離婚してくれない夫・妻と離婚する方法|応じない心理と対処法
- 離婚手続

協議離婚や離婚調停で離婚を成立させるには、相手の同意が必要です。
相手が離婚してくれない理由として、「離婚自体に反対している」もしくは「離婚条件に納得できない」ことが考えられます。
後者であれば、条件を譲歩することで離婚できる可能性があり、相手が離婚を拒否する理由に応じた対応が重要です。
また、裁判で離婚が認められれば、相手が拒否していても離婚できることがあります。
この記事では、離婚してくれない夫・妻の心理や、離婚に合意してもらう方法、注意点などを解説します。
目次
離婚に応じない夫・妻の心理
離婚を求めているのに応じない・拒否し続ける夫や妻の心理として、以下のような心理が考えられます。
- 愛情がある・やり直せると思っているため
- 離婚すると金銭的な損失が大きいため
- 子どもに会えなくなると思っているため
- 世間体が悪いため
- モラハラ気質があるため
相手が離婚に応じない心理や原因を考えることで、それを踏まえた交渉が可能です。以下では、離婚に応じない・拒否し続ける夫や妻の心理を解説します。
愛情がある・やり直せると思っているため
相手が離婚してくれない理由の一つは、「まだ愛情や情が残っている」「夫婦としてやり直せる」と思っているケースがあります。
このような相手の場合は、これまでのこちらの訴えを軽く考えてきた傾向があるため、離婚を切り出されること自体、驚いているかもしれません。
離婚の意思についても重く受け止めず、まだ話し合う余地があると思っていることもあります。
そのため、離婚に合意してもらうには、「やり直すことはできない」と離婚の意思が強いことを冷静に伝えることが大切です。
離婚すると金銭的な損失が大きいため
離婚すると夫婦はそれぞれ金銭的な損失を受けることが少なくありません。そのため、離婚自体には賛成でも、金銭的損失から離婚に応じられないことも多いです。
夫は離婚に際して財産分与や養育費の支払いが発生することがあります。また、主に育児を担っていた妻は、十分な収入を得られず、離婚後の生活が困窮する不安があります。
このような場合は、離婚条件で金銭面を譲歩することで、相手が離婚に応じてくれる可能性があります。
子どもに会えなくなると思っているため
離婚時に親権が得られないことで、子どもと会えなくなる不安から離婚に応じないこともあります。特に、新権獲得に不利だとされている父親側は、この傾向が顕著かもしれません。
このような場合は、離婚しても親であることに変わりはないと伝え、面会交流の取り決めを明確にすることで、相手の不安を和らげることができます。
離婚後も子どもと会えると理解すれば、離婚に応じることも考えられます。
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世間体が悪いため
「3組に1組は離婚すると」言われている昨今、離婚は珍しいことではなくなりました。しかし、中には「離婚=失敗」と考える人もおり、世間体を気にして離婚を拒否することがあります。
このような場合は、離婚はネガティブなものでないことや、お互いにとって前向きな選択であると理解してもらう必要があります。
周囲の評価よりも、自分自身の幸せを優先することが重要だと伝えるのも一つの方法です。
モラハラ気質があるため
相手にモラハラ気質がある場合、「配偶者は自分の所有物」だと考え、離婚を受け入れないことが多いです。
相手に離婚の意思を理解してもらうことは難しいため、弁護士を通じて、淡々と離婚手続きを進めた方がスムーズです。
また、交渉時に弁護士が対応することで、あっさりと離婚に応じるケースもあります。
夫・妻が拒否したら離婚はできない?
