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接近禁止命令とは|認められる条件や対象者、弁護士費用を解説

2026.06.29
  • 男女トラブル

接近禁止命令は、配偶者や元配偶者などから暴力や脅迫を受け、今後も被害を受けるおそれがある場合に、相手が近づくことを禁止する制度です。

接近禁止命令は誰に対しても自由に出せるものではなく、どのような条件であれば接近禁止命令を出せるのか気になる人もいるでしょう。

この記事では、接近禁止命令が認められる条件や対象者の範囲、弁護士費用などを解説します。

接近禁止命令とは

接近禁止命令は、暴力や脅迫、つきまといなどの被害から身を守るために、相手が近づくことを禁止する制度です。

主にDV防止法に基づくものと、ストーカー規制法に基づくものがあります。

ここでは、接近禁止命令の基本的な意味と制度の違いを解説します。

DV防止法に基づく接近禁止命令

DV防止法に基づく接近禁止命令は、家庭裁判所への申立てによって発令される命令です(DV防止法第10条)。

配偶者や元配偶者などから暴力や脅迫を受け、今後も生命や心身に重大な被害を受けるおそれがある場合に、相手が近づくことを禁止します。

たとえば、離婚や別居をきっかけに、相手が自宅や勤務先に来る、待ち伏せをする、近くをうろつくといった場合に問題になります。

接近禁止命令が出されると、相手は1年間、申立人の身辺につきまとったり、住居や勤務先などの近くをうろついたりすることが禁止されます。

ストーカー規制法に基づく禁止命令

ストーカー規制法に基づく禁止命令は、つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、連続した電話やメッセージの送信などをやめさせるための命令です。

DV防止法に基づく接近禁止命令が家庭裁判所への申立てによって発令されるのに対し、ストーカー規制法に基づく禁止命令等は、公安委員会等が行う行政措置です。

元交際相手や同棲していない交際相手から、何度も連絡が来るといったケースでは、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令の対象になることがあります。

接近禁止命令が認められるための条件

接近禁止命令は、申立てをすれば必ず認められるものではありません。

被害の内容や将来の危険性、相手との関係、証拠の有無などをもとに判断されます。

ここでは、接近禁止命令が認められるための主な条件を解説します。

身体に対する暴力や生命・身体への脅迫などを受けていること

接近禁止命令が認められるためには、身体に対する暴力や、生命・身体への脅迫などを受けていることが必要です。

  • 身体に対する暴力:殴る、蹴る、物を投げつける、首を絞めるといった行為
  • 生命・身体への脅迫:殺す、けがをさせるなど、生命や身体に害を加える内容を告げる行為

加えて、2024年のDV防止法の改正により、生命・身体への脅迫だけでなく、自由・名誉・財産に対する脅迫も対象に含まれるようになりました。

たとえば、行動を強く制限する発言や、名誉を傷つけると告げる行為、財産に危害を加えると脅す行為などです。

これらも、被害の内容や相手の言動、今後の危険性などによって、接近禁止命令が必要かどうかの判断材料になります。

将来的に重大な被害を受けるおそれがあること

接近禁止命令が認められるためには、過去に暴力や脅迫があっただけでなく、今後も重大な被害を受けるおそれがあることが必要です。

そのため、別居後も相手が自宅や勤務先に来る、繰り返し連絡してくる、待ち伏せをする、暴力や脅迫を続けているといった事情は、将来の危険性を判断する材料になります。

さらに、重大な被害のおそれは、相手の言動によって精神的に追い詰められている場合や、生活の平穏が大きく損なわれている場合も、保護の必要性を判断するうえで考慮されます。

配偶者・元配偶者・事実婚相手など法律上の対象者であること

DV防止法に基づく接近禁止命令は、暴力や脅迫をした相手が法律上の対象者(配偶者や元配偶者、事実婚相手など)に当たる場合に申し立てることができます。

暴力や脅迫の事実を裏付ける証拠があること

接近禁止命令を申し立てる際には、裁判所が被害の内容や将来の危険性を判断するため、暴力や脅迫を受けた事実を裏付ける証拠が重要になります。

  • けがの写真
  • 医師の診断書
  • 脅迫内容がわかるLINEやメール
  • 相手の発言を録音したデータ
  • 相手が自宅や勤務先に来た日時を記録したメモ

