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離婚時の財産分与とは?財産分与の決め方や相場は?

2017.07.21
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1,財産分与とは
財産分与とは、婚姻中に形成した夫婦共有財産を精算することです。
財産分与を請求するのは、民法768条1項に定められている法律上の権利です。
 
2,財産分与の決め方
財産分与には、大体いくらくらいという相場というものはありません。
財産分与は、夫婦の共有財産の量と分与割合によって決まりますから、人それぞれです。
結婚生活が長くても、財産がなければ分与はゼロです。
財産分与の割合は、夫婦双方の寄与度(財産の形成や維持に貢献した度合い)によって定められることになりますが、夫婦それぞれ2分の1ずつとすることが通常です
(昔は、専業主婦の妻の分与割合を2分の1以下とすることもありました)。
もっとも、夫婦のうちのいずれかの特別な努力や能力によって高額な資産が形成された場合や、
夫婦の一方が勤労・家事労働をともにこなし、他方がこれらを行わなかった場合には、
分与の割合が修正されることもあります
(ただし、財産の形成が他方配偶者の有形・無形の貢献なしになされたことが明らかである場合に限られますので、認められる例は多くありません)。
どういう財産が対象になって,どういう分け方をするのか,財産分与の基本的な考え方を,説明していきます。

3,財産分与の方法
財産分与は、話し合いによって取り決めることが原則となります。
つまり、当事者双方が納得すれば、基本的には自由に定めることができるのです。
当事者の話し合いでまとまらない場合や、そもそも話し合い自体ができない場合には、調停などの裁判所の手続きを利用していくことになります。
離婚と同時に行う場合であれば、夫婦関係調整調停(離婚)に附帯して財産分与の申立てを行います。
具体的な財産分与の内容としては、たとえば不動産なら、自分が所有する代わりに相手に対価を支払ったり、売却して利益を折半したりするなど、様々な方法がありえます。
なお、財産分与として金銭を何年もかけて分割で支払ってもらう場合、公正証書を作成し、支払が滞った場合に給与の差押え等がすぐにできるようにしておくとよいでしょう。
 
4,離婚後の財産分与
財産分与は離婚と同時になされることが多いです。
もっとも、離婚する際に財産分与について取り決めなかった場合でも、
離婚後2年以内であれば、財産分与を請求することができます(民法768条2項ただし書き)。
ただ、離婚をしてしまうと、財産を持っている方は、財産分与の協議をするモチベーションも上がりませんし、お互いに連絡も取りづらくなります。
また、あったはずの財産が散逸してしまい、現実的に分与を受けることが困難になることもあります。
そのため、離婚後でも財産分与ができると安易に考えて離婚を急いでしまうと後悔しかねません。
できれば、離婚の際に弁護士に相談するなどして、財産分与についても解決しておくことがよいでしょう。
 
5,財産分与の対象となる財産
(1)分与対象財産の範囲
現金、預貯金
不動産、借地権等の不動産の利用権
自動車、貴金属、家具、電気製品
株式等の有価証券
生命保険(掛け捨てでなく、解約返戻金のあるもの)
学資保険
退職金
ゴルフ会員権
など、あらゆる種類の財産が、単独名義、共有名義にかかわらず分与の対象となります。
(2)分与対象財産の基準時
財産分与は、夫婦の共同生活により形成した財産を分配するものですから、離婚前に別居した場合は、特段の事情のない限り、別居時の財産を基準とすることになります。
そのため、別居後に夫婦の一方が共有財産を費消した場合、その費消された財産も分与対象から除外されないのが原則です。
しかし、費消の原因が、夫婦で負担しあうべき生活費や教育費(たとえば子供の入学金等)である場合、費消された財産が分与対象財産から除外されることもあります。
 
6,財産分与の対象とならない財産
財産分与の対象財産となるのは、夫婦双方の協力によって得た財産です。
そのため、結婚前から所有していた財産や、夫婦の協力とは無関係に取得した財産(相続や贈与により取得した財産)は、「特有財産」(民法762条1項)といって財産分与の対象とはなりません。
妻が結婚の際に持参した嫁入り道具も「特有財産」です。
また、婚姻中に購入した物でも、衣服など明らかに夫婦の一方の専用品として使用されている物も「特有財産」となります。
もっとも、特有財産でも、婚姻後に夫婦が協力したことによって価値が維持された場合には、
例外的に一部が財産分与の対象とされる場合もあります(東京高裁昭和55年12月16日判決)。
なお、婚姻期間中に取得した財産については、共有財産であるとの推定が働くとされているため、
特有財産であると主張したい方から積極的に取得経緯等について証拠を準備して主張しなければなりません。
 
7,おわりに
財産分与の対象となる財産があったことに財産分与をした後になって気付いたという場合、取り返しがつかないことになりかねません。
反対に、財産分与の対象にならないにもかかわらず、うまく言いくるめられて相手に渡してしまい、損をしてしまうという場合もよくあります。
 そうならないために、離婚の前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
特に婚姻期間が長い場合や、財産を多く持っている方の場合、そのうち何が財産分与の対象となるのかは、時間と手間をかけて洗い出す必要があります。
また、財産分与の計算方法が複雑になることもありますので、分与する財産がたくさんある方などは、必ず弁護士に相談してから財産分与をした方がよいでしょう。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)