「夫・妻が離婚を拒否し続けたら離婚はできないのではないか?」と不安になる人もいるでしょう。
しかし、そのようなことはないため、安心してください。以下では、離婚する3つの方法やポイントを解説します。
離婚を成立させる3つの方法
夫婦が合意のもと、離婚届を提出すれば離婚は成立します。よく知られたこの離婚方法は、協議離婚と呼ばれています。
離婚方法には、協議離婚の他にも調停や裁判による離婚があります。
調停離婚 | 家庭裁判所で、調停委員を交えて話し合う方法 |
裁判離婚 | 調停が不成立の場合、裁判で裁判官に離婚を判断してもらう方法 |
離婚調停の場合は、調停委員を通じて、夫婦は対面せず、冷静に話し合いを進めることができます。調停委員を介して話し合うため、法的な知識がなくても進めることができます。
離婚調停で決着がつかない場合は、再度協議を行うか、裁判官に離婚を判断してもらうことになります。
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裁判では法定離婚事由が必要
裁判による離婚は、協議や調停のような話し合いの離婚とは異なります。裁判で離婚を認められるには、法律上離婚が認められる理由として定められた「法定離婚事由」が必要です。
法定離婚事由には、以下のものが挙げられます。
- 肉体関係を伴う不倫(不貞行為)
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、正当な理由のない一方的な別居など)
- 3年以上の生死不明
- 婚姻を継続しがたい重大な事由
※回復の見込みがない精神疾患は法改正により削除予定
また、以下の理由は「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性があります。
- モラハラ・DV
- 性格の不一致
- 長期間の別居
- セックスレス
- 配偶者の犯罪行為
- 宗教や親族との不和
一方で、上記のような離婚理由がない場合、例えば「別の人を好きになったから離婚したい」といったような理由では離婚が難しいです。
そのような場合は、長期間の別居などを経て、婚姻関係が破綻していると認められる必要があります。
法定離婚事由の証明には証拠が必要
離婚を求める側は、法定離婚事由があることを証拠によって立証しなければなりません。そのため、相手が離婚してくれない場合は、裁判に備えて有利な証拠を集めておくことが重要です。
不倫の場合は、不倫相手と肉体関係があることがわかる写真や動画、モラハラDVの場合は、相手の暴言や暴力がわかる音声や動画、医師の診断書などが証拠として考えられます。
十分な証拠があれば、相手がどれほど離婚を拒否しても、離婚が認められる可能性があります。
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不貞行為とはどこからどこまで?慰謝料や証拠を簡単に解説
有責配偶者からの離婚は認められない
有責配偶者とは、離婚原因を作り、婚姻関係を破綻させた側のことを指します。例えば、不倫をした側、モラハラをした側のことです。
有責配偶者からの離婚請求は、基本的に認められません。婚姻関係を破綻させる原因を作っておいて、離婚を認めるのは不公平だと考えられているからです。
そのため、あなたが有責配偶者である場合は、裁判で離婚を認めてもらうのは難しいと考えられます。
このような場合、交渉で相手に慰謝料を支払って別れてもらうか、長期間の別居を経て夫婦関係が破綻していると認められる必要があります。
有責配偶者からの離婚請求は難しいため、弁護士に相談しながら離婚を進めるのが望ましいでしょう。
夫・妻に離婚を合意させる方法
証拠を集めて裁判まで行けば、離婚してくれない夫や妻と離婚できる可能性があります。しかし、裁判まで発展するのは精神的な負担からも避けたい所です。
以下では、夫婦の話し合いで離婚してくれない夫や妻に離婚を合意させるポイントを解説します。
- 離婚の意思が強いことを伝える
- 離婚条件を譲歩する
- 別居を提案する
- 離婚原因の証拠を示し裁判になることを伝える
離婚の意思が強いことを伝える
相手が、「愛情があるから」「話し合えばやり直せるから」と考えている場合は、「修復は不可能である」という強い意思を明確に伝えることが大切です。
どのようなことの繰り返しで離婚の意思を固めたのか、具体的なエピソードとともに伝えることで、相手も理解しやすくなります。
相手も自分の行動が原因であることや、悪いことをしたと後悔すれば、離婚に納得する可能性があります。さらに、離婚後の具体的な生活プランを伝えて、離婚の意思が強いことを示す方法も考えられます。
離婚条件を譲歩する
