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モラハラによる離婚の慰謝料請求のポイントとは?

2024.01.17
  • 慰謝料
  • 男女トラブル

離婚を希望される方の離婚事由には、様々なものがあります。代表的な離婚事由には、不貞行為やDV(家庭内暴力)などがありますが、近年よく挙げられるようになった離婚事由として、「モラルハラスメント」(以下「モラハラ」といいます。)が挙げられます。しかし、モラハラとは、そもそもどのようなものを指すのでしょうか。また、モラハラを理由とする慰謝料請求は認められるのでしょうか。今回は、モラハラによる離婚の慰謝料請求について弁護士が解説します。

モラハラとは

モラハラの定義は必ずしも明確ではありませんが、一般的にイメージされる定義としては、「相手に対し、精神的にダメージを与えるような言葉や行動を取ること」といったものになるでしょう。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

暴言や馬鹿にした発言

まずは、暴言が挙げられます。「馬鹿」、「無能」といった言葉や、「生きている価値がない」といった相手の人格や存在自体を否定するような発言は、モラハラと評価される可能性が高いでしょう。

束縛や行動の制限

次に、相手の行動を束縛したり、その行動を制限したりする行動も、モラハラとの評価を受ける可能性があります。例えば、友達と外出することを禁止したり、スマートフォンを勝手に調べたり、行動を逐一チェックするような行動は、モラハラといえるでしょう。

育児や家事の否定

相手が行う育児や家事の否定も、モラハラに当たり得ます。相手が行う育児や家事の内容を否定すること、例えば、「きちんと子どもを育てられていない」、「子どもが健全に成長しないのは相手の教育が悪いせいだ」、「相手の作る食事がまずい」といった発言は、モラハラと評価される可能性があります。また、相手が行う家事に対し過度に細かい指示を出したり、自分の理想の家事のやり方を強制したりすることも、モラハラに当たり得ます。さらに、相手に育児や家事をすべて押し付け、自分は何もしないといった態度でいることも、モラハラといえます。

モラハラを理由とした離婚における慰謝料の相場

モラハラを理由とした離婚における慰謝料の相場は、どのくらいでしょうか。

この点について、そもそもモラハラを理由として慰謝料の請求が認められるのかということが問題になります。実は、モラハラを理由とする慰謝料請求が認められる可能性は、不貞行為やDVといったものを理由とする慰謝料請求と比べ、決して高くはありません。それには、2つの理由があります。

⑴モラハラの立証が難しい

モラハラを理由とする慰謝料請求が認められるためには、こちらが主張するモラハラに該当する具体的事実がたしかに存在したことを証拠によって証明しなければなりません。しかし、上記に挙げたようなモラハラに該当する具体的事実(相手を否定する発言や、相手を過度に束縛する行動)は、日常的に行われる点で、意識して記録を取るものではありません。そのため、相手がモラハラに該当する具体的事実を行っていたことを示す証拠が存在しない可能性があります。

⑵ある事実がモラハラであるとの評価がされにくい

仮に、こちらがモラハラに該当すると考える具体的事実を証拠により立証できたとしても、裁判官も同様に判断してくれるという保証はありません。そもそも、モラハラという言葉の定義は前述のとおり曖昧であり、人によりその評価は異なると考えられます。また、仮に「自分が嫌な気持ちになるような言葉や行動はすべてモラハラである」ということになると、世の中は慰謝料請求で溢れかえってしまいます。そのため、裁判官は、こちらがモラハラと主張する事実が、慰謝料請求を認めるに足りる「モラハラ」といえるのかについては、慎重に判断する可能性が高いです。

上記の点をクリアした場合の、モラハラを原因とする慰謝料の相場は100万円程度と考えられます。

モラハラによる離婚で慰謝料を請求する方法

では、モラハラによる離婚で慰謝料を請求するには、何をしたらよいでしょうか?

