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財産分与の対象にならないものは?退職金や親からの贈与はどうなる?

2024.08.30
  • 財産分与

財産分与の対象となるのは、結婚生活で夫婦が協力して築いた共有財産です。

一方で、財産分与の対象とならないのは、独身時代に自分で築いた貯金や、親から贈与された特有財産です。

自分の財産を主張するためにも、共有財産と特有財産をしっかり把握しておくことが重要です。

この記事では、財産分与の対象外である特有財産や、対象となる共有財産の内容、そして特有財産を主張するための資料などを解説します。

財産分与の対象にならないもの

財産分与の対象とならないのは、夫婦の協力とは無関係に得た特有財産です。

親から贈与された財産

親から贈与された財産は、夫婦の協力とは無関係に得た財産なので、財産分与の対象外です。

たとえ結婚してから贈与されたものであっても、自分の財産として保有できます。

独身時代に貯めた貯金

独身時代に貯めた貯金も、自分の財産なので、財産分与の対象になりません。

結婚前に購入した車や不動産

結婚前に自分の給料で購入した車や不動産も、自分の財産なので、財産分与の対象外です。

人からプレゼントされたもの

人からプレゼントされたアクセサリーや貴金属などは、その人の占有物と判断されるため、財産分与の対象外です。自分のものとして所有することができます。

個人的な理由で負った借金

結婚前や結婚生活の中で個人のためにした借金の支払い義務は、その借金を借り入れた本人にあります。

例えば、ギャンブルや浪費などのために借り入れた借金が挙げられます。

事故や労災などで受け取った賠償金

交通事故や労災などで受け取った賠償金は、ケガをした人に支払われたお金であるため、財産分与の対象外です。

ただし、賠償金の中に含まれる逸失利益(いっしつりえき)の部分については、財産分与の対象となります。

逸失利益とは、交通事故や労災などに遭わずに働けていたら、将来得られていたであろう収入を指します。

将来得られていたであろう収入は、夫婦の協力によって築いた財産だと考えられるため、財産分与の対象となります。

子どもの財産

子どもにあげたお年玉や、子どもがアルバイトで貯めたお金などは、子どもの財産となるため、財産分与の対象外です。

ただし、子どものために積み立ててきた教育費は、夫婦が協力して築いた共有財産となるため、財産分与の対象となります。

法人名義の財産

夫婦が会社を運営している場合、会社の財産は共有財産にならず、財産分与の対象外です。

ただし、配偶者が会社を手伝い、会社の利益に貢献していた場合は、法人名義の財産であっても財産分与の対象となる可能性があります。

別居後に得た財産

離婚が成立する前に別居をして、別居後に得た財産は自分の財産となるため、財産分与の対象外です。

自分しか使わないもの

夫婦の財産で購入したものでも、衣類や下着、アクセサリーなど、夫婦それぞれの専用品や、自分しか使わない趣味のために購入したものは、財産分与の対象にならないとされています。

ただし、着用しているアクセサリーや貴金属、趣味で購入したものが高価なものである場合は、財産分与の対象になる可能性があります。

財産分与の対象になるもの

一方、財産分与の対象となるのは、結婚生活の中で夫婦の協力によって築いた共有財産です。

結婚後に貯めた預貯金

名義に関係なく、結婚後に貯めた預貯金は、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。分ける際は、夫婦で公平に分配しましょう。

結婚後に購入した家や土地や車

結婚後に購入した家や土地、車も、名義に関係なく夫婦の共有財産となるため、財産分与の対象です。

家や土地、車などは現金のように半分に分けることはできません。そのため、次のような方法で、分与することになります。

  • 家や車などを売却して、現金にして分ける
  • 家や車などを所有する側が、評価額の半分を相手に支払う
  • 一部の財産をもらう代わりに、同等額の財産を分ける など

