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離婚手続きの流れ|離婚前・離婚後のやることリスト

2025.02.28
  • 離婚手続

離婚を考えたとき、どのような手続きを進めるべきか、何を準備すればよいのか、不安を感じる方も多いでしょう。

離婚を切り出す前にやるべきことや、離婚に関して話し合うべき条件などについてしっかりと確認しておかないと、離婚後に後悔する可能性があります。

さらに、離婚後も戸籍や財産分与、年金分割、子どもの親権や養育費など、やるべきことが多岐にわたります。

この記事では、離婚を進める際の基本的な流れと、離婚前後に必要な手続きをリスト形式で紹介します。スムーズに離婚を進めるために、ぜひ参考にしてください。

大まかな離婚手続きの流れ

離婚の手続きは、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3種類があります。

令和4年度の厚生労働省の統計によると、全体の離婚件数のうちおよそ9割程度が協議離婚で進められています。

離婚の形式として最も一般的である協議離婚の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 離婚を切り出す
  2. 離婚条件について話し合う
  3. 合意に基づいた離婚協議書を作成する
  4. 離婚協議書を公正証書にする
  5. 離婚届を役所に提出する

相手が離婚そのものに納得してくれない場合や、離婚条件について合意が取れない場合などは、次のステップである離婚調停で話し合いを進めることになります。

離婚調停でも離婚が成立しない場合は、離婚裁判を行います。

【関連記事】協議離婚と離婚調停の違い|メリットデメリット・どちらを選ぶべき?

離婚を切り出す前にやることリスト

離婚手続きでは、事前準備が重要です。やることをリストアップして、進めることで、離婚後の生活の不安も軽減できます。

具体的には、離婚を切り出す前に、以下のことをやっておくとよいでしょう。

  • 不倫やDVなど離婚原因の証拠を集める
  • 夫婦の共有財産を確認する
  • 離婚条件を整理して優先順位をつける
  • ひとり親の支援制度を把握しておく
  • 離婚後の生活に必要な費用を試算して計画を立てる
  • 離婚後の収入源を確保して経済的に自立する
  • 離婚時期を決める

大きく分ければ、離婚準備と、離婚後の生活の準備です。離婚を切り出す前にやることリストについて、それぞれ簡単に紹介します。

不倫やDVなど離婚原因の証拠を集める

不倫やDVなど、相手の行為が原因で離婚を考えている場合は、離婚を切り出す前に証拠をしっかり集めておくことが重要です。

証拠を集める理由は、相手が離婚を拒否した場合に、調停や裁判に備えるためです。

離婚が裁判に発展した場合、証拠がなければ離婚自体が認められない可能性もあります

後から証拠を集めようとしても、相手が警戒したり、別居したりすると難しくなるため、離婚を切り出す前から準備しておくことをおすすめします。

離婚原因として必要な証拠の具体例は以下のとおりです。

不倫の場合 不倫相手と肉体関係であることがわかる写真・動画・録音データ(ラブホを出入りする写真など)、肉体関係であることがわかるLINEのやり取り など
DVやモラハラの場合 DVやモラハラの音声や動画、医師の診断書や通院記録、被害内容を記録した日記 など

ただし、相手が暴力を振るうなど危険な場合は、早めに別居を進めるなどして身の安全を最優先にしてください。

【関連記事】
モラハラで離婚する場合の慰謝料相場|慰謝料請求が難しい理由
DVによる離婚の慰謝料相場|DVの証拠がない場合は?
不貞行為とはどこからどこまで?慰謝料や証拠を簡単に解説

夫婦の共有財産を確認する

離婚時には、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を公平に分ける財産分与を行います。スムーズな財産分与を行うには、離婚前に共有財産の状況を把握し、記録しておくことが大切です。

また、共有財産を把握しておかないと、相手が財産を隠したり、勝手に処分したりする可能性があるため、注意が必要です。具体的には、以下のようなものが財産分与の対象となります。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 自動車
  • 株式などの有価証券
  • 退職金
  • 生命保険や学資保険の解約返戻金
  • 年金 など