モラハラの証拠収集

まず、何といっても証拠の収集です。相手が認めてくれるのであれば証拠がなくても問題ありませんが、離婚に至ってしまった夫婦間においては、対立が深まっていることが多く、証拠がない状態での慰謝料請求には応じない当事者が多いです。

夫婦間での話し合い

証拠を揃えたら、まずは夫婦間で話をしてみましょう。夫婦間で話をする場合、あくまで相手が応じなければ慰謝料の支払いは受けられませんが、相手が応じれば裁判所を介した手続きをすることなく簡易迅速に慰謝料の支払いを受けられます。また、裁判所を介した手続きに比べ、慰謝料の支払い方法や他の条件(謝罪するなど)の設定を柔軟に行うこともできます。

内容証明郵便の送付による請求

夫婦間での話し合いがうまくいかない場合、内容証明郵便を送付することが考えられます。きちんとした形で請求をすることで、自分の本気度を伝えるという点では一定の効果が期待できます。その際、弁護士に内容証明郵便の文面を作成してもらえば、より本気度が伝わるでしょう。

離婚調停での請求

より強い手段として、調停を申し立てる方法があります。まだ離婚していない場合、離婚の調停と併せて、慰謝料請求についても調停の場で話し合いをすることができます。裁判所において、調停委員を交えてやり取りをすることから、第三者の意見も踏まえ相手に慰謝料請求について考えてもらうことができますし、そもそも協議にまともに応じないという相手の場合、裁判所から調停に参加して自分の意見を言うように促されることで、話し合いが進展しやすいといえます。ただし、調停はあくまで話し合いです。あくまで相手方が慰謝料の支払いを拒否する場合、調停での慰謝料請求はできません。なお、離婚後に慰謝料を請求する調停を申し立てる場合、慰謝料を請求する調停を単独で申し立てることになります。

離婚訴訟(裁判)での請求

上記に挙げた手段を取っても相手方が慰謝料の支払いに応じない場合、最終的には訴訟を提起することになります。離婚訴訟を提起する場合、これに併せて慰謝料請求訴訟も提起することが可能です。訴訟の場合、裁判官が慰謝料請求を認めるに足りる証拠が必要になりますが、裁判官が慰謝料請求を認める判決を下せば、慰謝料の支払いを受けることが可能になります。なお、離婚後は慰謝料を請求する訴訟を単独で提起することになる点は、調停と同様です。

モラハラをする相手方が離婚に反対している場合の対処法

モラハラをする相手方が離婚に反対している場合には、まずは夫婦間での協議、調停での話し合いの中で、相手を説得したり、相手が離婚に応じられるような条件を提示したりして相手と交渉します。それではうまくいかない場合、最終的に訴訟にならざるを得ませんが、前述のとおりモラハラは容易に認められるものではありません。そのため、モラハラの他に、離婚が認められそうな理由がないか検討してみるとよいでしょう。また、一定の別居期間が経過すると、それ自体が離婚事由となり得ます。一般的には、3年程度別居期間が継続している場合、離婚事由となる可能性が高いです。モラハラを主張しつつ、別居を開始することを検討するとよいでしょう。

モラハラを理由とする離婚訴訟(裁判)の流れ

モラハラを理由とする離婚訴訟は、まず訴状を提出することから始まります。その後、相手から反論の書面が届き、それに対する再反論、さらに再反論に対する再々反論…というように主張反論が繰り返されます。主張反論が一定程度出尽くしたとなった時点で、裁判官から和解を提案されます。そこで和解できればこの時点で離婚が成立します。和解に至らない場合には、当事者の尋問が行われ、その後もう一度和解が試みられるケースが多いです。ここでも和解に至らない場合、裁判官が判決を下し、その判決に対し双方が不服を申し立てなければ、訴訟は終結します。

モラハラに関してお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

モラハラは、主張すべき具体的事実の検討や、その立証が困難である点で、専門家の力を借りる必要の大きい事件類型です。また、モラハラを受けてきた方は、モラハラをする相手に対し、主張したいことを充分に主張できない可能性も高いです。そのため、モラハラを理由とする離婚や慰謝料請求をしたい方は、弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。なかま法律事務所は、モラハラを理由とする離婚請求及び慰謝料請求の経験が豊富な弁護士がいますので、モラハラに関してお悩みの方になれるはずです。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。