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熟年離婚の財産分与|専業主婦の取り分や退職金・年金分割はどうなる?

2024.09.06
  • 財産分与
夫婦喧嘩

監修:中間隼人 弁護士(なかま法律事務所 代表 / 年間400件超の離婚・慰謝料相談実績・横浜)

「専業主婦の自分でも、財産分与は受け取れるの?」「共働きだったら、財産分与の割合は変わるの?」「持ち家や退職金、年金はどうやって分けるの?」——長年連れ添った熟年離婚では、こうした財産に関する不安が次々に浮かぶのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、熟年離婚でも、婚姻中に夫婦で築いた財産は原則として2分の1ずつ分ける「財産分与」の対象になります。専業主婦・専業主夫でも、共働きでも、名義がどちらか一方になっていても、実質的に夫婦の協力で築いた財産であれば分与の対象になり得ます。ただし、持ち家・住宅ローン・退職金・相続財産・年金分割などは個別の事情で判断が変わるため、離婚を切り出す前に財産を整理しておくことが、損をしないための第一歩です。

この記事では、なかま法律事務所の弁護士が、熟年離婚の財産分与の基本から、専業主婦・共働きの場合の考え方、持ち家・退職金・年金分割の扱い、相手が財産を隠している場合の対処法、離婚前に準備すべき資料まで、実際の解決事例を交えて解説します。

熟年離婚の財産分与について今すぐ弁護士に相談したい方は、横浜のなかま法律事務所にご連絡ください。初回相談無料・平日18時まで受付・オンライン相談可能。

熟年離婚の財産分与とは?まず押さえるべき基本

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を、離婚時に公平に清算する制度です(民法第768条)。

まず、熟年離婚の財産分与で確認すべき主な財産を整理すると、次のようになります。

  • 預貯金
  • 自宅・不動産
  • 住宅ローン
  • 退職金
  • 生命保険・学資保険などの保険
  • 株式・投資信託
  • 自動車
  • 年金分割
  • 相手名義の財産
  • 借金・ローン

婚姻期間が長い熟年離婚では、これらの財産の種類が多く、金額も大きくなりやすいのが特徴です。とくに退職金・年金・自宅は老後の生活資金そのものであるため、財産分与の結果がその後の暮らしを大きく左右します。

財産分与の基本的な考え方(2分の1ルール)

財産分与の割合は、夫婦それぞれの財産形成への貢献度にかかわらず、原則として2分の1ずつに分ける「2分の1ルール」が実務上の基本とされています。たとえ一方の収入だけで生計を立てていたとしても、それはもう一方の家事・育児といった貢献があったからこそ得られたものと評価されるためです。

この考え方は、民法第768条に基づくものですが、2026年4月1日に施行された改正民法768条3項では、婚姻期間や生活水準など一切の事情を考慮したうえで、婚姻中の財産形成への各当事者の寄与の程度は「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と規定され、2分の1ルールの考え方が条文上に明文化されました。従来は判例・実務上のルールとして運用されてきた考え方が、法律上より明確な位置づけになったといえます。

あわせて今回の改正では、改正家事事件手続法・改正人事訴訟法により、家庭裁判所が当事者に対し、財産分与の対象となる財産の状況について情報開示を命じることができる制度も新設されています(相手が財産を開示しない場合の対応は後述します)。

なお、財産分与を請求できる期間(除斥期間)についても、2026年4月1日以降に成立した離婚については、従来の「離婚から2年以内」から「離婚から5年以内」に延長されました。2026年3月31日以前に離婚が成立している場合は、引き続き2年以内が期限となる点に注意してください。

ただし、財産分与は「必ず全財産をきっちり半分にする」という単純な話ではありません。持ち家・住宅ローン・退職金・相続財産・年金分割などは、個別の事情によって判断が変わる部分が多くあります。次の章から、それぞれの論点を順番に整理していきます。

熟年離婚で財産分与の対象になるもの・ならないもの

財産分与を正しく進めるには、まず「何が対象になる財産か」を把握することが欠かせません。財産は大きく「共有財産」と「特有財産」に分かれ、分与の対象となるのは共有財産のみです。

対象となる共有財産

共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して取得した財産です。名義がどちらになっているかは問われません。夫名義の預金であっても、妻の家事・育児の貢献があって築かれたものであれば、共有財産として扱われます。

