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子ども2人の養育費の相場は?お互いに子どもを引き取った場合は?

2024.12.06
  • 養育費

令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、子ども2人を育てている世帯の養育費の平均月額は、母子世帯で5万7,954円、父子世帯で2万8,777円でした(※推計値)。

養育費は、両親の年収、子どもの年齢、そして子どもの人数によって異なります。子どもが2人いる場合の適切な養育費は、いくらになるのでしょうか。

この記事では、子どもが2人いる場合の養育費の相場、そして、夫婦がお互いに子どもを引き取った場合の養育費の計算方法について解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要な費用のことです。

たとえ離婚して親権を失っても、親子の関係は変わりません。養育費については、以下の法律が根拠とされています。

  • 離婚時に、親権者、面会交流、養育費を定めること(民法第766条
  • 家族は他害意扶養する義務がある(民法第877条

そのため、子どもと同居して面倒を見ていない親には、自分と同程度の生活を子どもに保証し、扶養する義務が生じます。

ここでは、養育費に含まれる費用や、支払い期間について簡単に解説します。

養育費に含まれる費用

子どもを育てる上でかかる費用には以下のものがあります。

養育費 特別費用
内訳 衣食住に関わる費用

教育費(公立幼稚園から公立高校卒号までの最低限の教育費)

医療費

適度な娯楽費など

私立高校や大学に通うための入学金や授業料

塾の授業料

病気なケガの治療にかかる医療費

留学費用 など

養育費算定表に含まれるか否か 含まれる 含まれない
支払い義務の有無 ある 請求は可能

特別費用については、支払い義務が定められていませんが、夫婦間の協議により柔軟に取り決めることが可能です。

特別費用の負担方法には、①支払い義務者が全額負担する、②収入に応じた割合で負担する、③夫婦で折半するなどがあります。

離婚の段階では、特別費用がどの程度発生するか予想できないこともあります。

そのため、負担割合だけ取り決めるか、発生時に別途協議するなどとして取り決めることが考えられます。

養育費を支払う期間

「養育費はいつまで支払いがあるのか?」という質問をよく見かけますが、一般的に養育費は子どもが経済的に自立するまで支払う必要があります。

2022年施行の改正民法により成人年齢は18歳に引き下げられましたが、それに伴い養育費も一律に18歳までになるわけではありません。

近年は大学進学率が高まる中で、18歳で完全に自立するに至らないケースもあります。従来通り満20歳まで、または大学卒業にあたる22歳までとすることがあります。

ただし、子どもの自立状況や、進学に関する夫婦間の合意、両親の学歴、経済状況などを考慮して、柔軟に取り決めることが可能です。

子ども2人の養育費の相場一覧

子どもが2人いる場合の養育費について、養育費算定表をもとに紹介します。

養育費は、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収、子どもの人数や年齢によって異なります。

この「年収」の定義は以下の通りです。

給与所得者(会社員、会社経営者) 会社から支払われた給与や賞与、各種手当(通勤手当を除く)を含む控除前の金額
自営業者(個人事業主) 確定申告の課税所得に、社会保険料控除以外の所得控除(基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、医療費控除、雑損控除、障がい者控除、青色申告控除など)の額を加算する

自営業者は、経費などで収入を調整できてしまうため、さまざまな控除がなされている課税所得から、支出していない費用を加算して計算します。

説明を簡潔にするため、以下では義務者を夫、権利者を給与所得者である妻と仮定します。

ただし、具体的な年収や条件は家庭ごとに異なるため、詳細な金額は養育費算定表を利用して確認することをおすすめします。

参考:養育費算定表(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)
(表5)養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)

