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離婚で貯金は分けるべき?妻・夫それぞれの貯金の扱いと注意点を解説

2025.11.14
  • 財産分与

夫婦の貯金をどのように分けるかといった財産分与が、離婚を進める上で欠かせない要素です。

夫婦のどちらの名義であっても、婚姻中に築いた貯金は原則として共有財産にあたります。

一方で、結婚前から持っていたお金や、親からの贈与・相続で得た貯金は特有財産として扱われ、分与の対象外となるケースもあります。

この記事では、離婚時の財産分与における貯金の扱いを中心に、対象となる貯金の種類や、片方にしか貯金がない場合・貯金を隠された場合の対処法をわかりやすく解説します。

 離婚時の財産分与では貯金はどう扱われる?

離婚時の財産分与では、どの財産が共有にあたるのかを整理する必要があります。

貯金は金額や名義が明確なため、トラブルになりやすい項目です。

ここでは、その中でも特に争点になりやすい貯金の扱いを整理します。

【関連記事】離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産

 婚姻中に形成された貯金は共有財産になる

婚姻中に積み立てられた貯金は、名義に関係なく、夫婦が共同で築いた財産として共有財産にあたります。

これは、夫婦が互いに協力して生活を営むことで、貯金が形成されるという考え方に基づくものです。

このため、収入の有無にかかわらず、生活面での貢献も財産形成に寄与したものとして評価されるのが特徴です。

共有財産に含まれやすいのは、次のような貯金です。

  • 給与振込口座の残高
  • 家計の余剰金を積み立てた定期預金
  • ボーナスを原資とする貯蓄
  • 家計から支払った積立型の金融商品
  • 共通の生活費用から発生した余剰金

一方、婚姻関係が事実上破綻し、長期間別居した後に形成された貯金は、夫婦の共同生活との関連性が薄くなるため、共有財産に含まれない場合があります。

【関連記事】夫婦の共有財産とは|どこまで含まれる?勝手に使われた場合の対処法

 名義よりも形成時期・生活実態で判断される

貯金の扱いは名義だけでは決まりません。

いつ・どの収入で・どのように貯めたかが判断の中心となるため、次のような事情がよく確認されます。

  • 収入をどちらが管理していたか
  • 家計の支払いをどの口座で行っていたか
  • 口座に入金されているお金の出どころ
  • 夫婦の生活費の負担割合
  • 別居後の収支の変化
  • 夫婦がどの時期まで共同生活を営んでいたか