財産の種類 具体例・注意点
預貯金 夫婦・子ども名義を問わず、婚姻期間中に増えた分が対象
不動産 婚姻期間中に購入した自宅、マンション、土地など
退職金・年金 婚姻期間に対応する部分が対象(後述)
保険 生命保険・学資保険など。解約返戻金相当額が対象
有価証券 株式・投資信託など、婚姻期間中に取得したもの
自動車・家具家電 婚姻期間中に取得したもの
負債(住宅ローンなど) 夫婦の生活のために生じた借金はマイナスの財産として考慮

【関連記事】夫婦の共有財産とは|どこまで含まれる?勝手に使われた場合の対処法

対象とならない特有財産

一方、結婚前から持っていた財産や、夫婦の協力と無関係に得た財産は「特有財産」として、原則財産分与の対象になりません。

  • 結婚前に貯めていた預貯金・保有していた不動産や株式
  • 親からの相続・贈与で得た財産
  • 個人的な趣味の物品、嫁入り道具など
  • 別居後に得た収入

ただし、相続財産だからといって一律に対象外と単純化はできません。たとえば相続した不動産の固定資産税を家計(共有財産)から支払っていた場合や、夫婦で協力してリフォームした場合は、その価値の維持・増加に貢献した部分が財産分与の対象とみなされる可能性があります。結婚前から使っている口座は、通帳を遡ってどこまでが自分の貯金かを確認しておく必要があります。

【関連記事】財産分与の対象にならないものは?退職金や親からの贈与はどうなる?

専業主婦・専業主夫の熟年離婚で財産分与はどうなる?

専業主婦(主夫)でも、収入がなかったことを理由に財産分与の権利がなくなることはありません。家事・育児・介護といった家庭への貢献は、財産形成への貢献として法的に評価されるためです。夫(妻)名義の預貯金や不動産であっても、婚姻期間中に得たものであれば共有財産となり、原則としてその2分の1を受け取る権利があります。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • 結婚前から一方が持っていた財産や、相続・贈与で得た財産(特有財産)は区別して整理する必要があること
  • 個別の事情(特殊な資格・技能による著しく高額な資産形成など)によっては、割合の調整が問題になるケースもあること

「自分には収入がなかったから」と権利を諦める必要はありませんが、実際の取り分は財産の内容や事情によって変わるため、まずはご自身の家庭にどのような財産があるかを整理してみましょう。

関連記事:専業主婦も離婚で財産分与が請求可能!平均額や家事をしない場合は?

共働き夫婦の熟年離婚で財産分与はどう考える?

共働き夫婦の場合、「自分の方が収入が多いのだから、稼いだ分は多く受け取りたい」と感じる方もいるでしょう。しかし、共働き夫婦であっても、財産分与は基本的に2分の1ルールで分けることになります。これは専業主婦・専業主夫のケースと同様、夫婦間に収入差があっても、双方の協力によって得られた財産だと評価されるためです。

共働き夫婦で特に整理しておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 収入差があっても、必ずしも収入割合どおりに分けるとは限らないこと
  • 名義・収入額だけでなく、夫婦の協力関係や財産形成の経緯が問題になること
  • それぞれの個人口座・投資口座がある場合、婚姻中に形成された部分かどうかを整理する必要があること
  • 特有財産(結婚前の貯金・相続財産など)と共有財産を分けて確認すること

なお、収入が高い理由が、本人の特殊な資格やスキルによるものである場合など、ごく例外的なケースでは、2分の1ルールが修正される可能性もゼロではありません。ただし一般的な共働き夫婦であれば、原則どおり2分の1と考えてよいでしょう。

熟年離婚の財産分与は原則2分の1?割合や金額の目安

「熟年離婚の財産分与は、実際いくらもらえるのか」は多くの方が気になる点です。結論から言うと、財産分与の金額に決まった「相場」はありません。夫婦が婚姻期間中に築いた共有財産の総額によって、分与額は大きく変わるためです。

なお、2023年の司法統計によると、結婚期間20年を超える夫婦が調停や審判で財産分与を取り決めた金額の内訳は次の通りでした。

  • 100万円以下:7.9%
  • 100万円超200万円以下:7.3%
  • 200万円超400万円以下:12.5%
  • 400万円超600万円以下:10.3%
  • 600万円超1000万円以下:16.1%
  • 1000万円超2000万円以下:16.9%
  • 2000万円超:11.3%
  • 決まらず・算定不能:17.7%

3割程度の夫婦は、財産分与の金額が1,000万円を超えています。婚姻期間が長く、退職金や不動産といった大きな財産を持つ熟年離婚では、この層に該当する可能性が相対的に高くなります。最新の年度別データは、裁判所 司法統計年報(家事編)でも確認できます。

