60歳で離婚したらどうなる?デメリットと年金分割・生活費の現実
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60歳で離婚した場合、年金や生活費、住まいなど老後の生活に大きな影響が生じます。
年金分割によって一定の収入を確保できる可能性はありますが、それだけで生活が成り立つとは限らず、不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、60歳で離婚した場合の現実やデメリット、年金分割の考え方など、後悔しない離婚の進め方や準備について解説します。
目次
60歳で離婚したらどうなる?
60歳で離婚した場合、収入や支出のバランスが変わるだけでなく、住まいや生活環境も大きく変化します。
ここでは、60歳で離婚した場合に起こりやすい具体的な変化について整理します。
年金は分割により受給額が変わる
離婚した場合、婚姻期間中に納めた厚生年金については、年金分割によって夫婦それぞれの受給額を分けることができます。
年金分割とは、婚姻期間中に一方が支払っていた厚生年金の記録を分割し、それぞれの将来の年金額に反映させる制度のことです。
専業主婦や扶養に入っていた場合でも、分割によって自分名義の年金を受給できるようになる点は大きな変化といえます。
ただし、分割によって増える金額は婚姻期間や標準報酬額によって異なり、必ずしも生活が安定する水準になるとは限りません。
【関連記事】離婚時に年金分割をしないとどうなる?請求期限と受給額は?
生活費は一人分をすべて負担することになる
離婚後は一人暮らしとなるケースが多く、これまで夫婦で分担していた生活費をすべて自分で負担することになります。
とくに単身世帯では、次のような理由から支出の負担が大きくなりやすい傾向があります。
- 家賃や光熱費、通信費などの固定費は大きく下がらない
- 食費や日用品費はまとめ買いの効率が下がり割高になりやすい
- 突発的な支出にも一人で対応する必要がある
離婚後は支出構造そのものが変わる可能性があります。
住まいは新たに確保または整理が必要になる
離婚に伴い、住まいをどのようにするかを決める必要があります。
持ち家の場合には、次のような選択が考えられます。
- 売却して現金化し、財産分与として分ける
- どちらかが住み続け、もう一方に代償金を支払う
いずれの方法を選ぶ場合でも、評価額や負担の分け方をめぐって調整が必要となるため、財産分与の中でも判断が難しい部分です。
一方で賃貸住宅に移る場合、安定した収入や保証人の確保といった点も重視されるため、住まいの確保自体が課題となるケースもあります。
生活環境が大きく変わる
60歳での離婚は、収入や住まいだけでなく、日常生活そのものに大きな変化をもたらします。
- 家事や手続きなどをすべて一人で担う必要がある
- 日常的な会話の機会が減り、生活リズムが変わる
- 体調不良やトラブルにも一人で対応する必要がある
離婚は生活環境全体に影響を及ぼすため、金銭面だけでなく、日常生活の変化についても具体的にイメージしておくことが重要です。
60歳離婚のデメリットとは?
60歳での離婚は、生活環境が変わるだけでなく、老後の生活におけるさまざまなリスクにも直面します。
ここでは、60歳で離婚した場合に考えられる主なデメリットについて整理します。
収入が年金中心となり働き方の選択肢が限られる
離婚後は、年金が主な収入源となるケースが一般的です。
現役時代のように給与収入で調整することが難しくなるため、収入の伸びは見込みにくくなります。
加えて、年金は受給額があらかじめ決まっているため、柔軟に対応しにくいという特徴があります。
年齢や健康状態によっては新たな仕事に就くこと自体が難しく、収入の選択肢が限定的になります。
一人暮らしで孤独を感じやすくなる
離婚後は、仕事をしていない場合や地域との関わりが少ない場合には、日常的に人と関わる機会が減り、孤独を感じやすくなることがあります。
将来に対する不安や悩みを相談できる相手が身近にいないことで、精神的な負担が蓄積しやすくなる点にも注意が必要です。
離婚後の孤独は一時的なものにとどまらず、生活全体の満足度に影響を及ぼします。
遺族年金を受け取れなくなる可能性がある
離婚すると、配偶者が亡くなった際に受給できた遺族年金の権利は失われます。
遺族年金とは、厚生年金に加入していた配偶者が亡くなった場合に支給されるものです。
遺族年金は長期にわたって受給できるケースもあるため、その有無によって生涯の収入総額に大きな差が生じる可能性があります。
年金分割によって自分の年金が増える場合であっても、遺族年金を受け取れなくなる影響と比較して検討することが重要です。
病気や介護のリスクを一人で抱える必要がある
60歳以降は健康状態の変化が現れやすく、入院や通院、将来的な介護といった問題が現実的になります。
たとえば、入院時の手続きや保証人の確保、退院後の生活支援の手配なども、自ら判断して進める必要があります。
さらに、介護が必要になった場合には、外部サービスの利用が中心となり、継続的な費用負担が発生することも想定されます。
高齢になると賃貸物件を借りにくくなる
