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夫婦の共有財産とは|どこまで含まれる?勝手に使われた場合の対処法

2025.05.23
  • 財産分与
共有財産

夫婦の共有財産とは、結婚してから夫婦が協力して築いた財産のことで、離婚時の財産分与の対象となる財産です。

共有財産が高額な場合や夫婦間の対立が激しい場合は、共有財産や財産分与を巡りトラブルになるケースが少なくありません。

また、「どこからどこまでが共有財産になるのか?」「自分の方が共有財産を増やしたのに、相手に渡すのが納得できない」という人もいるでしょう。

この記事では、夫婦の共有財産の概要や共有財産となるもの、相手の使い込みに対する対処法などをわかりやすく解説します。

夫婦の共有財産とは

夫婦の共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の協力により築いた財産のことで、財産分与の対象となります。

たとえば、共働きで貯めた預貯金や、ローンを組んで購入した住宅、自動車、家具などが該当します。

法律上、たとえ名義がどちらか一方になっていても、結婚期間の間に取得した財産であれば、夫婦の協力により得た共有財産とされ、財産分与の対象になります。

財産分与とは、このように結婚期間の間に夫婦が築いた共有財産を公平に分けることです。

財産の分け方は基本的に2分の1ずつですが、婚姻期間や貢献度、収入の差などを考慮して、裁判所が柔軟に判断することもあります。

一方で、独身時代からの貯金など、夫婦の協力とは無関係に取得した財産は、所有者の「特有財産」となり、財産分与の対象外となります。

【関連記事】離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産

離婚時の共有財産はどこまで?対象になるものとならないもの

離婚時には、夫婦の共有財産を公平に分ける必要がありますが、すべての財産が対象になるわけではありません。

財産分与の対象となるのは、「離婚時点で存在する共有財産」です。たとえ別居中であっても、離婚が成立していない限り、夫婦が築いた財産は共有財産となります。

以下では、離婚時の共有財産となるものやその範囲について解説します。

預貯金

婚姻期間中に貯めた預貯金は、名義にかかわらず共有財産として、財産分与の対象となります。

これは、夫婦の役割が共働き、専業主婦(夫)の家庭でも、収入に関わらず、夫婦の協力で築いた財産だと判断されます。

一方で、独身時代に貯めた自分の貯金は特有財産となるため、財産分与の対象外です。

へそくり

生活費を倹約して、「へそくり」として貯めている人もいるかもしれません。

しかし、「へそくり」であっても、夫婦どちらかの収入に関係なく、婚姻中に貯めたものであれば、共有財産として分与対象になります。

持ち家などの不動産

結婚期間中に取得した持ち家などの不動産も、共有財産として財産分与の対象です。

住宅ローンが残っている場合は、評価額からローン残債を差し引いた純資産が分与の対象です。

ただし、持ち家は現金のように分けるのが簡単ではありません。財産分与では以下のような方法で分けることになります。

  • 不動産を売却した金額を分ける
  • どちらかが不動産を取得して、その分の代償金(買い取り代)をもう一方に支払う
  • どちらかが不動産を取得して、残りの現金で調整する など

また、住宅購入時の頭金を一方の親が出した場合、親が援助してくれた金額は特有財産となり、財産分与の対象外です。

財産分与で持ち家を分ける際は、親が援助した割合を、現在の時価から差し引いて、夫婦で分けることになります。

【関連記事】離婚時の家の財産分与|住宅ローンがある・妻が住み続ける場合を解説

自動車や家財

日常生活で使用する車や家具、家電なども、婚姻中に購入したものであれば共有財産です。名義や使用者に関係なく、財産価値があるものは分ける対象になります。

自動車や家財も、不動産同様、売却するか、代償金を支払うか、現金で調整するなどしてわけます。

一方で、独身時代から所有していた車や家財は、所有者の特有財産となり、財産分与の対象外です。

退職金・年金

退職金は、財産分与の対象となるケース、ならないケースがあります。

退職金が財産分与の対象となるケース 離婚の時点で退職金が支払われていないが、将来支払われる見込みがある場合
退職金が財産分与の対象とならないケース 結婚前に退職していた場合