また、親から頭金を出してもらった場合は、その額を差し引いた金額を分ける必要があります。

家や土地、車などを分ける際は、離婚時の評価額を査定してもらいましょう。

なお、住宅ローンや車のローンが残っている場合も注意が必要です。

ローンが残る家や車を片方が所有するのであれば、評価額からローン残高を差し引いた金額を片方に支払って分けます。

一方、評価額よりローン残高の方が多いオーバーローンの状態であれば、財産分与の請求権は発生しません。

ローン残高の支払い義務は、借り入れた名義人に生じますが、結婚生活で生じた借金は平等に負担するべきと判断される可能性もあります。

また、どちらかが連帯保証人である場合は、支払いが遅れると請求を受けることになるため、連帯保証人についても確認しておきましょう。

年金

結婚期間中に支払った年金も、夫婦の協力で築いた共有財産です。

ただし、年金に関しては、年金分割という方法で、分けることになります。

年金を分けられるのは、夫婦の片方が会社員や公務員で、厚生年金や共済年金に加入している場合です。

会社員や公務員の場合は、20歳から60歳が加入する国民基礎年金と、働く人を対象とした厚生年金、共済年金に加入しています。

扶養になっている専業主婦の場合は、将来的に受け取れる年金が少ないため、配偶者の年金を分割して分け合います。

また、共働き夫婦の場合も、収入の多い方の年金を少ない方へと分割することができます。

退職金

結婚時から離婚時まで働いた期間の退職金も、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。

退職金がすでに支給されている場合は、現金で分けることができます。

一方でまだ退職金が支給されていない場合は、結婚時から離婚時までの退職金を計算した分を、財産分与に反映させます。

退職金は、支給される退職金×結婚期間÷勤務期間で計算して、半分に分けることができます。

ただし、就業規則での規程や退職金制度自体がなかったり、定年まで10年以上あったりする場合は、退職金が発生しないと判断される可能性があります。

生命保険や学資保険

積み立て型で返戻金が発生する生命保険は、結婚期間に支払った部分が財産分与の対象です。

同様に、子どものために積み立てた学資保険についても、契約者に関係なく、夫婦が協力して築いた財産として、財産分与の対象となります。

保険については、解約をして解約返戻金を折半するか、保険を受け取る側が返戻金と同等の金額の半分を相手に渡す形で財産分与を行います。

家電や家具

結婚期間に購入した家電や家具も、財産分与の対象です。一方で、独身時代に購入したものや、親が購入してくれたものは、財産分与の対象外です。

家電や家具については、どちらかが所有するか、話し合いで公平に分けるか、または離婚時の評価額を算定して、所有する方が評価額の半分を相手に支払うなどして分ける方法があります。

1点注意したいのが、離婚後に家電を相手の家に取りに行く場合です。

離婚した後は相手の家に勝手に入ると、住居侵入として警察に通報される可能性があります。

お互いの関係が修復できてない場合は、知人などに取りに行ってもらうようにしましょう。

結婚生活のためにした借金

民法では、結婚生活をする上で必要になった借金について、夫婦が連帯してその責任を負うと定められています(民法第761条)。

そのため、生活をする上で生じた医療費や家賃、教育費などの支出で生じた借金は、どちらの名義であっても、夫婦で負担することになります。

なお、持ち家の購入など、夫婦の共有財産を形成するために負った借金(住宅ローンなど)も、場合によっては財産分与の対象となる可能性があります。

住宅ローンについては、任意売却などで自宅を売却した上で、残ったローン残高を折半して負担することなどが考えられます。

一方で、結婚生活に無関係な個人の借金については、連帯保証人でない限り、配偶者は支払い義務を負いません。

株などの有価証券

結婚生活の中で購入した株などの有価証券についても、財産分与の対象です。

有価証券については、売却した金額を分割する方法と、株などをそのまま保有する代わりに離婚時の評価額を基準に、その半分にあたる財産を分けるなどの方法があります。

ただし、株には非上場会社の株などもあり、評価額を算定するのが難しいケースもあります。弁護士や公認会計士などに相談しましょう。

ペット

ペットは生き物ですが、法律上は物として扱われます。

結婚期間中に飼い始めたペットもどちらが連れていくのか決めなければなりません。

ペットの飼い主となるのは、主に世話をしていた方や、離婚後も飼育できる環境がある方、ペットが懐いていた方が基準になるでしょう。

離婚の財産分与をしない方法はある?

離婚時の財産分与をしたくないと考える人もいるでしょう。

しかし、夫婦共働きでも、片方が専業主婦(主夫)であっても、財産分与を求める権利があります。

もっとも、夫婦双方の話し合いで合意が得られるのであれば、両者で財産分与の請求権を放棄するといった柔軟な取り決めが可能です。

関連記事では、離婚時の財産分与をしない方法があるかどうか、交渉の仕方などについて解説していますので、参考にしてみてください。

関連記事:離婚の財産分与をしない方法|財産分与を払わないとどうなる?

