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熟年離婚の財産分与を徹底解説!専業主婦・共働き、持ち家・年金・退職金の分け方

2025.07.27
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財産分与

熟年離婚では、長年かけて築いた財産をどう分けるかが、その後の生活設計を左右する最重要課題です。この記事を読めば、財産分与の基本「2分の1ルール」はもちろん、専業主婦の方でも長年の貢献が認められること、持ち家・年金・退職金といった複雑な財産の分け方、損をしないための手続きや注意点まで全てわかります。ご自身の正当な権利を理解し、後悔のない財産分与を実現させましょう。

1. 熟年離婚における財産分与の基本

長年連れ添った夫婦が離婚を決意する「熟年離婚」。精神的な区切りはもちろんですが、その後の生活を大きく左右するのが「財産分与」です。特に婚姻期間が長い熟年夫婦の場合、築き上げた財産も多岐にわたるため、その分け方は非常に重要な問題となります。この章では、後悔しない熟年離婚のために、まず押さえておくべき財産分与の基本的な考え方について詳しく解説します。

1.1 熟年離婚で財産分与が重要になる理由

なぜ、熟年離婚において財産分与がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それには、若年層の離婚とは異なる、熟年世代ならではの切実な理由があります。

第一に、婚姻期間が長いため、分与の対象となる財産の額が大きく、種類も多様になる点が挙げられます。預貯金や不動産はもちろん、退職金や年金といった、まさに「老後の生活資金」そのものが財産分与の対象に含まれるのです。

第二に、離婚後の生活再建の難しさです。特に長年専業主婦(主夫)として家庭を支えてきた側は、離婚後に新たに職を見つけ、十分な収入を得ることが若年層に比べて困難なケースが少なくありません。そのため、財産分与で得られる資産が、離婚後の生活を支えるための最後の砦となることも珍しくないのです。

このように、熟年離婚における財産分与は、単に夫婦の財産を清算するという意味合いだけでなく、離婚後の生活基盤を確保するための極めて重要な手続きであると認識しておく必要があります。

1.2 財産分与の基本的な考え方と割合(2分の1ルール)

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産(共有財産)を、離婚時に公平に分け合う制度です。その際の基本的な考え方として、裁判実務上も確立されているのが「2分の1ルール」です。

これは、夫婦それぞれの財産形成への貢献度にかかわらず、共有財産を原則として2分の1ずつに分けるという考え方です。たとえ夫の収入だけで生計を立てていたとしても、それは妻の家事や育児といった内助の功があったからこそ成し得たものと評価されます。したがって、収入の有無や金額の差は、原則として分与割合に影響しません。

この考え方は、民法第768条3項で「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」と規定されていることにも基づいています。(参考:e-Gov法令検索 民法 第七百六十八条

1.2.1 専業主婦の場合の財産分与

「自分には収入がなかったから、財産をもらう権利はないのでは…」と不安に思われる専業主婦(主夫)の方もいらっしゃるかもしれませんが、その心配は全くありません。

前述の通り、専業主婦(主夫)の家事、育児、介護といった家庭への貢献は、財産形成への貢献として法的にしっかりと評価されます。夫(妻)名義の預貯金や不動産、保険なども、婚姻期間中に得たものであれば共有財産となり、原則としてその2分の1を受け取る権利があります。ご自身の貢献に自信を持って、正当な権利を主張することが大切です。

1.2.2 共働き夫婦の場合の財産分与

共働き夫婦の場合も、基本的な考え方は同じです。たとえ夫婦間に大きな収入差があったとしても、原則として「2分の1ルール」が適用されます。

例えば、夫の年収が1,000万円、妻の年収が400万円だったとしても、それぞれの収入から形成された預貯金などを合算した共有財産全体を、2分の1ずつに分けるのが基本です。収入が多い方が多く財産を受け取るというルールにはなっていません。

ただし、夫婦の一方が特殊な技能や才能(例えば、事業での大成功やプロスポーツ選手としての活躍など)によって著しく高額な資産を形成した場合など、ごく例外的なケースでは2分の1ルールが修正される可能性もゼロではありませんが、一般的な共働き夫婦の場合は、原則通り2分の1となると考えてよいでしょう。

1.3 財産分与の対象となる財産・ならない財産

財産分与を正しく進めるためには、まず「何が分けるべき財産なのか」を正確に把握する必要があります。財産は大きく「共有財産」と「特有財産」の2種類に分けられ、分与の対象となるのは「共有財産」のみです。

1.3.1 共有財産とは?具体例

共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して取得した財産を指します。重要なのは、財産の名義が夫・妻のどちらになっているかは問わないという点です。例えば、夫の給料から積み立てた妻名義のへそくりや、子どもの将来のためにと貯めていた子ども名義の預金も、原資が夫婦の収入であれば共有財産とみなされます。

