養育費を払ってくれない相手から回収する方法や相談先は?
- 養育費

養育費は子どもが生活する上で欠かせない費用ですが、離婚後に支払ってもらえないケースも少なくありません。
この記事では、養育費を支払ってもらえない方に向けて、公正証書がある場合とない場合に分けて、養育費の回収方法や相談先を紹介します。
なかま法律事務所では、養育費の回収に力を入れています。ZOOM相談や無料相談も可能で、完全成功報酬制を採用しています。
相手の勤務先や財産が不明な場合や、連絡が取れない場合でも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
目次
養育費を払ってもらえていない親の割合
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費を払ってもらえていない親の割合は以下のとおりでした。
母子世帯 | 父子世帯 | |
養育費を継続して支払ってもらっている割合 | 28.1% | 8.7% |
平均月額 | 5万485円 | 2万6,992円 |
養育費の取り決めをしている割合 | 46.7% | 28.3% |
取り決めをしていない理由で最も多い理由(複数回答可) | 相手と関わりたくない(50.8%) | 相手に支払う能力がないと思った(38.5%) |
【関連記事】養育費とは|養育費の相場や支払い義務・取り決め方法や計算例を解説
公正証書・調停調書などがある場合|養育費を払ってくれない相手から回収する方法
ここでは、公正証書や調停調書などがある場合に、養育費を払ってくれない相手から回収する方法を解説します。
公正証書がない場合は、公正証書がない場合の見出しを参考にしてください。
相手に連絡して養育費の支払いを求める
相手が養育費を支払わない場合、まずは連絡して支払いを求めましょう。電話やLINE、メールなど、どの手段でも構いません。
公正証書がある場合は、差し押さえを行うことも可能ですが、手間がかかるため、まずは連絡を試みることをおすすめします。
相手が支払いに応じない場合は、内容証明郵便で請求する方法もあります。
内容証明郵便とは、誰が誰に対して、いつ、何を送ったのかを郵便局が証明する特別な郵便です。
法的な文書を通知する際に使用され、裁判でも証拠となります。内容証明郵便を利用することで、相手にプレッシャーを与える効果が期待できます。
参考:内容証明 – 郵便居
家庭裁判所から履行勧告や履行命令をしてもらう
調停や審判を経て養育費を取り決めた場合は、家庭裁判所から履行勧告や履行命令をしてもらうことが考えられます。
履行勧告とは | 家庭裁判所から養育費を支払いをうながす文書を送ってもらえる |
履行命令とは | 家庭裁判所から期日までに養育費を支払いなさいと履行命令をしてもらえる
正当な理由なくしたがわない場合は、10万円以下の過料(罰金)が課される可能性がある |
履行勧告や履行命令の手続きは、調停を行った家庭裁判所で可能です。
手続きには、調停調書や審判書のコピー、預金通帳など、相手が養育費を支払っていないことがわかる資料が必要です。
郵便や電話での手続きも可能な場合があるため、家庭裁判所に確認してみてください。
ただし、いずれの手続きも強制力はないため、相手が無視する可能性があることを理解しておきましょう。
養育費の差し押さえを行う
それでも相手が養育費を払ってくれない場合は、養育費の差し押さえを行います。
この手続きは、相手の住所を管轄する地方裁判所に「債権差押命令」を申し立てることで、裁判所から、銀行や勤務先(第三債務者)に差し押さえをするよう命令が行われます。
命令を受けた銀行や勤務先は、預貯金や給料から未払い分の養育費を確保してくれます。
後で請求側が銀行や勤務先に連絡して支払ってもらう仕組みです。
裁判所に申し立てる場合は、以下の書類が必要です。
- 債権差押命令申立書
- 当事者目録(請求相手や第三債務者の住所など)
- 請求債権目録(公正証書や調停調書などの内容や支払いが遅れた養育費の金額などを記載)
- 差押差権目録(相手の財産に関する情報)
- 債務名義の正本(公正証書や調停調書・審判書など)
- 送達証明書(相手に債務名義が送達された証明書のことで、債務名義を作成したと所で発行してもらう)
- 資格証明書(勤務先や銀行が第三債務者の場合に必要となる商業登記事項で、法務局で発行可能)
- 申し立て手数料として収入印紙4,000円
- 相手の住所・氏名が変更されている場合は住民票や戸籍謄本、戸籍の附票などが必要になることも