高齢者が賃貸物件を契約する場合、年齢や収入状況を理由に入居審査が厳しくなります。
希望する条件の物件に入居できない、あるいは選択肢自体が限られるといった状況が生じる可能性もあります。
加えて、保証会社の利用が前提となる場合や、条件付きでの契約になるケースも見られるため、事前に見通しを立てておく必要があります。
配偶者控除や扶養から外れ負担が増える
離婚によって配偶者控除や社会保険上の扶養から外れることで、これまで見えていなかった負担が表面化します。
たとえば、配偶者の扶養に入っていた場合には、離婚後は自分で健康保険や年金に加入する必要が生じます。
その結果、国民健康保険料や国民年金保険料といった支出が新たに発生し、手取りの金額に影響が出ます。
加えて、配偶者控除が適用されなくなることで、所得税や住民税の負担が増えるケースもあります。
60歳で離婚する場合に考えるべきお金の問題
60歳での離婚では、収入や支出だけでなく、年金や財産分与といった制度の理解が、その後の生活に直接影響します。
ここでは、離婚後の生活設計に関わる主なお金の要素を整理します。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある
離婚時の年金分割には、合意分割と3号分割という2つの方法があります。
合意分割は、夫婦で分割割合を話し合って決める方法で、最大で2分の1まで分割することが可能です。
合意が得られない場合には、家庭裁判所の手続きを通じて割合を決めることになります。
これに対し、3号分割は、会社員や公務員の配偶者として扶養に入っていた第3号被保険者が対象となり、相手の同意がなくても自動的に2分の1で分割される制度です。
3号分割が適用されるのは平成20年4月以降の期間に限られるため、それ以前の期間については合意分割で対応する必要があります。
【関連記事】年金分割とは?対象となる年金や年金分割の種類
分割の対象は厚生年金のみである
日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2つで構成されていますが、このうち分割されるのは、会社員や公務員として加入していた厚生年金のみです。
自営業者やフリーランスとして加入している国民年金については、離婚しても分けることはできません。
加えて、分割されるのは保険料の納付記録であり、受給額そのものをその場で半分に分ける仕組みではありません。
年金はすべて半分になると考えてしまうと、実際の受給額との間に差が生じる可能性があります。
離婚から2年以内に手続きが必要になる
年金分割の手続きには期限があり、原則として離婚が成立した日の翌日から2年以内に行う必要があります。
この期間を過ぎると、年金分割の請求自体ができなくなり、後から手続きを行うことはできません。
加えて、合意分割の場合には分割割合を決めるための話し合いや手続きにも時間がかかるため、余裕をもって進める必要があります。
財産分与は原則として夫婦で2分の1ずつ分ける
離婚時の財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を分ける制度です(民法第768条)。
分与の割合は、原則として夫婦それぞれ2分の1ずつとされるのが一般的で、対象となる財産には、次のようなものが含まれます。
- 預貯金(夫婦どちらの名義でも対象になる)
- 不動産(自宅や投資用物件など)
- 保険の解約返戻金
- 株式や投資信託などの有価証券
これらは名義にかかわらず、婚姻中に形成されたかどうかで判断されます。
一方で、次のような財産は原則として分与の対象には含まれません。
- 結婚前から保有していた財産
- 相続や贈与によって取得した財産
このように、財産分与は単純に半分に分けるだけではなく、対象となる範囲や分け方によって結果が大きく変わります。
【関連記事】財産分与の進め方がわからない
退職金も財産分与の対象になる場合がある
退職金は、婚姻期間中の労働によって形成された財産と評価されるため、財産分与の対象となります。
すでに支給されている退職金はもちろん、将来支給される見込みのある退職金についても、婚姻期間に対応する部分は分与の対象とされることがあります。
退職金は金額が大きくなりやすい一方で、評価や分け方の判断が分かれやすい財産でもあります。
【関連記事】退職金は財産分与の対象?離婚前に知っておくべき計算方法と注意点
離婚後の生活費は月15万〜25万円程度が目安となる
離婚後の生活費は、住まいの状況や生活水準によって異なりますが、一人暮らしの場合、月15万〜25万円程度が一つの目安とされています。
主な支出の内訳としては、次のような項目が挙げられます。
- 家賃や住宅関連費
- 食費
- 光熱費
- 通信費
- 医療費や日用品費
加えて、60歳以降は医療費や介護費用といった支出が増える可能性があり、月々の生活費とは別に備えが求められます。
60歳離婚で損をしないための正しい進め方
60歳での離婚では、条件の整理や進め方によって、離婚後の生活に大きな差が生じることがあります。
ここでは、60歳離婚で損をしないための進め方について整理します。
財産の全体像を事前に把握しておく
離婚を切り出す前に、夫婦の財産がどこにどれだけあるのかを整理しておくことが重要です。