年収200万円

妻の年収は、各種控除が引かれる前の総支給額から計算しましょう。なお、下記の金額は子ども2人分でひと月の養育費の金額です。

夫の年収が200万円の場合は以下の通りです。

子どもの年齢 妻の年収 養育費(月額)
会社員 自営業者
2人とも14歳以下 なし 2~4万円 4~6万円
125万円 2~4万円 2~4万円
200万円 1~2万円 2~4万円
300万円 1~2万円 2~4万円
400万円 1~2万円 2~4万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 4~6万円 4~6万円
125万円 2~4万円 2~4万円
200万円 2~4万円 2~4万円
300万円 2~4万円 2~4万円
400万円 2~4万円 2~4万円
2人とも15歳以上 なし 4~6万円 6~8万円
125万円 2~4万円 4~6万円
200万円 2~4万円 2~4万円
300万円 2~4万円 2~4万円
400万円 2~4万円 2~4万円

年収300万円

夫の年収が300万円の場合は以下の通りです。

子どもの年齢 妻の年収 養育費(月額)
会社員 自営業者
2人とも14歳以下 なし 4~6万円 6~8万円
125万円 2~4万円 4~6万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円
400万円 2~4万円 2~4万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 6~8万円 8~10万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円
400万円 2~4万円 4~6万円
2人とも15歳以上 なし 6~8万円 8~10万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円
400万円 2~4万円 4~6万円

年収400万円

夫の年収が400万円の場合は以下の通りです。

子どもの年齢 妻の年収 養育費(月額)
会社員 自営業者
2人とも14歳以下 なし 6~8万円 10~12万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 4~6万円 6~8万円
300万円 4~6万円 6~8万円
400万円 2~4万円 4~6万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 8~10万円 10~12万円
125万円 6~8万円 8~10万円
200万円 4~6万円 6~8万円
300万円 4~6万円 6~8万円
400万円 4~6万円 6~8万円
2人とも15歳以上 なし 8~10万円 10~12万円
125万円 6~8万円 8~10万円
200万円 4~6万円 8~10万円
300万円 4~6万円 6~8万円
400万円 4~6万円 6~8万円

年収500万円

夫の年収が500万円の場合は以下の通りです。

子どもの年齢 妻の年収 養育費(月額)
会社員 自営業者
2人とも14歳以下 なし 8~10万円 12~14万円
125万円 6~8万円 10~12万円
200万円 6~8万円 8~10万円
300万円 6~8万円 8~10万円
400万円 4~6万円 6~8万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 10~12万円 12~14万円
125万円 8~10万円 10~12万円
200万円 6~8万円 10~12万円
300万円 6~8万円 8~10万円
400万円 4~6万円 8~10万円
2人とも15歳以上 なし 10~12万円 14~16万円
125万円 8~10万円 10~12万円
200万円 6~8万円 10~12万円
300万円 6~8万円 8~10万円
400万円 6~8万円 8~10万円

年収600万円

夫の年収が600万円の場合は以下の通りです。

子どもの年齢 妻の年収 養育費(月額)
会社員 自営業者
2人とも14歳以下 なし 10~12万円 14~16万円
125万円 8~10万円 12~14万円
200万円 8~10万円 10~12万円
300万円 6~8万円 10~12万円
400万円 6~8万円 10~12万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 12~14万円 14~16万円
125万円 10~12万円 12~14万円
200万円 8~10万円 12~14万円
300万円 8~10万円 10~12万円
400万円 6~8万円 10~12万円
2人とも15歳以上 なし 12~14万円 16~18万円
125万円 10~12万円 14~16万円
200万円 8~10万円 12~14万円
300万円 8~10万円 12~14万円
400万円 6~8万円 10~12万円

養育費の計算方法

養育費算定表は裁判所の公式ウェブサイトで確認できます。ここでは、養育費算定表の見方を簡単に解説します。

子どもの年齢や人数別の表を選ぶ

養育費算定表は、子どもの年齢が 0~14歳 と 15歳以上で分かれています。子どもが2人いる場合、以下の3パターンで参照する表が異なります。

  1. 子どもが2人とも14歳以下(算定表は表3)
  2. 1人が14歳以下、もう1人が15歳以上(算定表は表4)
  3. 子どもが2人とも歳以上(算定表は表5)
養育費算定表参照表

