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養育費を公正証書に残す際の記載内容とは?

2024.05.31
  • 養育費
  • 離婚手続

養育費の取り決めをする際、重要な役割を果たすのが「公正証書」です。本記事では、養育費をもらう場面における公正証書の記載内容、公正証書を作成するうえでの注意点について解説します。

養育費における公正証書とは

そもそも公正証書とは、公務員である公証人が作成する文書です。こうした公的な機関が作ることから、いわゆる公文書として、そうではない文書と比較して文書の内容の信頼性が確保されていることが最も大きな特徴です。

したがって、養育費の取り決めをする際にも、取り決めた内容を公正証書にすることで、「○月○日に、このような内容で養育費を取り決めた」ということを確実に記録として残すことができます。

公正証書に養育費の内容を記載するメリット

約束した内容を後から確認することができる

公正証書の原本は公証役場(公証人が業務を行っている場所)に保管されているため、①いつ②どこで③誰が④どんな内容の文書を公証人に依頼して作ってもらったかということを後から確認することができます。養育費をもらう権利/支払う義務は場合によっては10年以上にわたり続くものですので、これは大きなメリットの一つといえるでしょう。

約束を破った場合に強制執行の手続きを取ることができる

上記のとおり、公正証書は信頼性の確保された公文書であるため、公正証書に記載された約束を破った場合は、「強制執行」という手続で強制的に約束を履行してもらうことができます。養育費は、子どもを監護・養育するために必要な費用そのものであり、その支払いを受けられることは非常に重要です。したがって、万が一支払いがなくなってしまった場合に備えておくことができるというのも、養育費の取り決めを公正証書にする大きなメリットといえます。

公正証書に養育費の内容を記載するデメリット

作成のために時間・費用が発生する

信頼性が高いという公正証書の性質上、作成にあたっては作成者の本人確認が求められます。具体的には、運転免許証等の顔写真付きの公的身分証明書と認印が必要になりますので、これらの資料を予め準備する必要があります。また、公正証書を作成することができるのは公証人のみであるため、公証人との間で公正証書化する内容を打ち合わせる時間も必要となります。

さらに、公正証書を作成する公証人に所定の手数料を支払う必要があります。手数料の金額は慰謝料の総額や作成する公正証書が何頁になるかといった点で変動しますが、少なくとも1万円以上は必要になると見込んでおくと安心です。

このように、作成のために時間・費用が発生することが確実で、手軽さというものはあまりないことがデメリットです。

完成した公正証書の受け取りは当事者2名で対応する必要がある

公正証書は、養育費をもらう側・支払う側の当事者双方が公証役場に行き、公証人の読み上げる書面の本文を聞いたうえ、書面に署名捺印することで最終的に完成します。したがって、必然的に、事前に公正証書を作成することについて相手方の承諾を得なければならないということになります。

養育費の公正証書の作成までの流れ

①取り決め内容を離婚協議書等にまとめる

まずはそもそもの取り決め内容を離婚協議書等の書面にまとめましょう。この時にまとめた書面が、公証人の作成する公正証書の元になります。

②公証役場に連絡

上記のとおり公正証書は公証人でなければ作成できず、かつ、その場ですぐに作成してもらえるような簡単な書面でもないため、公証人に公正証書の作成を依頼する場合は、必ず事前に公証役場に連絡するようにしましょう。なお、公証役場は全国各地に点在しますが、どこの公証役場を利用するかは自由です。そのため、ご自身や相手方にとって利用しやすい公証役場に連絡をするということで問題ありません。

公証役場に連絡した後、公証人との間で作成する公正証書の内容について打ち合わせを行う必要があります。打ち合わせの手段としては、直接公証役場に行く、メールのやりとりをする等、公証人によって様々です。

③当事者2名で公証役場へ行き、署名捺印をする

公証人と作成する公正証書の内容を打ち合わせ、相手方からの承諾も得られた後は、いよいよ公証役場に行って公正証書の正式な作成を行います。上記のとおり、公正証書は、書面の本文そのものを公証人が読み上げたうえ当事者が書面に署名捺印することで最終的に完成するため、公証役場では公証人の読み上げる内容をご自身と相手方とで聞き、書面に2名で署名捺印する必要があります。

公正証書に記載すべき内容と注意点

養育費の支払いの場面で公正証書に記載すべき代表的な内容は、以下の3つです。

①養育費をいつまで、月額何万円支払うか

公正証書の本体ともいえるべき約束です。法的には、家庭裁判所が作成している「標準算定表」という表に、お子様の年齢・人数、もらう側と支払う側双方の年収を当てはめて算出した月額を、お子様が20歳の誕生日を迎えるまで支払うということが義務と考えられています。もっとも、これ以上の水準の約束をすることができれば(例えば大学に進学した場合の学費の負担等)、その約束を元に公正証書を作成することができます。

②公正証書の作成手数料は誰がどの程度負担するか

上記のとおり、公正証書を作成するためには公証人に対して支払う手数料がかかります。特に法的な基準等はありませんが、折半とすることが多いです。

③強制執行受諾文言

万が一、将来養育費が支払われなくなった場合に強制執行の手続を取るために必要な専用の文言です。入れることを希望する場合は、事前に相手方の承諾を取ったうえ、必ず公証人にその旨を申し出るようにしましょう。

養育費の公正証書作成手続を自分で行う際の注意点

公正証書の作成は、相手方と交渉し公証人と連絡を取ることで、ご自身でも行うことができます。その場合は、相手方との約束の内容に漏れがないようにする(例えば、上記の強制執行受諾文言のような重要な事柄から、公正証書の作成手数料の負担といった細かい事柄まで、意外と合意すべきことは多いです。)ことや、公証人と連絡を取ったり公証役場に行くことのできたりする時間的な余裕を確保しておく(公証役場は基本的には平日のみ開いています)ことに注意をしましょう。

弁護士に公正証書作成手続を依頼するメリット

もし、ご自身で公正証書の元になる書面を作成できる自信がない、多忙のため公証人と連絡を取ったり公証役場に行くことのできたりする時間が取れない、といったお悩みがある場合は、弁護士に公正証書作成手続をご依頼いただくことをお勧めします。

弁護士にご依頼いただくことで、公正証書の元になる書面作成、公証人との打ち合わせ・連絡、最終的に公正証書を作成する際の公証役場への出頭等は全て弁護士にお任せいただけます。

養育費でお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

以上、本記事では養育費の支払いの場面における公正証書について解説しました。弊所では、養育費の公正証書作成手続の対応経験の豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決のために全力でサポートをさせていただきます。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。