財産分与と税金について弁護士が解説!あげる方ももらう方も必見
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夫婦で財産分与の話し合いをしているときにふと税金のことが気になるという方はたくさんいらっしゃいます。
そこで、財産を渡す側、財産をもらう側に分けて、財産分与の際にどのような税金がかかるのか、またはかからないのかを解説していきます。
今回のブログは、財産をもらう側の立場に立ったものです。
1,贈与税
(1)あげるほうももらうほうも,原則として贈与税はかからない
なぜなら、
財産分与は夫婦共有財産の清算であり、新たに財産を取得したとはいえないからです。つまり、財産分与とは、共有財産をきちんと分け合うだけであり、一方が他方に財産を贈与したりするわけではないのです(なお、婚姻中に取得した財産は、原則として、名義にかかわらず夫婦の共有財産となります)。扶養的財産分与や慰謝料的財産分与についても、原則として、贈与税はかかりません。
(2)例外的にもらった側に贈与税がかかる場合
ア、多すぎる場合
2分の1を大幅に上回る割合の財産分与を受けた場合、それはもはや贈与と判断されます。
たとえば、婚姻期間が1ヶ月で、夫婦で形成した財産がほとんどないのに、多額の分与を行うような場合です。
もっとも、
譲り受けた財産のすべてが贈与とみなされるのではなく、2分の1を大幅に上回る部分についてのみ、贈与とみなされ、税金がかかることになります。
イ、税金逃れの離婚と認められる場合
たとえば、配偶者に財産を移転させたい場合に、贈与の形式をとらずに、離婚をして財産分与の形式で財産を移転させ、しばらくしてから同一の配偶者と再婚するといった場合がこれにあたります。
また、債権者からの取り立てを免れるために配偶者との離婚を仮装し、財産分与によって財産を移転させ、しかし配偶者と従前と変わらない同居生活を続ける場合も同様です。
このような場合、法律上離婚は成立しているものの、財産分与された財産全額が贈与とみなされ、贈与税がかかります。
(3)離婚前に財産を譲渡する場合
財産分与を離婚前に行うことはできません。
そのため、たとえ離婚を条件として財産を譲渡したとしても、離婚前であれば、それは財産分与ではなく、「贈与」になります。
したがって、離婚前に財産を譲渡すれば、贈与税がかかります。
なお、
①婚姻期間が20年以上の夫婦の間で,
②国内の居住用不動産または国内の居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、
③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、
贈与により取得した国内の居住用不動産(または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産)に、贈与を受けた配偶者が現実に住んでおり、
その後も住み続ける見込みであること
を条件に、基礎控除110万円のほかに最高2000万円までの控除(配偶者控除)を受けることができます(租税法21条の6)。
ただし、この配偶者控除は、同一の配偶者からの贈与については、1度限りしか認められておりません。また、この控除は内縁関係では認められておりません。
3,不動産取得税
(1)もらう方もあげる方も原則として不動産取得税はかからない
理由は、贈与税の項で述べたのと同じです。
(2)例外的にもらうほうに不動産取得税がかかる場合
財産分与が夫婦共有財産の清算目的ではなく、慰謝料目的や扶養目的でなされる場合は、不動産取得税がかかってきます。
また、贈与税の項で述べたように、実質的に贈与とみなされる場合にも、不動産取得税がかかることになります。
つまり、
分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他一切の事情を考慮してもなお多すぎる場合
離婚が税金逃れのために行われたと認められる場合
には不動産取得税がかかります。
4,所得税は分与した方にだけかかることがある
財産分与としてなされた資産の譲渡は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡ですから、財産分与に伴う譲渡をした者には、譲渡所得税がかかることになります(最高裁昭和50年5月27日判決)。
※現金で贈与したり,購入時と比べて価値の下がった不動産を譲渡した場合には分与した側にも所得税がかからないことがあります。
※ 取得時よりも価格の上がっている不動産を分与する場合でも、居住用財産を売却した場合、最高3000万円までの特別控除があります(租税特別措置法35条)。この特別控除により、譲渡所得が3000万円以下であれば、課税がされないことになります。たとえば、土地の時価が5000万円で、取得価額が4000万円であれば、譲渡所得は1000万円なので、課税されないことになります。
なお、夫婦間や親子間での不動産譲渡の場合には、この特別控除は適用されません。つまり、この特別控除を活用するためには、離婚をしてから、財産分与をする必要があります(もっとも、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用財産を譲渡する場合、最高2000万円までの配偶者控除があります。
5,登録免許税は分与したほうも受けたほうも負担します
(1)納税義務者
登録免許税とは、不動産を登記することによってかかる税金です。財産分与をすれば、登記名義の変更が必要となりますから、登録免許税がかかります。
法律上の納税義務者は、登記を受ける者です。登記を受ける者が複数あれば、連帯して納税する義務を負います。
財産分与の場合は、分与した者と、分与を受けた者が連帯して登録免許税を納付する義務を負います。ただし、協議により、一方のみが支払うという合意をすることは可能です。
(2)税率
税率は、固定資産評価額の2%です。たとえば、5000万円の評価額の土地を登記する際は、100万円の登録免許税がかかることになります。
なお、司法書士に登記を依頼した場合は、司法書士報酬が別途かかります。
6,固定資産税・都市計画税
(1)納税義務者
不動産の所有者にかかる税金です。
しかし、固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日の時点で、不動産を所有している者に対しての納税義務が生じます。
したがって、2月に不動産の財産分与を受けたとしても、その年の固定資産税や都市計画税の納税義務者は、分与をした方ということになります。ただし、当事者間の協議で固定資産税や都市計画税の負担について日割り計算して、負担割合の合意をすることも行われています。
(2)税率
固定資産税の税率は、固定資産評価額の1.4%(標準税率)です。
都市計画税の税率は、固定資産評価額の0.3%(制限税率)です。
上記はあくまで簡単に説明したものです。実際にご自身が離婚に伴い財産分与することになった場合には,相談する弁護士,できれば税理士に確認してください。