具体的には、以下のようなものが共有財産にあたります。

財産の種類 具体例と注意点
預貯金 夫婦それぞれや子ども名義の普通預金、定期預金など。婚姻期間中に増えた分が対象。
不動産 婚姻期間中に購入した家、マンション、土地など。
自動車 婚姻期間中に購入した車。ローンが残っている場合は注意が必要。
保険 生命保険、学資保険、個人年金保険など。離婚時の解約返戻金相当額が対象。
有価証券 株式、投資信託、国債など。婚姻期間中に取得したもの。
退職金・年金 婚姻期間に応じた部分が財産分与の対象。後の章で詳しく解説します。
その他 ゴルフ会員権、リゾート会員権、高価な家具・美術品など。

1.3.2 特有財産とは?具体例

特有財産とは、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中であっても親からの相続・贈与によって得た財産のことです。これらは夫婦の協力とは無関係に得た財産であるため、原則として財産分与の対象にはなりません。

財産の種類 具体例
婚姻前の資産 結婚する前に貯めていた預貯金(独身時代の預金)、所有していた不動産や株式など。
相続・贈与された資産 親から相続した遺産(現金、土地、家屋など)や、親の援助で得た資金など。
個人のための物品 嫁入り道具、個人の趣味の道具など。

ただし、注意点があります。例えば、親から相続した不動産(特有財産)の固定資産税を家計(共有財産)から支払っていたり、夫婦で協力してリフォームしたりした場合、その価値の維持・増加に貢献した分については、財産分与の対象とみなされる可能性があります。特有財産と共有財産が混在している場合は判断が難しくなるため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

2. 熟年離婚の財産分与で知っておくべき相場と平均額

「熟年離婚をすると、財産分与で一体いくらもらえるのだろうか?」これは、多くの方が抱く切実な疑問でしょう。メディアでは「財産分与で2,000万円」といった話も聞かれますが、実際のところはどうなのでしょうか。

結論から申し上げると、熟年離婚の財産分与に決まった「相場」というものは存在しません。なぜなら、財産分与の金額は、それぞれの夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた「共有財産」の総額によって大きく変動するからです。年収やライフスタイルが夫婦ごとに全く異なるため、分与額も千差万別となります。

しかし、公的なデータや平均的なモデルケースを知ることで、ご自身の状況を客観的に把握し、将来の見通しを立てるための重要な指針となります。この章では、裁判所の統計データや具体的なシミュレーションを交えながら、熟年離婚における財産分与の金額感を詳しく解説します。

2.1 財産分与額の分布データから見る傾向

個別の事情に左右されるとはいえ、実際に離婚した夫婦がどのくらいの金額で財産分与を解決しているのかを知ることは非常に参考になります。最も信頼性の高いデータとして、裁判所が公表している司法統計を見てみましょう。

以下の表は、離婚調停や審判で財産分与を取り決めた夫婦の、分与額の分布を示したものです。

【参考】財産分与の支払額別内訳(令和4年 婚姻関係事件)
財産分与の額 件数 割合
100万円以下 4,028件 28.5%
101万円~200万円 2,187件 15.5%
201万円~400万円 2,572件 18.2%
401万円~600万円 1,472件 10.4%
601万円~800万円 863件 6.1%
801万円~1000万円 665件 4.7%
1001万円~2000万円 1,215件 8.6%
2001万円~5000万円 881件 6.2%
5001万円以上 245件 1.7%
合計 14,128件 100.0%

出典:裁判所 令和4年 司法統計年報(家事編)第19表

このデータから、以下の傾向が読み取れます。

  • 最も多い層は「100万円以下」ですが、これは離婚全体のデータであり、婚姻期間の短い夫婦も含まれています。
  • 一方で、「1001万円~2000万円」や「2001万円~5000万円」といった高額な財産分与も決して少なくないことがわかります。特に婚姻期間が長い熟年離婚では、共有財産が高額になりやすく、この層に該当する可能性が高まります。
  • 熟年離婚の場合、退職金や不動産といった大きな資産が対象となるため、分与額が1,000万円を超えるケースは珍しくありません。

この統計はあくまで裁判所を利用したケースのデータですが、協議離婚の場合でもこの数値を参考に話し合いが進められることが一般的です。ご自身の財産状況と照らし合わせ、どの層に当てはまりそうか考えてみましょう。

2.2 熟年離婚における財産分与額のシミュレーション

では、具体的にどのような計算になるのでしょうか。ここでは、典型的な2つのモデルケースで財産分与額をシミュレーションしてみましょう。財産分与は、夫婦の貢献度に応じて財産を分ける制度であり、専業主婦(主夫)の家事労働なども貢献と見なされるため、原則として割合は2分の1(50%)’strong>となります。

2.2.1 ケース1:夫がサラリーマン、妻が専業主婦の夫婦(婚姻期間30年)

