熟年離婚とは|お金で後悔しないための財産分与と年金分割の基礎知識
- 離婚の原因

熟年離婚とは、一般的に50代以降や婚姻期間が長い夫婦の離婚を指す言葉です。
長年連れ添った末に離婚を考える場合、とくに不安になりやすいのが離婚後の生活費や年金などのお金の問題です。
この記事では、熟年離婚の財産分与や年金分割の仕組み、別居との違いまでを整理し、お金で後悔しないための基礎知識を解説します。
目次
熟年離婚とは?何歳から指す言葉?
熟年離婚は、長年連れ添った夫婦が離婚を選択するケースを指して使われることが多い言葉です。
ここでは、熟年離婚の意味や増加の背景について整理します。
50代以降・婚姻20年以上を指すことが多い
熟年離婚には、法律上の明確な年齢や婚姻期間の基準はありません。
一般的に50代以降や、婚姻期間が20年以上の夫婦の離婚を指すことが多いとされています。
これは、子どもが独立して夫婦二人の生活に戻る時期や、夫の定年退職などライフステージの変化と重なることが背景にあります。
長年続いてきた夫婦関係を見つめ直すタイミングでもあるため、この時期に離婚を選択するケースが一定数みられます。
熟年離婚は30年で約2倍に増えている
熟年離婚は、近年増加傾向にあるといわれています。
厚生労働省の人口動態統計によると、婚姻期間が20年以上の夫婦の離婚件数は、1990年(平成2年)には約1万6,000組でしたが、2020年から2022年頃には約3万8,000組から4万組程度となっています。
おおよそ30年で2倍以上に増加している計算です。
離婚全体の件数は減少傾向にあるなかで、婚姻期間20年以上の離婚は高止まり、あるいは微増の傾向がみられ、現在では離婚全体の約2割を占めています。
熟年離婚はいくらあれば安心?
熟年離婚を考える際に、最も気になるのが離婚後の生活資金です。
ここでは、老後の生活費や年金収入を踏まえ、生活費の目安や考慮すべき点について確認します。
一人暮らしの生活費は月20〜25万円が目安
離婚後に一人で生活する場合、生活費は月20万〜25万円程度が一つの目安とされています。
この金額には、食費や光熱費、通信費、医療費、保険料、日用品費など、日常生活を維持するための基本的な支出が含まれます。
総務省の家計調査などによると、高齢単身世帯の平均支出は20万円前後とされており、一定のゆとりを見込むと25万円程度を想定しておくと現実的です。
もっとも、都市部か地方かといった居住環境の違いによっても必要額は変わります。
住居費の有無で必要額は大きく変わる
生活費の中でも、とくに大きな割合を占めるのが住居費です。
持ち家があり住宅ローンの返済が終わっている場合と、賃貸住宅に住む場合とでは、毎月の支出は大きく異なります。
賃貸の場合、地域にもよりますが家賃として月5万円から10万円以上が必要になることもあり、それだけで生活費の総額が大きく変わります。
一方、持ち家であっても固定資産税や修繕費、管理費などの負担が発生し、築年数が経過している場合には、将来的な修繕費も見込んでおく必要があります。
離婚後に自宅に住み続けるのか、売却して住み替えるのかによっても必要な資金は変わるため、住居の選択は生活設計を考えるうえで欠かせない検討事項です。
医療費・介護費の備えも考慮する
熟年離婚後の生活を考える際には、日々の生活費だけでなく、医療費や将来の介護費についても視野に入れておく必要があります。
年齢を重ねるにつれて通院や治療の機会が増え、将来的に介護が必要となった場合には、介護保険の自己負担に加え、利用するサービスの内容や回数によって支出が増えていきます。
こうした支出は時期や状況によって変動するため、毎月の生活費とは別に、ある程度の予備資金を確保しておくことが安心につながります。
公的制度で補える場合もある
離婚後の生活資金に不安がある場合でも、すべてを貯蓄だけでまかなう必要があるとは限りません。
収入や資産の状況によっては、公的な制度を利用できる可能性があります。
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金
- 年金分割制度
- 加給年金(条件を満たす場合)
- 高額療養費制度
- 介護保険制度
- 住宅確保給付金(一定の条件下)
- 生活福祉資金貸付制度
- 生活保護
これらの制度には、所得や資産に関する条件が設けられていることが一般的です。
離婚後の収入見込みや財産状況を整理したうえで、利用できる制度があるか確認しておきましょう。
専業主婦でも熟年離婚で財産分与はもらえる?
