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慰謝料に関する公正証書の作成方法とは?

2023.11.01
  • 離婚手続
  • 慰謝料

慰謝料を支払ってもらう際に「公正証書」を作るとよい、という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。でも、「公正証書」とは、実際のところどのような書類なのか、通常の書類とは何が違うのか、なぜ「公正証書」を作るのがよいのか、そういった点まで把握していらっしゃる方は、もしかしたら少ないかもしれません。

本記事では、慰謝料に関して公正証書を作成することを検討されている方向けに、公正証書を作成するべき理由や公正証書を作成する際の具体的な流れについてご説明します。

公正証書とは

公正証書とは、私たち一般市民の依頼に基づいて、公務員である公証人が作成する文書です。こうした公的な機関が作ることから、いわゆる公文書として、そうではない文書と比較して文書の内容の信頼性が確保されていることが最も大きな特徴です。

具体的には、公正証書の正本は公証役場(公証人が業務を行っている場所)に保管されているため、①いつ②どこで③誰が④どんな内容の文書を公証人に依頼して作ってもらったかということを後から確認できるという点で、信頼性を確実なものとしています。

慰謝料の取り決めに公正証書を作成するべき理由・メリット

慰謝料の取り決めに公正証書を作成するべき理由・メリットとは、大まかには①いつ、誰が、どのような約束をしたかを後から確認できる状態にすること②約束を破った場合に強制執行の手続きを取ることができるようにすることの2点です。それでは、具体的な公正証書を作成すべきケースはどのようなケースか、見ていきましょう。

公正証書を作成すべきケース

上記「公正証書とは」の項目で述べたとおり、公正証書にした文書は、①いつ②どこで③誰が④どんな内容の文書を作ったかということを後から確認できる信頼性の高い文書となります。そうすると、公正証書を作成すべきケースというのは、自ずとこの“後から確認できる”という特徴を活かす必要があるケースということになります。典型的には、以下のようなケースが挙げられます。

慰謝料を分割払いする

例えば、「100万円の慰謝料を20万円ずつ5回に分けて支払う」と約束したケース等、それなりの大きなお金を数回に分けて支払ってもらう場合は、約束をした時点から全額の支払いが終わる時点まで間が空いてしまうことになります。すると、約束の内容を後から振り返ることができるようにしないと、途中で約束の内容が分からなくなってしまったり、約束が守られなくなったりするリスクが想定されます。

したがって、このようなケースは、公正証書を作成しておくことが推奨される最も典型的なケースといえます。

支払い能力に不安がある

相手が約束したお金をきちんと支払うか分からないというケースも、公正証書を作成することがお勧めされるよくあるケースです。

例えば、「□月△日に○○万円を支払う」という約束をした場合、その○○万円を支払わないまま□月△日が過ぎると、約束に違反したということになります。法律の世界では、この約束違反を「債務不履行」と呼んでおり、債務不履行がある場合は「強制執行」という制度を使うことができるとされています。

ただ、強制執行の制度は相手から強制的に金銭を徴収する性質を持っているため、制度を使う側にもクリアしなければならないハードルがいくつか存在しています。その一つに、約束が存在していることをきちんと証明できる文書を持っているか、というものがあります。つまり、上記の例ですと、「□月△日に○○万円を支払う」という約束がきちんとあるということを証明できる文書が必要、ということになります。

この点、公正証書をあらかじめ作っておけば、公正証書をこの「約束をきちんと証明できる文書」とすることができます。(なお、厳密には、「約束を破った時には強制執行を受けます」といった取り決めを明記している公正証書が対象です。詳しくは下記「公正証書を作成する際の注意点」の項目をご覧ください。)

したがって、相手がお金をきちんと支払うか分からないケースでは、公正証書の作成が推奨されます。

慰謝料が高額

約束した慰謝料が高額であるケースも、後から約束を破られやすい典型的なケースだといえます。そうだとすると、相手の支払い能力に不安があるケースと同様に、公正証書をあらかじめ作成して後から約束の内容を振り返ることができるようにしたり、支払いがない場合の強制執行を利用できるようにしたりすることが重要といえそうです。