対象となるのは、預貯金だけでなく、保険の解約返戻金や株式、投資信託、退職金など幅広く含まれます。
これらの財産は名義に関係なく、婚姻期間中に形成されたものであれば分与の対象となるため、把握漏れがあるとその分だけ不利な条件で離婚が成立してしまう可能性があります。
協議から進めて条件を整理する
離婚の手続きは、いきなり調停や裁判に進むのではなく、まずは夫婦間の話し合いである協議から始まります(民法763条)。
話し合いができる状況であれば、双方の意向を踏まえながら柔軟に調整できるため、結果として納得感のある形で進めやすくなります。
条件を整理しないまま感情的に離婚を進めてしまうと、不利な内容で合意してしまう可能性もあるため、一つずつ整理しながら、段階的に進めていく形が現実的といえます。
離婚条件は公正証書として残す
離婚時に決めた財産分与や年金分割、将来の金銭の支払いに関する内容については、後から認識の違いが生じるケースもあるため、公正証書として残しておく形が望まれます。
公正証書は、公証役場で公証人が作成する公的な書面であり、合意内容を第三者の関与のもとで明確に記録することができます。
加えて、公正証書に強制執行認諾文言を付けておくことで、万が一支払いが滞った場合には、裁判を経ずに強制執行の手続きに進むことが可能となります。
【関連記事】離婚における公正証書とは?効力・費用・作り方をわかりやすく解説
弁護士に依頼して条件をシミュレーションする
離婚時の財産分与や年金分割は、制度や前提条件によって結果が大きく変わるため、現在の収入や資産状況をもとに、離婚後にどの程度の年金や財産を受け取れるのかを試算しておく必要があります。
しかし、このような試算は自己判断だけで完結させるのが難しい場面も多く、条件の置き方によって結果が変わることもあります。
弁護士に依頼することで、制度を踏まえた形で収支や資産の見通しを試算することができ、離婚後の生活を見据えた判断につなげやすくなります。
60歳を超えて離婚したい時に必要な準備
60歳を超えて離婚を検討する場合には、条件面の整理だけでなく、自分自身の生活を維持できるかという視点で見通しを立てておくことが求められます。
ここでは、離婚前に整理しておきたい主な準備について確認していきます。
離婚後の住まいを事前に確保しておく
離婚後の生活を考えるうえで、どこに住むのかを決めておくことは前提となります。
住む場所によって生活費や通院のしやすさ、日常の利便性も変わるため、単に住めるかだけでなく生活全体を見据えて検討しておきたいところです。
離婚後に慌てて住まいを探すことにならないよう、早い段階で方向性を固めておくことで、その後の生活の安定につながります。
年金見込み額を確認しておく
離婚後の生活を考えるうえでは、将来どの程度の年金を受け取れるのかを具体的に把握しておく必要があります。
ねんきん定期便や日本年金機構のねんきんネットを利用することで、現時点の見込み額を把握することができます。
加えて、年金事務所で相談することで、分割後の受給額についてより具体的な説明を受けることも可能です。
離婚後の生活を具体的にシミュレーションする
ここまで整理してきた収入や支出、住まいの条件をもとに、離婚後の生活を具体的にイメージしておくことが必要です。
また、1年後・5年後といった時間軸で考えることで、将来的にどのタイミングで資金に余裕がなくなるのか、あるいはどの程度の生活水準を維持できるのかといった点も見えてきます。
数値や条件を具体的に当てはめて検討しておくことで、離婚後の生活とのギャップを小さくしやすくなります。
60歳離婚に関連するよくある質問
60歳の女性が離婚した場合、年金だけで生活できますか?
一般的には、年金のみで生活費をすべてまかなうのは難しいケースも多く、貯蓄やパート収入などを含めて考える必要があります。
60歳の専業主婦でも離婚後にお金を受け取れますか?
専業主婦であっても、婚姻期間中に形成された財産は、収入の有無にかかわらず夫婦の共有財産とされるため、原則として分与の対象となります。
年金分割により、自分名義の年金を受給できるようになるケースもあります。
60歳で離婚した後の一人暮らしの生活費はどれくらい?
一人暮らしの生活費は住まいの条件や生活水準によって異なりますが、月15万〜25万円程度が一つの目安とされています。
高齢者が離婚して後悔するのはどんなケースですか?
離婚後の生活設計を十分に行わないまま進めてしまった場合、資金面や生活面で負担を感じるケースが見られます。
まとめ
60歳で離婚した場合、年金や生活費、住まいなど、老後の生活に直接影響するさまざまな変化が生じます。
年金分割や財産分与によって一定の資金を確保できる可能性はある一方で、遺族年金を受け取れなくなる、生活費の負担が増えるといった側面もあります。
離婚を検討する際には、制度の仕組みを理解したうえで、収入や支出のバランス、将来の見通しを踏まえて判断することが前提となります。
条件の整理や見通しの立て方に迷う場合には、弁護士に相談することで、離婚後の生活を見据えた形で進めやすくなります。

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