相手の財産隠しを防止するためにも、通帳のコピーや不動産の登記簿謄本、給与明細、確定申告書などを事前に確認し、証拠として残しておくと安心です。

財産を正確に把握することで、公平な財産分与を求めやすくなり、将来の生活設計も立てやすくなります。

【関連記事】離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産や注意点

離婚条件を整理して優先順位をつける

離婚を進める際、どの条件を優先するかを整理しておくことが重要です。協議離婚で話し合うべき離婚条件は、主に以下のとおり多岐にわたります。

  • 財産分与
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流
  • 年金分割
  • 慰謝料

すべての条件を完璧に叶えることは難しいため、自分にとって何が一番大事なのか優先順位をつけることが大切です。

例えば、親権を最優先にするのか、慰謝料をしっかり請求するのかなど、自分の希望を明確にしましょう。事前に整理しておくことで、相手との交渉がスムーズに進められます。

ひとり親の支援制度を把握しておく

親権を得られても、相手が養育費を支払わないのではないかという不安は尽きません。

離婚後の生活を安定させるためには、以下のようなひとり親向けの支援制度を活用することで金銭的な不安が軽減できます。

児童扶養手当 18歳までの子どもを育てているひとり親家庭対象に子どもの人数や親の所得に応じて約1~4万円(子ども1人の場合)程度支給される
児童手当 0歳から中学生までの子ども対象に、月1万円~1万5,000円が支給される
特別児童扶養手当 20歳未満で障がいを持つ子どもを育てる親対象に等級に応じて3~5万円が支給される。所得制限あり
ひとり親家庭の医療費助成制度 18歳までの子どもの医療費を自治体が助成する制度。所得制限あり
生活保護 生体収入が一定以下の場合、生活費を支給してもらえる制度

他にも、母子家庭・父子家庭向けの住宅手当や就労支援、低金利・無利子による貸付制度、市営住宅の利用、子ども食堂などがあります。

自治体によって支援内容が異なるため、住んでいる地域の福祉窓口で詳細を確認しておくとよいでしょう。

離婚後の生活に必要な費用を試算して計画を立てる

離婚後の生活に必要な費用を試算し、計画を立てます。

これにより、月々の生活にどの程度のお金が必要か、また、どのくらいの収入が必要かをシミュレーションすることで、今後の生計の見通しが明確になります。

家賃や光熱費、食費、教育費などの支出を計算し、収入面では、離婚時にもらえる財産、養育費、仕事の収入などを考慮し、利用できる助成金などの制度も調べておきましょう。

特に、現在専業主婦(主夫)の方は、今後働く場合に必要な収入を試算し、見込み収入に応じた家賃の範囲内で住居を選ぶなど、具体的な生活プランを検討することが重要です。

事前にプランを考えておけば、離婚後に慌てることなく、新しい生活をスムーズに始められます。

離婚後の収入源を確保して経済的に自立する

離婚後の経済的自立のためには、安定した収入源を確保することが重要です。

専業主婦(主夫)だった場合、就職活動を進める必要があります。就職活動には一定の時間がかかるため、離婚を切り出す前から働き、ある程度貯金をしておくのが理想です。

資格を取得したり、ひとり親向けの就業訓練を受けたりする方法もあります。

子どもが小さい場合は、預かり先を確保することも考慮し、フリーランスや在宅ワークなど自分に合った働き方を検討するとよいでしょう。

また、離婚後は子どもの生活環境も大きく変わるため、不安を感じさせる可能性があります。可能であれば、転校などの環境変化を最小限に抑えられるよう、生活や仕事を計画的に考えておくことが望ましいです。

