「知っトク」ブログ

協議離婚と離婚調停の違い|メリットデメリット・どちらを選ぶべき?

2024.11.22
  • 離婚手続
どちらがいいか悩む人

離婚には、夫婦の話し合いで成立する「協議離婚」と、調停委員を介して話し合いを行う「離婚調停」があります。

離婚をする際にはどちらを選ぶべきなのでしょうか?

結論として、夫婦間で話し合いができて離婚に合意できる場合は「協議離婚」、話し合いが困難な場合は「離婚調停」を選ぶことをおすすめします。

この記事では、協議離婚と離婚調停の概要や、それぞれのメリット・デメリット、違いについて詳しく解説します。

協議離婚と離婚調停とは

離婚には大きく分けて以下の3つの方法があります。

  1. 協議離婚
  2. 離婚調停
  3. 離婚裁判

ここでは、協議離婚と離婚調停について、メリットやデメリットを含めて解説します。

協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦の話し合いで合意し、市区町村役場に離婚届を提出することで成立する離婚のことです。

令和4年度「離婚に関する統計」の概況」によると、2020年の離婚のうち88.3%が協議離婚であり、もっとも一般的な離婚方法です。

協議離婚のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
  • 夫婦が合意すれば離婚が成立する
  • 手続きにお金や時間がかからない
  • 柔軟な離婚条件を決められる
デメリット
  • 夫婦で話し合う必要がある
  • 話し合いが進まないと離婚できない
  • 離婚条件を明確に決めておかないと後々トラブルになる可能性がある

協議離婚では、親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割、慰謝料などについて、夫婦がじっくり話し合う必要があります。

ただし、離婚条件に合意できれば、費用や時間をかけずにスムーズに離婚を成立させられるというメリットがあります。

【関連記事】協議離婚とは|協議離婚の流れや弁護士費用・デメリットを解説

離婚調停とは

離婚調停とは、夫婦間の問題について家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを行う手続きのことです。

裁判官が法律にもとづいて判断を下す離婚裁判と異なり、離婚調停は非公開で行われる話し合いです。

調停委員は公平・中立の立場から夫婦の意見を聞きますが、離婚を判断することはありません。

前述の統計によると、離婚調停で離婚した割合は8.3%で、協議離婚の次に次いで多い離婚方法です。

離婚調停のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
  • 夫婦が顔を合わせず話し合いができる
  • 調停委員を介するため冷静に話し合いを進められる
  • 法的に妥当な解決が期待できる
  • 調停調書に執行力がある
デメリット
  • 相手が出席しない可能性がある
  • 月に1度、平日昼間に調停へ参加が必要である
  • 離婚が成立するまでに時間がかかる場合がある
  • 調停が不成立になることもある

離婚調停は、話し合いで折り合いがつかない場合だけでなく、相手と顔を合わせたくない場合にも申し立てることができます

【関連記事】離婚調停とは|離婚調停の流れや申立方法や期間をわかりやすく解説

協議離婚と離婚調停の違い

協議離婚と離婚調停の違いは以下の通りです。

協議離婚 離婚調停
仲介者の有無 なし 調停委員
費用 基本はかからない 申し立て手数料と切手代、その他資料取得費用などが必要
離婚成立までの期間 最短1日 平均6ヶ月以内
合意書の種類 離婚協議書(公正証書化で執行力付与可能) 調停調書(執行力あり)
戸籍への記載内容 離婚日のみ記載 離婚調停成立日を記載
不成立後の手続き 再度話し合い、または調停 再度話し合い、調停、または裁判