相手が離婚してくれない場合は、離婚条件を大幅に譲歩するのも一つの選択肢です。例えば、以下のような譲歩が考えられます。
- 相手の財産分与を少し多めにする
- 慰謝料の支払い方法を分割にする
- 持ち家を相手に譲る
- 面会交流の頻度を増やす など
特に金銭面で譲歩することで、相手が離婚に応じる可能性があります。
別居を提案する
相手が離婚に応じてくれない場合は、一度別居を提案する方法もあります。物理的な距離を置くことで、相手も夫婦関係の修復が難しいと悟るかもしれません。
また、配偶者がいない生活を体験し、意外と影響が少ないとわかれば、離婚を受け入れやすくなることもあります。
さらに、別居は離婚への準備期間としても有効であり、裁判に発展した場合も「婚姻関係の破綻」を証明する要素として活用できます。別居をする際は、以下の点を考慮しておきましょう。
- 住む場所の確保
- 生活費の支払いについて取り決めておく
なお、別居期間中の生活費(婚姻費用)は、収入が多い側が少ない側に支払う必要があります。
場合によっては自分が婚姻費用を負担しなければなりません。また、婚姻費用を払わない場合、悪意の遺棄として有責配偶者と判断される恐れがあるため、注意が必要です。
離婚原因の証拠を示し裁判になることを伝える
相手が有責配偶者で、ある程度証拠をそろえている場合は、「裁判になるとデメリットが大きい」と伝えるのも一つの方法です。
裁判に発展した場合、以下のようなデメリットがあります。
- 平日昼間に裁判に出席する必要がある
- 裁判に出席できない場合は、弁護士に依頼する必要がある
- 一人で対応する場合、裁判所に提出する資料も自分で作成する必要がある
- 弁護士に依頼すると弁護士費用がかかる
- 裁判をすると審理期間は1年以上かかる可能性がある
- 離婚原因がある場合、離婚が認められる可能性がある
特に、時間や費用をかけて裁判で争っても、離婚が認められる可能性があると伝えれば、相手も離婚に応じるかもしれません。
ただし、相手に金銭的な余裕がある場合は、弁護士に依頼して対抗してくる可能性もあります。
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それでも離婚してくれず疲れた場合の対応
ここまでしても、夫や妻がどうしても離婚に応じてくれない場合、調停や裁判を視野に入れる必要があります。
以下では、相手が離婚してくれない状況で疲れ果てた場合の対応について解説します。
弁護士に交渉してもらう
相手が話し合いで離婚に応じない場合、調停や裁判を検討する前に、弁護士に交渉を依頼するのも一つの方法です。
弁護士が代理人として交渉を行うことで、法的措置を恐れて、これまで頑なに離婚を拒否し続けた相手があっさりと離婚に応じるケースも少なくありません。
また、弁護士が交渉することで、有利な条件で離婚できる可能性も高まります。さらに、協議離婚の段階で弁護士に依頼する方が、調停や裁判に発展した場合よりも費用を抑えられる可能性があります。
相手が離婚に応じず、疲れを感じている場合は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
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離婚調停を申し立てる
相手が離婚してくれない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚調停では、調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めてくれるため、冷静な交渉が可能です。
また、調停委員がこちらの主張に納得してくれれば、相手を説得してくれる可能性もあります。調停を有利に進めるには、以下の点を意識しましょう。
- 離婚原因について証拠を示して説明する
- 要点を押さえて簡潔に説明する
自己主張や口頭で説明するのが苦手な場合は、弁護士に依頼し、同席してもらうことも可能です。
ただし、相手が調停に応じない場合や、合意が得られない場合は、次のステップである裁判を検討する必要があります。
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離婚裁判で離婚を認めてもらう
調停が不成立に終わった場合は、最終的に離婚裁判を起こすことになります。離婚裁判では、法定離婚事由の証拠を提示すること、裁判官に伝わるような書類(陳述書)の作成が重要です。
ただし、離婚裁判の手続きは法的知識が求められるため、一人で対応するのは難しく、主張の仕方によっては不利になる恐れもあります。
そのため、離婚裁判に発展した場合は、弁護士に依頼して進めることを強くおすすめします。
【関連記事】離婚調停が不成立になったその後の離婚方法は別居・審判移行?