証拠がまったくない場合でも、申立てが必ずできないわけではありませんが、裁判所に具体的な情報を伝えるために、客観的な資料を整理する必要があります。

裁判所が保護の必要性を認めること

接近禁止命令は、暴力や脅迫の事実、将来の危険性、証拠の内容などを踏まえ、裁判所が保護の必要性を認めた場合に発令されます。

申立人が不安を感じているだけではなく、相手を近づけないようにする必要があると裁判所に判断されることが必要です。

そのため、申立ての際には、被害の内容や相手の言動、今後の危険性を具体的に説明できるように整理しておくことが大切です。

接近禁止命令が出せる相手

DV防止法に基づく接近禁止命令は、相手が法律上の対象者に当たるかを確認する必要があります。

接近禁止命令の対象になり得る相手は、主に以下のとおりです。

  • 配偶者:現在婚姻関係にある夫や妻
  • 元配偶者:離婚によって婚姻関係が終了した元夫や元妻
  • 事実婚の相手:婚姻届は提出していないものの、夫婦同然の共同生活をしている相手
  • 元事実婚の相手:過去に事実婚の関係にあったものの、現在はその関係を解消している相手
  • 生活の本拠を共にしている交際相手:単に交際しているだけでなく、同じ住居で生活し、生活の拠点を共にしている交際相手
  • 元同棲相手:過去に生活の本拠を共にしていたものの、現在は同棲関係を解消している交際相手

これらに当てはまる相手は、DV防止法に基づく接近禁止命令の対象になり得ます(DV防止法第1条、同第28条の2)。

一方で、同棲していない交際相手や元交際相手については、原則としてDV防止法上の保護命令の対象ではありません。

このようなケースでは、つきまといや待ち伏せ、連続した連絡などのストーカー行為がある場合に、ストーカー規制法による警告や禁止命令などの対応を検討します。

接近禁止命令の出し方

DV防止法に基づく接近禁止命令は、家庭裁判所へ保護命令を申し立てることで手続きを進めます。

ただし、身の危険がある場合には、申立ての前に警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談することが重要です。

ここでは、接近禁止命令を出すまでの流れを解説します。

①警察や配偶者暴力相談支援センターに相談する

暴力や脅迫を受けている場合や、相手が自宅や勤務先に来るおそれがある場合には、警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談します。

接近禁止命令を申し立てる際には、事前に警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談しているかが確認されることがあります。