財産分与で少しでも取り分を増やす方法

共有財産を把握しておく

財産分与で少しでも取り分を増やすためには、共有財産をしっかりと把握しておくことが重要です。

例えば、相手が自分の知らない銀行口座にお金を貯めていることなども考えられます。

相手がどこの銀行に口座を持っているのか、どこの保険に加入しているのかなどを事前に把握しておけば、後で弁護士に調べてもらえる可能性があります。

また、相手が財産を隠したり、勝手に処分したりした際も、足りない財産について請求することができます。

ただし請求する際には、相手が財産を使い込んだ証拠(領収書やカードの明細など)が必要です。

相手が財産を隠したり、処分したりしそうな場合も、事前に弁護士に、財産を守る方法を相談しておくのがおすすめです。

特有財産を主張する

財産分与では、自分の財産を主張する側に特有財産を立証する責任があります。自分で特有財産を立証できなければ、共有財産として扱われます。

特有財産が多いのであれば、どこからどこまでが特有財産なのか、資料などを準備してはっきりと主張しましょう。

後述しますが、銀行口座であれば、通帳などから取引履歴を確認するようにしましょう。

貢献分や相手の浪費を主張する

財産分与は、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産を、2分の1にして分けるのが原則です。

ただし、自分の方が家事育児を担っていた場合や、自分の方が収入が多かった場合、もしくは相手が浪費した部分があれば、それを主張することができます。

特に、医師など特殊な資格やスキルにより高収入だった場合、財産分与の割合が多くなるケースがあります。

また、相手が浪費をしていた場合は、2分の1の割合が修正される可能性もあります。

浪費に関しても、相手が共有財産を使い込んでいるという証拠が必要です。

このように主張する場合は、事前準備が重要となるため、離婚を切り出す前に弁護士に相談しましょう。

自分の特有財産を主張するための証拠

財産分与では、自分の財産を失わないために、特有財産と共有財産をしっかりと区別して主張するための証拠が必要です。

ここでは、自分の特有財産を主張するために必要な資料を解説します。

結婚前の通帳や取引履歴

自分で貯めた貯金を特有財産と主張する場合は、過去の取引履歴が確認できる通帳などが必要です。

独身時代に貯金をしていた口座をそのまま結婚後も使用しているケースが多いですが、過去の取引履歴がわかれば、独身時代に築いた財産を主張することができます。

また、相続で現金の贈与を受け、そのまま口座に保管している場合は、遺言書や遺産分割協議書、贈与契約書などがあると相続分を判断できるでしょう。

なお、金融機関で取引履歴を取得できるのは過去10年程度です。

それ以前のものについては、過去の通帳などがあると、特有財産を主張する際の資料として有効です。

車検証や売買契約書

自分の財産で車を購入した場合は、車検証や売買契約書があるとよいでしょう。

保険証券などの記録

自分が加入して積み立ててきた保険に関しては、保険証券や保険料を支払ったことが確認できる通帳の記録、取引履歴を提示しましょう。

積み立て型の保険は、結婚前に支払った期間が特有財産となります。

売買契約書や不動産登記簿謄本

自分の財産で購入したり、家族から相続されたりした土地や家がある場合は、売買契約書や不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を用意しましょう。

相続財産に関しては、貯金同様に、遺産分割協議書や遺言書などがあると良いでしょう。

証券会社の取引履歴など

独身時代に運用して得た株などの利益に関しては、証券会社の取引履歴などを用いて立証できます。

ただし、継続的かつ頻繁に複数銘柄を売買している場合、証券総合口座内で特有財産と共有財産が混ざってしまうこともあり、特有財産の立証が難しいケースもあります。

相手が財産の使い込みや処分をした場合の対処法

もし相手が共有財産を使い込んだり、勝手に処分したりした場合は、その点を考慮して財産分与に反映させることができます。

ただし、相手が処分した財産が共有財産であることを把握しておく必要があります。

共有財産かどうか立証する方法がない場合は、弁護士に相談しましょう。

また、離婚を切り出す前に、財産を処分させずに守る方法を弁護士に相談しておくことも大切です。

関連記事:離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産や注意点

まとめ

結婚前に自分が貯めたお金や、親から相続された財産などは特有財産として、財産分与の対象にはなりません。

しかし、自分の財産を主張する場合は、それが特有財産だと立証する必要があります。

また、夫婦に収入差があったり、株など分与が複雑な財産があったりする場合は、財産分与で揉める可能性があります。

「特有財産や自分の寄与分をしっかり主張したい」「相手が財産を使い込まないようにしたい」など、財産分与に不安がある場合は、離婚を切り出す前にご相談ください。