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離婚における公正証書とは?効力・費用・作り方をわかりやすく解説

2025.12.26
  • その他

離婚時の取り決めを確実に残したい場合、公正証書は有効な手段の一つです。

公正証書を作成しておくことで、養育費や慰謝料などの合意内容を公的な文書として残すことができ、将来のトラブルを防ぎやすくなります。

一方で、公正証書であってもすべての内容に強制力が及ぶわけではなく、効力を発揮させるためには注意点もあります。

この記事では、離婚における公正証書とは何かをはじめ、公正証書の効力と注意点、作成にかかる費用の目安などについて、わかりやすく解説します。

 離婚における公正証書とは?

離婚時に作成される公正証書は、養育費や慰謝料などの取り決めを将来に残すための重要な書類です。

一方で、公正証書の効力や、離婚協議書との違いなどが分からないまま進めてしまうと、十分な効力を得られないおそれもあります。

ここでは、離婚における公正証書の基本的な意味や役割について解説します。

公正証書は公証人が作成する公的な文書

公正証書とは、公証役場に所属する公証人が、当事者の申出に基づいて作成する公的な文書です。

公証人は、当事者双方の意思を確認し、内容を整理したうえで、法律に照らして問題がないかを確認し、公正証書を作成します(公証人法第1条)。

そのため、公正証書は当事者同士で作成する離婚協議書とは異なり、内容の客観性や証明力が高い点が特徴です。

当事者の合意内容を公文書として記録する制度

公正証書は、当事者同士で合意した内容を、そのまま公文書として記録する制度です。

離婚にあたっては、養育費や慰謝料、支払い方法や期限など、将来にわたって影響する取り決めが多くなります。

合意内容を公正証書として残すことで、後から「言った・言わない」といった争いが生じにくくなり、合意の存在や内容を客観的に示しやすくなります。

離婚時には離婚協議書を公正証書化するケースが多い

離婚にあたっては、まず当事者同士で離婚条件を話し合い、その内容を離婚協議書としてまとめるケースが一般的です。

その後、作成した離婚協議書をもとに、公証役場で確認を行い、公正証書を作成します。

離婚協議書を公正証書化することで、合意内容を公的な文書として残すことができ、将来の支払いトラブルや解釈の違いを防ぎやすくなります。

将来のトラブルを防ぐ目的で利用されることが多い

離婚後は、時間の経過とともに生活環境や考え方が変わり、離婚時に合意した内容について認識のずれが生じることも少なくありません。

とくに、養育費や慰謝料の支払い条件は、後からトラブルになりやすい争点です。

公正証書を作成しておくことで、当事者間で合意した内容を明確な形で残すことができ、支払い条件や約束の内容について争いが生じるリスクを抑えやすくなります。

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公正証書の効力と注意点

公正証書は、離婚時の取り決めを公的な形で残せる点が大きな特徴ですが、どのような内容でも必ず強制力が認められるわけではありません。

効力が及ぶ範囲や条件を正しく理解していないと、いざというときに想定した効果を得られない可能性もあります。

ここでは、離婚における公正証書の効力と、あらかじめ知っておきたい注意点について解説します。

強制執行認諾文言がある場合に限り、裁判を経ずに強制執行が可能

離婚に関する公正証書であっても、すべての取り決めが強制執行の対象になるわけではありません。

強制執行認諾文言が記載されている場合に限り、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行を申し立てることができます。