このケースでは、夫の収入によって形成された財産が主な対象となります。

共有財産の項目 評価額 備考
預貯金(夫婦名義合計) 1,000万円 結婚後に貯めたお金
持ち家(不動産) 2,000万円 住宅ローン完済済み
生命保険(解約返戻金) 500万円 婚姻期間中に支払った保険料に対応する部分
退職金(見込み額) 1,500万円 婚姻期間に対応する部分(仮に全額とする)
自動車 100万円 時価額
共有財産 合計 5,100万円

この場合、共有財産の総額は5,100万円です。2分の1ルールに基づくと、妻が受け取れる財産分与の目安は以下の通りです。

計算式:5,100万円 ÷ 2 = 2,550万円

この2,550万円を、預貯金や不動産(売却代金や代償金)などで分けることになります。例えば、「夫が持ち家(2,000万円)と自動車(100万円)を取得する代わりに、妻へ代償金として現金2,550万円を支払う」といった解決方法が考えられます。(実際には預貯金500万円を妻に渡し、残り2,050万円を支払うなど調整します)

2.2.2 ケース2:共働き夫婦(婚姻期間25年)

共働きの場合、それぞれの名義の財産も、夫婦が協力して築いたものであれば共有財産と見なされます。

共有財産の項目 評価額 備考
夫名義の預貯金 800万円 結婚後に貯めたお金
妻名義の預貯金 600万円 結婚後に貯めたお金
有価証券(株式など) 400万円 夫婦の共有資金で購入したもの
持ち家(不動産) 2,500万円 時価額。ローン残高500万円
夫の退職金(見込) 1,200万円 婚姻期間に対応する部分
妻の退職金(見込) 700万円 婚姻期間に対応する部分
負債(住宅ローン) -500万円 財産総額から差し引く
共有財産 合計 5,700万円

このケースでは、まず資産の合計(800+600+400+2500+1200+700 = 6,200万円)から負債(住宅ローン500万円)を差し引きます。

計算式:(資産合計 6,200万円 – 負債合計 500万円) ÷ 2 = 2,850万円

共働きであっても、収入に差があったとしても、原則として貢献度は平等とされ2分の1ルールが適用されます。この場合、夫婦それぞれが2,850万円相当の財産を受け取れるように分配します。例えば、妻は自身の預貯金600万円と退職金700万円(合計1,300万円)を確保し、夫から差額の1,550万円を受け取る、といった形が考えられます。

このように、具体的な「相場」はありませんが、ご自身の財産をリストアップし、合計額を2で割ることで、受け取れる(または支払う)金額の目安を把握することができます。

3. 熟年離婚で特に問題になりやすい財産の分け方

熟年離婚では、長年にわたる婚姻生活で築き上げた財産が多岐にわたり、その金額も大きくなる傾向があります。特に「持ち家(不動産)」「退職金」「年金」は評価や分割方法が複雑で、夫婦間の話し合いが難航しがちな三大財産です。ここでは、これらの財産の分け方について、具体的な方法と注意点を詳しく解説します。

3.1 持ち家(不動産)の財産分与

夫婦の財産の中で最も高額になることが多い持ち家は、財産分与における最大の争点となりがちです。物理的に分割することが難しく、住宅ローンが残っている場合はさらに複雑になります。分け方にはいくつかの方法があり、それぞれのメリット・デメリットを理解して、ご自身の状況に合った最適な方法を選択することが重要です。

3.1.1 住宅ローンがない場合の分け方

住宅ローンを完済している場合、分け方は比較的シンプルです。主に以下の3つの方法が考えられます。

分割方法 概要 メリット デメリット
換価分割 家を売却し、得られた現金を夫婦で分ける方法。 ・最も公平で明確。
・後のトラブルが起きにくい。
・売却に時間がかかる場合がある。
・希望価格で売れるとは限らない。
・思い出の家を失う。
代償分割 夫婦の一方が家を取得し、もう一方にその価値の半分に相当する「代償金」を支払う方法。 ・どちらかが家に住み続けられる。
・子どもの学区を変えずに済む。
・家の評価額で揉める可能性がある。
・家を取得する側に十分な資力が必要。
現物分割(共有名義) 家の名義を夫婦の共有名義のままにする方法。 ・すぐに売却や代償金の支払いが難しい場合に選択肢となる。 ・将来、売却や相続の際に相手の同意が必要になり、トラブルに発展するリスクが非常に高いため推奨されない。

3.1.2 住宅ローンが残っている場合の注意点(オーバーローン・アンダーローン)

住宅ローンが残っている場合は、家の価値とローン残高の関係によって対応が大きく異なります。

  • アンダーローン:家の査定額が住宅ローンの残高を上回っている状態です。この場合、「家の査定額 - ローン残高」のプラス部分が財産分与の対象となります。例えば、査定額3,000万円でローン残高が2,000万円なら、差額の1,000万円が分与対象財産です。
  • オーバーローン:家の査定額が住宅ローンの残高を下回っている状態です。この場合、家には資産価値がないとみなされ、原則として財産分与の対象にはなりません。ただし、誰がローンを返済し続けるのか、誰が住み続けるのかといった問題は別途協議する必要があります。