それぞれの違いと、メリットとデメリットも含めて解説します。

仲介者の有無

協議離婚と離婚調停の大きな違いは、仲介者の有無です。

協議離婚は夫婦間で直接話し合う形式ですが、離婚調停では調停委員(男女1名ずつ)が仲介し、裁判官が同席することもあります。

離婚調停は、夫婦が交互に調停室に入室して、調停委員と話をする形で進行するため、夫婦が顔を合わせずに話し合いができます

仲介者がいることで、DVやモラハラをする相手と対峙しなくて済み、冷静に話し合いが進められます。

また、法律の知識がある調停委員が介するため、妥当な離婚条件での解決が期待できます

一方で、第三者が介する話し合いであるため、調停委員が納得するような資料の提示や主張が必要です。

費用

協議離婚と離婚調停にかかる費用は以下の通りです。

離婚手続き 費用
協議離婚 基本的に費用はかからない

離婚協議書を公正証書にする場合、記載金額に応じた手数料が必要(例:養育費などの取り決めが500万円の場合の手数料は1万7,000円)

離婚調停 調停申し立て手数料:1,200円

書面郵送の切手代:960円程度

戸籍謄本や住民票の取得費用:1500円程度

調停調書の交付手数料:1,000円程度

計:約4,660円

離婚調停の場合は、裁判所の切手代や取得書類によっても異なりますが、おおよそ4,000円程度と考えられます。

また、協議離婚、離婚調停どちらも弁護士に依頼することもできます。弁護士費用の相場は以下の通りです。

離婚手続き 弁護士費用の相場
協議離婚 40~60万円

他に獲得した金銭に対して10%

離婚調停 50~100万円

他に獲得した金銭に対して10%

上記はあくまでも相場であり、各法律事務所によっても費用は異なるため、相談時に確認しましょう。

【関連記事】離婚調停で弁護士は必要か|弁護士なしで調停を行う人の割合

参考:手数料 – 日本公証人連合会

離婚成立までの期間

離婚成立までの期間についても違いがあります。

離婚手続き 離婚成立までの期間
協議離婚 最短1日
離婚調停 平均6ヶ月以内

2023年の司法統計によれば、離婚調停の平均審理期間は6ヶ月以内が最多でした。

協議離婚については統計がありませんが、夫婦が合意できれば最短1日で成立する場合があります。

また、「令和4年度「離婚に関する統計」の概況」によると、協議離婚で別居から離婚届提出までにかかる期間は、1年未満が86.2%と最多でした。

別居している場合は、1年以内に協議離婚が成立するケースが多いようです。

合意書の種類

離婚条件が決まった場合、離婚条件を書面化して残すことが重要です。

離婚条件を書面化しておかないと、具体的な合意内容がわからず、相手が約束を守らないなどのリスクが生じます。

協議離婚と離婚調停でも合意書を作成します。

協議離婚 離婚調停
合意書 離婚協議書 調停調書
執行力 公正証書化が必要 あり
作成者 夫婦や弁護士、公証人 裁判所

離婚調停の場合は、裁判所が合意内容を夫婦に確認した上で、調停調書を作成してくれます。

もし相手が合意内容を履行しない場合、本来であれば裁判所に訴えなければ、差し押さえはできません。

しかし、調停調書の場合は、確定した判決などと同一の効力があるため、裁判を起こさず差し押さえの手続きを進められます

一方、離婚協議書の場合は、基本的に夫婦が作成しなければなりません。

また、調停調書と同様に、執行力を付与してもらうのであれば、公証役場で執行文を付与した公正証書を作成する必要があります。

調停であれば、離婚協議書や執行力を付与してもらう手間はありません。

戸籍への記載内容

協議離婚と離婚調停では、戸籍への記載内容も異なります。

協議離婚の場合は「離婚日」のみ、離婚調停の場合は「調停成立日」が戸籍に記載されます。

戸籍を確認すると離婚手続きの種類はわかりますが、詳しい内容まではわかりません。

不成立後の手続き

協議離婚と離婚調停では、不成立後の手続きも異なります。

離婚手続き 不成立後
協議離婚 協議、調停が可能
離婚調停 協議、調停、裁判が可能

協議離婚、離婚調停が成立しなかった場合、再度話し合いを行うか、調停を申し立てることが可能です。

ただし、調停不成立後に調停を申し立てても、再び同じ結論になることが考えられます。

その場合は、再度話し合うか、時間をおいて調停を申し立てるか、裁判を起こす選択肢があります。

離婚裁判は、調停手続きを行ってからでないと起こせません。

協議離婚と離婚調停どちらを選ぶべき?