形成時期や使途を明確に整理しておくことは、後のトラブル防止に大きく役立ちます。

通帳の入出金記録や給与明細など、時系列で追える資料を確保しておくことが重要です。

 結婚前・相続・贈与は特有財産として分与対象外

婚姻前から持っていた貯金や、親族からの相続・贈与によって得たお金は、原則として特有財産にあたり、財産分与の対象には含まれません。


ただし、特有財産を夫婦の生活費や住宅購入資金などに混ぜて使った場合は、共有財産と区別できなくなることがあります。

たとえば結婚前の貯金をマイホームの頭金に充てた場合、その一部が共有財産とみなされる可能性もあります。

加えて、贈与や相続で受け取ったお金を共同口座に入れた場合も、意図せず共有扱いになることがあるため注意が必要です。

【関連記事】特有財産とは?共有財産との違いや特有財産になるもの

 財産分与では公平な分配が原則

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産をできる限り公平に分け合うことを目的としています。

このため、貯金の名義や収入の差にかかわらず、婚姻期間中に形成された財産は、原則として二分の一ずつ分ける考え方が原則とされています。

公平と判断される背景には、収入を得る側だけではなく、家事や育児、生活の維持などの貢献も同じように評価されるべきという考えがあります。

形式上の収入ではなく、家庭を支えるために果たした役割全体が財産形成に寄与したものとして扱われる点が特徴です。

一方で、婚姻関係が破綻した後に形成された貯金や、一方が浪費によって家計に大きな負担をかけた場合など、事情によっては分与割合が調整されることもあります。

公平な分配を求めるには、家計の状況や貢献度を示す資料を残しておくことが重要です。

 財産分与の対象になる貯金・ならない貯金の違い

貯金と一口にいっても、婚姻中に築いたもの・結婚前から持っていたもの・親からの贈与など、その成り立ちはさまざまです。

名義や金額よりも、夫婦の協力で築かれたものかどうかが重要な基準となるため、ここでは代表的なケースごとの扱いを整理します。

 共働き夫婦の貯金は原則として2分の1ずつ分ける

共働き夫婦の場合、双方が収入を得ているため、どちらがどれだけ貯金したかを名義や収入額だけで判断しがちですが、そうした区別は重視されません

双方が働いて家計を支え合っている以上、婚姻中に増えた貯金は双方が協力して形成したものとして扱われ、原則は二分の一ずつ分ける点は変わりません。

共働き家庭では、生活費を負担する割合が異なっていたり、それぞれの口座に給与が振り込まれたりと、資金の流れが複雑になりやすいのが特徴です。

ただし、別居後に新たに得た収入や、個人的な投資の利益など、夫婦の共同生活と無関係に形成された財産は共有財産に含まれないケースがあります。

共働きの場合は資金管理が複雑なぶん、貯金の形成時期や収支の流れを示す資料を確認し、どの部分が共有財産にあたるかを整理しておくことが大切です。

 妻(夫)の名義口座でも実質的に生活費から貯めたなら共有財産

口座の名義がどちらであっても、婚姻中の生活費や給与から積み立てた貯金であれば、実質的に共有財産として扱われます

たとえば次のようなケースは、名義にかかわらず共有財産とされる代表例です。

  • 夫の給与が妻名義の口座に振り込まれていた
  • 妻名義の定期預金に、生活費の余りを積み立てていた
  • 夫が管理する口座に、妻の給与が入金されていた
  • 妻の節約によって生じた余剰金が、夫名義の口座に残っていた

夫婦で収入や支出を分担しながら家計を運営していると、資金が混在し、名義だけでは判断できないケースが多くなります。

そのため、貯金が形成された経緯や入金の流れを確認し、家計の中でどのように使われていたかを明らかにすることが重要です。

 結婚前・相続・贈与による貯金は特有財産として分与対象外

結婚前から持っていた貯金や、親族からの相続・贈与によって得たお金は、夫婦の協力で築いた財産とはいえないため、特有財産とされます。

特有財産は個人に帰属するものであり、離婚時の財産分与の対象には含まれません。

ただし、結婚後にその貯金を生活費や住宅購入資金などに混ぜて使用した場合は、共有財産と区別がつかなくなることがあります。

たとえば、結婚前の貯金をマイホームの頭金や共通口座に入れた場合などは、どこまでが特有財産なのかが曖昧になり、トラブルにつながりやすい部分です。

【関連記事】財産分与の対象にならないものは?退職金や親からの贈与はどうなる?

 学資保険や家計の積立も、実質的に共有なら対象になる

子どもの教育資金として積み立てていた学資保険や、将来の備えとして家計から積み立てた定期預金などは、支払い原資が婚姻中の収入であれば共有財産に含まれます

共有財産と判断されやすいのは、次のようなケースです。

  • 保険料を夫婦どちらかの給与から支払っていた
  • 家計の余剰金を積立型の金融商品に回していた
  • 契約者が夫(または妻)でも、夫婦の生活費から継続的に保険料を払っていた

一方で、共有財産に含まれない可能性があるものもあります。

  • 子どもの名義で積み立てた貯金で、実際に子どものために使われている
  • 親族から子どもへの「贈与」として扱われる性質のもの

このように、名義よりも支払い原資と誰の利益のために積み立てたかが判断基準となります。

 貯金が少ない・片方にしかない場合の対応

離婚を進める中で、自分名義の貯金が少ない、または配偶者だけが貯金を持っていると悩む人も少なくありません。

ただし、貯金の名義や金額だけで不公平が生じるわけではなく、夫婦の貢献や生活状況を踏まえて判断されます。

ここでは、貯金が少ない、または片方にしかない場合の考え方と、適切な対応の方法を解説します。

 貯金がない場合も他の資産(不動産・年金・退職金)で調整される

貯金が少ない場合でも、財産分与は婚姻中に形成した全体の財産を対象として行われます

そのため、現金や預貯金がほとんどなくても、次のような資産があれば、全体のバランスを見ながら公平に分けられます。

  • 夫名義の退職金
  • 共有名義または夫名義の不動産
  • 婚姻中に形成された厚生年金(年金分割の対象)
  • 車・貴金属などの動産

貯金だけを見ると不利に感じても、夫婦が築いた財産を総合して評価するため、最終的な分与額が大きく変わる場合があります。

財産全体を把握し、どれが共有財産にあたるかを整理することで、より公平な分与を実現しやすくなります。

 専業主婦は家事・育児の貢献を理由に分与を受けられる

専業主婦(主夫)の場合、収入がなく貯金が少なくても、家事や育児を通じて家庭を維持してきた貢献が認められます。

夫が外で働ける環境を整え、家庭の基盤を支えてきたことが、財産形成への寄与として評価されるからです。

このため、貯金が夫名義であっても、婚姻中に形成された部分は共有財産となり、専業主婦でも分与を受ける権利があります

収入の多寡だけではなく、家庭内で果たしてきた役割全体が公平性の判断に反映されるため、以下のことを整理しておくと、より適切な分与を受けやすくなります。

  • 家庭で担っていた役割
  • 婚姻期間の長さ
  • 育児や生活維持への貢献度

【関連記事】専業主婦も離婚で財産分与が請求可能!平均額や家事をしない場合は?

