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離婚時の家の財産分与|住宅ローンがある・妻が住み続ける場合を解説

2025.03.21
  • 財産分与
家

離婚する際は、結婚生活中に夫婦で築いた財産を原則2分の1として公平に分ける「財産分与」を行います。

財産分与はその後の生活基盤を左右する重要なものですが、持ち家や住宅ローンが残る家がある場合、家を分ける方法に悩むことは少なくありません。

この記事では、離婚時の家の財産分与について、以下の点を解説します。

離婚時に家を財産分与する方法

財産分与の際、家の扱い方にはいくつかの選択肢があります。主な方法としては「家を売る場合」と「家を売らない・片方が住む場合」の2つが考えられます。

家を売る場合

家を財産分与するシンプルな方法は、家を売却して現金化し、その金額を夫婦で分けることです。

売却後に、不動産会社への仲介手数料や名義変更の費用を差し引いた分を夫婦で公平に分けます

ただし、住宅ローンが残っている場合は、家の売却価格と残債によって対応が異なるため注意が必要です。住宅ローンについては後述します。

家を売らない・片方が住む場合

家を売却せず、どちらかが住み続ける選択肢もあります。この場合、住み続ける側が出て行く側に対して、持ち家の評価額の半分を現金(代償金)を支払います

代償金を支払う場合は、持ち家の評価額を算定する必要があります。家の評価額の基準には以下のようにさまざまなものがあります。

  • 固定資産税評価額
  • 相続税を計算する路線価
  • 不動産を売却した場合の時価(市場価格を基本に算出された金額)

基本的には時価によって判断します。時価は、複数の不動産会社に査定を出してもらうか、不動産鑑定をしてもらって算定します。

家を売却せず片方が住む場合、引っ越しをしなくて済み、子どもや自分の生活環境が大きく変わらない点はメリットです。

なお、住宅ローンが残っていると支払いが継続されるため、その点も考慮して判断する必要があります。住宅ローンが残っている場合については後述します。

【関連記事】離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産

離婚時の財産分与で家のローンがあるとどうなる?

離婚時に持ち家があると、その家に残っている住宅ローンが大きな問題となります。住宅ローンがある場合、財産分与をどうするかは非常に悩ましいポイントです。

特に、ローンが残っている家をどう扱うかによって、夫婦双方の今後の生活にも大きく影響します。

ここでは、住宅ローンがある家を財産分与する際のポイントをわかりやすく解説します。

家の住宅ローンを払う人

夫婦が生活する上で生じた生活費、光熱費、家賃、家族の医療費、子どもの教育費などの借金は、日常家事債務として、財産分与の対象となります。

民法第761条には、夫婦の生活で生じた借金は連帯してその責任を負うと定められているためです。

(日常の家事に関する債務の連帯責任)

第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

引用:民法第761条 – e-Gov

同様に、住宅ローンについても、夫婦の共有財産形成のために生じた債務は財産分与の対象となり、夫婦連帯で支払う必要があります。

一方で、借金は財産分与の対象外とする説も存在し、裁判でも判断が分かれています。

また、家のローンが売却価格よりも多いオーバーローンの場合、財産的価値がないとして財産分与の対象から外れることがあります。その場合、支払い義務を負うのはローンの契約者です。

実際のケースでは、夫婦間の協議や裁判所の判断によって異なります。持ち家以外の財産なども考慮して総合的に判断する必要があるため、弁護士に相談した方がよいでしょう。

【関連記事】財産分与の対象にならないものは?退職金や親からの贈与はどうなる?