3.1.3 持ち家を売却するケース

換価分割を選択した場合、まずは不動産会社に査定を依頼し、家の価値を把握することから始めます。査定は1社だけでなく、複数の会社に依頼する「相見積もり」を取り、適正な売却価格を見極める’strong>ことが重要です。売却によって得られた現金から、仲介手数料や登記費用、税金などの諸経費を差し引いた金額を、原則として2分の1ずつ分け合います。

なお、売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかる可能性がありますが、「居住用財産の3,000万円特別控除」などの特例を利用できる場合があります。詳しくは国税庁のウェブサイトをご確認ください。

3.1.4 片方が住み続けるケース

代償分割で片方が住み続ける場合、まず家の評価額を決めなければなりません。夫婦間で合意できれば問題ありませんが、揉める場合は不動産鑑定士に鑑定を依頼することもあります。評価額が確定したら、家を取得する側が相手方に代償金を支払います。

住宅ローンが残っている場合は特に注意が必要です。家の名義変更やローン名義人の変更は、必ず融資を受けている金融機関の承諾が必要です。承諾なしに勝手に名義を変えることはできません。また、夫名義のローンが残る家に妻が住み続ける場合、夫が返済を滞らせると家を差し押さえられるリスクがあることも理解しておく必要があります。

3.2 退職金の財産分与

長年の勤務に対する功労報償的な意味合いを持つ退職金も、その原資は婚姻期間中の労働の対価であり、配偶者の協力があってこそ得られたものと考えられます。そのため、婚姻期間に相当する部分は共有財産として財産分与の対象となります。

3.2.1 既に支払われている退職金の計算方法

離婚時に既に退職金が支払われている場合、そのお金が預貯金や有価証券などに形を変えていても、財産分与の対象となります。分与額の計算は、一般的に以下の式で行います。

分与額 = 支払われた退職金額 ×(婚姻期間 ÷ 勤続年数)× 1/2

例えば、退職金が2,000万円、勤続年数が40年、婚姻期間が30年だった場合、分与対象となるのは「2,000万円 × (30年 ÷ 40年) = 1,500万円」となり、その2分の1である750万円が相手方に分与される額の目安となります。

3.2.2 未支給の退職金の取り扱いと注意点

離婚時にまだ退職金が支払われていない場合でも、将来の支給が確実視される状況であれば財産分与の対象となります。特に、定年退職まで数年といったケースでは対象となる可能性が高いです。

この場合の計算方法は、「離婚時点」で「自己都合退職」した場合に支給されるであろう退職金額を基準にするのが一般的です。会社の就業規則や退職金規程を取り寄せ、以下の式で計算します。

分与額 = 離婚時の自己都合退職金相当額 ×(婚姻期間 ÷ 勤続年数)× 1/2

ただし、会社が退職金規程の開示に協力的でない場合や、退職までまだ長期間ある場合、会社の業績によっては将来退職金が減額・不支給となるリスクもあるため、必ずしも計算通りに分与されるとは限りません。このようなケースでは、弁護士に相談して対応するのが賢明です。

3.3 年金の財産分与(年金分割)

年金分割は、離婚後の老後生活を支える上で非常に重要な制度です。これは、婚姻期間中の厚生年金(および共済年金)の保険料納付実績を夫婦で分割するもので、将来受け取る年金額に反映されます。

3.3.1 年金分割の対象となる年金と対象外の年金

すべての年金が分割対象となるわけではありません。対象を正しく理解しておくことが大切です。

分類 具体的な年金の種類
分割の対象となる年金 ・厚生年金
・共済年金(平成27年10月以降は厚生年金に一元化)
分割の対象とならない年金 ・国民年金(老齢基礎年金)
・国民年金基金
・厚生年金基金、確定給付企業年金など(※)
・iDeCo(個人型確定拠出年金)、個人年金保険など(※)

※厚生年金基金やiDeCoなどは年金分割制度の直接の対象ではありませんが、夫婦の共有財産として別途財産分与の対象になる可能性があります。

3.3.2 合意分割と三号分割の違い

年金分割には「合意分割」と「三号分割」の2種類があり、どちらを利用するかは夫婦の状況によって異なります。

種類 概要 対象期間 分割割合(按分割合) 手続き
合意分割 夫婦間の合意または裁判所の決定に基づき分割する方法。 婚姻期間中の全ての厚生年金加入期間 夫婦の合意で決める(上限2分の1) 原則、夫婦双方(または代理人)が年金事務所で手続き。
三号分割 専業主婦(主夫)など国民年金の第3号被保険者だった側が、相手の合意なく単独で請求できる方法。 平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間 自動的に2分の1 第3号被保険者だった側が単独で手続き可能。