別居する
法定離婚事由がないような場合は、別居する方法があります。裁判では、3~5年以上の別居期間があることで、婚姻関係は破綻していると判断され、離婚が認められる可能性があります。
また、一定の別居期間を設けることで、相手が諦めて離婚に応じることもあります。
ただし、別居の方法や経緯によっては、離婚において不利になる恐れがあるため、後述する内容も参考にしてみてください。
離婚してくれない夫や妻にしてはいけないこと
相手が離婚を拒否し続けると、精神的な負担も大きくなり、時には感情的になることもあるかもしれません。
しかし、誤った対応を行うと、離婚がスムーズに進まないリスクがあります。以下では、離婚してくれない夫や妻に対してしてはいけないこと、避けるべきことを解説します。
感情的になる
相手の対応に怒りを覚えることもあるかもしれませんが、冷静に話し合うことが大切です。こちらが感情的になると、相手の態度も硬化し、話し合いがますます難しくなる可能性があります。
感情的になりそうな場合は、対面での話し合いを避け、手紙やLINEなどでやり取りを行うのも一つの選択肢です。
勝手に離婚届を提出する
相手が離婚に応じないからといって、勝手に離婚届を提出するのは違法です。離婚届は、夫婦と証人の署名が必要ですが、勝手に署名をして提出した離婚届は無効となります。
また、離婚届を偽造したとして有印私文書偽造罪(刑法第159条)が成立して罪を問われる恐れがあります。
さらに、本人確認ができない場合、役所は当事者に離婚届受理通知を送付するため、相手にも知られることになります。
正当な理由なく別居する
正当な理由や相手の同意がなく一方的に別居する行為や、子どもを連れ去る行為は、離婚において不利になる恐れがあります。
- 正当な理由のない一方的な別居:法定離婚事由の悪意の遺棄に該当し、有責配偶者となり、離婚請求が認められない可能性がある
- 嫌がる子どもを無理やり連れ去る:子の連れ去りとして不法行為に該当し、親権獲得において不利になる可能性がある
このようなリスクを避けるため、別居をする際は、置き手紙やLINEなどで「離婚を前提に別居する」と伝えるようにしましょう。
なお、モラハラやDVによる別居は、正当な理由と判断される可能性が高いです。身の安全を確保するためにも、迷わず別居を選択してください。
他にも、子どもを連れて行く経緯によっては、親権で不利になる可能性もあります。別居を検討する場合は、事前に弁護士に相談し、適切な方法で進めることをおすすめします。
離婚原因となるような行為をする
前述のとおり、離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は認められにくいため、離婚原因となるような行為は避けることが重要です。
例えば、以下のような行為は不利になる可能性があります。
- 正当な理由なく一方的に家を出ていく
- 別居中の婚姻費用を払わない
- 別の異性と肉体関係を持つ
- 相手に暴力を振るう など
「離婚を求める側が、異性と交際している」と相手が知れば、意地でも離婚を拒否することがあります。離婚を円滑に進めるためにも、不利になるような行動は慎みましょう。
離婚してくれない夫・妻に関するよくある質問
モラハラ夫・妻が離婚してくれない場合どうしたらいい?
モラハラ夫や妻は、自分よりも下の存在である配偶者からの離婚を受け入れられず、自分に対する反抗として離婚を拒否することが多いです。
また、加害者と被害者が直接交渉を行うと、パワーバランスから不利な条件を押し付けられることがあります。
自分だけで対応すると対等な交渉が難しくなるため、弁護士を通じて離婚を求めることをおすすめします。
弁護士に依頼することで、有利な条件でスムーズに離婚できる可能性があり、精神的な負担も軽減できます。
生活費をくれないモラハラ夫と離婚するにはどうすべき?
民法上、夫婦には互いに協力して扶助する義務がありますが、モラハラ夫・妻が生活費をくれない行為は、悪意の遺棄として離婚原因になります。
生活費をもらえなかったことがわかる預金通帳や家計簿、食事ができないことを示すレシート、日記などの証拠を集めておくことが重要です。
離婚を進めるには調停や裁判が必要になる可能性がありますが、悪意の遺棄を立証するのは簡単ではありません。
そのため、こうしたケースで離婚を求める場合は、無料相談に対応している法律事務所に相談して、離婚の進め方についてアドバイスをもらいましょう。
弁護士に依頼する費用がない場合は、相場よりも安く弁護士に依頼できる「法テラス」の利用も検討してください。
【関連記事】経済的DVとは|生活費が足りない場合の対処法と相談先を紹介
まとめ
夫や妻が離婚してくれない場合は、相手が離婚を拒否する原因を探り、それに応じて対応を行うことが重要です。
ただし、中にはモラハラ気質があるなど、話し合いで離婚することが難しいこともあります。そのような場合は、弁護士を通じて離婚交渉を行った方がスムーズです。
離婚をする方法には、調停、裁判、弁護士への依頼などさまざまな方法があるため、自分に合った方法を検討しましょう。
当事務所では、これまで数多くの離婚問題を解決した実績や、拒否する相手と離婚交渉を行った実績があります。
弁護士に相談することで、離婚に関するアドバイスが受けられます。「夫・妻が離婚してくれずにもう疲れた…」という方は、お気軽にご相談ください。