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離婚裁判で弁護士なしは危険?費用の相場とつけない場合の注意点

2025.11.28
  • 離婚手続

離婚裁判を弁護士なしで進められないかと考える方は少なくありません。本人訴訟として自力で手続きに臨むこと自体は可能です。

ただ、離婚裁判では、証拠の揃え方や主張の組み立て方、期日の対応など、専門的な作業が多く、思わぬ不利につながることがあります。

この記事では、弁護士なしで進める際のメリットとデメリット、費用の違い、そして弁護士に依頼することで避けられるリスクについて、判断材料として押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

離婚裁判は弁護士なしでも進められる?

離婚裁判は、民事訴訟の一つとして本人が自分で手続きを行う制度が認められており、弁護士をつけずに進めることも可能です。

ただし、制度としては可能であっても、実際にどのように進むのか、どこまで自力で対応できるのかはあまり知られていません。

ここでは、弁護士に依頼しない場合でも離婚裁判を進められる仕組みについて解説します。

 本人訴訟として弁護士なしでも手続きは可能

民事訴訟では、本人が自ら手続きを行う本人訴訟が認められており、離婚裁判もこれに含まれます。

訴状の提出や期日の出席など、基本的な訴訟行為は本人が行うことができます(民事訴訟法54条)。

ただし、制度として可能でも、必要書類の準備や手続きの理解はすべて自分で行う必要があります。

被告側でも弁護士なしで離婚裁判することは可能

相手から訴えられた場合でも、答弁書の提出や期日の応対などは本人訴訟として行うことができます民事訴訟法54条)。

弁護士をつけずに対応すること自体は制度上認められていますが、主張内容や証拠の整理は自分で進めなければなりません。

そのため、負担は大きくなりやすい点には注意が必要です。

弁護士なしで離婚裁判を行う人は実務上ごく少数となる

離婚裁判は、親権や養育費、財産分与など家族の重要な問題を扱う人事訴訟に分類されます。

人事訴訟は専門的な判断が求められるため、実務では弁護士が選任されるケースが大半です。

司法統計を基にした資料でも、人事訴訟では代理人が就く割合がほぼ100%に近いとされており、本人だけで対応するケースはごく少数と考えられます。(出典:弁護士白書/日弁連の司法統計分析資料)