強制執行認諾文言とは、支払い義務を怠った場合に、裁判を経ずに強制執行を受けることをあらかじめ認める旨の文言です。

この文言があることで、給与や預貯金の差押えといった手続きに進むことが可能になります(民事執行法第22条第5号)。

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すべての離婚条件に強制力が及ぶわけではない

公正証書を作成した場合でも、離婚に関するすべての取り決めに強制力が認められるわけではありません。

強制執行の対象となるのは、養育費や慰謝料などの金銭の支払い義務に限られます。

一方で、親権や面会交流の方法、生活上の約束などについては、公正証書に記載されていても、強制執行によって実現させることはできません。

そのため、公正証書を作成する際には、どの内容に法的な強制力が及ぶのかを理解したうえで、取り決めを整理することが重要です。

記載内容が曖昧だと、実際に効力を発揮しないことがある

公正証書を作成していても、記載内容が曖昧な場合には、実際の場面で十分な効力を発揮しないことがあります。

とくに、支払い金額や支払期限、支払方法などが明確でないと、履行を求める際に解釈の違いが生じやすくなります。

たとえば、毎月一定額を支払うといった表現だけでは、具体的な金額や支払日が特定できず、強制執行の手続きが進められないケースもあります。

公正証書の効力を活かすためには、条件や内容をできる限り具体的に定めておくことが重要です。

合意内容を公的に証明できず、トラブルが長期化しやすい

公正証書を作成していない場合、養育費や慰謝料の支払いが滞っても、直ちに強制執行を行うことはできません。

支払いを求めるためには、裁判や調停などの手続きを経て、判決や調停調書といった法的な根拠を得る必要があります。

また、公正証書がない場合、離婚時の合意内容は私的な取り決めにとどまり、第三者に対して公的に証明することが難しくなります。

その結果、「言った・言わない」といった認識の違いが生じやすく、解決までに時間を要するケースも少なくありません。

公正証書でも無効となる場合がある

公正証書は公的な文書ですが、記載内容によっては無効と判断される場合があります。

たとえば、法律に反する内容や、公序良俗に反する取り決めが含まれている場合には、公正証書であっても効力が認められません。

加えて、当事者の意思確認が不十分なまま作成された場合や、内容が著しく不明確な場合にも、無効や一部無効と判断されることがあります。

公正証書を作成する際には、内容が法的に問題ないかを慎重に確認することが重要です。

離婚の公正証書にかかる費用

公正証書の作成には、公証役場に支払う手数料がかかり、その金額は養育費や慰謝料など、取り決める内容や金額によって変わります。

ここでは、離婚時の公正証書にかかる費用の目安と、金額が変動する理由について解説します。

公証役場に支払う費用:5万円〜15万円程度が一般的

離婚に関する公正証書を作成する場合、公証役場に支払う手数料は、養育費や慰謝料などの取り決め金額を基準に決まります。

そのため内容にもよりますが、5万円〜15万円程度に収まるケースが一般的です。

なお、公証役場の手数料は全国共通の基準に基づいて算定されるため、地域によって大きな差が出ることはありません。

養育費や慰謝料の金額が高いほど、費用も高くなる

公正証書の作成にかかる手数料は、養育費や慰謝料など、公正証書に記載する金銭債務の総額を基準に算定されます。

そのため、取り決める金額が高くなるほど、公証役場に支払う費用も高くなります。

たとえば、養育費を長期間にわたって定める場合や、慰謝料を一括で高額に設定する場合には、算定基準となる金額が大きくなり、手数料も上がる傾向があります

条項数や内容によっては10万円〜20万円程度になることもある

公正証書に記載する条項が多い場合や、内容が複雑な場合には、公証役場に支払う費用が10万円〜20万円程度になることもあります。

これは、養育費や慰謝料に加えて、財産分与や不動産の取り扱い、支払方法の詳細などを細かく定める場合、公正証書全体の作成負担が増え、その分費用も高くなるからです。

どこまで詳細に記載するかはケースごとに異なるため、事前に内容を整理したうえで、公証役場に費用の目安を確認しておくと安心です。

弁護士に依頼する場合の費用:5万円〜20万円程度が目安

離婚に関する公正証書を作成する場合、公証役場に支払う手数料は、養育費や慰謝料などの取り決め金額を基準に算定されます。

内容にもよりますが、5万円〜15万円程度が目安となるケースが多く、養育費や慰謝料の総額が高い場合や、条項数が多い場合には、15万円を超えることもあります。

一方で、依頼内容が簡易な確認にとどまる場合には、低額になることもあります。

公正証書の作り方と流れ

離婚にあたって公正証書を作成する場合、事前準備が不十分なまま進めてしまうと、内容の修正に時間がかかったり、再度公証役場に足を運ぶといった手間が生じることもあります。