将来退職金が支払われる見込みがない場合

退職金は、在籍期間から結婚期間中の部分が共有財産として、財産分与の対象となります。

年金については、結婚期間中の年金記録を公平に分ける「年金分割」の制度があります。

夫婦の年収差により納めた年金額が異なっていても、年金記録を公平に分けることができます。

退職金の計算は複雑であるため、弁護士に相談するのが望ましいです。

保険金

結婚期間中に加入していた生命保険や学資保険も、共有財産として財産分与の対象です。

返戻金のある保険は、一度解約した返戻金を公平に分けるか、保険の受け取り手が相手に対して、現金を支払い精算するなどして分ける方法があります。

ただし、独身時代から加入していた保険は、結婚期間中が財産分与の対象となります。

親の遺産

親から相続した財産は、夫婦の協力とは無関係に取得した特有財産であるため、財産分与の対象外です。

ただし、その財産を元手にして夫婦で資産を増やした場合は、増加分が共有財産となる可能性があります。

有価証券

株式など、有価証券も婚姻中に購入したものであれば共有財産です。有価証券は、評価額が変動するため、離婚時の評価額で財産分与を行うことになります。

ただし、株式などを購入していた資金には、独身時代の物や結婚後のものなどが混在することもあるため、弁護士に相談するのが望ましいです。

貴金属など価値のあるもの

高級腕時計や宝石、美術品なども、婚姻中に取得したものであれば共有財産として、財産分与の対象とされます。

ただし、配偶者など人から贈られた物については、その人の占有物となるため、特有財産として財産分与の対象外となります。

【関連記事】財産分与の対象にならないものは?退職金や親からの贈与はどうなる?