自力で離婚裁判をするメリット

弁護士に依頼せず、自分で離婚裁判を進める方法には一定のメリットがあります。

費用を抑えたい場合や、自分で内容を把握しながら進めたい方にとっては、あえて本人訴訟を選ぶケースもあります。

ここでは、自力で進めることにどのような利点があるのかを解説します。

弁護士費用を抑えられる

弁護士に依頼しない場合は、着手金や報酬金が不要になるため、金銭的な負担を大きく減らすことができます

訴訟に必要な費用は、収入印紙や郵券、証拠取得のための実費などに限られるため、初期費用を抑えたい方にとっては大きなメリットとなります。

【関連記事】離婚にかかる弁護士費用はいくら?相場や内訳・安く抑えるポイント

裁判の内容や進行を自分で把握しやすい

自分で訴状や準備書面を作成するため、主張内容や手続きの流れを細かく理解しながら進めることができます

弁護士とのやり取りが不要な分、手続きの状況を自分の目で確認しながら進められる点に安心感を持てる方もいます。

自分のペースで準備を進められる

打合せや連絡の時間を調整する必要がないため、記録の整理や書類作成を自分の都合に合わせて行うことができます。

仕事や家庭の状況に応じて、無理のない範囲で準備できる点は、自力で進める際のメリットといえます。

自力で離婚裁判を進める際のデメリット

一方で、離婚裁判を自分だけで進める場合には注意すべき点も多くあります。

証拠の整理や主張の組み立てなど、専門的な判断が求められる場面も多いため、思わぬ不利につながることがあります。

ここでは、自力で進める場合に生じやすいデメリットを解説します。

必要な証拠を基準に沿って揃えるのが難しい

離婚裁判では、主張を裏付けるための証拠が極めて重要になります。

不貞行為の有無、モラハラの実態、別居期間の長さなど、何を・どの程度示せば裁判で認められるのかには明確な基準があるからです。

しかし、これらの基準は一般の方には分かりにくく、必要な証拠が不足したり、提出の順序が誤って不利になるケースもあります。

そのため、証拠の収集・整理・提出を自分だけで行うことは、大きな負担になります。

【関連記事】不倫の証拠を集める方法|裁判・慰謝料請求で有効な証拠と注意点

事実を法律に当てはめて主張を整理するのが困難

裁判では、事実をどのように主張し、どの法律に結びつけるかが非常に重要です。

同じ事実でも、主張の方法や書き方によって裁判所の受け止め方が大きく変わることがあります。

自力で進める場合、主張が法律要件に合わないまま提出され、意図した内容が十分に伝わらないことも珍しくありません。

その結果、伝えておきたい事実が裁判官に正しく届かず、不利な判断につながる恐れがあります。

準備書面や証拠説明書の作成が複雑

準備書面は、主張や反論を整理して裁判所に伝える正式な書類です。

加えて、証拠説明書は、提出する証拠の内容や意味を説明する書類で、形式や書き方には細かなルールがあります。

これらを自分で作成するには、法的な知識や書類作成の経験が必要で、慣れていないと何度も書き直すことになりがちです。

提出期限が決まっているため、日常の仕事や家事と並行して書類を整えることが難しくなります。

期日ごとの応対や手続きに大きな負担が生じる

裁判は複数回の期日(裁判の日)を経て進行します。

そのたびに提出書類の準備や反論内容の整理が必要になり、当日のやり取りにも自分で対応しなければなりません

慣れない場で説明を求められることも多く、十分に主張しきれないまま進んでしまうこともあります。

こうした負担が重なると、必要な反論が抜けたり、争点が整理しきれなかったりと、最終的な判断に影響が出る可能性があります。

相手に弁護士がつくと、主張や証拠の質で差が開きやすい

相手が弁護士をつけている場合、主張の構成や証拠の提示が的確に行われるため、どうしても比較して差が出やすくなります。

自力で対応していると、気づかないうちに論点がずれたり、必要な反論が不足したまま期日が進んでしまうこともあります

その結果、重要な主張が十分に整理されないまま判断されてしまい、争点ごとに不利な評価が積み重なる可能性があります。

控訴が必要になった場合は対応が一層困難

一審の判断に不服がある場合は控訴ができますが、控訴審では一審とは異なる視点から判断されることも多く、主張の再構成が求められます

この段階では、書類の作成や法的な主張の精度がより重要になるため、本人だけで対応するのはさらに難しくなります。

加えて、控訴できる期間は短く、限られた時間の中で必要な書面を整える必要があるため、準備が間に合わないリスクも出てきます。

離婚裁判にかかる費用の違いと弁護士費用の相場とは?

離婚裁判にかかる費用は、弁護士に依頼するかどうかで大きく変わります。

弁護士費用の相場や、自力で進めた場合に必要となる実費、さらには費用負担の仕組みを知っておくことで、金銭面の不安を軽減しながら準備がしやすくなります。

ここでは、離婚裁判に必要となる費用の目安や考え方について解説します。

弁護士に依頼する場合:総額60〜120万円程度が目安

離婚裁判を弁護士に依頼する場合、費用は着手金と報酬金が中心になります。

着手金は30〜60万円ほどで、依頼した時点で必要になる費用です。

裁判が進み、判決や和解で結果が出た際には、報酬金として30〜60万円がかかることが多く、総額では60〜120万円程度が一般的な目安となります。

争点が多い(親権・財産分与・養育費など)場合や、裁判が長期化するケースでは、費用がさらに上がることもあります。

金額だけを見ると負担は大きいように思えますが、専門的な主張や証拠整理を任せられることで、結果的に不利を避けられる場面も少なくありません。

【関連記事】離婚裁判の費用・弁護士費用は誰が払う?払えない場合の対処法

自分で進める場合:実費数千円〜数万円程度

弁護士に依頼しない場合、着手金や報酬金は発生せず、必要となるのは裁判にかかる実費のみです。

具体的には、訴状に貼る収入印紙(1,000円〜)、裁判所に納める郵券(5,000〜1万円前後)、戸籍謄本や住民票などの取得費用、証拠のコピー代や郵送費などです。

これらを合計しても、数千円〜数万円程度に収まるのが一般的で、初期費用を抑えたい方にとっては大きなメリットと言えます。

ただし、費用が少ない反面、主張や書面作成、証拠整理などをすべて自分で行う負担は大きく、裁判の進め方を理解しておく必要があります。

離婚裁判で発生する費用の負担は、訴訟費用と弁護士費用で異なる

離婚裁判にかかる費用は、大きく訴訟費用と弁護士費用に分けられます。

訴訟費用とは、収入印紙や郵券など裁判所に納める実費のことで、原則として、裁判の結果で負担割合が決まる仕組みです。

一方、弁護士費用は依頼者が個別に支払うもので、判決で相手に請求できる場面は限定的です。

そのため、裁判費用は全部相手に払わせればいいという状況になることはほとんどなく、弁護士費用は基本的に自分で準備する必要がある点に注意が必要です。

費用を抑えたい場合には、利用できる制度や支払い方法がある

弁護士費用が不安な場合でも、いくつか負担を抑える方法があります。

法テラスの代理援助制度を利用すれば、一定の収入基準を満たす場合に、弁護士費用を立て替えてもらえるケースがあります

加えて、法律事務所によっては着手金の分割払いに対応している場合もあり、まとまった費用を一度に用意しなくても依頼できることがあります。

費用の見通しが立つと、裁判に向けた準備もしやすくなるため、早い段階で相談しておくことが安心につながります。

弁護士に依頼することで避けられるリスクとは?