離婚時期を決める

離婚の時期を見極めることも重要です。特に、子どもへの影響を考えると、受験や進学のタイミングは極力避けるようにしましょう。

また、財産分与については、離婚後に相手が受け取ったボーナスや退職金は分けてもらえません。ボーナスの支給時期や退職金が出るタイミングも考慮する必要があります。

子どもの進学、仕事の状況、住居の確保など、さまざまな要素を踏まえ、最適な時期に離婚を進められるようにしましょう。

協議離婚で話し合うべき離婚条件

協議離婚で話し合うべき条件としては、主に以下の6つが挙げられます。

  1. 財産分与
  2. 親権
  3. 養育費
  4. 面会交流
  5. 年金分割
  6. 慰謝料

養育費や財産分与、慰謝料など金銭に関する取り決めもあるため、協議離婚の内容は必ず離婚協議書を公正証書化して、明確にしておきましょう。

離婚協議書を作成しておくことで、認識の相違によるトラブル防止や、未払いの場合に差し押さえが可能となります。

それぞれ、どのような内容について話し合うべきなのか、簡潔に紹介します。

財産分与

財産分与とは、結婚期間中に夫婦が共同で築いた財産を公平に分ける手続きです。

結婚後に夫婦それぞれが築いた財産は、すべて財産分与の対象となり、収入や就労状況にかかわらず、基本的に2分の1ずつ分けます。

財産分与の対象となるのは、預貯金、不動産、自動車、株式、生命保険の解約返戻金、退職金などです。

一方で、結婚前から持っていた個人の財産や、相続・贈与で得た財産は分与の対象になりません。

財産分与について話し合う際は、預金通帳のコピーや不動産の登記簿謄本などの証拠を用意し、適切な分割方法を決めることが重要です。

【関連記事】
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親権

未成年の子どもがいる場合、離婚時に父母どちらが親権を持つかを決める必要があります。

協議離婚では自由に親権者を決められますが、調停や裁判となった場合は、「子どもの福祉や利益」を基準に、親権者を決定します。

親権を得るには、子どもを監護してきた実績などが重視されるため、母親が親権者となるケースが多いです。

父親が親権を得たい場合は、離婚を切り出す前から子どもの世話をするなど、実績を積むことが重要です。

なお、2026年5月までに共同親権が施行される予定です。これにより、離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権か、片方が親権を持つ単独親権を選択できるようになります。

ただし、共同親権を選んでも、実際に子どもの世話をするのは監護権を持つ親となります。

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養育費

養育費は、子どもが自立するまでに必要な費用のことで、離婚後に子どもと同居しない親が支払います

養育費の金額は、裁判所が定める養育費算定表を参考に決めるのが一般的で、両親の収入や子どもの年齢、人数に応じて決定されます。

協議離婚では、養育費について以下の内容を取り決めましょう。

  • 毎月の養育費の金額
  • 支払い期間(支払い開始日と終了日、例:〇年〇月〇日~〇年〇月〇日までとする)
  • 支払い時期(毎月何日に支払うのか)
  • 支払い方法
  • 特別費用(突発的な医療費や進学費用など)に関する扱い

話し合いで合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停で話し合います。

【関連記事】養育費とは|養育費の相場や支払い義務・取り決め方法や計算例を解説

面会交流

面会交流とは、子どもと離れて暮らす親と子が、離婚後も交流するための権利です。面会交流については、以下の内容を取り決める必要があります。

  • 面会交流の頻度(月〇回など)
  • 面会交流の時間(〇時~〇時までなど)
  • 面会交流の場所(監護者の自宅、○○公園など)
  • 子どもの受け渡し方法(○○駅で引き渡すなど)
  • 当事者の連絡方法
  • プレゼントのやり取り(誕生日・クリスマスのみなど)
  • 学校行事への参加・宿泊の可否 など

面会交流は子どもの気持ちを最優先に考え、子どもの生活に負担がない頻度や方法で、親同士が協力して実施することが重要です。

【関連記事】面会交流の取り決めを適切にしたい

年金分割

年金分割とは、結婚生活中に夫婦が納めた厚生年金(共済年金を含む)を、離婚時に分ける手続きです。

専業主婦(主夫)やパート勤務、共働きの場合でも、配偶者の年金記録の一部を分割できます。

配偶者の年収が自分より多い場合は、老後にもらえる年金が増える可能性があります。年金分割の按分割合は、夫婦で話し合って決められますが、最大で2分の1となっています。

また、夫に扶養されている主婦などは「3号分割」という制度が適用され、双方の合意にかかわらず2分の1で分割されます。

【関連記事】
年金分割とは?対象となる年金や年金分割の種類
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慰謝料

慰謝料とは、配偶者の不倫やDVなどの不法行為によって精神的苦痛を受けた場合に、請求できる賠償金です。

慰謝料は必ず請求できるわけではありません。配偶者に不倫やDVなどの不法行為が原因で離婚する場合に請求できます。

離婚時の慰謝料の相場はおおよそ50万円~300万円程度とされていますが、不法行為の内容によっても異なります。

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離婚時の手続き|離婚届を提出する際の流れ

協議や調停などによって離婚条件について取り決めができたら、夫婦の本籍地または居住地の役所に提出します。ここでは、離婚届の提出方法や必要書類などについて解説します。

離婚届の書き方

離婚届は、市区町村役場で取得できるほか、自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合もあります。

