離婚「知っトク」ブログ

離婚する時、ペットは誰が引き取る?離婚問題に強い弁護士が解説

2024.03.04
  • 財産分与

法律の世界でのペットの扱われ方

飼い主にとっては、ペットは大切な家族です。夫婦でペットを一緒に飼っていたという方であれば、我が子のように愛情をかけていたということもあるでしょう。そのため、夫婦が離婚をする時に、ペットを誰が引き取るかということをめぐって対立することは少なくありません。話し合うことで無事に解決すればそれが一番なのですが、そうはいかないとなってしまった場合、法律の力を借りたいと思われるかもしれません。

ただ、ペットは法律上、「物」として扱われます。そのため、離婚の場面におけるペットの問題では、こと当事者の心情と法律上の理論に乖離が生まれることも多いのが実情です。

離婚時にペットの引き取り手を決める場面における法律上の考え方

夫婦が離婚する際、相手に対して「離婚によって関係を清算するに伴って、それまでに経済的に協力して築いた財産も清算しよう」と請求すること、つまり、財産分与を請求することが認められています。ペットは上記のとおり「物」、すなわち「財産」として扱われますので、法律上、離婚時にペットの引き取り手を誰にするかということを話し合うこととは、財産分与についての話し合いの一種であると考えられます。

ペットが財産分与の対象となる条件

もっとも、法律的な考え方を突き詰めると、離婚時に夫婦でペットを飼っていても、ペットが財産分与対象にならない場合もあります。どういうことかというと、別居時あるいは離婚時に存在する夫婦名義の財産(これが財産分与対象財産です。)であっても、婚姻前から有している財産や親族から譲り受けた財産(これらを特有財産といいます。)は財産分与の対象外となるためです。ペットの場合でも同様に、婚姻前からどちらかが飼っていたという事情や、どちらかの両親や親族から譲り受けたという事情がある場合は、財産分与の対象外となると考えられます。

他方で、婚姻後に夫婦のどちらか、あるいは両方で飼い始めたペットであるということであれば、そのペットは財産分与の対象として話し合われることになるでしょう。

ペットを財産分与する方法

まず、財産分与の一般論として、財産分与対象財産は折半することが原則です。とはいえ、ペットを物理的に折半することはできません。このような、物理的に折半することができない財産については、その財産をお金に換算して、そのお金を折半するという処理を取ることが一般的です。例えば、不動産や車は、夫婦のどちらかが離婚後その財産を所有する場合、他方に対してその財産の話し合い時点の査定額の半分のお金を支払うということで解決されることが典型的です。

もっとも、ペットの場合、お金を出して飼い始めた場合であっても、話し合いの時点で査定額がつくということは稀でしょう(そもそも、このようなお金に換算するということ自体ご不快に思われる方もいらっしゃると思います。)。そうすると、法律的に考えた場合、夫婦のどちらかに引き取り手を決める必要があり、かつ、引き取らなかった側に対して金銭的な補填をする必要性はなさそう、ということになります。ただ、実際の話し合いの現場で、このような法律的な考え方を貫くことがどれほど効果的かは、慎重に検討される方がよろしいかもしれません。理由は次のとおりです。

引き取り手を決める際に気を付けたいポイント

法律論にこだわりすぎない

法律的な考え方を突き詰めた場合の結論は上述のとおりですが、結局は夫婦のどちらかに引き取り手を決めなければならないことに変わりはない以上、相手に対して「法律」を振りかざし過ぎることが逆効果になる可能性があります。ペットの飼い主が、自らが愛情を注いできたペットを無機質な法律で捉えることに抵抗感を持つことは自然な感情であると思われますし、上述のとおり、法律の話をしたとしても、ペットの引き取り手を決定できる何らかの明確な基準が生まれるという訳ではないためです。

このように、ペットの引き取り手を決める場面で「法律」を持ち出すことは、無益どころか有害となる可能性があります。ペットの引き取り手を決める話し合いでは、法律論にこだわりすぎない方がよいでしょう。

ペットにとっての最善を考える

ペットの引き取り手を決める際は、法律論ではなく、誰が引き取ることがペットにとって最善・幸せか、というもっと素朴な視点に立つことがよろしいのではないかと思います。というのも、人間の子どもの親権者を決める場合も、裁判所は「誰がその子と同居してお世話をすることが、その子にとって最善・幸せか」という視点で判断をします。もちろん、ペットと人間の子どもとでは単純に比較することができない部分もありますが、ペットの引き取り手を決める際の視点としては合理的だと思います。

引き取れなかった側がペットと会う方法

人間の子どもの場合は、離婚によって子どもと別居することになった親と子どもとの面会交流の権利が認められます。他方、上述のとおり、ペットはあくまで「物」として扱われてしまうため、人間の子どものような面会交流の権利は認められません。

もっとも、やはり、ペットと別れることになった側の心情としては、定期的にペットと会う時間が欲しいと思うのは当然のことかと思います。そのため、人間の子どものような面会交流そのものではありませんが、そもそもペットと会って交流することができるか否かということ自体や、ペットと会う頻度、場所、ペットと会いたい時の飼い主側への連絡手段等を、離婚時に明確に決めておくことが推奨されます。離婚時に予めペットとの会い方を決めることで、後日のトラブルを予防することができます。

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以上、本記事では離婚時におけるペットの法律的な取り扱われ方について解説しました。弊所では、離婚交渉の経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決のために全力でサポートをさせていただきます。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。