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離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場

2025.05.23
  • 財産分与
財産分与

離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場は、おおむね「40万円~60万円+財産分与で得た金額10~20%程度」です。

弁護士費用は現在自由化されており、各法律事務所によっても大きく異なります。

財産分与を含めた離婚問題で、弁護士への依頼を考えている人は、まずは複数の事務所に相談し、見積もりを取って比較するとよいでしょう。

離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場やシミュレーションを紹介します。

離婚の財産分与でかかる弁護士費用の内訳と相場

離婚の財産分与でかかる弁護士費用は、離婚方法(協議離婚や調停離婚など)や法律事務所によっても大きく異なります。

最も一般的な協議離婚の場合だと、弁護士費用の相場は40万円~60万円+財産分与で得た金額10~20%程度です。

弁護士費用の内訳と相場は、おおむね以下のとおりです。

費用項目 相場
相談料 30分5,000円程度
着手金 協議離婚:20~30万円

離婚調停:30~40万円

離婚裁判:30~60万円

報酬金 着手金と同額程度
+得られた金額の10~20%程度
その他(実費や日当) 数千円~数万円程度

相談料

まず、財産分与を含めた離婚の交渉を依頼する弁護士を探すところから始まります。

複数の弁護士に相談して、相性の良さそうな弁護士を見つけていきますが、この際には相談料がかかります。相談料の相場は、おおむね30分5000円程度です。

ただし、無料相談を受け付けている事務所も少なくないので、相談料がかからない場合も多いです。なお、当事務所も初回の相談は無料で対応しています。

着手金

着手金とは、弁護士への依頼を正式にした際にかかる費用です。弁護士が業務に着手するために支払う費用ですので、必ず発生するお金になります。

着手金の相場は、協議や調停などの離婚方法によって大きく異なります。おおむね以下の金額帯です。

  • 協議離婚:20~30万円
  • 調停離婚:30~40万円
  • 裁判離婚:30~60万円

また、弁護士に依頼する内容によっても、金額が変動します。

離婚には合意済みで財産分与の交渉だけを依頼したいのか、離婚の合意や親権なども含めて交渉する必要があるのか、などです。

仮に交渉が希望の結果とならなかった場合でも、基本的に着手金は返ってきません。

報酬金

報酬金とは、離婚の交渉が成功に終わった場合に支払うお金です。離婚の合意や財産分与が得られた、などが成功にあたります。

報酬金の相場は、おおむね「着手金と同額程度+得られた金額の10~20%」です。

仮に、協議で離婚が成立し、財産分与で500万円を得られた場合は、「20~30万(着手金と同額程度)+50~100万円(得られた金額の10~20%)」で合計70~130万円程度の報酬金がかかります。

財産分与で得られた金額が多いほど、報酬金も上がります。なお、離婚の交渉がまったくの失敗に終わった場合には、報酬金は発生しません。

その他

その他にかかる費用としては、日当や実費などが挙げられます。日当は、弁護士が事務所を離れて業務を行う際に発生します。

たとえば、裁判所に出向く必要がある際や、現地調査で遠方に出向く際などです。

日当の相場は、弁護士によって大きく異なりますが、1日3~5万円程度です。なお、当事務所の日当は、1回2万2000円(横浜・川崎の裁判所に出廷する場合)です。

実費は、弁護士が業務を進めるための必要不可欠な経費です。交通費や収入印紙代、郵送代などがこれにあたります。実費でかかる金額は、一般的には数千円から数万円程度です。

【関連記事】離婚にかかる弁護士費用はいくら?相場や内訳・安く抑えるポイント

離婚の財産分与でかかる弁護士費用のシミュレーション

離婚の財産分与でかかる弁護士費用の例を掲載します。

協議で離婚が成立|財産分与で200万円を得た場合

協議で離婚が成立し、財産分与で200万円を得られた場合、弁護士費用の目安は以下のとおりです。

項目 金額
相談料 0円(無料相談対応の事務所に依頼)
着手金 20~30万円
報酬金 40~70万円

※20~30万円(着手金と同額程度)+20~40万(得た金額の10~20%)

合計 60~100万円

なお、財産分与でどれだけ金銭を得られるかは、夫婦の共有財産によって決まります。

財産分与は原則として半分ずつなので、仮に夫婦の貯金が400万円あった場合には、半分の200万円が得られます。これは、専業主婦(主夫)であっても、共働き夫婦であっても同様に半分ずつです。

【関連記事】専業主婦も離婚で財産分与が請求可能!平均額や家事をしない場合は?