長年専業主婦として家庭を支えてきた場合、自分は収入を得ていなかったから財産はもらえないのではないかと不安に感じる人もいます。
しかし、財産分与の考え方は収入の有無だけで決まるものではありません。
ここでは、専業主婦の熟年離婚における財産分与の基本的な考え方を整理します。
専業主婦でも原則2分の1の財産分与を受けられる
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分け合う制度です(民法768条)。
夫が主に収入を得ていた場合であっても、専業主婦として家事や育児を担ってきた貢献は対等に評価されるのが原則とされています。
そのため、特別な事情がない限り、共有財産は2分の1ずつ分ける考え方が基本です。
もっとも、結婚前から保有していた財産や、相続によって取得した財産などは原則として対象外となります。
【関連記事】熟年離婚の財産分与を徹底解説!専業主婦・共働き、持ち家・年金・退職金の分け方
退職金も対象になる場合がある
退職金は、将来受け取る予定のものであっても、婚姻期間中の勤務に対応する部分については財産分与の対象となる場合があります。
定年が近い場合や、退職金の支給がほぼ確実といえる状況であれば、分与の対象として考慮される可能性が高くなります。
しかし、すべての退職金が自動的に半分になるわけではありません。
婚姻前の勤務期間に該当する部分は対象外とされるのが一般的であり、実際には在職期間や婚姻期間を踏まえて按分されることになります。
【関連記事】退職金は財産分与の対象?離婚前に知っておくべき計算方法と注意点
持ち家と住宅ローンも分与の対象となる
婚姻期間中に購入した自宅は、名義が夫婦のどちらか一方であっても、原則として共有財産に含まれるため、持ち家も財産分与の対象です。
住宅ローンが残っている場合には、自宅の評価額からローン残高を差し引いた実質的な資産価値を基準に分与額を検討することになります。
ローンの名義や連帯保証の有無によっても整理の方法は異なるため、具体的な状況に応じた検討が求められます。
夫名義の預貯金も共有財産に含まれる
預貯金が夫名義で管理されている場合でも、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成されたものであれば、原則として共有財産に含まれます。
名義がどちらであるかよりも、その財産がどのように形成されたかが重視されるからです。
たとえば、夫の給与から積み立てられた預金であっても、専業主婦として家事や育児を担い家庭を支えてきた場合には、その貢献が評価されるのが一般的です。
熟年離婚の年金分割とは?
熟年離婚を考える際には、将来受け取る年金の扱いも重要な論点となります。
ここでは、年金分割の基本的な仕組みを整理します。
年金分割は婚姻期間中の厚生年金を分ける制度
年金分割とは、婚姻期間中に加入していた厚生年金の保険料納付実績を、離婚時に夫婦で分けることができる制度です。
分ける対象は、実際の年金額そのものではなく、将来の年金額を計算する基礎となる標準報酬に対応する記録です。
たとえば、夫が会社員として厚生年金に加入していた場合、その期間中の保険料納付実績の一部を妻の記録に移すことができます。
その結果、将来受け取る老齢厚生年金の額が増減する仕組みです。
もっとも分割の対象となるのは婚姻期間中の厚生年金部分に限られるため、自営業者などが加入する国民年金(老齢基礎年金)は分割の対象にはなりません。
【関連記事】年金分割とは?対象となる年金や年金分割の種類
3号分割は最大2分の1まで按分できる
3号分割とは、2008年(平成20年)4月以降の第3号被保険者期間について、配偶者の厚生年金記録を一律で2分の1に分割できる制度です。
専業主婦期間に対応する部分については、原則として自動的に2分の1に按分される仕組みとなっています。
合意分割とは異なり、相手の同意がなくても請求できる点が特徴です。
対象となるのは婚姻期間中の厚生年金の報酬比例部分に限られ、老齢基礎年金(国民年金部分)や企業年金などは分割の対象にはなりません。
加えて、離婚後2年以内に手続きを行う必要があるため、期限を意識して準備を進めることが求められます。
合意分割は話し合いで割合を決める
合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録について、当事者間の話し合いにより分割割合を定める制度です。
分割割合は最大で2分の1までとされており、双方が合意すればその範囲内で柔軟に割合を決めることができます。
3号分割との大きな違いは、2008年4月以前の婚姻期間も対象にできる点にあります。
長期間婚姻していた場合には、分割対象となる期間が広がります。
ただし、合意が成立しない場合には家庭裁判所の調停や審判によって割合が定められることになります。
年金分割のための情報通知書を取得し、具体的な記録を確認したうえで交渉を進めることが現実的です。
熟年離婚と別居はどちらが得?