重要なのは、専業主婦(主夫)であっても、平成20年3月31日以前の婚姻期間については合意分割が必要になるという点です。また、年金分割の請求には、原則として離婚をした日の翌日から2年以内という期限があります。手続きを忘れると権利を失ってしまうため、離婚届を提出したら速やかに手続きを行いましょう。詳しくは、お近くの年金事務所や日本年金機構のウェブサイトで確認してください。

参照:離婚時の年金分割|日本年金機構

4. 熟年離婚の財産分与を進める手順と準備

熟年離婚における財産分与は、離婚後の生活設計を左右する極めて重要なプロセスです。長年の婚姻期間で築き上げた財産を、感情的な対立を避けながら、公平かつ円滑に分けるためには、正しい手順を踏んで計画的に準備を進めることが不可欠です。ここでは、財産分与をスムーズに進めるための具体的な手順と、事前に準備すべきことについて詳しく解説します。

4.1 財産状況の把握と資料収集

財産分与の話し合いを始める前に、夫婦の共有財産がどれだけあるのかを正確に把握することが全ての基本となります。どちらか一方の名義になっている財産でも、婚姻期間中に協力して得たものであれば共有財産として分与の対象となります。財産の全体像が不明確なままでは、公平な話し合いはできません。まずは冷静に、客観的な資料を集めることから始めましょう。

集めるべき資料は多岐にわたります。以下の表を参考に、漏れなくリストアップし、関連資料を収集してください。資料はコピーを取るなどして、確実に手元に保管しておくことが重要です。

財産の種類 収集すべき資料の例 入手先・確認先
預貯金 全ての銀行・証券会社の通帳、残高証明書(別居時または離婚時のもの)、取引履歴 各金融機関
不動産(持ち家・土地など) 登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書、住宅ローンの残高証明書、売買契約書 法務局、市区町村役場、金融機関
生命保険・学資保険など 保険証券、解約返戻金額証明書 各保険会社
株式・投資信託など 取引残高報告書、口座情報がわかる書類 証券会社、信託銀行
自動車 車検証、査定書(中古車販売店などで取得) 運輸支局、中古車販売店
退職金 退職金規程、退職金見込額証明書 勤務先
年金 年金手帳または基礎年金番号通知書、「ねんきん定期便」、年金分割のための情報通知書 日本年金機構(年金事務所)
負債(ローンなど) 金銭消費貸借契約書、ローン残高証明書 各金融機関、貸金業者

これらの資料は、財産分与の基準時(原則として別居時)における価値を証明するために不可欠です。相手が資料の開示に協力的でない場合は、弁護士に相談し、弁護士会照会制度などを利用して情報を収集する方法もあります。

4.2 夫婦間での話し合いと離婚協議書の作成

財産の全体像が把握できたら、次はその分け方について夫婦間で話し合い(協議)を行います。収集した資料を基に作成した財産目録を使い、どの財産をどのように分けるか(現物を分けるのか、売却して金銭で分けるのか、一方が取得して代償金を支払うのかなど)を具体的に決めていきます。

話し合いで合意した内容は、必ず「離婚協議書」という書面に残してください。口約束だけでは、後になって「言った、言わない」のトラブルに発展する危険性が非常に高いです。離婚協議書には、財産分与の条件(誰が何を取得するか、金銭の支払額・支払時期・支払方法など)のほか、慰謝料や年金分割についても合意した場合はその内容を明記し、最後に「本書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項を盛り込むのが一般的です。これにより、離婚後に追加の請求をされるリスクを防ぐことができます。

さらに、作成した離婚協議書は、単なる私的な文書ではなく、公証役場で「公正証書」にしておくことを強く推奨します。公正証書に「強制執行認諾文言」を付けておけば、万が一、相手からの金銭(財産分与や慰謝料)の支払いが滞った場合に、裁判を起こすことなく、直ちに相手の給与や預金などの財産を差し押さえる強制執行の手続きが可能になります。これは、離婚後の生活を安定させるための非常に強力な法的効力です。

4.3 調停・審判・裁判での解決

夫婦間の話し合いでどうしても合意に至らない場合や、相手が話し合いに全く応じない場合は、家庭裁判所の手続きを利用して解決を図ることになります。手続きは「調停」「審判」「裁判」の順に進むのが一般的です。

手続き 特徴 合意・決定の方法
協議離婚 夫婦間の話し合いのみで解決を目指す。最も円満かつ迅速な方法。 当事者間の合意。合意内容は離婚協議書や公正証書にする。
離婚調停 家庭裁判所で、調停委員という中立な第三者を介して話し合う。非公開で行われる。 調停委員のサポートのもと、当事者間の合意を目指す。合意内容は「調停調書」に記載され、判決と同じ効力を持つ。
離婚裁判(訴訟) 調停が不成立となった場合の最終手段。公開の法廷で、お互いの主張と証拠を基に争う。 裁判官が法的な観点から財産分与の方法などを判断し、「判決」を下す。