協議で離婚が成立|慰謝料と財産分与で1000万円を得た場合

協議で離婚が成立し、慰謝料と財産分与で1000万円を得られた場合、弁護士費用の目安は以下のとおりです。

項目 金額
相談料 0円(無料相談対応の事務所に依頼)
着手金 20~30万円
報酬金 120~230万円

※20~30万円(着手金と同額程度)+100~200万(得た金額の10~20%)

合計 140~260万円

不倫やDVなどが理由で離婚した場合は、相手に対して慰謝料を請求できます。

行為の種類や程度によって慰謝料相場は異なりますが、不倫の場合だと200~300万円程度です。

慰謝料が発生するケースでは、おのずと相手に請求する金額は大きくなります。

その分、弁護士費用も高くなりますが、弁護士が交渉をすることで、慰謝料の増額が期待できるケースも少なくありません。

あまりに法外な金額を求めると、離婚の交渉が長引く要因にもなりますので、弁護士とも協力しながら、適切な金額で慰謝料や財産分与を請求することが大切です。

【関連記事】離婚の慰謝料の相場|請求できるケースや証拠・年収で増額される?

調停で離婚が成立|財産分与で500万円を得た場合

次は、調停で離婚が成立した場合の、弁護士費用のシミュレーションをします。

項目 金額
相談料 0円(無料相談対応の事務所に依頼)
着手金 30~40万円
報酬金 80~140万円

※30~40万円(着手金と同額程度)+50~100万(得た金額の10~20%)

合計 110~180万円

離婚調停の場合は、協議離婚よりも解決までに時間を要することが多く、手間も増えるため弁護士費用の相場は高くなります。

また、このシミュレーションでは財産分与の金額を500万円としていますが、実際にはこれほど高額になるケースは、それほど多くはありません。

裁判所が公表している資料によると、離婚調停の財産分与で一番多い金額帯は100万円以下です。

婚姻期間が長いほど、財産分与の平均額は上がる傾向にあります。

熟年離婚などでは、夫婦の共有財産も多岐に渡るため、弁護士に依頼して財産分与を進めるのが望ましいです。

【関連記事】熟年離婚の財産分与|専業主婦や共働きは?持ち家や年金の分け方

離婚後に財産分与を請求する場合の弁護士費用は?

財産分与は離婚後でも行うことができます。ただし、請求期限は「離婚後2年以内」です。

離婚後に財産分与を請求する場合でも、弁護士費用の相場は上述した内容と大きく変わりません。

費用項目 相場
相談料 30分5,000円程度
着手金 協議離婚:20~30万円

離婚調停:30~40万円

離婚裁判:30~60万円

報酬金 着手金と同額程度
+得られた金額の10~20%程度
その他(実費や日当) 数千円~数万円程度

離婚後の財産分与の請求でも、調停や裁判になることはあり得ます。この場合、まずは財産分与請求調停を申し立てて、話し合いを進めていきます。

基本的に財産分与は、なるべく早い段階での請求が望ましいです。

離婚成立から時間が経っていると、相手が協力的でなかったり、新しい財産が増えて分与が複雑になったりするおそれがあります。

相手と直接連絡を取りたくない場合は、弁護士に依頼して、交渉を代行してもらうとよいでしょう。相手との連絡や財産の調査などを、一通り任せられます。

離婚の弁護士費用は誰が払う?