家がアンダーローンの場合の分け方

持ち家の住宅ローンが残っていても、住宅ローンの残高よりも高い金額で売却できるアンダーローンの状態であれば、財産分与でトラブルになる可能性は低いでしょう。

例えば、住宅ローンの残高が1,000万円残っていても、持ち家の価値が高く2,000万円で売却できるのであれば問題ありません。

この場合は、価格から残債を引いた残りの1,000万円とその他の共有財産を合算して、二人で公平にわけることになります。

アンダーローンの場合は、以下の方法で財産分与を行います。

  • アンダーローンの家を売却して残高を完済した後、残りを夫婦で分ける
  • どちらかが家を取得して、他の貯金などで財産分与を調整する

家がオーバーローンの場合の分け方

問題は家がオーバーローンの場合です。オーバーローンとは、ローン残高が家の評価額を上回っている場合です。

例えば、ローン残高が2,000万円で、家の評価額が1,000万円の場合、ローン残高の1,000万円は残ったままとなるため、夫婦もしくは片方が支払いを継続しなければなりません。

家がオーバーローンの場合、以下のようなさまざまな方法があります。

  • オーバーローンの家を売却して負債は共有財産から支払う
  • オーバーローンの家を売却して、夫婦でローン残高を返済していく
  • オーバーローンの家を売却して、住宅ローンの契約者(返済義務者)だけで返済をしていく
  • 住宅ローンの契約者が持ち家を取得して、出て行く側は財産分与を請求しない
  • 住宅ローンの契約者に家賃を支払い、名義人でない側が住み続ける など

しかし、オーバーローンの状態のまま離婚するとさまざまなリスクがあるため注意が必要です。

オーバーローンのまま離婚するリスクや、住宅ローンが残る家に妻が住む方法などについては後述します。

家を財産分与する際の流れ

離婚時に行う家の財産分与は、離婚後の生活も左右する重要なものです。そのため、正確な情報を確認し、適切な手続きを進めることが望ましいです。

特に持ち家がある場合、その名義やローンの状況をきちんと把握しておく必要があります。ここでは、家を財産分与する際の具体的な流れを解説します。

家の名義人を確認する

まず最初に確認すべきは、家の名義人が誰であるかという点です。家の売却などは名義人でなければ行えません。

また、共有名義となっている場合は、夫婦の合意がなければ売却やリフォームなどができません。

家を管理する際にトラブルとなる可能性があるため、家を売却しない場合は、住む人の名義に変更した方がよいでしょう。

家の名義人は、法務局で取得する不動産登記簿(登記事項証明書)を確認することで、家の所有者や持分割合を把握できます。

住宅ローンの契約内容・残債を確認する

次に確認するのは、住宅ローンの契約内容や残債、連帯保証人です。

ローン契約者がどちらなのか、現在の返済状況や残債額がどれほどか、誰が連帯保証人なのかを正確に把握しておくことが重要です。

契約内容や連帯保証人、ローン残高は以下の資料で確認できます。

  • 住宅ローンの契約書
  • 住宅ローンの残高証明書
  • 契約時に受け取った返済計画書

住宅ローンを売却する場合は、ローン残高を確認しておく必要があります。

家の評価額を確認する

財産分与を進めるには、家の評価額を正確に知る必要があります。時価を知るには、複数の不動産業者などに査定を依頼するとよいでしょう。

家がアンダーローンなのか、オーバーローンなのかによっても選択肢は異なります。住宅ローンが残り、オーバーローンの家を売却する場合は、任意売却を検討する方法もあります。

本来持ち家はローン完済まで金融機関が担保としているため、勝手に売却できません。金融機関と合意の上で売却するのが任意売却です。

分与方法を話し合う

家をどう分けるかについては、夫婦でしっかりと話し合うことが重要です。家の財産分与では以下の点を確認して話し合いを進めましょう。

  • 持ち家を売却するかどうか
  • オーバーローンの家を売却しない場合、ローンはどちらがどの程度の割合で負担するのか
  • どのような方法で住宅ローンを支払うのか(共有財産からの支払いの可否)
  • どちらが住むのか
  • 名義人をどちらにするのか、共有名義か単独名義か