記載内容については、実際の離婚届や記入例を見ながら、以下の事項について記載しましょう。

  • 届出の日付
  • 氏名・生年月日
  • 住所
  • 本籍
  • 離婚の種別
  • 婚姻前の氏に戻る者の本籍
  • 未成年の子の氏名
  • 同居の期間
  • 別居する前の住所
  • 両者の署名・押印(認印可)
  • 離婚の証人の署名・住所 など

離婚届引用:離婚届 – 法務省

書き間違えた際は修正液や修正テープを使用せず、二重線を引き、訂正印を押して、余白に訂正内容を記載します。

なお、離婚届には、離婚の証人の署名が必要です。離婚の事実を知る成人に署名してもらいます。

離婚届の提出方法・提出期限

離婚届は、夫婦の本籍地または住所地の市区町村役場の戸籍課の窓口に提出します。

郵送でも受け付けてもらえる自治体もありますが、不備があった場合は、役所に出向いて修正が必要となります。

離婚方法によって提出期限が異なります。

離婚方法 提出期限
協議離婚 なし
調停離婚 調停成立日から10日以内
裁判離婚 判決から10日以内

受付時間は自治体によって異なりますが、ほとんどの自治体で24時間365日受け付けてもらえます。

ただし、時間外に提出した場合、後日役所の担当者が内容を確認し、問題があれば訂正が求められることがあります。

スムーズに手続きを進めるためにも、開庁時間内に提出し、内容をその場で確認してもらうとよいでしょう。

離婚届の提出時の必要書類

離婚届の提出時に必要な書類は、離婚の種類によって以下のように異なります。

離婚の種類 必要書類
協議離婚 離婚届のみ
調停離婚
  • 離婚届
  • 戸籍謄本
  • 申立人の印鑑
  • 調停調書の謄本
裁判離婚
  • 離婚届
  • 戸籍謄本
  • 申立人の印鑑
  • 判決または審判書の謄本と確定証明書

調停や裁判で離婚手続きを進めた場合は、多くの必要書類が必要です。

【関連記事】離婚調停の申し立てはどこの裁判所?申し立ての流れや必要書類は?

役所で行う離婚後の手続きリスト

離婚後は、以下のように役所で様々な手続きを済ませておく必要があります。

手続き 概要 期限
氏(姓)や戸籍に関する手続き ・離婚後の氏(姓)を戻すかそのままにするか選択する

・氏をそのままにする場合でも戸籍の変更が必要になる

婚姻期間中の姓を使用する場合は離婚から3ヶ月以内
住民票の異動 転居先に住民票を移す 引っ越しから14日以内
世帯主変更手続き 世帯主以外の方が世帯主の住まいに住む場合は世帯主変更手続きが必要 離婚から14日以内
健康保険の手続き 扶養だった場合や引越しをする場合は手続きが必要 資格喪失から14日以内
児童手当・児童扶養手当の申請 受取口座の変更手続き 早めに

いずれも期限が設けられているため、離婚届提出後は速やかに手続きを済ませましょう。

氏(姓)や戸籍に関する手続き

離婚すると、婚姻時に夫(または妻)の姓を名乗っていた側は、原則として旧姓(婚姻前の姓)に戻ります。

しかし、別の方法を選択することも可能です。

結婚前の姓・戸籍に戻る 離婚届を提出すれば可能。親の戸籍に戻ることになる
結婚前の姓・新しく戸籍を作る 結婚前の姓に戻し、自分が筆頭者となって新しい戸籍を作る
結婚中の姓のまま新しく戸籍を作る 「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出し、自分が筆頭者となって新しい戸籍を作る

離婚後も婚姻時の姓を使い続けたい場合は、離婚成立から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を役所に提出する必要があります。

なお、子どもがいる場合、離婚届を提出しても、子どもの戸籍は自動的に自分の戸籍に移動しません。

新しく戸籍を作らない場合、子どもの戸籍は、元配偶者の戸籍に残り、姓も元配偶者のもののままとなります。

子どもの姓と戸籍を、自分と同一にしたい場合は、自分が筆頭者となり新しく戸籍を作って、子どもの戸籍を入れる必要があります。

子どもの戸籍は、家庭裁判所で姓の変更を手続きしてから移すことになるので、まずは新しい戸籍を作りましょう。

住民票の異動|引っ越しから14日以内

離婚に伴い住所を変更する場合は、速やかに以下の住民票の異動手続きを行う必要があります。

引越し先 提出書類 提出場所 提出期限
現在と同じ市区町村 転居届 市区町村役場 引越し日から14日以内
現在と異なる市区町村 転出届 引越し前の役所 引越し14日前から当日まで
転入届 引越し先の役所 引越し日から14日以内