参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について – 裁判所

※青い個所は当サイトで編集

義務者と権利者の年収を照らし合わせる

算定表は、左側に義務者(例:夫)の年収、下側に権利者(例:妻)の年収が記載されています。

たとえば、夫(給与所得者)の年収が400万円、妻(給与所得者)の年収が300万円の場合、月額養育費は 4~6万円 と算出されます。

養育費算定表確認方法

※赤字は当サイトで編集

夫婦がお互いに子どもを引き取った場合の養育費の計算は?

養育費算定表では、子どもが3人以上いる場合や、兄弟を夫婦が分けて引き取る場合についての想定はありません。

そのため、夫婦がお互いに子どもを引き取った場合は、別途計算する必要があります。以下では、一番簡単に計算できる方法を紹介します。

養育費算定表を元に子ども全員の養育費を算出し、養育費をもらう側の子どもの生活費の割合に応じた養育費を、生活費指数を用いて算出します。

生活費指数とは、生活費がどの程度かかるかの割合で、政府統計によると以下の割合となります。

  • 大人:100
  • 14歳以下:62
  • 15歳以上:85

この生活指数を用いて、以下の式で計算します。

養育費=子ども全員の養育費×(権利者が育てている子どもの生活指数)÷(すべての子どもの生活指数の割合)

例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円、子ども2人(10歳と16歳)の場合を考えます。

このケースでは、養育費算定表(表4)により、月の養育費は6~8万円とされています。

これはあくまでも、妻が子ども2人を引き取った場合であり、下の子だけを引き取った場合は、以下のように計算します。

養育費=8万円×62÷(62+85)=3万3,741円

妻が10歳の子を引き取る場合、夫が支払うべき月の養育費は3万3,741円です。

他にも、両親の基礎年収を算出する方法などもありますが、計算が複雑であるため、より具体的な金額を知りたい場合は、弁護士に相談するのが確実です。

養育費の金額が変更できるケース

両親の年収によっては、子ども2人の養育費が少なく、生活が苦しいという場合も珍しくありません。

また、離婚で金額を決めた当時に比べて、両親の年収に変化が生じることもあります。

養育費は、取り決めた当時と状況が変わった場合、増額または減額が可能です。

ここでは、増額や減額が認められる具体的なケースについて解説します。

養育費が増額できるケース

養育費が増額できるケースは以下の通りです。

  • 子どものケガや病気で医療費が増えた
  • 親権者が病気などで働けなくなった、親権者の年収が減った
  • 支払う側の年収が大幅に増えた

このような事情が生じた際は、夫婦で話し合いを行うか、家庭裁判所に「養育費増額調停」を申し立てて、増額を求めることができます。

養育費が減額できるケース

養育費が減額できるケースは以下の通りです。

  • 支払う側が病気などで働けなくなった、支払う側の年収が減った
  • 親権者の年収が増えた
  • 親権者が再婚して、子どもが再婚相手と養子縁組をした
  • 支払う側が再婚して、再婚相手の連れ子と養子縁組をした

養育費は、両親が再婚して、養子縁組を行うと減額される可能性があります。

支払う側が再婚して、再婚相手との間に子どもができても、減額される可能性がありますが、この場合は支払う側の収入や資産なども考慮して判断されます。

収入減などで支払いが厳しい場合は、夫婦間で協議を行うか、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てて話し合うことになります。

養育費を請求する手順

もしまだ養育費について取り決めを行っていない場合は、以下の手順で養育費を請求しましょう。

  1. 養育費に必要な金額を計算する
  2. 夫婦で話し合いを行う
  3. 合意できたら公正証書を作成する
  4. 合意できない場合は養育費請求調停を申し立てる