共有名義でローンを組んでいる場合には、離婚後の支払い負担、名義人についても話し合っておきましょう。

また、夫名義でローンが組まれているが、離婚後も妻が住む場合、ローンの支払いや名義変更などを協議しなければなりません。

特にローンが残っている場合、金融機関に相談しても名義変更が認められない可能性が高いため、注意が必要です。

離婚協議書を作成する

話し合いがまとまったら、離婚協議書を作成し、合意内容を明確にしておきましょう。

財産分与に関する取り決めや住宅ローンの支払い方法、名義変更の手続きなどを具体的に記載しておくことで、後々のトラブルを防止できます。

離婚時の家の財産分与については、以下の記事でもさらに詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

【関連記事】財産分与で家を残す場合はどうする?妻や夫が住み続けるときの注意点

離婚時の財産分与で住宅ローンが残る家に妻が住む方法

離婚をしても住宅ローンが残る家に妻が住み続けたいと考えることもあるでしょう。ここでは、離婚後も妻が住む方法をわかりやすく解説します。

契約者の夫に家賃を支払って住む

住宅ローンの契約者が夫のままで、妻がそのまま住み続ける場合には、家賃を支払う形で解決する方法があります。

夫は住宅ローンを妻に負担してもらうことができ、妻は家に住み続けられるメリットがあります。

一方で、住宅ローンを完済するまでは妻から夫に家賃を払い続ける必要があり、夫との関係が続く点はデメリットと言えるかもしれません。

さらに、夫が妻から受け取った家賃を住宅ローンの返済にあてないリスクもあります。

妻が住宅ローンを借り換え・返済しながら住む

妻が住宅ローンを借り換えて返済を継続しながら家に住む方法もあります。

住宅ローンの借り換えとは、今とは別の金融機関で新しく住宅ローンを組んで、今の住宅ローンを一括返済することです。

住宅ローンを一括返済して、妻が返済を継続すれば、名義変更ができ、夫が住宅ローンを支払わないリスクも回避できます

ただし、住宅ローンの借り換えは収入などの審査があり、審査が通らないこともあります。

離婚後も夫が住宅ローンを負担する

離婚後も夫が住宅ローンを支払い続けるケースもあります。この場合、妻がそのまま家に住む形となり、夫婦間でローン支払いの取り決めを明確にしておくことが重要です。

しかし、夫が支払いを継続できなくなった場合には、家が差し押さえられるリスクもある点を留意しなければなりません。

さらに、住宅ローンの返済負担が重くのしかかり、養育費の支払いに影響することもあります。

離婚時に家を財産分与する際の注意点

離婚時に持ち家を財産分与する際には、慎重な判断が必要です。特に住宅ローンが残っている場合や共有名義の場合には、予期しないトラブルが発生しやすいため、以下のポイントに注意しましょう。

家が共有名義の場合は単独名義に変更する

家が夫婦共有名義の場合、離婚後にどちらかが住み続ける場合には、単独名義に変更する必要があります。

共有名義のままだと、財産分与が完了した後でも法的にトラブルが発生しやすいためです。

例えば、離婚後に家を売却しようとした際、共有名義のままだと売却に必要な同意が得られず、売却手続きが進まないケースがあります。

さらに、名義を変えずに放置していると、相手が家の管理や税金を怠った場合に自分にも責任が及ぶことがあります。

こうした問題を避けるために、単独名義にして権利を明確化することが重要です。

住宅ローンを滞納すると家を失う

離婚後も住宅ローンの支払いが続くケースでは、住宅ローンの支払いを滞納すると、家が競売にかけられてしまいます。

住宅ローンを契約する際は、購入した持ち家が金融機関の担保となっています。支払いを怠ると金融機関は住宅ローンを回収するために、担保である家を売却します。

例えば、契約者が支払いを怠った場合、住んでいる人が知らないうちに競売手続きが進行してしまうこともあります。

確実にローンを支払うための取り決めを文書に残し、公正証書化することが望ましいです。

金融機関の規約に違反すると家を失う

住宅ローンを組んだ際の金融機関との契約には、ローン契約者が家に住むことを条件としているケースが多いです。

離婚後に契約者本人が家を出てしまうと、契約違反とみなされ、金融機関から一括返済を求められるリスクがあります。

例えば、契約者である夫が家を出て、妻が住み続けるケースでは、金融機関に相談し許可を得る必要があります。事前に金融機関へ事情を説明し、対応策を検討しておくことが大切です。