提出期限はいずれも14日以内と短く、期限を過ぎると5万円以下の過料が課されるケースもあるので注意しましょう。

2025年現在は、転入届以外はマイナンバーカードを利用してインターネット上から提出が可能なので、余裕を持って手続きできるはずです。

離婚後の姓が変わった場合は、新しい姓が反映された住民票を取得しておくと、銀行や携帯電話など各種契約の名義変更手続きがスムーズに進みます。

世帯主変更手続き|離婚から14日以内

夫の世帯に入っていた妻が離婚後も同じ住所に住み続ける場合は、世帯主を自分に変更する必要があります。世帯主の変更は、住民票の異動と同時に役所で手続きできます。

手続きの際には、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類と印鑑が必要です。

世帯主変更手続きの提出期限は離婚届を提出した日から14日以内と短いので、住民票の異動と一緒に速やかに済ませておくのがおすすめです。

子どもと一緒に住む場合は、子どもの住民票や世帯構成が適切に反映されているかを確認しておきましょう。

健康保険の手続き|資格を喪失した日から14日以内

離婚によって健康保険の加入状況が変わる場合があります。

たとえば、夫(または妻)の扶養に入っていた場合は、そのままでは保険が無効になるため、新たな健康保険に加入手続きが必要です。

勤務先の健康保険に加入できる場合は、会社に健康保険資格取得届を提出し、手続きを行います。無職やパートなどで社会保険に加入できない場合は、国民健康保険に切り替えます。

健康保険の変更手続きの期限は、資格を喪失した(離婚届を提出して扶養から外れた)日から14日以内です。

健康保険に関して適切な手続きを怠ると無保険状態となり、病院での診察費が全額自己負担となるため、早めに対応しましょう。

児童手当・児童扶養手当の申請

児童手当・児童扶養手当は、世帯主に対して支給されるものです。引っ越して自分が子どもと生活する場合は、児童手当の受給者と受け取り口座を自分名義に変更する必要があります。

児童手当の受給者変更の期限は、別居開始日または離婚日のうち直近の方から15日以内です。期限を過ぎてしまうと、翌月分の手当が受け取れなくなるので注意してください。

役所以外の離婚後の手続きリスト

離婚後に必要な手続きには、以下のとおり、役所以外で行う必要があるものもあります。

  • 子の氏の変更|家庭裁判所
  • 国民年金の手続き|年金事務所
  • 子どもの転校手続き・保育所の申し込み
  • 財産分与で取得した財産の名義変更|各所
  • 運転免許証やパスポートの変更手続き|各所

それぞれ、具体的な手続き内容や提出期限などについて簡単に紹介します。

子の氏の変更|家庭裁判所

離婚後、子どもの戸籍は原則として婚姻中のままです。親権を持った側が旧姓に戻った場合でも、子どもの氏(姓)は変わらず、元配偶者の姓のままとなります。

子どもの氏を親権者と同じ姓に変更するには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、許可を得る必要があります。

手続きには、子どもの戸籍謄本や親権者の戸籍謄本、本人確認書類などが必要です。そのため、離婚届提出後に、自分の新しい戸籍を作り、必要書類をそろえておくとよいでしょう。