ローンなどの借金

共有財産として財産分与の対象となるのは、プラスの財産だけではありません。

結婚生活中の住宅ローンや自動車ローン、生活に必要な借金(医療費・学費など)も、婚姻中に発生したものであれば夫婦が共同で負担する必要があります。

一方、個人の趣味や浪費などで借り入れた借金は、財産分与の対象とならず、借り入れた本人が返済することになります。

【関連記事】熟年離婚の財産分与|専業主婦や共働きは?持ち家や年金の分け方

共有財産を勝手に使われた(隠している)場合の対処法

離婚前に、相手に共有財産を勝手に使われた場合、使い込まれた金額を計算し、財産分与に含めて請求が可能です。

別居期間中に使い込みが行われた場合は、別居をした時点での共有財産を基準に財産分与を行います。

ただし、同居期間中に財産を勝手に使い込まれた場合は、離婚時点の共有財産が財産分与の対象となります。

とはいえ、相手が「財産を使い込んでしまった」と主張しても、実際財産を隠しているケースもあります。

そのような場合は、以下のように相手の財産の調査を行い、証拠を集めて、財産分与を行いましょう。

相手の財産を調査する

相手が財産を隠していることが疑われる場合、まずすべきは財産の使途や隠している場所を明らかにすることです。

相手が財産を隠している場合、別の金融機関に移したり、証券会社と取引をしたり、保険契約をしていたりすることが考えられます

まずは、どこの金融機関や保険会社を利用しているのか確認するとよいでしょう。

  • 金融機関や証券会社、保険会社からの郵便を確認する
  • 法務局で登記事項証明書を取得して不動産の取得を確認する

ただし、相手宛の郵便物を勝手に開封する行為は、「信書開封罪」に問われる可能性があり、刑事罰の対象です。

確認する際は、封筒に書かれた情報だけにしましょう。

より詳細な情報が必要な場合は、以下の方法を検討するとよいでしょう。

弁護士に依頼して「弁護士会照会」を行う 弁護士が所属弁護士会を通じて、金融機関や勤務先などに対して必要な情報の開示を求める制度

弁護士に依頼することで、調べてもらえる可能性がある

裁判所に「調査嘱託」を申し立てる 調査嘱託とは、裁判所が金融機関や勤務先など第三者に対して必要な情報提供を求める制度

離婚調停や離婚裁判中に利用可能

相手が多額の現金を引き出した場合は、引き出されたことがわかる通帳の写しなどを保管しておくのも有効です。

共有財産を隠しているケースや使い込みが疑われる場合は、弁護士に相談のうえで適切な対応を行うことが得策です。

使い込んだ金額を含めて財産分与を請求する

使い込まれた分も本来の共有財産に含まれるため、その金額も含めて財産分与を請求できます。

たとえば、相手が婚姻中に勝手に300万円を引き出していた場合、離婚時や別居時点の財産に引き出した金額を含めて、財産分与の請求を行います。

ただし、証拠がない場合や、相手が言い逃れをして使い込みを認めないこともあります。

このような場合は、離婚調停で話し合う、もしくは弁護士を通じて交渉を行うことも検討した方がよいでしょう。

うやむやにされないためにも、離婚時にしっかり請求することが重要です。

共有財産の使い込みを防止する方法

離婚時に相手に共有財産を使い込まれないためには、離婚を切り出す前から準備しておくことが重要です。

以下では、共有財産の使い込みを防止する方法を解説します。

共有財産・特有財産を把握しておく

共有財産の使い込みを防止する方法の一つは、自身が共有財産・特有財産をしっかり把握しておくことです。

特に、配偶者から渡された生活費を、独身時代から利用している口座で管理するなどしていると、共有財産と特有財産が混在することになります。

しかし、財産分与の際に、特有財産だと証明できないものは共有財産だと判断されるため、日頃から、特有財産と共有財産を把握して、分けておくことが大切です。

同様に、共有財産を把握し、その記録を残しておけば、離婚を切り出した後に使い込んだ形跡を見つけやすくなります。

弁護士に依頼して相手に警告する

相手が財産を勝手に処分しようとしている場合、弁護士を通じて警告を出すことができます。

特に離婚で夫婦間の対立が激しい場合、相手が財産を勝手に処分することも考えられます。

弁護士に依頼することで、弁護士から相手に対して、「弁護士が対応すること」や「財産を勝手に処分しないこと」と警告を行ってもらうことも可能です。

弁護士の介入によって、トラブルを未然に防ぐことが期待できます。

保全処分を行う

使い込みの疑いが強く、財産を隠されたり処分されそうな場合は、裁判所に申し立てて保全処分を行うことができます。

保全処分とは、裁判所が紛争が解決するまでの間に、権利を守るために、一時的に財産の差し押さえや一定の行為を命じる措置のことです。

保全処分には以下の種類があります。

保全処分の種類 内容
仮処分 裁判所が係争物の現状を維持するために、必要な措置を講じること

※不動産の勝手な売却など

仮差押え 裁判所の判断が下される前に、財産を処分できないよう一時的に差し押さえること

離婚の場合は、離婚と同時に財産分与を請求する場合は、「人事訴訟法上の保全処分」、離婚後に財産分与を請求する場合は、「家事審判手続きにおける審判前の保全処分」を申し立てます。

ただし、こうした申し立てには専門知識が必要です。

財産分与の財産が高額である場合や、相手が財産を処分する可能性があるような場合は、早い段階で弁護士に相談して、対策を講じておくことが望ましいです。

【関連記事】離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場

夫婦の共有財産に関するよくある質問

夫婦の共有財産には贈与税がかかる?

通常、離婚時の財産分与で共有財産を分ける場合には、贈与税はかかりません

これは、贈与ではなく、夫婦関係の清算や離婚後の生活保障だと考えられているためです。

ただし、財産分与の範囲を超えて一方が過大な財産を受け取った場合、その超過分については贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。

また、持ち家などの不動産を取得する場合には、別の税金が発生する点に注意が必要です。

税金の種類 内容
譲渡所得税 持ち家を売却した金額が購入時よりも値上がりして利益を得た場合や、相手が自分の住宅ローンの返済を引き受けた場合は、相手に持ち家を譲渡した側や住宅ローンを支払ってもらう側に、譲渡所得税が課税される。
登録免許税 不動産の名義変更時にかかる税金。不動産評価額に対して一定の税率(原則2%)がかかる
固定資産税 固定資産税は、不動産を所有している人に毎年課税される税金で、不動産の所有者が支払う
都市計画税 都市計画税は、市街化地域にある不動産に課税される

これらの税負担も考慮しながら財産分与の方法を検討することが重要です。

夫婦の共有財産は相続の対象になる?

夫婦の一方が亡くなった場合、その人が持つ共有財産も含めて相続の対象になります。亡くなった人と婚姻関係があれば、法律上はその人の遺産を受け取れます

ただし、離婚すると相続権は失われます。

夫婦の共有財産は専業主婦(主夫)や共働きでも分ける必要がある?

財産分与は、共有財産を築くことに貢献した割合が多い人にとって、不公平に感じる人も少なくないでしょう。

しかし、配偶者が専業主婦(主夫)であっても、原則として半分ずつ分けるのが基本です。

なぜなら、家庭内での家事や育児などの貢献も、財産形成に寄与していると法律上評価されるためです。

共働き夫婦の場合も同様で、それぞれの収入に関係なく、原則として平等に分けることになります。

ただし、以下のケースでは例外的に、夫婦の資格や技能に応じて、財産分与の割合が「6:4」や「7:3」に修正されることもあります。

  • 医師などの特殊な資格を持っている
  • 芸能人やスポーツ選手など特殊な才能で収入が多い
  • 会社を経営し、収入が多い など

【関連記事】離婚の財産分与をしない方法|財産分与を払わないとどうなる?

まとめ

夫婦の共有財産とは、結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産のことで、財産分与の対象となります。

ただし、以下のようなケースは、夫婦間でトラブルとなる可能性があるため、注意が必要です。

  • 共有財産と特有財産の判断が難しい場合
  • 共有財産の金額が大きい場合
  • 住宅ローンが残っている場合
  • 夫婦間で対立し、相手が財産を勝手に使う恐れがある場合
  • 相手が財産を使い込んだと主張している場合

財産分与は、離婚後の生活を支える重要なものであるため、離婚時にしっかり請求することが重要です。

夫婦の共有財産でトラブルになりそうな場合は、離婚を検討した段階から弁護士に相談することで、注意点や対策などのアドバイスがもらえます。

なかま法律事務所では、財産分与にも豊富な経験があります。初回相談は無料であるため、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)