連帯保証人やペアローンは解消してから離婚する

住宅ローンの契約が、ペアローンや契約者の連帯保証人になっている場合は、これを解消してから離婚することが望ましいです。

連帯保証人やペアローンには以下のようなリスクがあります。

連帯保証人 相手がローンを支払わない場合に自分に請求が来る
ペアローン 片方が家を出てしまうと契約違反となり一括請求のリスクがある

夫婦それぞれが契約者であり、お互いの連帯保証人となっているため、一方が滞納するともう一方が返済する必要がある

名義変更をしておかないとローン完済後に家の管理でトラブルになる

ただし、連帯保証人は一方的に外れることはできません。代わりの連帯保証人を立てるか担保を準備して金融機関に納得してもらう必要があります。

家を売却するまで時間がかかる

離婚時に家を売却して現金化する選択肢を取る場合でも、すぐに売れるとは限りません。不動産市場の状況や物件の条件によって、売却までに半年程度かかることもあります。

その間も家のローンの返済が続いたり、売却資金を離婚後の生活にあてたりできません。家の売却に適した時期などもあるため、計画的に離婚を進めることが重要です。

離婚時の家の財産分与に関するよくある質問

離婚時に家や不動産を財産分与すると税金はかかる?

離婚時に家や不動産を財産分与する際、基本的には「贈与税」はかかりません。これは、財産分与が「離婚に伴う財産の清算」として認められているためです。

ただし、不動産を譲渡する側には「譲渡所得税」がかかる場合があるため注意が必要です。

例えば、夫から妻へ家を譲渡する際、その家の価値が購入時より大幅に上がっていると、譲渡所得が発生し、その部分に課税されます。

また、不動産取得税や登録免許税などの諸費用もかかるため、事前に確認しておきましょう。

離婚時に家の名義変更をしないとどうなる?

離婚後に家の名義変更をしないと、法的トラブルが発生するリスクが高まります。

特に共有名義のままだと、売却や担保設定をする際にもう一方の同意が必要になり、手続きがスムーズに進まない可能性があります。

例えば、離婚後に元夫が家を売却しようとしても、元妻の同意がなければ売却が進まないことがあります。

また、共有名義のままだと、税金や維持管理費をどちらが負担するかで揉めるケースも少なくありません。名義をきちんと整理しておくことで、こうしたリスクを回避できます。

住宅ローンが残る家に夫が住む場合ローンの支払いはどうなる?

離婚後も住宅ローンが残っている家に夫が住む場合、その支払い方法を明確にしておく必要があります。

住宅ローンは契約者に支払い義務がありますが、離婚をすると築いた財産の半分は配偶者に渡すことになり、親権を得ない場合は養育費が発生します。

さらに、収入が減少した場合や再婚した場合には、住宅ローンの負担も大きなものとなります。

住宅ローンの支払いができなくなった場合は、一括返済を求められるほか、金融機関に家を売却される恐れもあります。

そのため、離婚時にはローンの負担についてしっかり話し合い、対策を講じておくことが必要です。

まとめ

離婚時の財産分与で家を扱う際には、ローンの残高や家の評価額を正確に把握し、適切な方法を選択することが重要です。

売却するのか住み続けるのか、ローン支払いをどうするのかをしっかりと話し合い、合意内容を文書化しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

特に持ち家がオーバーローンの場合は、離婚後のリスクも考慮して総合的に判断する必要があります。

「離婚時の家の財産分与でもめている」「オーバーローンでどうしたらよいかわからない」という人は、当事務所にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)