離婚「知っトク」ブログ

養育費の回収におけるポイントとは?

2024.03.25
  • 養育費

養育費を回収する方法と注意すべきポイント

せっかく取り決めた養育費を支払ってもらえない場合、養育費をもらう側としてはどのように対応すればよいのでしょうか。本記事では、支払ってもらえない養育費を回収する方法と注意すべきポイントについてご説明します。

相手方への電話・メールによる連絡

まずは、相手方に電話やメールで連絡を取ってみましょう。養育費の回収方法としては最も手軽な手段ですから、これによって相手方が支払ってくれるようになればそれに越したことはありません。

また、メール等後で残る方法で連絡を取れば、後記の履行勧告の申立て時に資料として役立てることもできます。したがって、まずは一度、相手方に対して電話やメールで連絡を取ってみることをお勧めします。

内容証明郵便の送付

相手方に対して電話やメールで連絡を取っても支払いに応じてくれない場合や無視されてしまう場合は、よりきちんとした形式の連絡手段で養育費の支払いを求めましょう。この点、内容証明郵便という郵送形式は、「誰から誰宛てに、いつ、どのような書面が郵便物として送付された」という事実を郵便局が証明してくれる点で、よりきちんとした形式の連絡手段であると考えられています。したがって、電話やメールで連絡を取っても支払いに応じてくれなかったり、無視したりする相手方に対しては、内容証明郵便によって養育費の支払いを求めましょう。

履行勧告の申立

ご本人同士のいかなる連絡でも支払わないという相手方の態度が変わらない、または無視するという場合は、裁判所から養育費の支払いを勧告してもらいましょう。それが、「履行勧告」という手続です。注意点として、この手続きを使えるのは、元々の養育費を調停または審判といった、裁判所での手続きによって決定している場合に限られます。他方、調停または審判によって養育費が決まっている場合は、裁判所に手数料不要でやってもらえる点で、かなり簡便に行うことができます。

強制執行

これまでご紹介したどの方法を使っても支払ってもらえない場合は、最終手段ということで、養育費の支払いを受けられる権利があることを理由に、相手方の財産から強制的に支払いを受ける手続きである「強制執行」を申立てることを検討しましょう。以下、強制執行に必要なものや流れについてご説明します。

①強制執行に必要なもの

前提として、強制執行ができる理由、すなわち、養育費の支払いを受けられる権利があることを示す文書を所持している必要があります。専門用語で「執行力のある債務名義の正本」(民事執行法22条)といい、具体的には、調停調書、審判書、強制執行認諾文言付公正証書が該当します。

②相手方の現住所や現勤務先、相手方名義の資産の状況を調査する

後記のとおり、強制執行の手続を申立てる際は、相手方の現住所がどこかということを示す必要があります。この点、戸籍の附票という相手方の住民票上の住所の異動履歴が分かる書類を取得すれば、最新の相手方の住所がどこかということは比較的容易に判明します。(なお、住民票を異動させていない場合は戸籍の附票では相手方の現住所を判明させることはできません。)

また、併せて、相手方の現在の勤務先や相手方名義の資産の状況もできる限り調査しましょう。

③相手方の資産の中から、強制執行の対象にふさわしいものを選択する

相手方の資産状況がある程度判明したら、その中から強制執行の対象としてふさわしいものを選択します。

この点、支払ってもらえない養育費を強制的に支払わせるという場面では、給与債権、すなわち相手方が自身の勤務先から毎月支払いを受けている給料が選択されることが通常です。養育費も給料も、毎月一定の金額のお金を受け取るという点で性質が似ているということが背景にあります。

④選択した対象に合っている手続を、その手続を管轄する裁判所に申立てる

一般的に「強制執行」と言われる手続には、実はいくつかの種類があります。そのため、ターゲットとなる相手方の資産を選択したら、その資産を養育費の支払いに充てさせるために適切な手続を選択する必要があります。さらに、そのうえで、その手続の管轄として適切な裁判所に申立てる必要もあります。

この点、前記の給与債権をターゲットとした場合を例にとると、「債権差押命令」という手続が適切です。また、債権差押命令の申立ての管轄となる裁判所は、債務者(=養育費を支払わない相手方)の住所地を管轄する裁判所であると規定されています。つまり、この段で、あらかじめ相手方の現住所を調べたことが活きるということになります。

⑤債権差押命令の申立てを行った場合は、裁判所から債権差押命令が出されたら、その債権の取立てを行う

相手方の給与債権に対して債権差押命令の申立てを行った場合、裁判所から債権差押命令が出された後、実際にその差押さえることができた債権を支払いのなされていない養育費の分に充てる必要があります。これを専門用語で「(相手方の勤務先に対する)取立て」と呼ぶのですが、法律上、養育費請求権があることを理由とする債権の差押えの場合、取立ては、相手方が裁判所から郵送される債権差押命令を受け取った翌日から1週間が経ってから始めることができるとされています。そのため、裁判所に対して、相手方にいつ債権差押命令を送ったのかを証明する文書の交付をお願いしておくと便宜でしょう。

そして、取立てをした場合、債務者(=相手方)の勤務先は、それを拒むことはできません。したがって、養育費を支払ってもらえない場合は、以上のような流れを辿ることで、最終的に回収することができる、ということになります。

回収時に相手方から金額を減らしたいと返答された場合の対応方法―養育費減額調停について

相手方に連絡を取ったところ、「今決まっている金額では支払えないから、減らして欲しい」という返答がされることは珍しくありません。このような場合でも、決められた金額を支払ってくれないからといって、後記の養育費を強制的に支払わせる手続に進んでいくことは得策ではありません。後記の強制的な手続をもってしてもお金がないところからお金を取ることは物理的にできませんし、ケースによっては20年以上養育費をもらう/支払うという人間関係を継続させる必要がある中で、強制的な手続を有無を言わさず実行することでその関係性を悪化させることは、かえってマイナスになり得ます。

したがって、金額を減らしたい旨の返答がある場合は、金額についての改めての話し合いに応じることをお勧めします。この話し合いは、ご本人同士でしていただいても構いませんが、養育費減額調停という調停手続きにおいて行うことが推奨されます。調停は裁判所内での話し合いであるため、当事者双方にとって公平、妥当な合意に至りやすいためです。養育費をもらう側が養育費を減らす話し合いを裁判所内で行いたい旨裁判所に申し立てることはいささか不自然であるため、相手方の方でこの調停を申立てるよう促しましょう。

なお、養育費「減額」調停があるということは、当然、養育費「増額」調停もあります。

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以上、本記事では養育費の回収におけるポイントを解説しました。弊所では、養育費回収の経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決のために全力でサポートをさせていただきます。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。