離婚「知っトク」ブログ

離婚の財産分与をしない方法|財産分与を払わないとどうなる?

2024.08.30
  • 財産分与

離婚時の財産分与では、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた共有財産を、公平に分けることになります。

しかし、財産形成の中で自分の貢献分が大きい場合は、「財産分与をしたくないな」と感じる人もいるでしょう。

離婚で財産分与をしない方法はあるのでしょうか?

この記事では、離婚で財産分与をしない方法や交渉や提案方法、財産分与の注意点、財産分与を払わないとどうなるのかなどについて解説します。

離婚で財産分与をしない方法

協議で合意を得られればできる

財産分与をしないと離婚できないわけではありません。

そのため、夫婦の話し合いで財産分与をしないと合意が得られれば、財産分与をせずに離婚を成立させることができます。

双方で財産分与の請求権を放棄するのであれば、その旨も離婚協議書に明記しておきましょう。

離婚協議書に明記しておけば、後から請求することはできません。

財産分与の放棄を離婚条件に交渉する

相手が離婚を強く希望している場合は、離婚に応じる代わりに、財産分与の放棄を提案したり、交渉したりする方法もあります。

離婚は話し合いで決着しなければ、成立させるために離婚調停や裁判を行わなければなりません。

2023年の司法統計によると、離婚調停の平均審理期間は6か月以内が30.9%と最多でした。

離婚調停は長いと2年を超えることもあるため、調停や裁判で時間をかけずに離婚することと引き換えに、こうした条件を提示して交渉する方法も考えられるでしょう。

慰謝料を請求しない代わりに放棄を提案する

もし相手が離婚原因となる不法行為をしていた場合は、慰謝料を請求しない代わりに財産分与の放棄を提案する方法もあります。

ただし、相手に不倫やDVなどの不法行為がなければ、そもそも慰謝料の請求はできません。

自分自身がこうした離婚原因のある有責配偶者だと、自分が慰謝料の請求を受けることになるため、注意が必要です。

財産分与は拒否できる?

財産分与は、民法768条により、相手に財産分与を請求できると定められています。

(財産分与)

第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

引用:民法第768条|e-Gov

 

しかし、財産分与や、その支払いを拒否することはできるのでしょうか?

財産の開示や離婚を拒否することはできる

相手から財産分与を求められたら、拒否することはできません。

話し合いの段階では拒否できますが、調停や裁判を申し立てられると、法律にしたがって、財産分与を支払うことになります。

一方で、相手が財産の開示や離婚を求めてきた場合、拒否をすることはできます。

離婚自体はこちらが応じない限り、最終的には裁判で認めてもらうほかありません。

しかし、裁判で離婚をするには、法律上離婚が認められる法定離婚事由(民法第770条)が必要です。

例えば、不倫やDV、夫婦の協力義務に反する行為や、行方不明、強度の精神病、その他結婚を継続しがたい重大な理由がなければ、離婚は認められません。

離婚事由がない場合、相手側は一定期間別居するなどして、婚姻関係の破綻を主張してくるかもしれませんが、それには時間がかかります。

一方で、こちらに法定離婚事由となる原因がある場合、離婚が認められることになるため、注意が必要です。

離婚をしない場合は、夫婦としての義務を果たすように努めましょう。

婚前契約をしていれば拒否できる

結婚する際などに、財産分与をしない旨を婚前契約書や夫婦財産契約書などを結んでいる場合は、財産分与を拒否することができます。

合意後に支払いを拒否することはできない

すでに離婚が成立しており、離婚協議書に財産分与の取り決めについて記されていて、それに合意している場合は、財産分与の支払いを拒否できません

いくら拒否をしていても、離婚協議書があるとなると、裁判で相手の言い分が認められ、差し押さえを受ける恐れがあります。

支払いが難しい場合は、相手と交渉をしてみるのも一つの方法です。

離婚から2年以上経過していれば拒否できる

財産分与を請求する権利は、離婚が成立した日から2年経過すると時効となります。

そのため、離婚後2年以上経過してから、相手が財産分与を請求してきても、拒否することができます

なお、2024年5月に民法の改正が国会で可決され、2026年までに財産分与が請求できる期間は5年に延長されることが考えられます。

また、財産分与の取り決めをしている場合の時効は、合意から10年です。

共働き夫婦は財布が別でも財産分与をしなければならない?

財産分与には、離婚後の配偶者が困窮しないように、扶養的な意味合いも含まれています。

近年は全体の7割が共働き夫婦という統計もありますが、夫婦で財布が別の場合でも、財産分与をしなければならないのでしょうか?