これまで協議離婚と離婚調停の違いを解説してきましたが、実際にはどちらの手続きが適しているのでしょうか?

以下では、それぞれの手続きがどのようなケースにおすすめかを解説します。

協議離婚がおすすめなケース

協議離婚は以下のようなケースにおすすめです。

  • 夫婦が離婚に合意しており、離婚条件を話し合いで進められる場合
  • 直接話し合ってお互いが納得しながら離婚を進めたい場合
  • 離婚条件に争いがなく、早期に離婚したい場合
  • 法律の通りの取り決めではなく、夫婦に合わせた柔軟な条件で離婚したい場合
  • 調停で争うのを避けたい場合
  • 平日昼間に調停に参加するのが難しい場合 など

協議離婚であれば、早期の離婚成立が期待できます。

ただし、離婚条件については、後のトラブル防止のため、納得できるまでしっかり話し合うようにしましょう。

離婚調停がおすすめなケース

離婚調停は以下のようなケースにおすすめです。

  • 夫婦で顔を合わせたくない、冷静に話し合いができない場合
  • 相手が暴力を振るう、モラハラをする場合
  • 相手が法外な要求をしてきて断りづらい場合
  • 双方の離婚条件が大きく異なり、合意が難しい場合
  • 離婚協議書の作成が手間に感じる、または離婚後に差し押さえをできるようにしたい場合

離婚調停は、夫婦間で話し合いが困難な場合におすすめです。

また、協議離婚でも弁護士に代理人を依頼することで、自分に代わって相手と交渉してもらうことができます。

協議離婚と離婚調停の流れ

協議離婚の流れ

協議離婚の流れは以下の通りです。

  1. 離婚条件を考えておく
  2. 相手に離婚を切り出す
  3. 離婚条件について話し合う
  4. 離婚協議書を作成する
  5. 離婚届の証人欄を記載してもらう
  6. 役所に離婚届を提出する

協議離婚を成立させるポイントは、夫婦間で冷静に話し合い、必要に応じて譲歩をすることです。

お互いが譲歩しなければ協議離婚は成立しにくいため、離婚条件に優先順位をつけ、譲れるポイントと譲れないポイントを明確にしておきましょう。

離婚調停の流れ

離婚調停の流れは以下の通りです。

  1. 必要書類を準備する
  2. 相手の住所を管轄とする家庭裁判所に申し立てを行う
  3. 申し立てから約2週間後|調停期日の通知書が届く
  4. 申し立てから約1~2ヶ月後|第1回目の調停期日
  5. 調停に出席して話し合いを行う|1回の調停は約2時間ほど
  6. 1回目から1ヶ月~1ヶ月半後|第2回目以降の調停期日
  7. 調停終了
  8. 調停成立の日を含めて10日以内|離婚届の提出

離婚調停は、合意に至るか、不成立となるまで継続されます。調停が不成立になる主なケースには、以下のものがあります。

  • 相手が離婚調停に一度も出席しない場合
  • 調停を重ねても合意の見込みがなく、裁判官や調停委員が不成立だと判断した場合
  • 当事者同士が早く裁判に進みたいと考えている場合 など

また、以下のケースでは、審判という手続きで、家庭裁判所の職権により離婚条件や離婚の成否を決定することがあります。

  • 離婚条件の大半に合意しているが、一部争いがあるとき
  • 親権などの理由で、早期に解決が必要と判断されるとき
  • 一方が意図的に手続きを引き延ばしているとき
  • 感情的な対立で調停が成立しないとき
  • 健康上の理由などにより調停に出席できないとき
  • 当事者が審判を希望しているとき など

