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再婚した場合の養育費はどうなる? 知っておきたい養育費に関する基礎知識

2022.05.05
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養育費に関する基礎知識

養育費とは

養育費とは、離婚後の子の生活費です。民法上は、「子の監護に要する費用」(民法766条1項)と規定されています。

養育費の支払義務


養育費は、子に対する扶養義務から導かれます。養育費の義務の性質は、生活保持義務すなわち、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務と解されています。加えて、養育費は婚姻費用と同様に定期義務と考えられており、原則として毎月支払うものと解されています。経済的に安定した子の生活を保障する必要があることから、毎月一定額を支払うこととされています。養育費の一括払いが許されないというわけではありませんが、子の生活の安定という観点から考えると、定期的な支払いをすることが望ましいでしょう。

養育費をいつまで支払うかという点ですが、これまで成人年齢が20歳であったことから、裁判所は、原則として養育費の支払終期を20歳と考えています。
成人年齢は18歳に変更されましたが、成人年齢が18歳になったからといって養育費の支払終期も当然に18歳となるわけではありませんので、その点は注意してください。

養育費の支払終期を厳密に見ていくと子が未成熟子から脱したときと考えるのが実務上の扱いです。未成熟子の意義は、子が現に経済的に自立していないだけでは足りず、
監護親、非監護親の経済的状況など当該子に関する一切の事情を考慮したうえで、一般的、社会的に経済的に自立をすることが期待されていないことや
経済的に自立しないことを許容されていることを要するものと解されています。
典型的な例としては、子が大学生や専門学生である場合が挙げられます。子が大学生である場合には子が満22歳に達したあと最初に迎える3月まで、
子が専門学生である場合には満20歳に達したあと最初に迎える3月までなどと合意することもあります。

養育費の減額の基準

離婚後に収入が下がった、再婚した等の事情の変更が生じる場合があります。
事情の変更が生じたからといって即座に養育費を減額、免除できるということにはなりません。
事情の変更とは、合意した内容や裁判所で命じられた内容通りに履行させることが当事者の公平に反する結果をとなる場合を指します。

一般的には、合意の前提となっていた客観的な事情の変更に加えて、その事情の変更を当事者が予見できなかったこと、
事情変更が当事者の責めに帰することができない事由によって生じたこと、合意通りの履行を強制することが著しく公平に反する場合であることが認められるときには、
養育費の減額や免除が認められることとなります。

養育費の減額を認めた裁判・審判例

(1)千葉家庭裁判所佐倉支部審判平成31年3月26日


相手方と協議離婚をして、未成年者らの親権者を相手方と定めた申立人が、養育費の減額を申し立てた事案である。
申立人は、相手方との公正証書を作成した当時に比して収入が大幅に減少し、かつ、申立人は、再婚し再婚相手の子と養子縁組をし、
再婚相手との間に子を授かったことから本件公正証書作成した当時から事情が著しく変更されたことを裁判所が認め、
公正証書で定めた子一人につき5万円から、子一人につき2万6000円と変更することを認めた。

(2)千葉家庭裁判所審判平成29年12月8日

元夫が元妻に対し、裁判上の和解に基づく養育費について、元妻側に事情変更が生じたとして、養育費の減額の申し立てをした事案である。
元妻は再婚し、子らは再婚相手と養子縁組をしたために、扶養義務は第一義的には元妻とその再婚相手が負い、元夫は養育費の支払義務を免れることを認めた。
あわせて、養育費の免除の開始時期は、事情変更の生じた日以降であるとして、子らと再婚相手が養子縁組をした日以降とすることも認めた。

(3)福岡高等裁判所決定平成29年9月20日

非監護権者である父が、母に対し、訴訟上の和解で合意した子らの養育費について免除または減額を求めた事案である。
親権者母は再婚し、再婚相手と子らが養子縁組をしたことは、養育費を見直すべき事情にあたり、養親らだけでは子らについて十分に扶養義務を履行することができないときは、
非親権者である実親がその不足分を支払う義務を負い、その金額は生活保護法による保護の基準が一つの目安にはなるが、
それだけでなく子の需要、非親権者の意思等の諸般の事情を総合的に勘案すべきとし、本件では、月額10万円の養育費から、月額3万円の養育費へと減額することを認めた。

(4)横浜家庭裁判所審判平成28年9月9日

申立人と相手方は、離婚するにあたり、子らの親権者を相手方と定め、子らの養育費について、離婚給付等公正証書を作成したところ、
のちに相手方が再婚し、子らが再婚相手と養子縁組をしたことから、申立人は養育費を0円とすることを求めた事案である。
未成年者である子らが親権者の再婚に伴い、親権者の再婚相手と養子縁組をした場合、子らの扶養義務は第一次的には、親権者と養親となった再婚相手が負うとして、
養育費の支払い義務を免除することを認めた。

養育費の減額を認めなかった裁判・審判例

(1)東京高等裁判所決定平成19年11月9日

養育費請求調停により、1か月2万2000円の養育費を支払う旨の調停の成立後、申立人に事情変更が生じたとして、申立人が相手方に対し、養育費の減額を求めた事案である。
調停当時、当事者に予測不能であったことが生じた場合に限り、これを事情の変更と評価して調停の内容を変更することが認められるものであるところ、
調停成立当時、申立人が再婚し、再婚相手の子と養子縁組をしており、また、仕事上の支出が今後発生することを認識していた申立人は、
社会保険料の増加や仕事上の支出により総収入が減少することについて具体的に認識していたか少なくとも十分に予想可能であったとして、
申立人に生じた事情変更は、養育費を減額すべき事情変更とはいえないとして、養育費の減額調停を却下した。

再婚と養育費についてよく発生する問題

離婚の際に親権者となった相手方が再婚をした場合、養育費を支払う側である自身は、相手方の再婚により養育費を支払う義務がなくなると考えてしまう人がいます。
しかし、それは法的には誤りです。相手方が再婚をし、再婚相手と子が養子縁組をした場合に、第一次的な扶養義務が再婚相手に課されることとなります。
第一次的な扶養義務が再婚相手に課されることとなるので、再婚相手と相手方との間で子の扶養が十分に達成できない場合には、
第二次的な扶養義務を負う自身も変わらず養育費を払うこととなることには注意してください。

養育費の減額や免除をしたい場合にはどうする?

事情変更があった場合には、まず、相手方に対し、事情が変わったので養育費の減額、免除をしてほしい旨を申し入れましょう。
相手方において、事情を理解し、養育費を減額または免除をすることを了解してくれるのであれば、従前の取り決めを変更する合意書や公正証書の作成を行いましょう。
相手方において、減額や免除について了解をしてくれないということであれば、裁判所に対し、養育費減額調停の申し立てをしましょう。
養育費の減額調停は、当事者の事情変更を踏まえて行われるものであって、事情によっては養育費の金額を定めるにあたって複雑な計算を要することがあります。
様々な事情変更が絡み合う場合には、ご自身で対応することは難しいものと思われます。
離婚後の養育費について減額や免除をしたいという方は、一度ぜひ、弊所にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)