離婚裁判では、証拠の整理や主張の構成、期日の対応など、多くの場面で専門的な判断が必要になります。

ここでは、弁護士に依頼することで避けられる主なリスクを解説します。

必要な証拠や資料の不足による不利を避けられる

離婚裁判では、証拠そのものよりも何を裏付けるための資料なのかが重視されます。

弁護士が入ると、集められた証拠を法的な視点で評価し、どの争点に向けて提示すべきかを整理していきます。

そのため、同じ証拠でも提出の順番や位置づけが最適化され、裁判官に伝わりやすい形で判断材料として扱われます。

結果として、主張したい内容をより有利な形で評価してもらえる可能性が高まります。

主張の整理不足で裁判官に伝わらないリスクを避けられる

事実と法律の関係性が整理されているかどうかで、裁判所の受け止め方は大きく変わります。

弁護士は、複雑な事実関係を必要な法的要件に沿って再構成し、裁判官に意図が届きやすい形へ整えます。

自力で進めると、主張が要件に適合していないまま伝わってしまうこともありますが、弁護士が関与するとそのズレを防ぎやすくなります

こうした整理が行われることで、争点ごとの評価が安定し、判断に影響する要素も明確になります。

期日の進行や書面提出の遅れによる不利を避けられる

裁判は、いつ・どの書面を出すかが結果に影響する場面も多い手続きです。

弁護士が入ると、期日ごとの進行に合わせて書面を準備し、提出の順番や内容を計画的に整えてくれます。

自力では抜けや遅れが生じやすい部分ですが、専門家が全体を管理することで、流れに沿った進め方が可能になります。

こうした積み重ねが、裁判の安定した進行につながります。

相手に弁護士がついている場合の主張の質の差を避けられる

相手に弁護士がついている場合、主張の組み立てや反論が高度に行われるため、本人だけで対応していると論点がずれたり、反論が追いつかないことがあります。

護士が介入すると、相手方の主張の弱点を把握したうえで反論を組み立てることができ、争点が不利な形で固定されてしまうリスクを避けることができます。

手続きの誤りや控訴対応ができないリスクを避けられる

一審の判断に納得できない場合、控訴という手続きを利用して上級裁判所に判断を求めることができます。

ただし、控訴には厳格な期限があり、原則として判決の送達から2週間以内に控訴状を提出しなければなりません。

控訴審では、一審と同じ主張を繰り返すだけでは認められにくく、どの部分に判断の誤りがあったのか、どの証拠をどう評価すべきなのかを改めて整理し直す必要があります。

こうした作業は法律知識や経験が求められるため、本人だけで行うのは非常に難しいのが実情です。

弁護士に依頼することで、控訴期限の管理はもちろん、主張の整理や書面作成も専門的な視点から進めてもらえます。

離婚裁判と弁護士費用に関連するよくある質問

弁護士なしで勝てるケースはある?

状況によっては、本人訴訟でも裁判に勝つことはあります。

ただし、争点が明確で事実関係に争いがない場合や、証拠が十分に揃っている場合など、条件がかなり限定されます。

【関連記事】離婚調停で弁護士は必要か|弁護士なしで調停を行う人の割合

途中から弁護士に依頼しても問題ない?

途中から弁護士に依頼することは可能です。

むしろ、自分だけでは難しいと感じた段階で早めに依頼することで、以降の主張や書面作成を立て直すことにつながります。

費用を少しでも抑える方法はある?

法テラスの代理援助制度を利用すれば、収入基準を満たす場合に弁護士費用の立替えを受けられることがあります。

加えて、事務所によっては着手金の分割払いに対応している場合もあり、一度にまとまった費用を準備できなくても相談しやすくなっています。

親権争いがある場合は弁護士をつけるべき?

親権争いがある場合は、弁護士をつけることを強くおすすめします。

適切な主張や証拠が揃っていなければ不利になる可能性が高く、専門的な視点が大きな支えになります。

まとめ

離婚裁判は、本人だけで進めることも制度上は可能です。

しかし、証拠の整理や主張の組み立て、期日の対応など、専門的な判断が求められる場面が多く、進め方ひとつで結果が大きく変わることがあります。

一方で、弁護士に依頼すれば、証拠の不足や手続きの遅れといった不利を避けやすくなり、裁判官に伝わる形で主張を整理することができます。

費用はかかりますが、将来に影響する親権・財産分与といった大きな争点がある場合には、早めに専門家へ相談することで安心して進められます。

後悔しないためには、このまま自分だけで続けて大丈夫だろうかと感じた時点で、一度弁護士に状況を確認してもらうことが重要です。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)