まずは「離婚調停(夫婦関係調整調停)」を家庭裁判所に申し立てます。調停では、調停委員が双方から個別に事情を聞き、解決案を提示するなどして、合意形成のサポートをしてくれます。ここで合意できれば「調停成立」となり、その内容は法的拘束力のある調停調書に記載されます。

調停でも話がまとまらない場合は「調停不成立」となり、離婚を求める側が「離婚裁判(訴訟)」を提起することになります。裁判では、最終的に裁判官がすべての事情を考慮して判決を下します。ただし、裁判は時間も費用も精神的負担も大きくなるため、できる限り調停段階での解決を目指すのが望ましいでしょう。裁判所の手続きに関する詳細は、裁判所のウェブサイトでも確認できます。

5. 熟年離婚の財産分与で失敗しないための注意点

熟年離婚は、婚姻期間が長い分、財産の種類が多岐にわたり、金額も高額になる傾向があります。そのため、財産分与で思わぬ失敗をしてしまい、離婚後の生活設計が大きく狂ってしまうケースも少なくありません。ここでは、後悔しないために必ず押さえておきたい重要な注意点を詳しく解説します。

5.1 財産隠しや財産処分への対策

離婚を切り出すと、相手方が財産を渡したくない一心で、預貯金を引き出したり、保険を解約したり、財産を隠したり勝手に処分したりする恐れがあります。特に、相手方が家計や財産を主に管理していた場合は注意が必要です。

最も重要な対策は、離婚の話し合いを始める前に、夫婦の共有財産を正確に把握し、その証拠を確保しておくことです。具体的には、以下のような準備を進めましょう。

  • 預貯金:金融機関名、支店名、口座番号、名義人がわかる通帳のページをコピーまたは写真撮影する。記帳を済ませ、最新の残高がわかるようにしておく。
  • 不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書を取得する。
  • 生命保険・学資保険:保険証券をコピーまたは写真撮影し、保険会社、証券番号、契約者、受取人、解約返戻金の額を確認する。
  • 有価証券(株式・投資信託など):証券会社名、口座番号、保有銘柄、残高がわかる取引残高報告書などを確保する。
  • 自動車:車検証を確保し、査定額を調べておく。

もし相手が財産開示に協力的でなく、財産隠しが疑われる場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、「弁護士会照会制度」を利用して金融機関や保険会社などに情報を照会できます。また、調停や裁判に移行した場合は、裁判所を通じて調査を行う「調査嘱託」や、相手による財産の処分を防ぐ「保全処分(仮差押え)」といった法的な手続きを取ることも可能です。

5.2 財産分与請求の時効と民法改正の影響

財産分与を請求できる権利には、法律で定められた期限(時効)があります。この期限を過ぎてしまうと、たとえ本来もらえるはずの財産があっても、請求する権利を失ってしまいます。

財産分与請求権の時効は、離婚が成立した日から2年です。この「2年」という期間は非常に短いため、絶対に忘れてはいけません。離婚届を提出して離婚が成立したにもかかわらず、財産分与の話し合いを先延ばしにしていると、気づいたときには手遅れになる可能性があります。

なお、2020年4月1日に施行された改正民法により消滅時効のルールが変わりましたが、財産分与請求権の「離婚から2年」という期間(法律上は「除斥期間」と解釈されています)に直接的な変更はありません。いずれにせよ、迅速な対応が求められることに変わりはありません。

もし2年の時効が迫っている場合は、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てることで、時効の完成を阻止できます。安易に「後で話し合おう」と考えるのではなく、離婚と同時に、あるいは離婚後速やかに財産分与の手続きを進めることが極めて重要です。

5.3 慰謝料との関係性

「財産分与」と「慰謝料」は、しばしば混同されがちですが、法的には全く異なる性質のものです。この違いを理解していないと、正当な権利を主張できず損をしてしまう可能性があります。

  • 財産分与:婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を公平に清算するもの。離婚の原因(どちらに非があるか)は問われません。
  • 慰謝料:相手の不貞行為(不倫)やDV(ドメスティック・バイオレンス)など、違法な行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償。有責配偶者に対して請求するものです。

したがって、相手に離婚の原因がある場合、あなたは財産分与とは別に、慰謝料を請求することができます。例えば、「夫の不倫が原因で離婚するが、財産はきっちり半分ずつ分ける」というケースでは、財産分与(2分の1)に加えて、不倫に対する慰謝料を請求できるのです。

ただし、夫婦間の話し合い(協議)においては、慰謝料分を財産分与に上乗せする形で解決することもあります(慰謝料的財産分与)。その場合は、後々のトラブルを防ぐため、離婚協議書に「慰謝料として〇〇万円を財産分与に含める」といった形で、その旨を明確に記載しておくことが不可欠です。