シミュレーション:専業主婦世帯・共働き世帯の目安

たとえば、次のような世帯の場合を考えてみます(いずれも一例であり、実際の金額は個別の事情で変わります)。

ケース 共有財産の内訳(目安) 合計 分与額の目安(2分の1)
夫が会社員・妻が専業主婦(婚姻30年) 預貯金1,000万円/持ち家2,000万円/保険解約返戻金500万円/退職金見込1,500万円/自動車100万円 5,100万円 2,550万円
共働き夫婦(婚姻25年) 預貯金合計1,400万円/有価証券400万円/持ち家2,500万円(ローン残500万円)/夫婦の退職金見込1,900万円 5,700万円(負債控除後) 2,850万円

このように、専業主婦・共働きのどちらであっても、まずは共有財産をリストアップし、合計額を2で割ることで、おおよその目安をつかむことができます。ただし、持ち家・退職金・年金分割には個別の計算方法があるため、次の章から順番に確認していきましょう。

持ち家・住宅ローンがある場合の財産分与の考え方

熟年離婚の財産分与でもっとも揉めやすいのが、持ち家(自宅)の分け方です。預貯金と違って綺麗に半分に分けることができず、住宅ローンの有無によっても対応が変わります。

住宅ローンがない場合の分け方

分割方法 概要 メリット デメリット
換価分割 家を売却し、代金を夫婦で分ける 公平で明確、トラブルが起きにくい 売却に時間がかかる、希望価格で売れるとは限らない
代償分割 一方が家を取得し、相手に評価額の半分を代償金として支払う 住み慣れた家に住み続けられる 評価額で揉める可能性、取得側に資力が必要
共有名義のまま 名義を夫婦共有のままにする すぐに売却・代償金支払いが難しい場合の一時的な選択肢 将来の売却・相続時に相手の同意が必要になり、トラブルに発展しやすいため推奨されない

片方が住み続ける場合は、不動産の査定を行い、住む側が査定額の半分相当を相手に支払うのが基本的な考え方です。査定は1社だけでなく複数社に依頼し、適正な価格を見極めることをおすすめします。また、住み続ける側への名義変更も忘れずに行いましょう。名義変更をしないと、名義人が勝手に自宅を処分できる状態が残ってしまいます。

住宅ローンが残っている場合(オーバーローン・アンダーローン)

  • アンダーローン:自宅の査定額が住宅ローンの残高を上回っている状態。「査定額-残高」のプラス部分が財産分与の対象になります。
  • オーバーローン:自宅の査定額が住宅ローンの残高を下回っている状態。原則として資産価値がないとみなされ、財産分与の対象にはなりませんが、誰がローンを返済し続けるか、誰が住み続けるかは別途協議が必要です。

住宅ローンが残っている自宅の名義変更・ローン名義人の変更には、金融機関の承諾が必要です。名義人でない側が住み続け、名義人がローンを支払う形にする方法もありますが、名義人の返済が滞れば自宅を差し押さえられるリスクがあります。連帯保証人になっている場合も、支払いの遅れがあれば請求を受ける可能性がある点に注意してください。

なお、自宅を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は譲渡所得税が、取得した側には不動産取得税・登録免許税がかかる可能性があります。税金の詳細な取り扱いは個別の事情によって異なるため、専門的な内容は下記の関連記事もあわせてご確認ください。

【関連記事】離婚時の家の財産分与|住宅ローンがある・妻が住み続ける場合を解説離婚後も住宅ローンが残る家に妻が住む方法|リスクと解決策離婚の財産分与は税金がかかる?損をしないための基礎知識と注意点

退職金は熟年離婚の財産分与に含まれる?

退職金は、婚姻期間に対応する部分について財産分与の対象となる場合があります。ただし、退職金であれば必ず全額が対象になるわけではなく、「支払われているかどうか」「勤務先の退職金規程の有無」によって扱いが変わります。

すでに支払われている退職金

すでに支給されている退職金は、次の式で分与対象額の目安を計算できます。

分与対象額 = 退職金 ×(婚姻期間 ÷ 勤続年数)

例:退職金1,000万円、勤続年数40年、婚姻期間30年の場合
1,000万円×30年÷40年=750万円が分与対象額となり、その2分の1である375万円が目安になります(別居期間がある場合は婚姻期間から差し引いて計算します)。