審判の決定は、異議申し立てを行うと裁判となり簡単に覆せるため、利用されるのは限定的です。多くの場合、裁判手続きへと進む選択が取られます。

協議離婚と離婚調停それぞれの注意点

協議離婚は合意内容を離婚協議書にまとめておく

繰り返しとなりますが、協議離婚をする際は、離婚条件を必ず離婚協議書として書面化しておきましょう。

例えば、離婚協議書を作成していない場合、慰謝料や養育費の支払いを求めても、「約束はしていない」「いくら支払うか決めていない」などと主張され、約束を破られる可能性があります。

一方、離婚協議書に書面化しておけば、支払いがなされない場合でも裁判所に訴え、最終的に財産の差し押さえが可能です。

離婚協議書は、公証役場で「執行文を付与した公正証書」として作成するのがおすすめです。

執行文を付与してもらえば、裁判を行わずに差し押さえの手続きを進めることができます

離婚調停中にやってはいけないことは避ける

離婚調停を行う場合は、以下の「離婚調停中にやってはいけない」ことを避けましょう。

  • 異性との交際
  • 調停期日に遅刻や無断欠席
  • 調停中に一方的な別居
  • 子どもの連れ去り
  • 相手への直接連絡
  • 相手に嫌がらせなどの行為
  • 夫婦の財産を勝手に処分する

特に、異性との交際や一方的な別居、子どもの連れ去りなどは、離婚や離婚条件に不利になる可能性があります。

また、調停への遅刻や無断欠席なども、調停委員の心証を害し、調停が不利に進む要因となります。

下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

【関連記事】離婚調停中にやってはいけないことや調停中の過ごし方・聞かれること

協議離婚と離婚調停についてよくある質問

離婚調停をしないで離婚はできる?

夫婦で離婚に合意し、離婚届を役所に提出すれば、離婚調停を行わずに離婚が可能です。

離婚裁判との違いは?

離婚には、協議離婚、離婚調停の他に、裁判による離婚もあります。

裁判離婚とは、離婚調停が不成立の場合に、家庭裁判所に離婚裁判を提起して、裁判官の判断で強制的に離婚や離婚条件を決定する手続きです。

協議離婚や調停離婚との違いは、夫婦の話し合いではなく、裁判官が双方の主張を聞き、判断を下す点にあります。

また、離婚裁判では、以下の「法定離婚事由」がなければ、離婚は認められません

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用:民法第770条 – e-Gov

4号には、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」と定められていますが、民法の改正で2025年には削除されます。

上記の理由がある場合に離婚が認められます。

離婚理由としてよくあるのは、不倫、DV、モラハラ、性格の不一致ですが、これらは不貞行為や「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められています。

また、離婚を判断するのは裁判官となるため、裁判官が納得するだけの証拠を提示する必要があります。

裁判となると証拠の提示や書面の提出など法律の知識が求められます。参考までに、2022年のデータによると、離婚裁判で弁護士に依頼している割合は98.3%です。

参考:人事訴訟事件における弁護士選任状況 – 日本弁護士連合

まとめ

協議離婚と離婚調停の大きな違いは、仲介者の有無です。夫婦が話し合いで離婚に合意できるのであれば、離婚調停は不要です。

しかし、「相手と話し合いをしたくない」「相手が暴力的・モラハラ気質である」場合や、相手の法外な要求を断れず立場が弱いなどの事情がある場合は、公平・中立な立場である調停委員を介して話し合いを進める離婚調停が適しています。

なお、協議離婚も離婚調停も弁護士に依頼せずに進めることが可能ですが、弁護士に相談することで以下のようなアドバイスを受けられます。

  • 協議離婚と離婚調停どちらの方がよいのか
  • 妥当な離婚条件
  • 今後の離婚成立までの見通し
  • 裁判に発展した場合に備えた対策など

弁護士に相談をしてアドバイスをもらっておくことで損をすることはありません。離婚や手続きに不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)