5.4 税金に関する注意点(贈与税・不動産取得税など)

財産分与では、思わぬ税金が発生することがあります。特に不動産や高額な金融資産が絡む熟年離婚では、税金の知識がなければ数百万円単位で損をすることもあり得ます。注意すべき主な税金は以下の通りです。

5.4.1 財産を受け取る側にかかる税金

原則として、財産分与によって財産を受け取っても贈与税はかかりません。これは財産の贈与ではなく、夫婦の共有財産を清算する手続きと見なされるためです。ただし、分与された額が夫婦の協力で得た財産の額などを考慮しても多すぎる部分や、離婚が贈与税逃れと見なされた場合は、贈与税の対象となる可能性があります。

不動産を受け取った場合は、不動産取得税や名義変更のための登録免許税がかかります。

5.4.2 財産を渡す側にかかる税金

最も注意すべきなのは、財産を渡す側にかかる「譲渡所得税」です。不動産や株式など、購入した時よりも値上がりしている資産を財産分与として相手に渡した場合、その値上がり益(譲渡所得)に対して課税される可能性があります。

例えば、2,000万円で購入した家が、離婚時に4,000万円の価値になっていた場合、差額の2,000万円が譲渡所得と見なされ、渡す側に譲渡所得税が課されることがあるのです。この点を考慮せずに安易に「家をあげる」と約束すると、後から高額な納税義務を負うことになりかねません。

財産分与に伴う税金の概要を以下の表にまとめました。

税金の種類 課税される人 主な注意点
贈与税 受け取る側 原則非課税。ただし、分与額が社会通念上相当な範囲を大幅に超える場合は課税対象の可能性あり。
譲渡所得税 渡す側 不動産や株式など、取得時より値上がりした資産を渡した場合に課税される可能性がある。居住用財産の3,000万円特別控除などの特例が使えるか要確認。詳しくは国税庁のウェブサイトで確認できます。
不動産取得税 受け取る側 不動産を取得した際にかかる税金。共有財産の清算と認められれば軽減措置が適用される場合があるため、都道府県税事務所に要確認。
登録免許税 受け取る側 不動産の名義変更(所有権移転登記)の際に法務局に納める税金。

税金の問題は非常に専門的で複雑です。高額な財産が関係する場合には、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談し、最適な分与方法を検討することをおすすめします。

6. 熟年離婚の財産分与に関するよくある質問

熟年離婚の財産分与を進めるにあたり、多くの方が抱く疑問や不安があります。ここでは、弁護士への依頼から税金、相続の問題まで、よくある質問に対して専門的な視点から分かりやすくお答えします。事前に知識を深めておくことで、スムーズかつ有利に手続きを進められる可能性が高まります。

6.1 弁護士に依頼するメリットと費用相場

財産分与の交渉は、当事者だけでは感情的になりやすく、法的に適切な判断が難しいケースが少なくありません。専門家である弁護士に依頼することで、多くのメリットが期待できます。

弁護士に依頼する主なメリット

  • 精神的負担の軽減:相手方との直接の交渉や連絡をすべて任せられるため、精神的なストレスが大幅に軽減されます。
  • 法的に正当な主張が可能:財産分与の対象となる財産の見極めや、個別の事情に応じた寄与度の主張など、法的な根拠に基づいた交渉で適正な分与額の獲得を目指せます。
  • 財産調査のサポート:相手が財産を隠している可能性がある場合、弁護士会照会制度(23条照会)などを利用して、預貯金口座や保険などの情報を調査できる場合があります。
  • 手続きの円滑化:複雑な離婚協議書の作成から、調停・裁判になった場合の手続きまで、すべてを代理人として進めてもらえます。
  • 将来のトラブル防止:法的に不備のない合意書を作成することで、離婚後に「言った・言わない」のトラブルが発生するのを防ぎます。

弁護士費用は法律事務所によって異なりますが、一般的には以下の体系で構成されています。契約前には必ず見積もりを確認しましょう。

弁護士費用の内訳と相場
費用項目 内容 相場
相談料 弁護士に法律相談をする際にかかる費用。初回無料の事務所も多い。 30分5,000円~1万円程度
着手金 弁護士に正式に依頼する際に支払う費用。結果にかかわらず返金されないのが一般的。 20万円~50万円程度
報酬金 事件が解決した際に、その成功の度合い(獲得した経済的利益)に応じて支払う費用。 獲得した経済的利益の10%~20%程度
実費・日当 収入印紙代、郵便切手代、交通費、裁判所への出廷日当など、手続きに実際にかかった費用。 実費分

なかま法律事務所では、初回相談料無料でご案内しております(お問い合わせはこちら

6.2 長年支払われなかった生活費(婚姻費用)は請求できる?