財産分与が必ずしも必要というわけではありませんが、夫婦にはそれぞれ財産分与を求める権利があります

そのため、夫婦間で合意がない限りは、公平に分与をする必要があるでしょう。

ただし、共働きであっても、収入差が特殊な資格やスキルによるものであれば、それを考慮して割合を変えるなど、柔軟に取り決めることも可能です。

財産分与の割合を少しでも多くする方法

財産分与の割合を少しでも多くするには、自分の特有財産、そして夫婦の共有財産をしっかり把握することです。

例えば、独身時代の貯金については特有財産として、通帳などを提示することで、相手に納得してもらえるでしょう。

一方、相手の財産を把握しておけば、共有財産を見つけた際に、主張することもできます。

財産分与や離婚する際の注意点

財産分与をしたくないと思っても、財産を隠すような行為はやめましょう。ここでは、財産分与や離婚をする際の注意点を解説します。

財産を隠さない

財産分与をしたくないからといって、相手にわからないよう財産を隠すのはやめましょう。

財産隠しを行うと、民法の不法行為が成立して、財産分与のやり直しを求められるほか、相手から損害賠償請求を受ける可能性があります。

財産を使い込んだり処分したりしない

同様に、相手に分からないように財産を勝手に使い込んだり、売却や譲渡したりすることもやめましょう。

財産を勝手に使い込んだり、処分したりしても、それは財産分与に考慮されます。

また、別居をするためにお金を引き落とした場合も、婚姻費用ではなく財産分与として考慮されるため、引き落とした分だけ、財産分与が少なくなることが考えられます。

有責配偶者になることをしない

また、注意したいのは、こちらが離婚原因を作った有責配偶者になることです。

有責配偶者となってしまうと、裁判で離婚が認められ、財産分与が回避できなくなります。

また、慰謝料請求を受ける恐れがあるため、離婚原因を作らないようにすることが大切です。

財産分与を払わないとどうなる?

財産分与を払わないとどうなるのでしょうか?財産分与の取り決めがあるかどうかによって異なります。

相手が財産分与を放棄しているのであれば問題ない

離婚時に相手が財産分与の放棄に合意しており、かつそれが離婚協議書に残されているのであれば、後から財産分与を請求されても、支払いを拒否できます。

そのまま財産分与を支払わずにいても、問題はありません。

合意した場合は差し押さえを受ける可能性がある

一方で、財産分与の支払いについて合意して、離婚協議書に記録されている場合は、財産分与を支払わないと、差し押さえを受ける可能性があります。

差し押さえは「債務名義」の役割を持つ文書がなければ、実行することができません。

裁判の確定判決や、調停調書、執行文のついた公正証書は債務名義となります。

離婚協議書を執行文付きの公正証書で作成している場合は、取り決め通りに支払いをしないと、すぐに差し押さえを受ける恐れがあるでしょう。

差し押さえが可能となるのは、預貯金、給料、家などの不動産、車などの動産です。

債務名義に記された金額を回収するまで、差し押さえは何度でも可能となるため、支払いが難しい場合は、相手にその旨を伝えて待ってもらうなどした方がよいでしょう。

財産分与をしないとかえって時間や費用がかかることも

共有財産に対して、自分の貢献度が大きい場合、離婚で財産分与をしたくないと考える人もいるでしょう。

しかし、相手が財産分与を求める以上、調停や裁判で財産分与が決定することになります。

相手が調停や裁判で財産分与を求めるとなると、時間をかけて争ったうえ、最終的に財産分与をしなければなりません。

調停や裁判は、平日昼間に審理が行われますし、わざわざ仕事を休んで出席する必要があります。

また、裁判まで発展してしまった場合、自分で対応するのが難しいため、弁護士に依頼することになるでしょう。

司法統計によると、2022年の離婚裁判の平均審理期間は、14.7~19.8ヶ月でした。裁判にまで発展すると、1~2年かかることが予想されます。

このように離婚に時間がかかると、私生活に影響が出ることも考えられます。

そのため、ある程度妥協をして財産分与をすべきかどうか、今後への影響や損失なども考慮して、判断することが大切です。

財産分与をしない時も離婚協議書を作成する

仮にもし財産分与をしないと決めた場合でも、離婚協議書を作成して、その旨をしっかり明記してください。

離婚成立から2年間は、財産分与を請求する権利があります。

口頭で財産分与をしないと約束をしても、相手が調停を申し立ててきたときに、財産分与をしないと約束したことが証明できないからです。

のちのトラブル回避のためにも、離婚協議書を作成して記録を残すようにしましょう。

まとめ

夫婦の共有財産を築くのに大きく寄与した人からすると、2分の1に分けることが不公平だという意見もあります。

そのため、財産分与をする際は、自分の貢献度を主張することも大切です。

特有財産や共有財産についても、しっかり把握し、証拠を提示して相手に理解してもらうようにしましょう。

また、話し合いの中で、相手と合意が得られれば、財産分与をしないで離婚できる可能性もあります。

「いくらくらい財産をもらえるのだろう?」「自分の貢献度を主張したい」など、有利に離婚をしたいと考える人は、事前に弁護士に相談しておくのも有効です。

弁護士法人なかま法律事務所では、財産分与に関しても豊富な実績がありますので、お気軽にご相談ください。