そのため、相談した日時や担当者、相談内容を記録しておくと、申立ての際にも状況を整理しやすくなります。

②証拠を集める

接近禁止命令では、暴力や脅迫の事実だけでなく、今後も被害を受けるおそれがあることを裁判所に伝える必要があります。

そのため、被害を受けた日時や場所、相手の言動、連絡の頻度、相談先での対応などを時系列でまとめておくと、申立ての準備を進めやすくなります。

証拠を集めるために、無理に相手へ接触したり、危険な状況で録音や撮影をしようとしたりする必要はありません。

安全を確保したうえで、手元にある資料を整理することが大切です。

③家庭裁判所へ保護命令を申し立てる

接近禁止命令を求める場合は、家庭裁判所へ保護命令を申し立てます。

申立てでは、暴力や脅迫を受けた経緯、今後の被害のおそれ、相手との関係、現在の生活状況などを具体的に説明する必要があります。

申立書の作成や必要書類の準備に不安がある場合は、弁護士に相談することで、事情の整理や証拠の提出方法について助言を受けられます。

④ 裁判所による審理を受ける

申立て後は、裁判所が申立内容や証拠を確認し、接近禁止命令を出す必要があるかを審理します。

審理では、暴力や脅迫の内容、将来の危険性、証拠の有無、申立人の生活や安全への影響などが確認されます。

⑤ 接近禁止命令(保護命令)が発令される

裁判所が保護の必要性を認めた場合、接近禁止命令が発令されます。

接近禁止命令が出されると、相手は1年間、申立人の身辺につきまとったり、住居や勤務先などの近くをうろついたりすることが禁止されます。

事案によっては、申立人本人への接近禁止だけでなく、子どもや親族等への接近禁止、電話等禁止命令などが問題になる場合もあります。

⑥ 命令違反があれば警察へ通報する

接近禁止命令が出された後に、相手が命令に違反した場合は、すぐに警察へ通報します。

たとえば、相手が自宅や勤務先の近くに来る、待ち伏せをする、繰り返し連絡してくるといった場合には、命令違反に当たる可能性があります。

命令違反には罰則があるため、相手の行動を記録し、日時や場所、連絡内容などを残しておくことが重要です。

接近禁止命令の弁護士費用

接近禁止命令は自分で申し立てることもできますが、被害状況の整理や証拠の準備、申立書の作成に不安がある場合は、弁護士に依頼することも選択肢になります。

ここでは、接近禁止命令の弁護士費用の目安と、弁護士に依頼するメリットを解説します。

相場は20万円〜60万円程度

接近禁止命令の申立てを弁護士に依頼する場合、弁護士費用は20万円〜60万円程度が目安になります。

保護命令申立てのみを依頼する場合は、20万円〜30万円台の費用例もあります。

しかし、着手金とは別に報酬金が発生する事務所もあり、事案の複雑さや証拠の量、相手方への対応によって費用は変わります。

離婚や慰謝料請求、別居中の生活費の請求などもあわせて依頼する場合には、接近禁止命令の申立てとは別に費用が発生することがあります。

依頼前に、どこまで対応してもらえるのか、追加費用がかかる場面はあるのかを確認することが大切です。

なお、家庭裁判所への申立て自体にかかる実費としては、申立手数料の収入印紙1,000円と郵便切手代が必要です。郵便切手代は裁判所によって異なります。

接近禁止命令やDV、離婚問題について無料相談を実施している弁護士事務所もあるため、費用が不安な場合は無料相談を利用するのも一つの方法です。

弁護士に依頼するメリット

接近禁止命令を申し立てるには、暴力や脅迫の内容、将来の危険性、相手との関係、証拠の内容などを裁判所に伝える必要があります。

しかし、自分の状況が接近禁止命令の対象になるのか、どの証拠を提出すべきかを一人で判断するのは簡単ではありません。

弁護士に依頼すると、接近禁止命令を申し立てられる可能性があるかを確認したうえで、被害状況や証拠を裁判所に伝わりやすい形で整理できます。

申立書の作成や必要書類の準備についてもサポートを受けられるため、手続きの負担を減らしやすくなります。

加えて、相手との接触が怖い場合や、離婚、慰謝料請求、別居中の生活費、子どもの安全などもあわせて問題になっている場合には、今後の対応をまとめて相談できます。

接近禁止命令は、早めの対応が必要になることもあるため、相手への対応に不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

接見禁止と接近禁止の違い

接見禁止と接近禁止は言葉が似ていますが、対象となる場面や目的が異なります。

項目 接見禁止 接近禁止
主な場面 刑事事件 DV・ストーカー被害など
対象 逮捕・勾留されている被疑者・被告人 暴力や脅迫、つきまといをする相手
内容 家族や知人などとの面会・手紙のやり取りを制限する 被害者の身辺につきまとったり、住居や勤務先の近くをうろついたりすることを禁止する
目的 証拠隠滅や口裏合わせを防ぐ 被害者の安全や生活の平穏を守る
関係する手続き 刑事事件の手続き DV防止法の保護命令、ストーカー規制法の禁止命令など

接見禁止とは

接見禁止は、刑事事件で身柄を拘束されている人について、家族や知人などとの面会や手紙のやり取りを制限する制度です。

逮捕・勾留されている被疑者や被告人について、証拠隠滅や口裏合わせを防ぐ必要がある場合に、裁判所が接見禁止を認めることがあります。

あくまで刑事事件の手続きの中で使われる措置であり、被害者の自宅や勤務先に近づくことを禁止する制度とは異なります。
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接近禁止とは、暴力や脅迫、つきまといなどの被害から守るために、相手が被害者に近づくことを禁止する制度です。

DV防止法に基づく接近禁止命令では、家庭裁判所への申立てによって、相手が申立人の身辺につきまとったり、住居や勤務先などの近くをうろついたりすることが禁止されます。

つまり、接見禁止は刑事事件で面会などを制限する制度であり、接近禁止は被害者に近づく行為を制限する制度です。

DVやストーカー被害で相手を近づけたくない場合には、接近禁止命令やストーカー規制法に基づく禁止命令などを検討します。

接近禁止命令に関するよくある質問

接近禁止命令は家族や息子に出せる?

家族や息子というだけでは、DV防止法に基づく接近禁止命令の対象にはなりません。

DV防止法の接近禁止命令は、配偶者や元配偶者などが主な対象です。

ただし、つきまといや待ち伏せ、繰り返しの連絡などがある場合には、ストーカー規制法による警告や禁止命令などを検討できる可能性があります。

接近禁止命令は公正証書にできる?

公正証書で近づかない、連絡しないといった約束を残すことは可能です。

しかし、DV防止法に基づく接近禁止命令そのものを公正証書で作ることはできません。

まとめ

接近禁止命令は、配偶者や元配偶者などからの暴力や脅迫を受け、今後も被害を受けるおそれがある場合に、相手が近づくことを禁止する制度です。

接近禁止命令を検討する場合は、相手との関係性、暴力や脅迫の事実、将来の危険性を示せるかが重要になります。

身の危険を感じている場合は、早めに警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談しましょう。

そのうえで、証拠の整理に不安がある場合、離婚や慰謝料請求もあわせて考えている場合には、弁護士に相談することが大切です。

弁護士に相談することで、自分のケースで接近禁止命令を申し立てられる可能性があるか、どの証拠を整理すべきか、今後どの手続きを進めるべきかを確認できます。

相手との接触に不安がある場合こそ、一人で抱え込まず、法的な対応を整理することが重要です。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)