養育費算定表は、適切な養育費を算定する上で参考となりますが、個々の家庭の状況に応じて、必要な養育費も異なるでしょう。

可能であれば、夫婦で話し合いを行い柔軟な取り決めをするのがよいでしょう。

人によっては、親権者が楽するために養育費を請求してくるから払いたくないと考える人もいます。

相手に養育費の金額を提示する際は、月々何にいくらかかるのか、具体的な試算を提示して納得してもらうことが大切です。

また、合意できた場合は、養育費の支払いがなされなくなる可能性を考慮し、離婚協議書を「執行認諾文言付公正証書」で作成しておきましょう。

公証役場で公証人という専門家に作成してもらえば、いざという時に差し押さえが可能です。

【関連記事】養育費とは|養育費の相場や支払い義務・取り決め方法や計算例を解説

養育費を公正証書に残す際の記載内容とは?

子ども2人の養育費についてよくある質問

夫婦どちらかが再婚したら養育費はどうなる?

元配偶者が再婚しただけでは、養育費の支払い義務がなくなることはありません。ただし、以下の場合には養育費の減額や免除が認められる可能性があります

  • 親権者が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組した場合
  • 支払い者が、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合
  • 子どもが再婚相手と同居し、生活の援助を受けている場合

【関連記事】再婚した場合の養育費はどうなる? 知っておきたい養育費に関する基礎知識

養育費はさかのぼって請求できる?

養育費をさかのぼって請求できるかどうかは、取り決めの有無によって異なります。

例えば、離婚時に養育費の支払いを取り決めており、これまでも請求してきた経緯があれば、過去分をさかのぼっての請求も認められる可能性があります。

一方、養育費の取り決めや請求すらも行っていない場合、過去分の養育費の請求について認められない可能性があります。

ただし、これらは裁判所の判断によるものですので、夫婦が個人的に交渉を行い、支払う側が了承すれば、過去分をさかのぼっての請求も可能です。

法律上、養育費の請求権には5年の時効があります。

このため、取り決めを行い、支払い期限から5年が経過すると支払ってもらえない可能性があるので注意が必要です。

養育費を一括で受け取ることはできる?

支払う側が信頼できないから、養育費を一括で払ってほしいという人もいるでしょう。

支払う側が了承していれば、養育費を一括で受け取ることは可能です。ただし、以下の点に留意する必要があります。

  • 後から養育費を増額してもらうなどの変更ができない
  • 贈与税が課税される可能性がある
  • 一括払いは費用が高額となるため、支払う人にとっての負担も大きく現実的ではない

養育費を支払ってもらうポイントはある?

離婚後に養育費を継続的に支払ってもらうには、以下の方法が考えられます。

  • 養育費の差し押さえを行う
  • 面会交流を実施する
  • 支払いが難しい場合は、一時的に猶予する など

養育費の支払いが止まるリスクに備え、いつでも差し押さえができるように公正証書を作成しておくことが重要です。

取り決めがない場合は、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てましょう。相手が出席しない場合でも、審判に移行し、支払いを命じてもらえます。

審判で認められれば、差し押さえも可能となります。

面会交流を通じて、支払者に「親としての自覚」を持ってもらうことも大切です。

直接の接触に抵抗がある場合には、面会交流の実施方法や、第三者機関を通じた面会交流なども検討しましょう。

【関連記事】養育費の未払い分を一括請求するために必要なこととは?

養育費請求調停における流れを解説!有利に進めるために必要なこととは?

まとめ

子ども2人の養育費は、夫婦の年収や子どもの年齢、そして子どもをどのように引き取るのかなどによっても異なります。

子育ては大変な負担を伴う一方で、子どもの成長を支えることができ、大きなやりがいがあります。両親が協力し、育児と金銭面を分担し合うことが重要です。

もし「適切な養育費が支払われていない」「養育費の負担が重い」などのお悩みがあれば、養育費に豊富な実績のある当事務所にご相談ください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)