支払まで一定期間が空く

慰謝料に関する交渉では、支払う側から「支払うつもりはあるけど、今すぐには支払えない。○か月先まで待って欲しい。」という提案がされることはそう珍しいことではありません。もし、このような提案に「今すぐだと物理的にお金がないということであれば仕方ないか…。」と応じるのであれば、合意する内容をきちんと公正証書にしておくべきでしょう。こうしたケースでも、支払いまで間が空くことから、約束が守られないリスクは高いといえるためです。

慰謝料の支払いにおける公正証書の作成の流れ

必要書類の準備

信頼性が高いという公正証書の性質上、作成にあたっては作成者の本人確認が求められます。具体的には、運転免許証等の顔写真付きの公的身分証明書と認印が必要になります。

また、ここでいう作成者とは支払いを受ける側の当事者だけでなく支払いをする側の当事者も含まれます。したがって、必然的に相手側と公正証書を作成することについて合意をしておく必要もあるということになります。

さらに、公正証書を作成する公証人に所定の手数料を支払う必要があります。手数料の金額は慰謝料の総額や作成する公正証書が何頁になるかといった点で変動しますが、少なくとも1万円以上は必要になると見込んでおくと安心です。

なお、弁護士に代理人を依頼する場合は、運転免許証等の顔写真付きの公的身分証明書と認印の代わりに、所定の委任状とご自身の印鑑登録証明書が必要となります。

当事者またはその代理人(弁護士)が公証役場で申し込む

公正証書を作成するためには、まずは公証役場に赴き、公正証書作成を希望することを伝える必要があります。この点、事前に公証役場にその旨電話で連絡しておくとスムーズです。その後、実際に作成する公正証書の文案の確認や公正証書を作成する本番の日程調整等を経て、いよいよ公正証書作成となります。

公証人立会いのもと公正証書を作成

公正証書を実際に作成するのは公証人であるため、作成本番も公証役場まで赴く必要があります。また、この時公証役場まで赴く必要があるのは、支払いを受ける側の当事者及び支払いをする側の当事者の双方です。もっとも、当事者のどちらかまたは双方ともが代理人をつけている場合は、代理人のみが出席すれば足ります。

公証人役場で公正証書を保管

上記「公正証書とは」の項目でご説明したとおり、公正証書の正本は公証役場に保管され、各当事者には謄本が交付されます。

公正証書を作成する際の注意点

公正証書本文に「強制執行受諾文言」を入れる

上記「慰謝料の取り決めに公正証書を作成するべき理由・メリット」の項目でご説明したとおり、公正証書を作成するメリットとは、基本的には①いつ、誰が、どのような約束をしたかを後から確認できる状態にすること②約束を破った場合に強制執行の手続きを取ることができるようにすることの2点に尽きます。このようなメリットを最大限活かすためには、制度上、公正証書本文に「強制執行受諾文言」を入れる必要があります。強制執行受諾文言とは、平たく言ってしまえば、債務者(支払いをする側)が「約束を破った時には強制執行を受けます」と宣言するといった意味の文言です。こうした意味の文言が入ることで、支払いを受ける側は上記の②のメリットを享受できるということになります。

したがって、公正証書を作成する際は、「強制執行受諾文言」を忘れずに入れてもらうようにしましょう。

公正証書作成時に「送達証明書」を受け取る

公正証書を使って強制執行の手続きを行う場合、債務者(支払いをする側)がその公正証書の謄本をきちんと受け取っているということも条件となります。このような、「公正証書の謄本をきちんと受け取ったこと」を証明する書類が、「送達証明書」という書類になります。基本的には、公正証書を作成する本番に当事者双方が一堂に会した際、その場で公証人から各当事者へ手渡されることになるため、同時に「送達証明書」ももらうことができます。

公正証書の本文に「強制執行受諾文言」が入る場合は特に何も言わなくても公証人側が用意してくれることが多いですが、もし忘れられてしまった場合は強制執行の前にもう一度「送達証明書」を受け取りに公証役場に赴く必要が生じ、二度手間となってしまいますので、公正証書作成時は「送達証明書」も忘れずに発行してもらうようにしましょう。

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本記事では、慰謝料請求の場面でよく利用されている「公正証書」について、定義、作成するメリット、具体的な作成手順、注意点をご説明しました。弊所では、すでに合意に至ることができている方向けに公正証書化する書面作成の業務を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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