ここでは、離婚時に公正証書を作成する際の基本的な流れと、各段階で押さえておきたい内容を解説します。

夫婦間で離婚条件を整理する

公正証書を作成する前に、離婚条件を夫婦間で整理しておくことが重要です。

養育費や慰謝料、財産分与、支払方法など、どのような内容を取り決めるのかを事前に明確にしておくことで、公正証書の原案作成や公証役場での確認がスムーズに進みます。

加えて、後から内容を変更する場合、再度調整や手続きが必要になる点にも注意が必要です。

公正証書の原案を作成する

離婚条件を整理したあとは、公正証書に記載する原案を作成します。

原案には、養育費や慰謝料の金額、支払期限・方法、支払いが滞った場合の対応など、合意した内容を具体的に落とし込んでいきます。

原案は、夫婦の一方が作成することも可能ですが、内容が曖昧だったり、法的に不十分だったりすると、公証役場で修正を求められることがあります。

不安がある場合や取り決め内容が複雑な場合には、弁護士などの専門家に原案作成を依頼することで、後の修正やトラブルを防ぎやすくなります。

公証役場で内容を確認し作成する

公正証書の原案がまとまったら、公証役場で内容の確認と作成を行います。

当日は、公証人が原案の内容を確認し、当事者双方の意思に基づいた合意であるか、法律上問題がないかをチェックしたうえで、公正証書が作成されます。

原則として、夫婦双方が公証役場に出向く必要がありますが、やむを得ない事情がある場合には、代理人を立てることが認められるケースもあります。

正本・謄本を受け取る

公正証書の作成が完了すると、正本や謄本が交付されます。

どちらも再発行には手続きが必要となるため、受け取った後は紛失しないように保管しましょう。

公正証書は作成して終わりではなく、いざというときに使える状態で保管しておくことが大切です。

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公正証書に関する専門用語の整理

公正証書について調べていると、嘱託人や、正本・謄本など、聞き慣れない専門用語が多く出てきます。

ここでは、離婚に関する公正証書を検討するうえで、あらかじめ知っておきたい主な専門用語を、できるだけわかりやすく整理して解説します。

嘱託人

嘱託人とは、公正証書の作成を公証人に依頼する当事者のことです。

離婚に関する公正証書では、原則として夫婦双方が嘱託人となり、公証役場で意思確認が行われます。

代理人を立てる場合でも、嘱託人としての立場自体は当事者にあります。

正本・謄本・原本

原本は、公証役場に保管される公正証書の本体です。

正本は、強制執行などの法的手続きに使用できる書類で、実務上もっとも重要なものです。

謄本は、原本の内容を写したもので、内容確認や保管用として利用されます。

電磁的公正証書

電磁的公正証書とは、紙ではなく電子データとして作成・保存される公正証書を指します。

近年の制度改正により、公正証書は原則として電子データで作成・保管することが可能となり、正本や謄本も電子データで交付される仕組みが整いつつあります。

もっとも、離婚に関する公正証書については、現時点では紙での作成が一般的であり、電磁的公正証書に対応できるかどうかは、公証役場や事案の内容によって異なります。

公正証書の送達が必要となるケース

強制執行を行う際には、事前に公正証書が相手方に送達されていることが必要となるケースがあります。

送達とは、書類を正式に相手に届けたことを公的に証明する手続きで、執行手続きを進めるうえで重要な要件となります。

たとえば、養育費や慰謝料の支払いが滞った場合に強制執行を申し立てる際、相手方に対して公正証書の内容が正式に伝えられていることを示すために、送達が求められることがあります。

公正証書と離婚に関連するよくある質問

浮気が原因の離婚でも公正証書は作れる?

離婚原因が浮気であっても、当事者双方が合意していれば、公正証書として養育費や慰謝料の支払い条件などを定めて作成することが可能です。

不動産がある場合も公正証書にできる?

不動産の名義や処分方法、代償金の支払いなどについても、公正証書に記載することが可能です。

ただし、内容が複雑になる場合は、事前に弁護士へ相談したほうが安心です。

相手が公正証書作成を拒否したらどうなる?

公正証書は双方の合意が前提のため、相手が拒否した場合は作成できません。

その場合、調停や裁判などの法的手続きを検討する必要があります。

公正証書の内容は後から変更できる?

変更は可能ですが、再度双方の合意が必要です。

合意が成立すれば、新たに公正証書を作成するか、変更内容を反映した書面を作成することになります。

まとめ

離婚における公正証書は、養育費や慰謝料などの取り決めを公的な形で明確に残すための重要な手段です。

強制執行認諾文言を入れることで、支払いが滞った場合にも裁判を経ずに対応できる可能性があり、将来のトラブルを防ぐ効果が期待できます。

一方で、公正証書であっても、すべての取り決めに強制力が及ぶわけではなく、記載内容が曖昧な場合や法律に反する内容が含まれている場合には、十分な効力を得られないこともあります。

離婚後の不安をできるだけ減らすためにも、どの内容をどのように公正証書に残すべきかを整理したうえで進めることが大切です。

判断に迷う場合や内容が複雑な場合には、弁護士などに相談しながら進めることで、より安心した形で離婚を成立させやすくなります。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)