参考:債務名義に基づく差押え(扶養義務に基づく定期金債権関係) – 裁判所
差し押さえの手続きは可能ですが、法的知識がないと難しい場合があります。
特に、差し押さえがうまくいかない場合や、相手の財産がある銀行や勤務先がわからない場合は、情報開示手続きが必要になることもあります。
このような場合は、弁護士に依頼して回収を進める方がスムーズです。
相手方(債務者)がお金を払ってくれません。どうすればいいでしょうか? – 東京地裁民事執行センター
公正証書がない場合|養育費を払ってくれない相手から回収する方法
公正証書とは、元裁判官など法律の専門家が公証人として認めた公文書です。
離婚時には、養育費の取り決め内容や離婚条件をまとめた書面を公証役場で公正証書にすることで、法的に有効な書面とすることができます。
養育費の差し押さえを行う際には、裁判を経る必要があります。
ただし、執行文が付いた公正証書や、調停成立時に発行される調停調書などの債務名義があれば、裁判をしなくても差し押さえが可能です。
養育費を取り決めていない場合や公正証書がない場合は、まず養育費請求調停を申し立てて債務名義を取得することから始めましょう。
養育費請求調停は、相手の住む場所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
養育費請求調停を申し立てると、家庭裁判所で調停委員を通じて養育費の金額などの取り決めができます。
相手が養育費の取り決めを拒否しても、裁判所が必要と判断すれば、最終的に審判を通じて支払い金額を確定してもらえます。
養育費請求調停について不安がある場合は、弁護士に相談すると安心です。
【関連記事】子ども2人の養育費の相場は?お互いに子どもを引き取った場合は?
養育費を払ってくれない場合の相談先
相手が養育費を支払わない場合、差し押さえを行うことが考えられます。
しかし、差し押さえ手続きは難しいため、養育費の請求を諦めてしまう人もいるかもしれません。
もし相手が養育費を払ってくれなくて悩んでいる場合は、以下で養育費について相談できます。
- 自治体のひとり親家庭支援窓口
- 母子家庭等就業・自立支援センター
- 養育費の回収に注力している弁護士
- 法テラス
- 養育費保証サービス
- 養育費等相談支援センター
自治体の母子家庭等就業・自立支援センター
各自治体の母子家庭等就業・自立支援センターでも、養育費について相談できます。
相談することで、養育費の金額の決定や必要な手続きなどのアドバイスが受けられます。
神奈川県の場合は、公正証書の作成や調停申し立て費用、差し押さえ費用、養育費保証会社を利用する際の保証料の補助も行っています。
養育費の回収に注力している弁護士
養育費の回収を相談するなら、養育費の回収に注力している弁護士に相談するのがおすすめです。
インターネットで、「地域×養育費×弁護士」などで検索すると、養育費の回収に力を入れている弁護士を見つけられます。
当事務所でも、これまで養育費を回収してきた豊富な実績があります。
【回収実績】
- 未払い養育費200万円を回収し、その後の支払いも再開/30代女性・子ども6歳
- 未払い養育費100万円回収/40代女性・子ども12歳
- 未払い2年養育費160万円を回収/20代女性・子ども4歳と6歳
参考:回収実績
無料相談やZOOM相談に対応しているほか、弁護士に依頼する際にためらってしまう費用についても、事務手数料2万2,000円のみのご負担で、回収後にお支払いいただける完全成功報酬制です。
相手と連絡が取れない、住所や勤務先がわからなくても、弁護士が調査を行い回収可能ですので、お気軽にご相談ください。
【関連記事】養育費を弁護士に無料相談する方法|弁護士費用の相場を解説
法テラス
法テラスは、国が設立した法律相談センターです。収入が一定以下などの条件を満たすことで、同じ問題について3回まで無料の法律相談が受けられます。
また、法テラスを通じて弁護士に養育費の回収を依頼することも可能です。
弁護士費用立て替え制度(民事法律扶助)の利用が認められれば、弁護士費用の分割払いができます。
さらに、収入が一定以下で子どもが中学生以下の場合、費用が免除される可能性もありますが、条件を満たす必要があります。
養育費保証サービス
養育費保証サービスとは、養育費が支払われない場合に、契約した保証会社が養育費を立て替えて、相手に請求する民間のサービスです。
近年はこうしたサービスがあるため、比較検討してもよいかもしれません。