家庭裁判所で許可を得た後、市区町村役場で入籍届を提出すると、子どもの戸籍が変更され、親権者の戸籍に入れます。

氏の変更に期限はありませんが、どの姓を選択するのが最適か、子どもの今後の生活などを考慮して、早めに手続きをしましょう。

国民年金の手続き|年金事務所

離婚によって配偶者の扶養から外れると、国民年金の手続きが必要になります。

これまで会社員の夫(または妻)の扶養に入っていて第3号被保険者だった場合、離婚後は自分で国民年金に加入するか、新たな勤務先で厚生年金に加入することになります。

国民年金に加入する場合、年金事務所または市区町村役場で「国民年金第1号被保険者加入届」を提出します。その際、年金手帳や身分証明書、離婚後の住民票が必要です。

国民年金の加入手続きは、離婚から14日以内におこなう必要があるため、住民届の変更などと一緒に役所で済ませるのがおすすめです。

子どもの転校手続き・保育所の申し込み

離婚による引っ越しなどで子どもの転校が必要になる場合、転校手続きを行わなければなりません。

転校の手続きは、前に通っていた保育園・幼稚園・小中学校に在宅していた証明書が必要になることが多いです。

また、市区町村の役所で申請するケースもあるため、それぞれ確認して手続きを行いましょう。

公立高校の場合は、手続きが自治体によって異なるため、引越し先の教育委員会に問い合わせるのがおすすめです。

財産分与で取得した財産の名義変更|各所

財産分与で、持ち家や不動産、車、預貯金などを分けた場合、それぞれの名義変更が必要です。

  • 持ち家や不動産の名義変更は法務局
  • 車は運輸支局、軽自動車検査協会など
  • 預貯金口座をそのままもらった場合は金融機関

手続きでは、相手の協力が必要なものもありますが、離婚から時間がかかると相手が心変わりする可能性があります。

連絡が取れなくなるリスクもあるため、早めに手続きを行うのが望ましいでしょう。

また、不動産の分与には、不動産価格によっては、譲渡取得税が課税されたり、登録免許税や固定資産税がかかったりするため注意が必要です。

その他氏名や住所の変更が必要な手続き|各所

離婚後は、氏名や住所の変更に伴い、以下のようなものの変更手続きが必要です。

  • 運転免許証
  • パスポート
  • 銀行口座
  • クレジットカード
  • 携帯電話
  • 公共料金の名義
  • 勤務先への氏名・住所変更
  • 扶養控除の変更手続き
  • 郵便物の転送手続き
  • 保険(生命保険・医療保険)など

これらの手続きは一度に済ませるのが難しいため、リストを作成し、優先順位をつけながら計画的に進めることが大切です。

離婚手続きの流れに関するよくある質問

離婚の手続きの順番は?

離婚する前や後の手続きに決まった順番はありません。ただし、別居中の婚姻費用については請求時点から発生し、後からさかのぼって請求はできません。

別居時点で記録の残る方法で請求するか、離婚調停・婚姻費用分担請求調停を申し立てるとよいでしょう。

離婚後の手続きは、戸籍や氏の変更などの役所での手続きが離婚後14日以内と期限が短いため最初にまとめて済ませるのがおすすめです。

その後は、各種氏名や住所の変更手続きや助成金の申請などの手続きをリスト化して、優先順位をつけて進めるとスムーズです。

特に、子どもの転校や氏の変更手続きは、離婚後の子どもの暮らしに大きな影響を与えるため早めに済ませましょう。

離婚後の手続きは何日かかる?

離婚後の手続きにかかる日数は、必要な手続きの種類や個々の状況によって異なります。

まず、離婚届の受理は即日ですが、戸籍の変更手続きが反映されるまで1週間程度かかることが一般的です。

その後、住民票の異動や健康保険の切り替えは1日〜数日で完了することが多いですが、勤務先を通じて手続きする場合は時間がかかるケースもあるでしょう。

児童扶養手当や児童手当の申請は、審査に1カ月程度かかることがあり、支給開始時期にも影響します。

年金分割の申請は離婚後2年以内に行う必要があり、手続き完了まで数カ月かかることもあります。

全体として、基本的な手続きは1週間〜1カ月で完了しますが、各種助成や年金分割などはさらに時間を要することを考慮し、計画的に進めることが大切です。

離婚の話し合いで気をつけることは?

離婚の話し合いで重要なのは、冷静に進めること、離婚条件に優先順位をつけておくことです。

話し合いでは、財産分与、親権、養育費、面会交流、慰謝料、年金分割など数多くの取り決めをしなければなりません。

冷静に話し合いを行い、優先順位をつけておくことで、条件面などで揉めにくくスムーズに離婚を進められます。

さらに、後々のトラブルを防ぐために、合意内容は口約束ではなく、公正証書などの文書に残すようにしましょう。

話し合いが難航した場合や感情的な対立を避けたい場合は、弁護士や離婚調停の利用を検討してください。

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まとめ

離婚をする際は、財産分与や親権をはじめとして、話し合うべき事項が多数存在します。

離婚後の生活をスムーズに始めるにも、できる限り感情的にならずに冷静に話し合いを進める必要があります。

離婚に向けた話し合いが難航する場合は、離婚問題に注力する弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に依頼することで、スムーズかつ希望する条件で離婚できる可能性があります。交渉は弁護士に任せ、離婚後の生活準備を進めることができます。

なかま法律事務所では、開設から一貫して離婚問題解決に取り組んできました。話し合いが進まない場合や、相手と交渉したくない場合などは、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)