まだ支払われていない退職金

定年退職まで期間があり、退職金がまだ支払われていない場合でも、支給の可能性が高いと見込まれる状況であれば、財産分与の対象として考慮されることがあります。計算方法には、離婚時点で自己都合退職したと仮定して計算する方法と、退職時に受け取る予定額から中間利息などを差し引いて計算する方法があります。

退職金は会社の就業規則・退職金規程、勤続年数、退職時期によって扱いが大きく変わり、開示に協力的でない勤務先もあるため、計算が複雑になりがちです。詳しい計算方法や注意点は、下記の関連記事もあわせてご確認ください。

【関連記事】退職金は財産分与の対象?離婚前に知っておくべき計算方法と注意点

熟年離婚では年金分割も忘れずに確認する

年金分割は、財産分与とは別の制度です。婚姻期間中の厚生年金の保険料納付実績を、離婚時に夫婦で分割する仕組みで、将来受け取る年金額に反映されます。

分類 具体的な年金の種類
分割の対象となる年金 厚生年金(共済年金は平成27年10月以降、厚生年金に一元化)
分割の対象とならない年金 国民年金(老齢基礎年金)、国民年金基金、iDeCoなど(※iDeCoなどは年金分割の対象ではありませんが、夫婦の共有財産として財産分与の対象になる可能性はあります)
種類 対象期間 分割割合 手続き
合意分割 婚姻期間中の厚生年金加入期間全体 夫婦の合意で決定(上限2分の1) 夫婦双方(または代理人)が年金事務所で手続き
三号分割 平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間 自動的に2分の1 第3号被保険者だった側が単独で請求可能

専業主婦(主夫)であっても、平成20年3月31日以前の婚姻期間については、三号分割の対象にならず、合意分割の手続きが必要になる点に注意してください。年金分割の請求には、原則として離婚成立日の翌日から2年以内という期限があるため、離婚届を提出したら早めに、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得しておくことをおすすめします。

【関連記事】熟年離婚とは|お金で後悔しないための財産分与と年金分割の基礎知識年金分割の手続きの流れや必要書類

参照:離婚時の年金分割|日本年金機構

相手が財産を隠している可能性がある場合の注意点

離婚を切り出すと、相手が財産を渡したくない一心で、預貯金を引き出したり、保険を解約したり、財産を隠したり処分してしまったりする恐れがあります。とくに、相手が家計や資産を主に管理してきた場合は注意が必要です。

最も重要な対策は、離婚の話し合いを始める前に、夫婦の共有財産を正確に把握し、その証拠を確保しておくことです。

  • 預貯金:金融機関名・支店名・口座番号がわかる通帳のページを記帳のうえコピーまたは撮影する
  • 不動産:登記事項証明書、固定資産評価証明書を取得する
  • 生命保険:保険証券を確認し、保険会社・契約者・解約返戻金額を確認する
  • 有価証券:証券会社名・口座番号・残高がわかる取引残高報告書を確保する
  • 自動車:車検証を確保し、査定額を調べておく

相手が財産の開示に協力的でない場合は、弁護士に依頼することで「弁護士会照会制度」を利用した金融機関等への照会や、調停・裁判に移行した場合の「調査嘱託」、相手による財産処分を防ぐ「保全処分(仮差押え)」といった法的手続きを検討できます。

また、2026年4月1日施行の改正家事事件手続法・改正人事訴訟法により、家庭裁判所の手続きの中で、裁判所が当事者に財産状況の情報開示を命じることができる制度が新設されました。正当な理由なく開示命令に従わない場合や、虚偽の開示をした場合には10万円以下の過料の対象となります。「相手が何を持っているかわからない」という不安がある場合も、以前より状況を整理しやすくなっている点は知っておいてよいでしょう。

熟年離婚で損しないために離婚前に準備すべきこと

離婚を切り出す前に、夫婦の共有財産を正確に把握し、資料をそろえておくことが、後悔しない財産分与の第一歩です。

財産の種類 収集すべき資料の例 入手先・確認先
預貯金 通帳、残高証明書、取引履歴 各金融機関
不動産 登記事項証明書、固定資産評価証明書、住宅ローン残高証明書 法務局、市区町村役場、金融機関
保険 保険証券、解約返戻金額証明書 各保険会社
株式・投資信託 取引残高報告書 証券会社
自動車 車検証、査定書 運輸支局、中古車販売店
退職金 退職金規程、退職金見込額がわかる資料 勤務先
年金 年金分割のための情報通知書、ねんきん定期便 年金事務所(日本年金機構)
負債 金銭消費貸借契約書、ローン残高証明書 各金融機関