熟年離婚を検討する際には、まずは別居にとどめるべきかどうかで迷う人もいます。
金銭面や法的な立場はそれぞれで異なるため、一概にどちらが有利とはいえません。
ここでは、お金や権利の観点から主な違いを整理します。
生活費を確保したいなら別居が有利な場合がある
別居中であっても法律上の婚姻関係は継続しているため、収入の少ない側は相手に対して婚姻費用を請求できます。
婚姻費用とは、夫婦がその収入に応じて生活を維持するために分担すべき費用のことで、生活費や住居費、医療費などが含まれます。
専業主婦や収入が限られている場合には、離婚を急がず、別居を選択して婚姻費用を受け取りながら生活を立て直すという方法も考えられます。
ただし、別居期間が長期化すると、関係の整理が曖昧になったり、財産分与や年金分割の手続きが先送りになる可能性もあります。
生活費の確保という観点だけでなく、将来的な見通しも踏まえて判断することが必要です。
【関連記事】婚姻費用とは|もらえるケースや内訳は?婚姻費用算定表や金額を解説
年金分割を受けたいなら離婚が前提となる
年金分割は、別居中であっても法律上の婚姻関係が続いている限り、分割の手続きを行うことはできません。
そのため、将来の年金受給額を見据えて制度を活用したい場合には、離婚という選択が必要になります。
加えて、分割できるのは婚姻期間中の厚生年金部分に限られ、離婚後2年以内に請求しなければなりません。
相続権を残したいなら別居が有利
別居中であっても婚姻関係が継続している限り、配偶者には法定相続人としての地位があり、万が一相手が亡くなった場合には、法律上の配偶者として相続権が認められます。
老後の生活保障や財産承継を重視する場合には、離婚せず別居にとどめることに一定の意味が生じることもあります。
ただし、別居状態が長期化すると、財産管理や生活費の負担をめぐる問題が残る可能性もあるため、将来の見通しを踏まえたうえで判断することが必要です。
法的に関係を整理したいなら離婚が明確
離婚が成立すると、夫婦間の法律関係は解消され、財産分与や年金分割の手続きが確定し、将来に向けた生活設計を明確に立てやすくなります。
しかし、離婚には住居の変更や収入環境の変化など、生活基盤に影響する要素もあります。
別居と比べて法的関係がはっきりする一方、負担も生じるため、自身が何を優先するのかを整理したうえで選択することが求められます。
熟年離婚で後悔しないための準備
熟年離婚では、感情だけで判断すると、後から経済的な不安が現実化することがあります。
長年の婚姻関係の中で築かれた財産や年金は、内容を正確に把握していなければ、十分に活用できません。
ここでは、お金で後悔しないために押さえておきたい準備事項を整理します。
財産の証拠を確保する
財産分与は、婚姻期間中に築いた共有財産を対象とします。
しかし、相手名義の預貯金や有価証券、保険契約などは、把握していなければ分与の対象として主張することが難しくなります。
離婚後に調査することは容易ではないため、通帳の写し、保険証券、不動産登記簿、証券口座の残高資料など、現状を示す資料を可能な範囲で確認しておくことが重要です。
年金記録を取り寄せる
年金分割の前提となるのは、婚姻期間中の厚生年金記録です。
年金分割のための情報通知書を取得し、対象期間や見込額を確認します。
制度の概要だけで判断するのではなく、具体的な数字を把握することで、離婚条件の話し合いも現実的になります。
退職金見込額を確認する
退職金は、将来支給予定のものであっても、一定の条件下で財産分与の対象となることがあります。とくに定年が近い場合には、見込額の確認が欠かせません。
会社の就業規則や退職金規程を確認し、支給予定額や支給時期を把握しておくことで、交渉の前提が明確になります。
弁護士に早めに相談する
熟年離婚では、財産分与や年金分割の対象となる金額が大きくなる傾向があります。
退職金や不動産、長年の預貯金などが関係するため、話し合いだけで進めると、制度の理解不足や資料不足によって不利な条件で合意してしまう可能性があります。
弁護士に相談することで、財産の範囲の確認、分与割合の妥当性、年金分割の具体的な見込み額の整理などを法的観点から検討できます。
また、相手との交渉が難航した場合にも、代理人として対応することが可能です。
離婚を決意してから動くのではなく、検討段階で相談することで、選択肢を比較しながら冷静に判断できる環境を整えることができます。
熟年離婚に関連するよくある質問
熟年離婚で慰謝料はもらえる?
熟年離婚であっても、不貞行為や暴力など、法律上の不法行為がある場合には慰謝料を請求できる可能性があります。
請求できるかどうかは、具体的な事情や証拠の有無によって判断されます。
【関連記事】熟年離婚で相手に慰謝料を請求するには?
熟年離婚で退職金は必ず分けてもらえますか?
退職金は、婚姻期間中に形成された部分について、財産分与の対象となります。
すでに支給済みの場合だけでなく、支給が見込まれる場合でも、一定の条件を満たせば分与対象となることがあります。
年金分割は自動で2分の1になりますか?
自動的に2分の1になるのは、3号分割の対象期間のみです。
それ以外の期間については、合意分割の手続きが必要となり、割合は話し合いや家庭裁判所で決まります。
まとめ
熟年離婚とは、一般的に50代以降や婚姻期間が長い夫婦の離婚を指します。
生活費の見通し、財産分与の範囲、年金分割の仕組み、別居との違いなどを整理しないまま進めてしまうと、後に経済的な不安を抱える可能性があります。
専業主婦であっても、原則として財産分与や年金分割の対象となる制度があり、適切に手続きを行えば将来の生活基盤を整えることが可能です。
もっとも、実際にいくら受け取れるのか、どの財産が対象になるのかは、個別の事情によって異なります。
弁護士に相談することで、熟年離婚に関する財産分与や年金分割の見通しについて、現在の状況を整理したうえで、法的な観点からアドバイスを受けることができます。
離婚を決意している場合だけでなく、「まだ迷っている」という段階でも相談は可能です。

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