離婚問題を依頼する際の弁護士費用は、原則自己負担です。仮に、相手に離婚原因があったとしても同じです。

ただし、以下のケースでは、例外的に相手が弁護士費用を負担することもあります。

  • 裁判で損害賠償が認められた場合
  • 相手が任意で弁護士費用を負担する場合

裁判の場合は、損害額の10%を弁護士費用として上乗せすることが認められています。

相手が任意で支払うケースでは、主に相手が早期の離婚を望んでいる場合や、離婚に至った行為に非を感じている場合などが挙げられます。

離婚時の慰謝料や財産分与などは、一般的な相場はありますが、夫婦で合意できれば、金額は自由に決められます。

弁護士費用も同様で、相手が「弁護士費用も払う」と言っているのであれば、負担してもらっても問題はありません。

離婚の財産分与を無料で相談できる窓口4つ

離婚時の財産分与は、どう進めればよいのか悩む人も多いでしょう。弁護士に無料相談できる窓口を4つ紹介します。

無料相談対応の法律事務所

財産分与を含む離婚問題は、多くの法律事務所が無料相談に対応しています。

「○○市 弁護士 財産分与 無料相談」などで検索をすれば、お住まいの地域で無料相談に対応している弁護士を見つけられます。

なお、「初回の相談のみ無料」としている事務所も多いため、何回でも無料で相談できるわけではありません。

時間を有効的に使うためにも、相談したいことを事前にメモしておきましょう。

市役所の法律相談

各自治体の市役所や区役所では、無料の法律相談会を実施していることがあります。

たとえば、横浜市では毎週無料の法律相談を実施しています(市民相談室 (市庁舎3階) – 横浜市)。電話や対面、オンラインにて、担当の弁護士に無料相談が可能です。

ただし、相談担当の弁護士が離婚や財産分与に詳しいとは限りません。また、相談できる回数や時間が限られていることが多いです。

法テラス

法テラスとは、国が設立した法的トラブルを解決するための総合案内所です。

法的トラブルを解決するための情報発信や、経済的に余裕がない人を対象とした無料の法律相談を実施しています。

また、一定の要件を満たせば、弁護士費用を立て替えてくれる制度もあります。弁護士費用の不安がある人は、一度法テラスの利用をご検討ください。

弁護士会

弁護士会とは、弁護士や弁護士法人が所属する団体で、全国47都道府県に52の弁護士会が設立されています。

各弁護士会の法律相談センターでは、離婚や財産分与などの問題について、無料で相談できる場合があります。

ただし、地域や相談内容によっては、有料(30分5500円前後)です。相談を希望される場合は、全国の弁護士会の法律相談センターから、財産分与の無料相談が可能かご確認ください。

離婚の財産分与は弁護士なしでできる?

離婚時の財産分与は、弁護士なしで進めることも可能です。特に、婚姻期間が短く、共有財産が少ない場合は、弁護士に依頼する必要性は下がります。

しかし、夫婦の共有財産が多岐に渡り、比較的高額な財産分与となる場合は、弁護士への依頼が望ましいです。

財産分与を適切に行うには、まず夫婦の財産を細かく洗い出す必要があります。相手が協力的でないケースもあり、共有財産を把握するだけでも大きな負担がかかります。

また、弁護士に依頼することで、より有利な条件で離婚を進められる可能性も高まります。

相談は無料で対応している事務所が多いので、実際に弁護士から意見を聞いたうえで、依頼を判断するのがおすすめです。

財産分与の弁護士費用でよくある質問

離婚の弁護士費用は共有財産から払える?

夫婦の共有財産から弁護士費用は払えません。弁護士費用は原則自己負担です。共有財産から勝手に弁護士費用を支払うと、後々トラブルになる可能性もあるので注意が必要です。

【関連記事】夫婦の共有財産とは|どこまで含まれる?勝手に使われた場合の対処法

財産分与を払わないとどうなる?

財産分与の支払いは、原則として拒否できません。妻が専業主婦などのケースで、財産分与を渡したくないと考える人もいますが、最終的には調停や裁判で財産分与の割合が決定されます。

【関連記事】離婚の財産分与をしない方法|財産分与を払わないとどうなる?

財産分与について無料で電話相談できる窓口はある?

無料相談対応の法律事務所や、市役所の法律相談窓口では、電話相談に対応していることが多いです。

ただし、時間が限られているため、事前に相談したい内容を整理しておくのがよいでしょう。

【関連記事】無料で離婚相談ができる窓口3つ|離婚相談は誰にすべき?

まとめ

夫婦の共有財産が多いと、財産分与も複雑になり、なかなか進まないケースも珍しくありません。自分で財産分与を進めるのが難しい場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。

弁護士費用の相場は、おおむね「40万円~60万円+財産分与で得た金額10~20%程度」です。

弁護士費用に不安を感じる方は、事前に相談することで、後払いや分割払いにも対応してもらえることがあります

財産分与は大きな金額になることも少なくないので、不利な形で離婚が成立しないように注意しましょう。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)