これらの資料は、財産分与の基準時(原則として離婚時。離婚前に別居している場合は別居時)における財産の価値を証明するために欠かせません。「早く離婚したい」という気持ちだけで先に別居や離婚を進めてしまうと、後から資料が集めにくくなることもあるため、可能な範囲で離婚前に整理しておくことをおすすめします。

財産分与の話し合いがまとまらない場合の進め方

手続き 特徴
協議離婚 夫婦間の話し合いのみで解決。合意内容は離婚協議書(できれば公正証書)にまとめる
離婚調停 家庭裁判所で調停委員を介して話し合う。合意内容は調停調書に記載され、法的効力を持つ
離婚裁判(訴訟) 調停が不成立の場合の最終手段。裁判官が財産分与の方法などを判断する

話し合いで合意できた場合は、必ず離婚協議書に残し、可能であれば公正証書にしておくことを推奨します。「強制執行認諾文言」を付けておけば、相手の支払いが滞った場合に、裁判を経ずに給与や預金の差し押さえが可能になります。話し合いがまとまらない場合や、相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に「離婚調停(夫婦関係調整調停)」を申し立てる流れになります。

財産分与と慰謝料の違い

「財産分与」と「慰謝料」は、しばしば混同されますが、法的には別の制度です。

  • 財産分与:婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を清算するもの。離婚の原因(どちらに非があるか)は問われません。
  • 慰謝料:不貞行為やDVなど、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償。有責な配偶者に対して請求するものです。

そのため、相手に離婚原因がある場合は、財産分与とは別に慰謝料を請求できる可能性があります。たとえばモラハラが離婚原因の場合など、慰謝料の扱いは原因によって考え方が異なります。ただし、話し合いの中で慰謝料分を財産分与に上乗せする形(慰謝料的財産分与)で解決することもあり、その場合は離婚協議書にその旨を明記しておくことが大切です。慰謝料の条件や相場について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【関連記事】熟年離婚で相手に慰謝料を請求するには?

【関連記事】モラハラで離婚する場合の慰謝料相場|慰謝料請求が難しい理由

解決事例:財産分与額を整理し、納得のいく条件で協議離婚が成立したケース

ご依頼者:50代男性

状況:性格の不一致等をきっかけに離婚を決意し、別居。別居後すぐに弁護士から妻側へ受任通知を送付し、財産分与額を争点として交渉を開始しました。

なかま法律事務所の対応:

  • 依頼者が婚姻前から所有していた自宅不動産について、婚姻後から別居期間中に支払ったローン相当額分のみが財産分与の対象となることを整理して説明
  • その他の財産についても、資料と計算内容を妻側に提示し、対象となる範囲を明確化

結果:受任時点では300万〜400万円程度の財産分与額となる可能性がありましたが、財産分与額210万円で妻側の納得を得て、協議離婚が成立しました。

ポイント:婚姻前から所有していた不動産のように、共有財産と特有財産が混在するケースでは、資料に基づいて対象範囲を丁寧に整理することが、適正な金額での早期解決につながります。

▶ 解決事例の詳細はこちら

相手名義の財産や退職金の扱いがわからない場合は、離婚条件を決める前に一度整理することが大切です。弁護士に相談することで、財産分与の対象になり得る財産や、確認すべき資料の見通しを立てやすくなります。

横浜・神奈川で熟年離婚の財産分与を相談する前に整理したいこと

熟年離婚の財産分与では、預貯金や不動産だけでなく、退職金・保険・株式・年金分割など、老後の生活設計に関わる項目を整理することが重要です。専業主婦・共働きのどちらであっても、婚姻中に夫婦で築いた財産は財産分与の対象になり得ます。横浜・神奈川で熟年離婚を検討している場合も、まずは夫婦の財産状況を一覧にし、離婚後の住まいと生活費の見通しを確認することが大切です。

弁護士に相談すると、財産分与の対象になり得る財産の整理、相手方との交渉方針、退職金や不動産の扱い、年金分割の手続きなどについて、個別事情に応じた見通しを確認できます。なかま法律事務所では、横浜を中心に熟年離婚の財産分与に関するご相談を承っており、初回相談は無料です。「まだ離婚を決めきれていない」という段階でのご相談も可能です。弁護士費用の目安は離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場、当事務所のご契約の流れ・報酬についてはご契約の流れ/報酬についてをご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 熟年離婚の財産分与とは何ですか?

婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を、離婚時に公平に清算する制度です。名義がどちらか一方であっても、実質的に夫婦の協力で築いた財産であれば対象になり得ます。持ち家・退職金・年金分割など、老後の生活に関わる財産が対象に含まれる点が、熟年離婚特有の特徴です。

Q2. 熟年離婚の財産分与は必ず半分ずつですか?

実務上は、夫婦の貢献度にかかわらず2分の1ずつに分ける「2分の1ルール」が原則です。2026年4月1日施行の改正民法でもこの考え方が明文化されました。ただし、特有財産(結婚前の財産・相続財産など)が混在している場合や、著しい特殊事情がある場合は、割合や対象範囲の調整が問題になることもあります。

Q3. 専業主婦・専業主夫でも財産分与を受けられますか?

受けられます。家事・育児・介護といった貢献は、財産形成への貢献として評価されるため、収入がなかったことを理由に権利がなくなることはありません。ただし、結婚前からの財産や相続財産は区別して整理する必要があります。

Q4. 共働き夫婦でも熟年離婚で財産分与は必要ですか?

必要です。共働きで収入差があっても、婚姻中に形成された財産は原則2分の1で分けるのが基本的な考え方です。収入割合どおりに分けるわけではなく、名義や収入額だけでなく夫婦の協力関係が考慮されます。

Q5. 退職金は熟年離婚の財産分与の対象になりますか?

婚姻期間に対応する部分は対象になる場合があります。ただし退職金全額が自動的に対象になるわけではなく、支給済みか未支給か、勤務先の規程や勤続年数によって扱いが変わります。詳しい計算方法は個別の事情により異なるため、資料を確認したうえで整理することが大切です。

Q6. 持ち家や住宅ローンは財産分与でどう扱われますか?

売却して代金を分ける「換価分割」と、一方が住み続けて代償金を支払う「代償分割」が主な方法です。住宅ローンが残っている場合は、査定額がローン残高を上回るか(アンダーローン)下回るか(オーバーローン)によって対応が異なります。名義変更やローンの扱いには金融機関の承諾が必要です。

Q7. 年金分割は財産分与と何が違いますか?

年金分割は財産分与とは別の制度で、婚姻期間中の厚生年金の納付実績を分割するものです。国民年金部分は対象外で、自動的に分割されるわけではなく、原則離婚成立日の翌日から2年以内に手続きが必要です。財産分与と混同せず、それぞれ別に確認することが大切です。

Q8. 相手名義の預貯金や不動産も財産分与の対象になりますか?

対象になる場合があります。財産分与では名義よりも、婚姻期間中に夫婦の協力で形成されたかどうかが重視されます。相手名義であっても、実質的に夫婦の財産であれば分与の対象として主張できる可能性があります。

Q9. 相手が財産を隠している可能性がある場合はどうすればよいですか?

まずは通帳・保険証券・登記事項証明書など、確認できる範囲の資料を離婚前に確保しておくことが重要です。相手が開示に協力的でない場合は、弁護士による弁護士会照会や、調停・裁判での調査嘱託、保全処分(仮差押え)といった手続きが考えられます。2026年4月施行の改正法により、裁判所が財産状況の開示を命じる制度も新設されています。

Q10. 財産分与について弁護士に相談すべきタイミングはいつですか?

離婚を決意した後だけでなく、「まだ迷っている」段階での相談も可能です。とくに熟年離婚では対象財産が多岐にわたるため、離婚を切り出す前に財産状況を整理し、早めに弁護士に相談することで、不利な条件で合意してしまうリスクを減らせます。

まとめ|熟年離婚の財産分与は老後の生活設計とあわせて考える

熟年離婚の財産分与は、婚姻期間中に築いた共有財産を原則2分の1で清算する制度です。専業主婦・共働きのいずれであっても、家事・育児などの貢献や協力関係が評価されるため、収入の有無だけで取り分が決まるわけではありません。

一方で、持ち家・住宅ローン・退職金・年金分割・相手名義の財産・財産隠しへの対応など、熟年離婚ならではの論点は多岐にわたります。2026年4月に施行された改正民法・改正家事事件手続法・改正人事訴訟法により、2分の1ルールの明文化、財産状況の開示を命じる制度の新設、請求期間の5年への延長といった変化もあり、以前より財産を整理しやすくなった面もあります。

「損をしない財産分与にしたい」「離婚前に何を確認すべきか整理したい」「相手に財産を隠されないか不安」という方は、感情だけで離婚条件を決めてしまう前に、横浜・神奈川で熟年離婚の財産分与に強い弁護士へご相談ください。なかま法律事務所では初回相談無料でお話を伺っています。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)