 貯金が少ない・隠された場合のトラブル対応

離婚の場面では、配偶者が貯金を隠したり、生活費として使い込んでしまったりといったトラブルが起こることがあります。

ここでは、貯金を隠された場合や使い込まれた場合に取るべき対応などを解説します。

 相手が貯金を隠している場合は財産開示請求で確認できる

離婚時の財産分与では、相手が貯金や資産を隠している場合でも、財産開示請求制度を利用して確認することができます。

この制度は、家庭裁判所の手続きを通じて、相手に対して預金口座や不動産などの財産内容を明らかにするよう求める仕組みです。

開示を命じられた側が虚偽の申告をしたり、正当な理由なく応じなかった場合には、罰則が科されることもあります。

加えて、調停や裁判の段階で、金融機関への照会を行い、預金残高や取引履歴を確認することも可能です。

 通帳・明細・給与振込などの証拠を早めに保全する

貯金を隠された可能性があると感じた場合は、早めに証拠を保全することが大切です。

財産分与では、婚姻中にどのような貯金が形成されたかを客観的に示す資料が重視されます。

通帳のコピーやオンライン明細、給与振込記録、定期預金の契約書などを確保しておくことで、後の話し合いや裁判で有力な証拠になります。

加えて、別居を検討している段階であっても、口座の入出金記録や残高をメモしておくと、財産状況の変化を追いやすくなります。

万が一、相手が記録を改ざんしたり通帳を隠してしまった場合でも、事前の証拠があれば自分の主張を裏づけることが可能です。

 共有財産の貯金を一方が使い込んだ場合は再分与を請求できる

夫婦の共有財産にあたる貯金を、一方が無断で引き出して使ってしまった場合でも、再分与請求によって調整を求めることができます。

再分与とは、離婚成立後に新たに判明した共有財産や、不正に処分された財産があった場合に、改めて分与を請求できる制度です。

相手が婚姻中に貯金を浪費していたり、離婚直前に多額の引き出しを行っていた場合などは、使途を確認し、共有財産から不当に持ち出されたと判断されれば再分与の対象となります。

このようなケースでは、通帳の入出金記録や領収書などの客観的な証拠をもとに主張することが重要です。

不正な引き出しを放置してしまうと、分与額が不利になるおそれがあるため、早めに弁護士へ相談して対応を進めると安心です。

 特有財産を使い込まれた場合は損害賠償や不当利得返還を主張できる

結婚前の貯金や、相続・贈与で得たお金などの特有財産を、相手が無断で使ってしまった場合は、財産分与ではなく損害賠償請求や不当利得返還請求によって回復を求めることができます。

特有財産は本来、個人に帰属するものであり、夫婦の共有財産とは異なります。

そのため、相手に使われた場合は、自分の財産を不当に失ったとして、法的に返還を求めることが可能です。

ただし、どの資金が特有財産にあたるかを立証する必要があるため、入出金記録や贈与証明書などの客観的な資料をそろえておくことが重要です。

 弁護士が代理で資料収集・交渉を行うとスムーズに進む

貯金の所在や使途をめぐるトラブルは、感情的な対立に発展しやすく、当事者だけで解決するのは難しい場合があります。

弁護士に依頼すれば、財産開示請求や金融機関への照会などの手続きを代理で行い、必要な証拠を効率的に集めることができます。

加えて、共有財産と特有財産の区別、分与の対象範囲、再分与の可否など、法的な判断が必要な場面でも、専門的な視点から整理してもらえます。

弁護士を介して交渉を進めることで、感情的な衝突を避けつつ、公平な条件で話し合いをまとめやすくなります。

早めに相談しておくことで、証拠の確保や手続きの準備も進めやすく、結果的に円滑な解決につながります。

 離婚と貯金の財産分与に関連するよくある質問

 結婚前の貯金を生活費に使った分はどうなる?

結婚前の貯金は本来、特有財産として分与の対象にはなりません。

しかし、婚姻中に生活費や住宅購入などに充てた場合は、共有財産と混ざり合うため、どの部分が特有財産なのかを明確に区別するのが難しくなります。

 子どもの名義の貯金は対象になる?

原則として、子どもの名義で積み立てている貯金は分与の対象外です。

ただし、名義だけが子どもで、夫婦の貯金を移していた場合などは、共有財産と判断されることがあります。

 相手の貯金額が分からないときはどうする?

相手の口座や資産の状況が分からない場合は、財産開示請求制度を利用して確認することができます。

 夫婦の貯金が全て夫名義の場合でも分けられる?

名義が夫のみであっても、婚姻中に夫婦の協力で形成された貯金であれば、共有財産として分与の対象になります。

 まとめ

離婚時の貯金は、名義ではなく形成された時期や生活の実態によって扱いが変わります。

婚姻中に夫婦の協力で築いた貯金は共有財産として分与の対象になりますが、結婚前や相続・贈与による貯金は特有財産として扱われるのが原則です。

加えて、貯金が一方にしかない場合でも、家庭での貢献度や他の資産を踏まえて公平に調整されます。

相手が貯金を隠している、使い込んでいるといった疑いがあるときは、証拠を確保したうえで弁護士に相談することが重要です。

財産分与のルールを正しく理解し、冷静に準備を進めることで、納得のいく形で新しい生活を始めやすくなります。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)