ただし、養育費保証サービスは、弁護士法に違反しているとの指摘があります。
養育費の取り決めの交渉や債権回収などの法律行為は、弁護士以外が仕事として行うことはできないためです(弁護士法第72条、73条)。
今後養育費保証サービスの取り扱いが変わる可能性もあるので、弁護士に相談の上で利用した方がよいかもしれません。
養育費等相談支援センター
養育費等相談支援センターとは、養育費や面会交流について電話・メール・チャットで相談できるほか、情報提供を行っている公益財団法人です。
相談することで、法律や養育費の仕組みなどについてアドバイスが受けられます。
参考:養育費等相談支援センター
養育費の回収について弁護士に依頼するメリット
養育費の回収については、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は、養育費の回収から幅広い問題に対応できます。
相手の勤務先や財産がわからなくても調べてもらえる
公正証書や調停調書があっても、相手の勤務先や財産がわからない場合、養育費の差し押さえが空振りに終わる可能性があります。
このようなケースでも、弁護士であれば「弁護士会照会」という方法で、相手の勤務先や財産などの情報を確認して回収できる可能性があります。
そのため、相手の勤務先や財産がわからなくても、回収を諦める必要はありません。
養育費の取り決めの交渉も依頼できる
養育費の取り決めがない場合、弁護士以外は交渉や調停に出席できませんが、弁護士は相手と養育費の取り決めに関する交渉や調停に同席し、サポートすることができます。
相手にプレッシャーを与えられる
弁護士に依頼することで、相手との交渉はすべて弁護士が行うため、相手にプレッシャーを与えることができます。
突然、弁護士から養育費の支払いを請求されれば、相手も無視できないでしょう。
当事務所が担当した事案では、養育費回収後に相手が継続して支払いを行うようになったケースもあります。
養育費を支払わない相手に悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。
相手が養育費を払ってくれないと悩む人からのよくある質問
養育費を払わない男の心理は?
2025年現在、親権は女性が得て、男性が養育費の支払い義務を負うケースが多く見られます。
しかし、養育費を支払わない男性もいます。養育費を払わない男性の心理には、以下のような理由が考えられます。
- 住宅ローンの支払いなどが負担となり、養育費を支払う余裕がない
- 養育費を支払ってもいいが、元嫁が本当に子どものために使っているのか疑わしい
- 面会交流が行われず、子どもに会えないので養育費を払いたくない など
男性が、養育費を子どものために使っているのか疑っている場合は、実際に月にいくら子どもに必要な費用があるのか、家計簿や明細を提示して説明する方法があります。
また、男性に養育費を支払ってもらうポイントとして面会交流を実施することも重要です。
面会交流や養育費は、双方を実施させるための交渉材料ではありませんが、子どもに会えないとなると、養育費を支払う意味を実感できないケースもあります。
親としての自覚をうながすためにも、そして子どもが両親に愛されていると感じるためにも、面会交流を実施することが望ましいです。
もし相手と子どもが直接面会交流を行うことに抵抗がある場合は、手紙の交換やオンラインでも通話など、間接的な方法から試すことも検討しましょう。
養育費の不払いを国が立て替える制度はいつから始まる?
養育費の不払いを国が立て替える制度は、2025年時点ではまだ設けられていません。
ただし、2020年には国の立て替え制度の創設に向けた検討会議が行われました。
また、養育費保証サービスと連携して、立て替え制度や保証料を支援する自治体も一部存在します。
今後、養育費の不払いに対する国の立て替え制度が創設されることが期待されています。
まとめ
離婚時には養育費の取り決めや公正証書の作成が重要です。
ただし、実際に差し押さえを行うとなると、煩雑な手続きを行わなければならず、回収の難易度は高いと言えます。
もし相手が養育費を支払ってくれない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、相手の勤務先や財産の情報がわからずとも調査を行い、回収できる可能性があります。
また、弁護士が交渉することで、今後も相手が養育費を継続して支払うケースもあります。
当事務所でもひとり親の支援に力を入れています。養育費は子どもとあなたの生活を支える基盤です。