婚姻費用とは、夫婦がその資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担するもので、別居中であっても離婚が成立するまでは、収入の少ない方が多い方へ請求できる生活費です。

しかし、過去に遡って未払い分の婚姻費用を請求することは、原則として非常に困難です。裁判所の実務では、婚姻費用を請求できるのは「請求した時」からとされており、それ以前の期間については、請求しなかった=その費用がなくても生活できていた、と判断される傾向にあります。

ただし、以下のようなケースでは、過去分が認められる可能性もゼロではありません。

  • 内容証明郵便などで明確に支払いを請求した証拠がある場合
  • 相手方の事情(DVからの避難など)で請求が困難だった場合

もし未払いの婚姻費用があるまま離婚に至る場合は、財産分与の話し合いの中で、その未払い分を考慮して分与額を調整する(上乗せしてもらう)といった「清算的解決」を目指すのが現実的です。この合意内容は、必ず離婚協議書に明記しておきましょう。

6.3 子どもの相続権はどうなる?

熟年離婚の場合、子どもがすでに成人しているケースも多いですが、親の相続権について正しく理解しておくことは重要です。

結論から言うと、両親が離婚しても、子どもと親の親子関係が消滅するわけではないため、子どもの相続権は一切影響を受けません。子どもは、父の財産も母の財産も、両方に対して法律で定められた相続権を持ち続けます。

一方で、離婚した元配偶者同士の相続権は完全になくなります。例えば、元夫が亡くなっても元妻は1円も相続できず、その逆も同様です。

注意点として、元配偶者が再婚した場合、相続関係は少し複雑になります。例えば、元夫が再婚して後妻との間に子どもができた場合、元夫が亡くなった際の相続人は「後妻」「前妻との子」「後妻との子」となり、法定相続分はそれぞれの立場で変動します。将来の相続について子どもにきちんと財産を残したい場合は、遺言書を作成しておくなどの対策が考えられます。

6.4 財産分与で損をしない離婚のタイミングとは?

財産分与で損をしないためには、離婚のタイミング、特に財産分与の「基準時」を意識することが重要です。財産分与の対象となる共有財産を確定する基準時は、原則として「離婚時」ですが、離婚前に別居している場合は「別居時」とされるのが一般的です。

この基準時を考慮すると、以下のような点がタイミングを見極めるポイントになります。

  • 退職金の支給時期:退職金は熟年離婚における大きな財産です。退職金がすでに支払われているか、支給が確実視される状況(定年間近など)であれば、財産分与の対象として計算しやすくなります。逆に、退職までまだ長期間ある場合は、算定額が低くなる可能性があるため、相手の退職が近いタイミングでの離婚は有利に働くことがあります。
  • 不動産の市場価格:持ち家を売却して分ける場合、不動産市況が良いタイミングで売却できれば、手元に残るお金が多くなります。不動産会社の査定などを参考に、売却のタイミングを検討するのも一つの手です。
  • 有価証券(株など)の価格:株や投資信託などの価値は日々変動します。別居(または離婚)時の評価額で財産価値が確定するため、株価が高い時期が基準時となれば、分与額も大きくなります。

一概に「この時がベスト」とは言えませんが、夫婦の財産状況を正確に把握した上で、どのタイミングを基準時とするのが最も有利になるかを戦略的に考えることが、損をしないための鍵となります。

6.5 負債(借金)がある場合の財産分与

夫婦の財産には、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンなどのマイナスの財産(負債)も含まれます。

財産分与の対象となるのは、「夫婦の共同生活を維持するために生じた負債」です。具体的には以下のようなものが該当します。

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン(家族で使う車)
  • 子どもの教育ローン
  • 生活費を補うための借入れ

一方で、夫婦の一方が個人的な趣味やギャンブル、浪費のために作った借金は「特有債務」とされ、財産分与の対象にはならず、借金をした本人が返済義務を負います。

財産分与の計算方法は、まずプラスの共有財産(預貯金、不動産評価額など)の総額から、マイナスの共有財産(住宅ローン残高など)の総額を差し引きます。そして、その残った金額を夫婦で分けることになります。

もし、財産の総額よりも負債の総額の方が多い場合、分与すべきプラスの財産がないため、財産分与は行われません。この場合、負債そのものを半分ずつに分けることはできず、原則としてローンなどの名義人が返済義務を負い続けることになります。ただし、夫婦間の話し合いにより、名義人でない方が返済の一部を協力するなどの取り決めをすることは可能です。

7. まとめ

熟年離婚の財産分与は、離婚後の生活基盤を確保するための極めて重要な手続きです。財産分与は、専業主婦や共働きといった働き方に関わらず、夫婦の協力によって築かれた共有財産を貢献度に応じて公平に分ける「2分の1ルール」が原則となります。持ち家や退職金、年金分割など論点は多岐にわたるため、まずは財産を正確に把握することが第一歩です。後悔しないためには、必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、法的に正しい知識のもとで手続きを進めることを強くお勧めします。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)